)” の例文
と、思う下から、山田美妙斎の小説は、なんとばらしく、女の肉体の豊富さを描きつくしているのだろうと、口惜くやしいほどだった。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
やがて、こぶみねのてッぺんにある、天狗てんぐ腰掛松こしかけまつの下にたった竹童ちくどうは、頓狂とんきょうな声をだしてキョロキョロあたりを見まわしていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そういう女をかっぱらって来て、妾の変りに裸体ぱだかにし、ウネウネとここでのたくらせたら、大概大将だってゆきつくだろう」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
取っつきのしつには粗末な木地のテーブルに、ミルクの空罎からびんだのつまったのだの、ゴチャ交ぜに並べた、その横に片肱かたひじをついて
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
そうして裸体ぱだかのままお酒を飲んで寝ている憎らしい叔父の顔をメチャメチャに斬ってやったの……お母さんの讐敵かたき……って云ってね。
狂人は笑う (新字新仮名) / 夢野久作(著)
これが西洋の習慣なのである。日本ではあることないこと何でも構わずにぬく事は悪いことでも耻ずべき事でもないとされている。
裸体談義 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
いちゃいけませんよ。——ところで親分、三日ばかり米沢町へ行って、巴屋の家の方へ泊ってやったものでしょうか」
入れて下さい! とばかりに、お百姓夫婦の眠っている、破れ蚊帳がやの中へ、飛び込んだ。お百姓は裸体ぱだかで、フンドシ一つで眠っている。
雷嫌いの話 (新字新仮名) / 橘外男(著)
七日がすぎると土手の甚藏が賭博ばくちに負けて裸体ぱだかになり、寒いから犢鼻褌ふんどしの上に馬の腹掛を引掛ひっかけて妙ななりに成りまして、お賤の処へ参り
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かうした美しさは、鍛錬された芸によつて光る美しさではなく、の美しさで、役者としては寧、恥ぢてよい美しさである。
役者の一生 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
この如来さんのことを一葉が日記の中に書いている。っぽこあわせに袴だけはつけていて気焔万丈だとか、よい女房を世話してくれと云ったとか。
おせいは、こぶしをつくってみせた。タツもうなずいた。組長たちは、ちかごろ『赤煉瓦』で、いろんなことをッぱ抜かれるので、眼のかたきにしていた。
工場新聞 (新字新仮名) / 徳永直(著)
「そういう口で、何で包むもの持って来ねえ。糸塚さ、女﨟様、くくったお祟りだ、これ、敷松葉の数寄屋すきやの庭の牡丹に雪囲いをすると思えさ。」
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
磊落なこせつかないたちの紳士と云うものは、『か』と云うような子供の遊戯から殺人罪に到るまで何でも覚悟していると云うようなことを云って
手提鞄てさげかばんなどをげて、普通の人間の如く平気で出歩いた。時には病院をける事さえあった。帰って来ると裸体ぱだかになって、病院の飯をうまそうに食った。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あとで、船室に集まった皆が、ハワイでの収穫しゅうかくを話しあったとき、坂本さんが、ニヤニヤ笑いながら、ぼくとだぼ沙魚嬢のロオマンスをきました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
膚足ぱだしに朝露のかかるのはえいもんさ、日中焼けるように熱いのも随分つれいがな、其熱い時でなけりゃ又朝っぱらのえい気持ということもねい訳だから
姪子 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
かうして見るとあの子はなかなか好い顏をしてゐるぢやないの、とても、十四なんぞに見えはしない、眼の動かしやうもまるで小鳥みたいに、ばしこいのね。
末野女 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
「一体、何の程度までっぱぬくんだか、見当がつかない。打ち合せのために一遍読ませてくれないか?」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それにも、渠の私行上の、然し渠自身からおほびらにしてゐることのきが載つてゐる。そして
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
あいのおさえのという蒼蠅うるさい事のないかわり、洒落しゃれかつぎ合い、大口、高笑、都々逸どどいつじぶくり、替歌の伝受など、いろいろの事が有ッたが、蒼蠅うるさいからそれは略す。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
それが二三年まえから不義理な借金で、ほとんど首もまわらないと云う事——珍竹林主人はまだこのほかにも、いろいろ内幕うちまくの不品行をっぱぬいて聞かせましたが
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
というのは、なるべく具合よく寝ようと思ってチチコフは、まるっきりぱだかになっていたからである。その覗いた顔が彼にはどうも見覚えがあるように思われた。
すぐ身近なところに大きな説教壇があり、その小さな、まる天蓋てんがいには、半ば横になって二つの黄金のの十字架がつけられてあり、そのいちばん尖端せんたんで相交わっていた。
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
私が抜くがよいか、此の間のあの話を、代りに披露ひろうしてやるぞ、などゝ云って脅迫する。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その怖ろしい顔——では特別に怖ろしい顔ではないが、その生れもつかぬ三眼みつめが承知しない。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
まあ、姐御、そんなに腐らねえでもいいじゃねえか——どうせ踏み込んだ泥沼だよ——それに、堅気かたぎがっている奴だって、大ていおれ達と違ったものでもねえようだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
小手をかざして塔の上の方を見上みあげるならば、五重塔の天辺てっぺん緑青ろくしょうのふいた相輪そうりんの根元に、青色の角袖かくそでの半合羽を着た儒者の質流れのような人物が、左の腕を九りんに絡みつけ
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
藍がかってさえ見える黒いひとみばしこく上下に動いてぎょうから行へ移ってゆく。そしてその瞳の働きに応ずるように、「まあ」というかすかな驚きの声が唇の後ろで時々破裂した。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そこでその着物をすっかり脱いでぱだかになり、濡れた着物は風に持って行かれないように石でもって押え付けてよく日に乾くようにして、自分はまた素っ裸で川に飛び込んだです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
そういえば、ハッキリ刑務所の人間となるときに、私は千番に一番のかねいという冒険をしたのだった。あのとき、私のあらゆる持ちものは没収ぼっしゅうされ、ぱだかにしてほうり出されたのだ。
柿色の紙風船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
御前のめえのろけらしくなりやすが、ちっとばかり粋筋いきすじ情婦いろがごぜえやしてね、ぜひに顔を見てえとこんなことを吐かしがりやしたので、ちょっくら堪能させておいてけえろうとしたら
かの女は、人の眼に立たぬところで、河原柳の新枝の皮をいて、『自然』のの肌のやうな白い木地をんだ。しみ出すほの青い汁の匂ひは、かの女にそのときだけ人心地を恢復かいふくさした。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
あしにゴムぐつでぴちゃぴちゃ水をわたる。これはよっぽどいいことになっている。前にも一ぺんどこかでこんなことがあった。去年きょねんの秋だ。腐植質フィウマスの野原のたまり水だったかもしれない。
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「アノ、てッぺんから、転ばり落ッこッタラ、如何ヅラァなァ!」
環魚洞風景 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
けもののようにぱだかにされて検査官の前に立つ若者たち。兵隊墓に白木の墓標ぼひょうがふえるばかりのこのごろ、若者たちはそれを、じじやばばの墓よりも関心をもってはならない。いや、そうではない。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
この柏木氏は今申す通り、大工棟梁の家筋での町人ではない。
しげさん、おまえ相変あいかわらずばしっこいよ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
じゃあどうもおもしろくねえ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
と大聲に破拔ぱぬく。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
貞奴はその妹分の優しい、初々ういういしい大丸髷おおまるまげの若いお嫁さんの役で、可憐かれんな、本当にの貞奴の、廿代はたちだいを思わせる面差おもざしをしていた。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
けれどよく見ると、それは地中海からあげたのままとも思われない品、加工したあとがある。何かの品として愛玩あいがんされたらしい手艶てづやがある。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何でも裡面の消息を抜くと、大抵は皮肉か憎まれ口になる。「新東京の裏面」の一篇もまたこの例に洩れない。
平次の破抜ぱぬきは、無造作で無技巧で、なんの気取りもありませんが、それを聴いたガラッ八の驚きは大変でした。
新潟あたりの旅人をだましちゃア親船に連れだって、裸体ぱだかに剥ぎ取って、海にほうり込むてえ話だ、さア御領主様も容易ならねえ海賊だてえんで、御人数ごにんずを出しても
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「そんな事も無かろう」とじゅつなげに答える。さっきまで迷亭の悪口を随分ついた揚句ここで無暗むやみな事を云うと、主人のような無法者はどんな事を破抜ぱぬくか知れない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ご所望しだいにきましょうか」こういって口もとを曲げて見せた。左の唇がかんのためでもあろうか、斜めに上へまくれ上がって、そこから犬歯がとがって見える。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あとで、近所きんじよでも、たれ一人ひとりばらしいむれ風説うはさをするもののなかつたのをおもふと、渠等かれらは、あらゆるひとから、不可思議ふかしぎ角度かくどれて、たくみいつつたのであらうもれぬ。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ぱだかで、シャワルウムに飛びこみ、頭から、ザアザアお湯を浴びているうち、一人が、当時の流行歌(マドロスのこい)を≪赤い夕陽ゆうひの海に、歌うは、恋のうウた≫と歌いだし、みんな
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
その自慢(!)の法然頭ほうねんあたまを振り立てるためには、であった方が見栄みばえがする。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)