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籠
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こも
ふりがな文庫
“
籠
(
こも
)” の例文
むっと
籠
(
こも
)
った待合の
裡
(
うち
)
へ、コツコツと——やはり泥になった——
侘
(
わびし
)
い靴の
尖
(
さき
)
を刻んで入った時、ふとその目覚しい処を見たのである。
売色鴨南蛮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
金眸は朝より
洞
(
ほら
)
に
籠
(
こも
)
りて、
独
(
ひと
)
り
蹲
(
うずく
)
まりゐる処へ、
兼
(
かね
)
てより
称心
(
きにいり
)
の、
聴水
(
ちょうすい
)
といふ
古狐
(
ふるぎつね
)
、
岨
(
そば
)
伝ひに雪踏み
分
(
わげ
)
て、
漸
(
ようや
)
く洞の入口まで来たり。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
宗俊の語の
中
(
うち
)
にあるものは懇請の情ばかりではない、お
坊主
(
ぼうず
)
と云う階級があらゆる大名に対して持っている、
威嚇
(
いかく
)
の意も
籠
(
こも
)
っている。
煙管
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
大王にしては少々言葉が
卑
(
いや
)
しいと思ったが何しろその声の底に犬をも
挫
(
ひ
)
しぐべき力が
籠
(
こも
)
っているので吾輩は少なからず恐れを
抱
(
いだ
)
いた。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それに私が音楽家で人気があったりしたので、私が大変なヴァンプで、象牙の塔に
籠
(
こも
)
っている三浦を誘惑したように誤解したのです。
お蝶夫人
(新字新仮名)
/
三浦環
(著)
▼ もっと見る
辻中佐は、アシビキ号幕僚と共に噴行艇の一司令所にたて
籠
(
こも
)
って、どんな司令でも出せるし直ちに通信もできるような位置についた。
大宇宙遠征隊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
一冬そこに
籠
(
こも
)
っていれば、どんな難病も癒ってしまいますそうで、丈夫な身体の人が入れば、一生涯無病で暮らせるそうでございます
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
不愍やな、などと彼はよく口にもするが、かれが周囲の者を見る眼には、事実、不愍と思いやる
眼
(
まな
)
ざしが、何を見るにも
籠
(
こも
)
っていた。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
昼間の程は
勗
(
つと
)
めて
籠
(
こも
)
りゐしかの
両個
(
ふたり
)
の、夜に入りて後
打連
(
うちつ
)
れて入浴せるを伺ひ知りし貫一は、例の
益
(
ますま
)
す人目を
避
(
さく
)
るならんよと
念
(
おも
)
へり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
根岸の御隠殿裏の貸屋に
籠
(
こも
)
った——不義の汚名を
被
(
き
)
せられ、親類一党から義絶された奥方としては、こうするよりほかに工夫はなかった
銭形平次捕物控:138 第廿七吉
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
女のような声ではあったが、それに強い信念が
籠
(
こも
)
っていたので、一座のものの胸を、暗黒な前途を照らす光明のように照らした。
阿部一族
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
今しがたまでお客がいたものと見え、酒のかおりと共に、
煙草
(
たばこ
)
の
烟
(
けむり
)
も
籠
(
こも
)
ったままで、
紫檀
(
したん
)
の
卓
(
テーブル
)
の
溝
(
みぞ
)
には
煎豆
(
いりまめ
)
が一ツ二ツはさまっていた。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
暮に産をする間の隠れ場所を取り決めに、京橋の知合いの方へ出かけて行ったお銀は、年が変ってもやはり笹村の家に閉じ
籠
(
こも
)
っていた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
窓硝子を洩れる真昼の冬の日に照らされて、
陽炎
(
かげろう
)
のように立ち迷う湯気のなかに、黄いろい
木実
(
このみ
)
の強い匂いが
籠
(
こも
)
っているのも
快
(
こころよ
)
かった。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
一体この部屋は二人で寝てさえ狭苦しい上に、ナオミの肌や着物にこびりついている甘い香と汗の
匂
(
におい
)
とが、
醗酵
(
はっこう
)
したように
籠
(
こも
)
っている。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
捨吉は先ずこの文章に
籠
(
こも
)
る強い力に心を引かれた。彼の癖として電気にでも触れるような深い
幽
(
かす
)
かな身震いが彼の身内を通過ぎた。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「どうして、やつは
大魔霊
(
デモーネン・ガイスト
)
さ」と法水は意外な
言
(
ことば
)
を吐いた。「あの弱音器記号には、中世迷信の形相
凄
(
すさま
)
じい力が
籠
(
こも
)
っているのだよ」
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
遺言と云っても、信一郎は青木
淳
(
じゅん
)
の口ずから受けているのではない。が、彼は青木淳の死前の
恨
(
うらみ
)
の
籠
(
こも
)
ったノートを受け継いでいる。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
イザヤ書の中にはイザヤの言は勿論であるが、彼よりも後代の無名の預言者の言も含まれて居り、又編輯者の信仰も
籠
(
こも
)
って居る。
帝大聖書研究会終講の辞
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
丁度十月十二日池上のお
籠
(
こも
)
りで、唯今以て盛りまするが、昔から実に大した
講中
(
こうじゅう
)
がありまして、法華宗は講中の気が揃いまして
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
鼻孔には
棉
(
わた
)
の
栓
(
せん
)
が血に
滲
(
にじ
)
んでおり、洗面器は吐きだすもので真赤に染っていた。「がんばれよ」と、次兄は力の
籠
(
こも
)
った低い声で励ました。
廃墟から
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
しばらく館への出仕も止め家にばかり
籠
(
こも
)
っていた。そうして時々例の紅巾を、
窃
(
こっそ
)
り取り出して眺めてはわずかに心を慰めていた。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
……のみならず、その叔父独得の陽気な響きを喪った声の中には、今までにない淋しい……如何にも
親身
(
しんみ
)
の叔父らしい響さえ
籠
(
こも
)
っていた。
鉄鎚
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
昼間はついうっかり忘れているが、夜になると、彼女はいつも深く部屋の中にとじ
籠
(
こも
)
って、そして烈しい憤りに心をいらいらさせていた。
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
仏滅より千年のうち毎歳千の凡夫僧ありてこの寺に
籠
(
こも
)
り、終りて皆羅漢果を証し、神通力もて空を
凌
(
しの
)
いで去った。千年の後は凡聖同居す。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
つまり、島一つ無いというのが珍らしく、其処に感動が
籠
(
こも
)
っているので、「なくに」が、「立てる白雲」に直接続くのではない。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
一間
(
ひとま
)
に
籠
(
こも
)
ったまま足腰のきかなかったおばあさんが、ふと
陰
(
かげ
)
をかくして、行方知れずになったということがあるというのです。
糸繰沼
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
一分一秒を惜しんでせっせと暇さえあれば書斎に
籠
(
こも
)
って書き物ばかししてらっしたし、それにこうなんとなく打ち沈んで元気がなかったし
ニッケルの文鎮
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
そしてかれは
掌
(
たなごころ
)
に載せた石をつくづくと見まもりながら、愛着の
籠
(
こも
)
った調子で
呟
(
つぶや
)
くように云った、「おれはこの素朴さを学びたいと思うよ」
石ころ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
何処へも出ずに自分の部屋に
引
(
ひ
)
き
籠
(
こも
)
ったまま、きのうお前に送ってもらった本の中から、
希臘悲劇集
(
ギリシアひげきしゅう
)
をとりだして、それを自分の前に据え
大和路・信濃路
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
郵便局の角から入ると、それから二三
町
(
ちやう
)
の
間
(
あひだ
)
は露店のランプの
油烟
(
ゆえん
)
が、むせるほどに一杯に
籠
(
こも
)
つて、
往
(
ゆ
)
きちがふ人の肩と肩とが触れ合つた。
父の墓
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
寝間の
粗壁
(
あらかべ
)
を切抜いて形ばかりの明り取りをつけ、藁と
薄縁
(
うすべり
)
を敷いたうす暗い書斎に、彼は金城鉄壁の思いかで、
籠
(
こも
)
っていた。
贋物
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
そこへ持ってきて、私の女房は、彼女にして見れば無理もないことでしょうが、病気と称して一間にとじ
籠
(
こも
)
ったきり、顔も見せないのです。
覆面の舞踏者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
いつも通り女中に混って敷台へ送りに出た雛妓とわたくしとの呼び交わす声には一層親身の響きが
籠
(
こも
)
ったように手応えされた。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
その時に
斯
(
こ
)
う云う面白い事がありました。官軍が江戸に乗込んでマダ賊軍が上野に
籠
(
こも
)
らぬ前に、市川辺に
小競合
(
こぜりあい
)
がありました。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
学校を途中で
廃
(
よ
)
して帰ってきた兄は、家の庭に研究所を建ててほとんど終日それに
籠
(
こも
)
っていた。兄は歌津子と結婚した。そして幸福であった。
青草
(新字新仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
それがしの短句は、すでに殿下にもお聞きふるしでいらっしゃいましょう。今夜、ここに旅人がお
籠
(
こも
)
りしておりますが、さっき当世風な俳諧を
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
我が蔭口を露ばかりもいふ者ありと聞けば、
立出
(
たちい
)
でて喧嘩口論の勇気もなく、部屋にとぢ
籠
(
こも
)
つて人に
面
(
おもて
)
の合はされぬ
臆病
(
おくびやう
)
至極の身なりけるを
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
芭蕉は「漂泊の詩人」であったが、蕪村は「炉辺の詩人」であり、
殆
(
ほと
)
んど生涯を家に
籠
(
こも
)
って、炬燵に転寝をして暮していた。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
五百年
(
ごひやくねん
)
も
千年
(
せんねん
)
も
前
(
まへ
)
の
歌
(
うた
)
の
方
(
ほう
)
が、
自分
(
じぶん
)
たちのものより
遙
(
はる
)
かに
新
(
あたら
)
しく、もつと/\
熱情
(
ねつじよう
)
が
籠
(
こも
)
つてゐるといふことに、
皆
(
みんな
)
が
心
(
こゝろ
)
づくようになりました。
歌の話
(旧字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
氏郷軍は民家を焼払って進んだところ、本街道筋にも
一揆
(
いっき
)
の
籠
(
こも
)
った敵城があった。それは
四竈
(
しかま
)
、
中新田
(
なかにいだ
)
など云うのであった。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
息子は居間に
籠
(
こも
)
り勝ちでありましたが、彼女はいたって快活で、もう三カ月も滞在していることとて、旅館の中をわがもの顔にはしゃぎまわり
メデューサの首
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
神にも
拝謁
(
はいえつ
)
のできぬものにはあらざるべしと決心し、これより
種種
(
しゅじゅ
)
の善行を志し、
捨身
(
すてみ
)
決心して
犬鳴山
(
けんめいざん
)
に
籠
(
こも
)
り
大行
(
たいぎょう
)
をはじめ
神仙河野久
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
どこかで若い女の忍び泣きの声が妙に
籠
(
こも
)
った低い
調
(
ととの
)
い調子でこの人気のない山の奥からポソポソと聞えてきたのであった。
逗子物語
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
その次には彼等が引き
籠
(
こも
)
って
命
(
めい
)
を奉じないのを、攻め寄せて討ちとった。それでもいかぬのでその次には懐柔策を採った。
家の話
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
それが
漸次
(
ぜんじ
)
に地にひれ伏す
呻
(
うめ
)
きのように陰に
籠
(
こも
)
り、太い
遠吠
(
とおぼ
)
えの底おもくうねる波となり、
草叢
(
くさむら
)
を震わせる絶え絶えな哀音に変ったかと思うと
罌粟の中
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
何十日も倉の中に
籠
(
こも
)
ったきりで、たまたま外気にあたってみると雲を踏んでいるような思いもしたが、さすがに胸の底には生返った泉を覚えた。
鬼涙村
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
右近が取らせてあったお
籠
(
こも
)
り
部屋
(
べや
)
は右側の仏前に近い所であった。九州の人の頼んでおいた僧は無勢力なのか西のほうの間で、仏前に遠かった。
源氏物語:22 玉鬘
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
私は、「
上善
(
じょうぜん
)
水
(
みず
)
の
如
(
ごと
)
し」などと口ずさんでノンビリしていたが、それには、時の
要素
(
ようそ
)
を考えねばならぬという
考慮
(
こうりょ
)
や、色々のものが
籠
(
こも
)
っていた。
親は眺めて考えている
(新字新仮名)
/
金森徳次郎
(著)
佳き文章とは、「情
籠
(
こも
)
りて、
詞
(
ことば
)
舒
(
の
)
び、心のままの
誠
(
まこと
)
を歌い出でたる」態のものを指していう
也
(
なり
)
。情籠りて云々は上田敏、若きころの文章である。
もの思う葦:――当りまえのことを当りまえに語る。
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
“籠”の解説
籠(かご、en: basket バスケット)とは、(竹、、柳、針金 などを)編んで作った入れ物で、短冊状ないし細い「ヒゴ」状の素材を組み合わせた容器の総称である。
(出典:Wikipedia)
籠
常用漢字
中学
部首:⽵
22画
“籠”を含む語句
引籠
塗籠
燈籠
口籠
立籠
閉籠
旅籠
魚籠
籠居
籠中
尾籠
籠城
手籠
高燈籠
旅籠屋
蛇籠
妻籠
山籠
目籠
馬籠峠
...