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す
ふりがな文庫
“
素
(
す
)” の例文
と、思う下から、山田美妙斎の小説は、なんと
素
(
す
)
ばらしく、女の肉体の豊富さを描きつくしているのだろうと、
口惜
(
くや
)
しいほどだった。
田沢稲船
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
やがて、
瘤
(
こぶ
)
ヶ
峰
(
みね
)
のてッぺんにある、
天狗
(
てんぐ
)
の
腰掛松
(
こしかけまつ
)
の下にたった
竹童
(
ちくどう
)
は、
素
(
す
)
ッ
頓狂
(
とんきょう
)
な声をだしてキョロキョロあたりを見まわしていた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「そういう女をかっぱらって来て、妾の変りに
素
(
す
)
っ
裸体
(
ぱだか
)
にし、ウネウネとここでのたくらせたら、大概大将だってゆきつくだろう」
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
取っつきの
室
(
しつ
)
には粗末な木地のテーブルに、ミルクの
空罎
(
からびん
)
だのつまったのだの、ゴチャ交ぜに並べた、その横に
素
(
す
)
の
片肱
(
かたひじ
)
をついて
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
そうして
素
(
す
)
ッ
裸体
(
ぱだか
)
のままお酒を飲んで寝ている憎らしい叔父の顔をメチャメチャに斬ってやったの……お母さんの
讐敵
(
かたき
)
……って云ってね。
狂人は笑う
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
▼ もっと見る
これが西洋の習慣なのである。日本ではあることないこと何でも構わずに
素
(
す
)
ッ
破
(
ぱ
)
ぬく事は悪いことでも耻ずべき事でもないとされている。
裸体談義
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「
素
(
す
)
っ
破
(
ぱ
)
抜
(
ぬ
)
いちゃいけませんよ。——ところで親分、三日ばかり米沢町へ行って、巴屋の家の方へ泊ってやったものでしょうか」
銭形平次捕物控:242 腰抜け彌八
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
入れて下さい! とばかりに、お百姓夫婦の眠っている、破れ
蚊帳
(
がや
)
の中へ、飛び込んだ。お百姓は
素
(
す
)
っ
裸体
(
ぱだか
)
で、フンドシ一つで眠っている。
雷嫌いの話
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
七日が
過
(
すぎ
)
ると土手の甚藏が
賭博
(
ばくち
)
に負けて
素
(
す
)
っ
裸体
(
ぱだか
)
になり、寒いから
犢鼻褌
(
ふんどし
)
の上に馬の腹掛を
引掛
(
ひっか
)
けて妙な
形
(
なり
)
に成りまして、お賤の処へ参り
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
かうした美しさは、鍛錬された芸によつて光る美しさではなく、
素
(
す
)
の美しさで、役者としては寧、恥ぢてよい美しさである。
役者の一生
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
この如来さんのことを一葉が日記の中に書いている。
素
(
す
)
っぽこ
袷
(
あわせ
)
に袴だけはつけていて気焔万丈だとか、よい女房を世話してくれと云ったとか。
獄中への手紙:05 一九三八年(昭和十三年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
おせいは、
拳
(
こぶし
)
をつくってみせた。タツもうなずいた。組長たちは、ちかごろ『赤煉瓦』で、いろんなことを
素
(
す
)
ッぱ抜かれるので、眼の
敵
(
かたき
)
にしていた。
工場新聞
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
「そういう口で、何で包むもの持って来ねえ。糸塚さ、女﨟様、
素
(
す
)
で
括
(
くく
)
ったお祟りだ、これ、敷松葉の
数寄屋
(
すきや
)
の庭の牡丹に雪囲いをすると思えさ。」
縷紅新草
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
磊落なこせつかない
質
(
たち
)
の紳士と云うものは、『
字
(
じ
)
か
素
(
す
)
か』と云うような子供の遊戯から殺人罪に到るまで何でも覚悟していると云うようなことを云って
クリスマス・カロル
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
手提鞄
(
てさげかばん
)
などを
提
(
さ
)
げて、普通の人間の如く平気で出歩いた。時には病院を
空
(
あ
)
ける事さえあった。帰って来ると
素
(
す
)
っ
裸体
(
ぱだか
)
になって、病院の飯を
旨
(
うま
)
そうに食った。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
あとで、船室に集まった皆が、ハワイでの
収穫
(
しゅうかく
)
を話しあったとき、坂本さんが、ニヤニヤ笑いながら、ぼくとだぼ沙魚嬢のロオマンスを
素
(
す
)
ッ
破
(
ぱ
)
抜
(
ぬ
)
きました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
素
(
す
)
っ
膚足
(
ぱだし
)
に朝露のかかるのはえいもんさ、日中焼けるように熱いのも随分つれいがな、其熱い時でなけりゃ又朝っぱらのえい気持ということもねい訳だから
姪子
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
かうして見るとあの子はなかなか好い顏をしてゐるぢやないの、とても、十四なんぞに見えはしない、眼の動かしやうもまるで小鳥みたいに、
素
(
す
)
ばしこいのね。
末野女
(旧字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
「一体、何の程度まで
素
(
す
)
っぱぬくんだか、見当がつかない。打ち合せのために一遍読ませてくれないか?」
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
それにも、渠の私行上の、然し渠自身からおほびらにしてゐることの
素
(
す
)
ツ
突
(
ぱ
)
拔
(
ぬ
)
きが載つてゐる。そして
泡鳴五部作:03 放浪
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
あいのおさえのという
蒼蠅
(
うるさ
)
い事の
無
(
ない
)
代
(
かわ
)
り、
洒落
(
しゃれ
)
、
担
(
かつ
)
ぎ合い、大口、高笑、
都々逸
(
どどいつ
)
の
素
(
す
)
じぶくり、替歌の伝受
等
(
など
)
、いろいろの事が有ッたが、
蒼蠅
(
うるさ
)
いからそれは略す。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
それが二三年
前
(
まえ
)
から不義理な借金で、ほとんど首もまわらないと云う事——珍竹林主人はまだこのほかにも、いろいろ
内幕
(
うちまく
)
の不品行を
素
(
す
)
っぱぬいて聞かせましたが
開化の良人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
というのは、なるべく具合よく寝ようと思ってチチコフは、まるっきり
素
(
す
)
っ
裸
(
ぱだか
)
になっていたからである。その覗いた顔が彼にはどうも見覚えがあるように思われた。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
すぐ身近なところに大きな説教壇があり、その小さな、
円
(
まる
)
い
天蓋
(
てんがい
)
には、半ば横になって二つの黄金の
素
(
す
)
の十字架がつけられてあり、そのいちばん
尖端
(
せんたん
)
で相交わっていた。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
私が
素
(
す
)
ッ
葉
(
ぱ
)
抜くがよいか、此の間のあの話を、代りに
披露
(
ひろう
)
してやるぞ、などゝ云って脅迫する。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その怖ろしい顔——
素
(
す
)
では特別に怖ろしい顔ではないが、その生れもつかぬ
三眼
(
みつめ
)
が承知しない。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
まあ、姐御、そんなに腐らねえでもいいじゃねえか——どうせ踏み込んだ泥沼だよ——それに、
素
(
す
)
ッ
堅気
(
かたぎ
)
がっている奴だって、大ていおれ達と違ったものでもねえようだ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
小手をかざして塔の上の方を
見上
(
みあげ
)
るならば、五重塔の
素
(
す
)
ッ
天辺
(
てっぺん
)
、
緑青
(
ろくしょう
)
のふいた
相輪
(
そうりん
)
の根元に、青色の
角袖
(
かくそで
)
の半合羽を着た儒者の質流れのような人物が、左の腕を九
輪
(
りん
)
に絡みつけ
平賀源内捕物帳:萩寺の女
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
藍がかってさえ見える黒い
瞳
(
ひとみ
)
は
素
(
す
)
ばしこく上下に動いて
行
(
ぎょう
)
から行へ移ってゆく。そしてその瞳の働きに応ずるように、「まあ」というかすかな驚きの声が唇の後ろで時々破裂した。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
そこでその着物をすっかり脱いで
素
(
す
)
っ
裸
(
ぱだか
)
になり、濡れた着物は風に持って行かれないように石でもって押え付けてよく日に乾くようにして、自分はまた素っ裸で川に飛び込んだです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
そういえば、ハッキリ刑務所の人間となるときに、私は千番に一番のかね
合
(
あ
)
いという冒険をしたのだった。あのとき、私のあらゆる持ちものは
没収
(
ぼっしゅう
)
され、
素
(
す
)
ッ
裸
(
ぱだか
)
にして
抛
(
ほう
)
り出されたのだ。
柿色の紙風船
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
御前の
前
(
めえ
)
で
素
(
す
)
のろけらしくなりやすが、ちっとばかり
粋筋
(
いきすじ
)
な
情婦
(
いろ
)
がごぜえやしてね、ぜひに顔を見てえとこんなことを吐かしがりやしたので、ちょっくら堪能させておいて
帰
(
けえ
)
ろうとしたら
旗本退屈男:02 第二話 続旗本退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
かの女は、人の眼に立たぬところで、河原柳の新枝の皮を
剥
(
む
)
いて、『自然』の
素
(
す
)
の肌のやうな白い木地を
噛
(
か
)
んだ。しみ出すほの青い汁の匂ひは、かの女にそのときだけ人心地を
恢復
(
かいふく
)
さした。
川
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
素
(
す
)
あしにゴム
靴
(
ぐつ
)
でぴちゃぴちゃ水をわたる。これはよっぽどいいことになっている。前にも一ぺんどこかでこんなことがあった。
去年
(
きょねん
)
の秋だ。
腐植質
(
フィウマス
)
の野原のたまり水だったかもしれない。
台川
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
「アノ、
素
(
す
)
てッぺんから、転ばり落ッこッタラ、如何ヅラァなァ!」
環魚洞風景
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
けもののように
素
(
す
)
っ
裸
(
ぱだか
)
にされて検査官の前に立つ若者たち。兵隊墓に白木の
墓標
(
ぼひょう
)
がふえるばかりのこのごろ、若者たちはそれを、じじやばばの墓よりも関心をもってはならない。いや、そうではない。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
この柏木氏は今申す通り、大工棟梁の家筋で
素
(
す
)
の町人ではない。
幕末維新懐古談:51 大隈綾子刀自の思い出
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
「
重
(
しげ
)
さん、お
前
(
まえ
)
、
相変
(
あいかわ
)
らず
素
(
す
)
ばしっこいよ」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
素
(
す
)
じゃあどうもおもしろくねえ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
と大聲に
素
(
す
)
ツ
破拔
(
ぱぬ
)
く。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
貞奴はその妹分の優しい、
初々
(
ういうい
)
しい
大丸髷
(
おおまるまげ
)
の若いお嫁さんの役で、
可憐
(
かれん
)
な、本当に
素
(
す
)
の貞奴の、
廿代
(
はたちだい
)
を思わせる
面差
(
おもざ
)
しをしていた。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
けれどよく見ると、それは地中海からあげた
素
(
す
)
のままとも思われない品、加工した
痕
(
あと
)
がある。何かの品として
愛玩
(
あいがん
)
されたらしい
手艶
(
てづや
)
がある。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何でも裡面の消息を
素
(
す
)
っ
破
(
ぱ
)
抜くと、大抵は皮肉か憎まれ口になる。「新東京の裏面」の一篇もまたこの例に洩れない。
街頭から見た新東京の裏面
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
平次の
素
(
す
)
っ
破抜
(
ぱぬ
)
きは、無造作で無技巧で、なんの気取りもありませんが、それを聴いたガラッ八の驚きは大変でした。
銭形平次捕物控:103 巨盗還る
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
新潟あたりの旅人を
欺
(
だま
)
しちゃア親船に連れだって、
素
(
す
)
ッ
裸体
(
ぱだか
)
に剥ぎ取って、海に
投
(
ほう
)
り込むてえ話だ、さア御領主様も容易ならねえ海賊だてえんで、
御人数
(
ごにんず
)
を出しても
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「そんな事も無かろう」と
術
(
じゅつ
)
なげに答える。さっきまで迷亭の悪口を随分ついた揚句ここで
無暗
(
むやみ
)
な事を云うと、主人のような無法者はどんな事を
素
(
す
)
っ
破抜
(
ぱぬ
)
くか知れない。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「ご所望しだいに
素
(
す
)
ッ
破
(
ぱ
)
抜
(
ぬ
)
きましょうか」こういって口もとを曲げて見せた。左の唇が
癇
(
かん
)
のためでもあろうか、斜めに上へまくれ上がって、そこから犬歯が
尖
(
とが
)
って見える。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
後
(
あと
)
で、
近所
(
きんじよ
)
でも、
誰
(
たれ
)
一人
(
ひとり
)
此
(
こ
)
の
素
(
す
)
ばらしい
群
(
むれ
)
の
風説
(
うはさ
)
をするもののなかつたのを
思
(
おも
)
ふと、
渠等
(
かれら
)
は、あらゆる
人
(
ひと
)
の
目
(
め
)
から、
不可思議
(
ふかしぎ
)
な
角度
(
かくど
)
に
外
(
そ
)
れて、
巧
(
たくみ
)
に
逸
(
いつ
)
し
去
(
さ
)
つたのであらうも
知
(
し
)
れぬ。
番茶話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
素
(
す
)
ッ
裸
(
ぱだか
)
で、シャワルウムに飛びこみ、頭から、ザアザアお湯を浴びているうち、一人が、当時の流行歌(マドロスの
恋
(
こい
)
)を≪赤い
夕陽
(
ゆうひ
)
の海に、歌うは、恋のうウた≫と歌いだし、
皆
(
みんな
)
で
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
その自慢(!)の
法然頭
(
ほうねんあたま
)
を振り立てるためには、
素
(
す
)
であった方が
見栄
(
みば
)
えがする。
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
“素”の意味
《名詞》
(もと)原材料、あるものを構成するもの、エッセンス。
(ス)正気。
(ソ)(数論)1とそれ自身のほかに約数を持たないこと。また1のほかに公約数を持たないこと。
(出典:Wiktionary)
素
常用漢字
小5
部首:⽷
10画
“素”を含む語句
平素
素直
素性
素人
素裸
素馨
質素
素地
素振
素破
素見
素絹
素生
素描
要素
素敏
素姓
素面
素袍
素通
...