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融
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と
ふりがな文庫
“
融
(
と
)” の例文
しかし水から出すとすぐに、その光沢は
褪
(
あ
)
せてきて、その姿が指の間に
融
(
と
)
け込む。彼はそれを水に投げ込み、また他のを
漁
(
あさ
)
り始める。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
しかもこの際読者の網目と前句作者の網目と付け句作者の網目とこの三つのものが最もよく必然的に重なり合い
融
(
と
)
け合う場合において
連句雑俎
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
僕には、僕がだれとも
融
(
と
)
けあわない一つの核をもっていること、これを信じる勇気しかない。そこからしか、なにもはじめられないんだ
軍国歌謡集
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
尚
(
なお
)
詳しく言えば、物について物を見ないで、主観の感情によって認識し、
心情
(
ハート
)
の感激や情緒に
融
(
と
)
かして、存在の意味を知ることである。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
かれこれと
語
(
かた
)
り
合
(
あ
)
っている
中
(
うち
)
にも、お
互
(
たがい
)
の
心
(
こころ
)
は
次第
(
しだい
)
次第
(
しだい
)
に
融
(
と
)
け
合
(
あ
)
って、さながらあの
思出
(
おもいで
)
多
(
おお
)
き
三浦
(
みうら
)
の
館
(
やかた
)
で、
主人
(
あるじ
)
と
呼
(
よ
)
び、
妻
(
つま
)
と
呼
(
よ
)
ばれて
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
▼ もっと見る
しかし細君の動かなくなる時は彼女の沈滞が
融
(
と
)
け出す時に限っていた。その時健三は
漸
(
ようや
)
く怒号をやめた。細君は始めて口を利き出した。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
が、日は無心に
木犀
(
もくせい
)
の
匂
(
にお
)
いを
融
(
と
)
かしている。
芭蕉
(
ばしょう
)
や
梧桐
(
あおぎり
)
も、ひっそりとして葉を動かさない。
鳶
(
とび
)
の声さえ以前の通り朗かである。
戯作三昧
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼らと心理的に
融
(
と
)
け合ううちに、まさしく世界に遍在する一つの霊魂といったものが、あり得ると信じるようになってきますね。
かもめ:――喜劇 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
春の日に霜がむすぶと——冬のあいだの氷が
融
(
と
)
ける日でもそうなることがあるが——砂は溶岩のように斜面を流れ落ちはじめる。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
読者の知ってるとおり、彼らの間には常に、絶壁と冷ややかさと気兼ねとが、砕き
融
(
と
)
かさなければならない氷が、介在していた。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
それに火をつけて吸いはじめたが、それは
筆紙
(
ひっし
)
に
尽
(
つく
)
されぬほど
美味
(
うま
)
かった。凍りついていた元気が
俄
(
にわ
)
かに
融
(
と
)
けて全身をまわりだした感じだ。
流線間諜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
荒川
(
あらかわ
)
放水路が北方から東南へ向けまず二筋になり、
葛西川
(
かさいがわ
)
橋の下から一本の
大幅
(
おおはば
)
の動きとなって、河口を海へ
融
(
と
)
かしている。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
それから厚い
毛布
(
けっと
)
かフランネルを二枚に
畳
(
たた
)
んでも三枚に畳んでもようございますから今の桶の上へ
悉皆
(
すっかり
)
蒙
(
かぶ
)
せて氷の速く
融
(
と
)
けないようにします。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
からだのすくむやうな、ぞくぞくするやうな、
融
(
と
)
ろけ込むやうな、さういふ状態に、何時でもなれるんぢやないんですか。
命を弄ぶ男ふたり(一幕)
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
翌朝
手水鉢
(
ちょうずばち
)
に氷が張っている。この氷が二日より長く続いて張ることは先ず少い。遅くも三日目には風が変る。雪も氷も
融
(
と
)
けてしまうのである。
独身
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
私が今までお前に尽している真心がお前にわかっているなら、もっと本当のことを打ち
融
(
と
)
けて聴かしてくれてもいいと思う
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
深くはなかったが、その穴のなかでは、二月の雪が底の方から
融
(
と
)
けていた。たった今、雪から水に
還
(
かえ
)
ったこまかい粒が、集まって
滴
(
しず
)
くとなった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
零下十度位になると、雪の結晶は全く安全で、どのように
弄
(
いじ
)
っていても
融
(
と
)
ける心配はないので、勝手に切ったり細工したりして調べることが出来る。
雪の十勝:――雪の研究の生活――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
田面
(
たづら
)
の氷もようやく
融
(
と
)
けて、彼岸の種
蒔
(
ま
)
きも始まって、
背戸
(
せど
)
の桃もそろそろ笑い出した頃になると、次郎左衛門はそわそわして落ち着かなくなった。
籠釣瓶
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
感情と知性と誠実がすっきり透き
徹
(
とお
)
るように
融
(
と
)
け合えば夫婦親子は勿論、我子の嫁とも一切の他人とも愛し得られるものであろうと私は思っている。
姑と嫁について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
霊
(
たま
)
も
体
(
たい
)
もそのまま
霞
(
かすみ
)
のうちに
融
(
と
)
け去りてすくうも手にはたまらざるべきお豊も恋に
自己
(
おのれ
)
を自覚し
初
(
そ
)
めてより、にわかに苦労というものも解し
初
(
そ
)
めぬ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
霧が
融
(
と
)
けたのでした。
太陽
(
たいよう
)
は
磨
(
みが
)
きたての
藍銅鉱
(
らんどうこう
)
のそらに
液体
(
えきたい
)
のようにゆらめいてかかり
融
(
と
)
けのこりの霧はまぶしく
蝋
(
ろう
)
のように谷のあちこちに
澱
(
よど
)
みます。
マグノリアの木
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
その眼には物を
詰問
(
きつもん
)
するような輝きがあったが、壮助の視線に逢うとすぐに深い悲しみのうちに
融
(
と
)
け込んでいった。
生あらば
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
あの
乾枯
(
ひから
)
びたシャモの
頸
(
くび
)
のような
咽喉
(
のど
)
からドウしてアンナ艶ッぽい声が出るか、声ばかり聞いてると
身体
(
からだ
)
が
融
(
と
)
けるようだが、顔を見るとウンザリする
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
その時のヤングの声の静かで悲しかったこと——ほんの
一寸
(
ちょっと
)
の
間
(
ま
)
だったけど、妾の胸にシミジミと
融
(
と
)
け込んで、妾に何もかも忘れさしてしまったのよ。
支那米の袋
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
その感動が
漸
(
ようや
)
く大きくなって来てその森羅万象と
融
(
と
)
け合って初めて句になるような径路、その径路を選ぶ事が正しい句作の誘導法だと考えるのである。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
儞
(
なんじ
)
に筧の水の
幽韻
(
ゆういん
)
はない。雪氷を
融
(
と
)
かした山川の
清冽
(
せいれつ
)
は無い。
瀑布
(
ばくふ
)
の
咆哮
(
ほうこう
)
は無い。大河の
溶々
(
ようよう
)
は無い。大海の
汪洋
(
おうよう
)
は無い。儞は謙遜な農家の友である。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
南に富士川は
茫々
(
ばう/\
)
たる乾面上に、
錐
(
きり
)
にて刻まれたる
溝
(
みぞ
)
となり、一線の針を
閃
(
ひらめ
)
かして落つるところは駿河の海、
銀
(
しろがね
)
の
砥
(
と
)
平らかに、
浩蕩
(
かうたう
)
として天と
一
(
いつ
)
に
融
(
と
)
く。
霧の不二、月の不二
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
道は落葉に埋められ、今朝おりた霜の白きもあり、
融
(
と
)
けて
濡
(
ぬ
)
れたのもある。とかく
辷
(
すべ
)
り勝ちで足の運びは鈍い。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
「あの、お嬢さん、これみんな、
融
(
と
)
けてってしまうんじゃアない? 早く片付けてしまった方がよくはない?」
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
きっと釜の中を睨んだが、「
融
(
と
)
かしてやろうぞ! 融かしてやろうぞ!」まさに桔梗様を投げ込もうとした。
神秘昆虫館
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
湯気と
垢
(
あか
)
と、塗りつける化粧料と、体臭とがまざり合い、ひしめき合って窓から
夜気
(
やき
)
のなかに
融
(
と
)
けて行く。
刺青
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
葉子の家の裏あたりから、川幅は次第に広くなって、浪に
漾
(
ただよ
)
っている
海猫
(
うみねこ
)
の群れに近づくころには、そこは
漂渺
(
ひょうびょう
)
たる
青海原
(
あおうなばら
)
が、澄みきった
碧空
(
あおぞら
)
と
融
(
と
)
け合っていた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
小春日和
(
こはるびより
)
の日中のようで、うらうらと照る日影は人の心も筋も
融
(
と
)
けそうに
生
(
なま
)
あたたかに、山にも枯れ草
雑
(
まじ
)
りの青葉少なからず日の光に映してそよ吹く風にきらめき
鹿狩り
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
或
(
あるひ
)
は
外壁
(
がいへき
)
の
上部
(
じようぶ
)
に
生
(
しよう
)
じた
裂
(
さ
)
け
目
(
め
)
から
出
(
いづ
)
ることもあり、
又
(
また
)
側壁
(
そくへき
)
を
融
(
と
)
かしてそこから
溢
(
あふ
)
れ
出
(
で
)
ることもある。
火山の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
今思いますと、若い時の沢山の苦しみが積み重なり、一丸に
融
(
と
)
け合って、ことごとく芸術的に浄化されて、今の境地が作り出されたのではないかと思われてなりません。
画筆に生きる五十年:――皇太后陛下御下命画に二十一年間の精進をこめて上納――
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
ただ神がその姿を現わしさえすれば宜いのである。ただ直接に神の声を聴きさえすれば宜いのである。それで疑問は悉く
融
(
と
)
け去りて歓喜の中に心を浸すに至るのである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
そして蒼ざめた前の金いろの光りはそれと
融
(
と
)
けあはずに、ゆらゆらと、さながら青い海底へ沈むようにたゆたひながら、あたかも大理石の波紋のやうな層を形づくつた。
ディカーニカ近郷夜話 後篇:03 怖ろしき復讐
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
外
(
ほか
)
の柹だと、中味が水のように
融
(
と
)
けてしまって、美濃柹のごとくねっとりとしたものにならない。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「ああ! 俺にはまだ希望があったのだ‼ 希望が!」庸之助はこわばっていた心が、端からトロトロと
融
(
と
)
けて来るのを感じた。名状しがたい涙がこぼれ出したのである。
日は輝けり
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
こうした春の自然とそれに
融
(
と
)
けあう人の心とのふしぎな織物に、古人も魅惑を感じたらしいが、今もってこうした幻影はそのころの人たちを、静観的な自然観照家であり
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
生来おもひやり深い此人の気立からして今此家の内の、むさくるしい、貧しい、どうして食つて行つてるかすら分らない有様を見ると、怒も憎しみもすつかり
融
(
と
)
けてしまつた。
夜烏
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
一言にしてみれば、これまでの不自由なこころもちが、その自然を見ることで、意外にも自分自身
融
(
と
)
けほぐれて自由になり、解放されたようなこころもちになることなのである。
美学入門
(新字新仮名)
/
中井正一
(著)
色と色とが
融
(
と
)
け合つた斑の雲などの
濃淡
(
のうたん
)
のある遠景を消してしまつたやうなものだつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
殊に胴体から胸・顔面にかけて剥脱した白色が、
光背
(
こうはい
)
の
尖端
(
せんたん
)
に残った朱のくすんだ色と
融
(
と
)
けあっている状態は無比であった。全体としてやはり焔とよぶのが一番ふさわしいようだ。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
遥か野末から弦の
断
(
き
)
れたような物音が何ごとかを暗示し、そのまま何の解決もなしに永遠の流れに
融
(
と
)
けて入る——といったことを、彼は何も戯曲の中だけでやったのではないのである。
チェーホフの短篇に就いて
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
水幅が三町半ほどで、その水の中には朝、氷の張ったのが
融
(
と
)
けて上流から流れて来た小さき氷塊があるからその氷が足や腰の辺に当ると怪我をする。水の冷たいことは申すまでもない。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
そうやって一つの記憶の中に微妙に
融
(
と
)
け合ってしまっているのかも知れない。
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
私の
居室
(
きょしつ
)
には、かつて一枚の英傑の肖像画をも置いたことがないが、フランスの若い友人から送って来た、バッハの小さい肖像画だけは、長く私の書斎に飾って、
融
(
と
)
け込むような親しさと
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
薄日は
射
(
さ
)
したがまだ
融
(
と
)
けぬ、道芝に腰を落して、お鶴はくの
字形
(
なり
)
に手を小石。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“融”の解説
『融』(とおる)は、平安時代の左大臣源融とその邸宅・河原院をめぐる伝説を題材とする能の作品。五番目物・貴人物に分類される。囃子に太鼓が入る太鼓物である。作者は世阿弥。
(出典:Wikipedia)
融
常用漢字
中学
部首:⾍
16画
“融”を含む語句
融通
祝融
融々
融和
融合
雪融
融解
源融
御融通
熔融炉
孔融
打融
円融
祝融氏
霜融
馬融
金融
渾融
半分融
円融坊
...