“漂渺”のいろいろな読み方と例文
読み方(ふりがな)割合
ひょうびょう95.0%
へうべう5.0%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
障子の外は小さな廊下になってそれに欄干らんかんがついていたが、その欄干のさきには月にぼかされた湖の水が漂渺ひょうびょうとしていた。
水郷異聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「あすこが大阪かね」私は左手の漂渺ひょうびょうとした水霧すいむの果てに、虫のようにむらがってみえる微かな明りを指しながら言った。
蒼白い月 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
私は北の空を眺めて、高田平野の果てを限る松並木越しに、漂渺ひょうびょうたる日本海が晴れた穏かな暁の色を浮べているのを見て、斯う思った。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
座にことばが途絶えると漂渺ひょうびょうたる雪の広野ひろのを隔てて、里あるかたに鳴くように、胸には描かれて、はるかに鶏の声が聞えるのである。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もうそうなると情慾じょうよくもなく恋愛もありません、………私の心に感じたものは、そう云うものとはおよそ最も縁の遠い漂渺ひょうびょうとした陶酔でした。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そして、藍色あゐいろを成した漂渺へうべうとした海の遙か彼方に故郷のあることが思はれ病兒の身の上が思はれ、眼瞼の裏は煮え出して唏泣すゝりなけ、齒はがた/\とふるへわなゝいた。
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)