)” の例文
阿Qは近来生活の費用にくるしみ内々かなりの不平があった。おまけに昼間飲んだばらの二杯の酒が、廻れば廻るほど愉快になった。
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
ある時家族じゅうで北国のさびしい田舎いなかのほうに避暑に出かけた事があったが、ある晩がらんと客のいた大きな旅籠屋はたごや宿とまった時
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
満員電車をめて二三台あとのいた車にりたいと思う心じゃ。わかるかな。それが人間を、地球以外の遊星へ植民を計画させる
遊星植民説 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それでも八五郎はき腹を抱へて、一目散に飛んで行きました。その後で平次は、二人前の飯を食ふどころの沙汰ではありません。
徳市は吃驚びっくりしてかしらを上げた。いた腹を撫でまわしてあたりを見まわした。眼の前に立派な家が立っていた。何気なくその表札を見た。
黒白ストーリー (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
手のいた折助連中はその倶楽部くらぶである八日市の酒場に陣取って、これから隊を成して馬場へ押し出そうというところであります。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
なかいてたら早う薬まわりますさかい、なるだけ余計べとことして、孰方どっちも相手の御飯の数勘定して競争で詰め込みますのんで
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
烏の新らしい少佐は、おなかいて山から出て来て、十九隻に囲まれて殺された、あの山烏を思ひ出して、あたらしい泪をこぼしました。
烏の北斗七星 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
タラスの係の小悪魔も、その晩手がいたので、約束どおりイワンの馬鹿を取っちめるために、仲間へ手をかすつもりでやって来ました。
イワンの馬鹿 (新字新仮名) / レオ・トルストイ(著)
「ええッ! だが私は腹がききってるんだ。私は日の出から歩き通した。十二里歩いたんだ。金は払う。何か食わしてくれ。」
それが始まりで、午後になると時々に給仕をわたしのところへよこして、手がいているならちっと遊びにおいでなさいと言う。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
と云ふのは、おなかかした大きな少女等は、機會さへあれば、下級生をすかしたり脅したりして、彼等の分前わけまへを掠めたのだから。
「おいらは腹がいてやしねえ。」とモーガンが唸るように言った。「フリントのことを思ったんで空かねえんだろう——と思うんだ。」
それはというので、それに少々腹もき加減の、あたかもよしというところで、乗降口からレールへ飛び下りると、また駈け上って
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
はらいたか、げつそりとした風采ふうつき。ひよろりとして飛脚ひきやくあたままへにある椅子いすにぐたりとこしけた、が、ほそ身體からだをぶる/\とつた。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はとはおなかいてゐました。あさでした。羽蟲はむしを一つみつけるがはやいか、すぐ屋根やねからにはびをりて、それをつかまえました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
娘加代 てつちやん、もう起しといた方がよかない? しか、急に出て行くやうなことがあると、晩御飯も食べないぢや、おなかかすわよ。
「イヤ未だ腹が一向かん。会社だと午食ひるの弁当が待遠いようだけどなア」と言いながら其処を出て勝手の座敷から女中部屋までのぞきこんだ。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「あしたにしませう、ね、あしたの朝早く。けふはあなたもお疲れでせうし、それに、おなかもいてゐるでせうから。」
お伽草紙 (旧字旧仮名) / 太宰治(著)
これなら、喉の渇きばかりでなく、腹がくのだって我慢できないはずはない! 飯なんか食わなくったってもいい。空気だけで生きてみせる。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
『それは眞個ほんとう結構けつかうことだわ』とあいちやんは分別ふんべつありげにつて、『けど、それなら——それでもおなかかないかしら』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
小僧がおなかきまして、お店の大福を見てべたいと申しますが、三文しかございませんが、これで一つおまけなすって売って下さいませんか
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
体も精神も成長の慾望に溢れている少女達は、おなかいているのと一緒に精神の空腹にも曝されていると思われます。
美しく豊な生活へ (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
三人分の三等寝台を買いに行って貰ったが、一つも買えなかったので、わたしたちはいていそうな遅い汽車に乗った。
田舎がえり (新字新仮名) / 林芙美子(著)
腹のいてゐたおふくろは心のなかで、⦅ほんとに、その団子が咽喉につまつて、おつ死んでしまへば好いのに!⦆と思つただね。するとどうでがせう。
今年ことしは例年より気候がずつとゆるんでゐる。殊更今日けふあたゝかい。三四郎はあさのうち湯に行つた。閑人ひまじんすくない世のなかだから、午前はすこぶいてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それよりは何処でも構わず腹のいた時に飛び込んで、自分の好きな物を食った方がじゃないか。(間)何でも好きなものが食えるんだからなあ。
呑気者のんきもののすることは違つたものだ。今に自分も犬と一緒に腹をかすやうになるまでさ。」とる者は言ひました。
犬の八公 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
わたしは、どうしましょう。からだいたむし、そのうえ、はらいてくるしくてしかたがない。」と、けがしたすずめは、ごえしてうったえていたのです。
温泉へ出かけたすずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
き家」という言葉は道教の万物包涵ほうかんの説を伝えるほかに、装飾精神の変化を絶えず必要とする考えを含んでいる。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
「この子が可哀そうでございます。……おなかをかせておりまする。……わたしには乳がございません。……あなた様にお乳はございますまいか」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「さあどうだか? あるいはそうかも知れないわ、あなたもそうであるようにね……それはそうと、私おなかがいちゃった、御飯注文して頂戴よ」
悪かろうはずはないが、物事には必ず善悪の両面がある。水から揚がるのは、いい魚ばかりとは限らない。お客さんは腹がいているから何でも食う。
翻訳のむずかしさ (新字新仮名) / 神西清(著)
いていると答えれば、幾分か肱で腹の子供を押し潰したそれだけ空いているのだとそんな他愛もない考えから訊いたのだが、姉は空かないと答えた。
御身 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「馬鹿な自信を持ってかえって不安のふちに足を踏み入れぬように用心した方がいだろうよ。この弓をやろうじゃないか、腹のいた時の用心に——」
吊籠と月光と (新字新仮名) / 牧野信一(著)
なかくと、悪いこととは知りながら、よそのかきの実をもいだり、よその畑の芋をほつたりしてお腹をみたした。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
比較的いたしもせきゆきの急行の窓によりかかって、独り旅の気軽さをたのしみながら、今頃は伯父が手紙を見てどんなに喜んでいるかなどと、ぼんやり考えて見た。
由布院行 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
「おなかいてゐる人間の魂は、お腹のいゝ人達の魂に比べると、営養やしなひもよく、ずつと健全ぢやうぶだ。」と言つたゴリキイは、自慢だけに健全ぢやうぶ霊魂たましひつてゐるが
「な、なにを言うんだ。人をぺこぺこのきっぱらにさせておいて……け、けしからん。じつにけしからん」
「どうです、林さんに一つ案内してもらおうじゃありませんか。ちょうど昼時分で、腹もいている……」
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
薄氣味うすぎみ惡くはある、淋しくはある、足はつかれて來る、眠くはある。加之それになかまでいて來るといふのだから、それで自分が何樣なに困りきツたかといふ事がわかる。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
……仰っしゃる通り、身を持ちくずし、親不孝をかさねましたから、ひとつ叔父さんにこの悪い性根を叩き直してもらおうと、き腹を抱えて尋ねて来たんです。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『はゝゝゝゝ。はらいたか。すつかりわすれてゐた。いまはんらせるが、まあそれまでに、このさかづきだけひとけてくれ。』と、但馬守たじまのかみひて玄竹げんちくさかづきあたへた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
相手の腹がいているかどうか、この前にはどんなものを食べているとか、量とか質とか、平常の生活とか、現在の身体の加減とかを考慮に入れなければなりません。
日本料理の基礎観念 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
麓のだんだん畑には、霜がれた薩摩芋のつるが、畑一面にえていた。芋蔓が枯れる時には、地中の芋は、まったく成熟し切っていた。私達は、お腹がき切っていた。
あまり者 (新字新仮名) / 徳永直(著)
万作はこの山を越えて隣の国へ行かうと思つて三里ばかり山路やまみちを登つたと思ふと、お昼飯ひるはんを食べなかつたものですから、おなかいてもう一歩もあるけなくなりました。
蚊帳の釣手 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
「おらも今日はえらう腹がいたが。」と、もう箱を開いて食べ始めてゐる男の方へ笑ひかけた。
続生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
「魚汁をください、そのあとでお茶もいただきましょうよ、僕すっかりおなかがいてるんです」
「お二人ともさぞお腹がおきでございましょうね、こんなに刻限も考えずにお引き廻しをして」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
いてゐた馬車の中でも、私たちは殆ど無言だつた。そして互に相手を不機嫌にさせ合つてゐた。夕方、やつと霧のやうな雨の中を、宿屋のあるといふ或る海岸町に着いた。
燃ゆる頬 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)