“蔓草:つるくさ” の例文
“蔓草:つるくさ”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治9
野村胡堂6
泉鏡花2
徳冨蘆花2
芥川竜之介2
“蔓草:つるくさ”を含む作品のジャンル比率
総記 > 団体 > 博物館100.0%
文学 > ドイツ文学 > その他のゲルマン文学14.3%
文学 > 日本文学 > 小説 物語0.7%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
されどこれも我がむかし蒔きて、久しく忘れ居たりし種の、今緑なる蔓草つるくさとなりて、わが命の木にまとへるなるべし。
くずれた土塀には蔓草つるくさの葉が縦横に這い、骨ばかりな冠木門かぶきもんは、あらかた雑草にめられております。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
淙々そうそうとして白きは水、岸々がんがんとして高きは岩、関羽や関平の駒は幾たびも石ころや蔓草つるくさにつまずきかけた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上框あがりかまちに腰をおろした平次の袂へ、多の市の痩せさらばへた手が、ワナワナと蔓草つるくさのやうにからみ付くのです。
利休風りきゅうふうかやぶき門で、腕木うでぎには蔓草つるくさが這い、垣のうちには、竹林が煙っていた。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
路は山の脊に出でゝ、裸なる巖にはすこし許りなる蔓草つるくさ纏ひ、灰色を帶びて緑なる亞爾鮮アルテミジアの葉は朝風に香を途りぬ。
端隠しのような物に青々とした蔓草つるくさが勢いよくかかっていて、それの白い花だけがその辺で見る何よりもうれしそうな顔で笑っていた。
源氏物語:04 夕顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
大きな歯朶しだとか蔓草つるくさで暗い洞陰を作っている河岸から、少しわかれて、流れの中に岩石がある。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
喜三郎はそれを、一ぺんにはね飛ばさうとしましたが、孝吉の腕は、蔓草つるくさのやうにからみついて、ズルズルと庭の上を引摺られるのです。
ふたりとも大きい蔓草つるくさすがったので、幸いに河のなかへ滑り落ちるのを免かれたが、そのあいだに勇造の姿は見えなくなってしまった。
麻畑の一夜 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ただそれは蔓草つるくさが木の幹にまとい附こうとするような心であって、房帷ぼういの欲ではない。
魚玄機 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
にんじんは勇気を奮い起こす。蔓草つるくさ隙間すきまからマチルドの顔を捜し、その頬に唇をあてる。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
初めは、足にからまッた厄介な蔓草つるくさをあしらうくらいな気持で、女を見ていられましたが、理智の鯉口を切ッた以上、もうそうではありません。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
岩間には其処そこ此処ここ水溜みずたまりがあり、紅葉した蔓草つるくさが岩にからんで居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
つまりはその天地にはしごを架ける一本の蔓草つるくさの、非凡な発育を念じたものに過ぎなかった。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
美しい歌姫は、そのしなやかな両手を、不思議な蔓草つるくさのように投げかけて、ひしひしと深井少年にからみ付き乍ら、声を限りに泣き叫ぶのでした。
焔の中に歌う (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
一本の草よりも一すじの蔓草つるくさ、——しかもその蔓草は幾すじも蔓を伸ばしているかも知れない。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
一本の草よりも一すぢの蔓草つるくさ、——しかもその蔓草は幾すぢも蔓を伸ばしてゐるかも知れない。
「侏儒の言葉」の序 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
娘の声は涙に咽んで、あやしくかき消されますが、繊手は蔓草つるくさのように父親の身体からだすがり付いて、死ぬまでもと争い続けて居ります。
悪人の娘 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
ところが又、そのうちに一年も経ってその煙突に火のが通らない証拠に、何とかいう葉の大きい蔓草つるくさが、根元の方からグングン這い登り始めた。
けむりを吐かぬ煙突 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
切懸きりかけのような板囲いで仕切って、そいつには青々とした蔓草つるくさわせるんだ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
五人は無言のうちに、道どりのこころ一致いっちして、蔓草つるくさ深山笹みやまざさをわけながら、だらだら谷の断崖だんがいりてゆく。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は手持不沙汰てもちぶさたを紛らすための意味だけに、そこの棕櫚しゅろの葉かげに咲いている熱帯生の蔓草つるくさの花をのぞいて指して見せたりした。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
彼の瞳と、照門と照星をつらぬく彼方に、窓の外に展がる密林の暗さがあった、太い幹や細い枝に蔓草つるくさがからみ、薄赤い小さな実が蔓のあちこちに点じている。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
台所の流しの下には、根笹ねざさや、山牛蒡やまごぼうのような蔓草つるくさがはびこっていて、敷居しきいの根元はありでぼろぼろにちていた。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
蔓草つるくさに足をとられて、一、二度倒れかかったが、あぶないところで間に合った。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうしてそれらの古い幹にはふじだの、山葡萄やまぶどうだの、通草あけびだのの蔓草つるくさが実にややこしい方法でからまりながら蔓延まんえんしていた。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
「ヒトミちゃん。あれは木だよ、蔓草つるくさだよ。みんな植物だ。植物が、あんなに踊っているんだ。いや、ぼくたちを見つけて、突撃してくるんだ。おお、これはたいへんだ」
ふしぎ国探検 (新字新仮名) / 海野十三(著)
平常つまらないと思っていたあわれな蔓草つるくさまでも威厳をもって紅葉する。
山の秋 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
宇治は蔓草つるくさを引きちぎる高城の靴音を聞きながら唇を噛んであるいた。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
この次男は、兄妹中で最も冷静な現実主義者で、したがって、かなり辛辣しんらつな毒舌家でもあるのだが、どういうものか、母に対してだけは、蔓草つるくさのように従順である。
ろまん灯籠 (新字新仮名) / 太宰治(著)
いかなれば葉広き夏の蔓草つるくさのはなを愛して曾てそをきみの蒔かざる。
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
首へ胸へと蔓草つるくさのやうにまつはり附き、からみつく女を振り切つて、平次は入口の戸に體當りをくれますが、板戸は恐ろしく嚴重で、平次の力でもどうすることも出來ません。
伊保木金太郎は二十一二、まだ蔓草つるくさのやうな匂ひのする青侍でした。
しろはな蔓草つるくさのやうにるのをた。
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
石動の町の医師をことづかりながら、三造は、見返りがちに、今は蔓草つるくさきずなったろう……その美女たおやめの、山のふもと辿たどったのである。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
岩間には其處此處水溜があり、紅葉した蔓草つるくさが岩に搦むで居る。
熊の足跡 (旧字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
と、いつの間にか蔓草つるくさが地をはってしのびよっていた。
ふしぎ国探検 (新字新仮名) / 海野十三(著)
Kさんのその時分じぶんうたに、わがはしやぎし心は晩秋ばんしう蔓草つるくさごとくから/\と空鳴からなりするといふやうなこゝろがあつたやうにおぼえてゐます。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
能高越えの深い断崖の下からは小やみもなしに、渓流のひびきとどろきわたってくるし、片側の高い崖土には、高い、細い蔓草つるくさっていて、白い、小さい花ばなをつけている。
霧の蕃社 (新字新仮名) / 中村地平(著)
蔓草つるくさの白い花みたいに、嗚咽おえつしていたおもてをあげたが、武蔵の顔が、恐ろしいほど真面目な熱情にこわばっているのを見ると、息づまって、再び地へ顔を打ち伏せてしまった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一方、いそぎにいそいでいった小文治こぶんじは、やがて道のせばまるにつれて、樹木じゅもく蔓草つるくさこま足掻あがきをじゃまされて、しだいに立場たちばがわるくなってきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鉄線蓮はよく人家にある蔓草つるくさで、これも紋様などにしてふるくから使われているもので、大変趣のあるもの、葉は三葉で一葉をし、春分旧根から芽を出し、夏になって一茎に一花を開く。
蔓草つるくさの芽はやはり蔓となって伸びてきた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふたつの犬はよぢのぼる蔓草つるくさのやうに
藍色の蟇 (新字旧仮名) / 大手拓次(著)
人家じんか栽培さいばいしている蔓草つるくさのアサガオは、ずっと後に牽牛子けんぎゅうしとして中国から来たもので、秋の七種ななくさ中のアサガオではけっしてないことを知っていなければならない。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
芽ぐむ蔓草つるくさあり。
いずれも久しく手入をしないと見えて、いのぼる蔓草つるくさの重さに、竹藪たけやぶの竹の低くしなっているさまや、溝際どぶぎわの生垣に夕顔の咲いたのが、いかにも風雅に思われてわたくしの歩みを引止ひきとどめた。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
蔓草つるくさの道
夕顔の門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まあ、こう云ったこの頃の私の切ない心もちと云ったら、あの根を絶たれて、もうすべての葉は枯れ出しながら、しかもまだそのか細い枝は以前のままに他の木の幹にからみついたままでいる、あの蔓草つるくさに似ているとでも言えようかしら。
かげろうの日記 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
大利根おおとねの水の、下総しもうさうしおがあって、坂東平野は幾たびも泥海に化し、幾千年のあいだ、富士の火山灰はそれを埋め——やがて幾世いくよをふるうちに、よしあしや雑木や蔓草つるくさがはびこって、自然の力が人間に勝ってしまう。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
近頃になっては身体の動きのとれない事は段々甚しくなるが、やや局部の疼痛とうつうを感ずることが少くなったので、た例の写生をして見ようかと思いついてふとそこにあった蔓草つるくさの花(この花の本名は知らぬが予の郷里では子供などがタテタテコンポと呼ぶ花である)を書いて見た。
病牀苦語 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
その蓮華れんげ模樣もよう中央ちゆうおうほう非常ひじようおほきいかたちのものもあり、花瓣かべん恰好かつこうたいそううつくしく、蔓草つるくさかたち非常ひじようによく出來でき、そのりかたもつよ立派りつぱであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
日本につぽんかはらはちょうど支那しなずいといふ時代じだいに、朝鮮ちようせんから輸入ゆにゆうせられたものでありまして、圓瓦まるがわらはしには蓮華れんげ模樣もようかざりにつけてあり、唐草瓦からくさがはらにも蔓草つるくさ模樣もようなどがつけてあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
別にふなはえしたのを粉にした鮒粉ふなこと云うものを用意してこの二つを半々に混じ大根の葉をったしるくなかなか面倒なものであるそのほか声をよくするためには蘡薁えびづるという蔓草つるくさくきの中に巣食すく昆虫こんちゅうを捕って来て日に一ぴきあるいは二匹ずつ与えるかくのごとき手数を要する鳥を大概たいがい五六羽は飼育しいくしていたので奉公人の一人か二人はいつもそれに係りきりであった。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)