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穏
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おだや
ふりがな文庫
“
穏
(
おだや
)” の例文
旧字:
穩
坊主が一人船に乗込むと海が荒れるということはよく昔から言うことで大分気にした人もありましたが海は至って
穏
(
おだや
)
かでありました。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
複雑多様の筋を
罩
(
こ
)
め、それを
穏
(
おだや
)
かに解きながら、音楽も聞かせ色彩も見せ、興味本位の探偵物ながら、芸術的表現をも忘れない。
日本探偵小説界寸評
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
高い
櫺子窓
(
れんじまど
)
である。そこへ人の顔が現われたのだ。イヤ、正確には、現れたような気がしたのだ。それはまことに、
穏
(
おだや
)
かでない。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
一通り出来るようじゃな、と老人が
穏
(
おだや
)
かな微笑を
含
(
ふく
)
んで言う。だが、それは
所詮
(
しょせん
)
射之射
(
しゃのしゃ
)
というもの、好漢いまだ
不射之射
(
ふしゃのしゃ
)
を知らぬと見える。
名人伝
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
田口はそうですかと、
穏
(
おだや
)
かに敬太郎の返事を聞いただけで、少しも追窮する
気色
(
けしき
)
を見せなかったが、急に
摧
(
くだ
)
けた調子になって
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
匕首
(
あいくち
)
かなんかで一突きに
刳
(
えぐ
)
られ、あッと叫ぶ間もなく
縡
(
ことき
)
れたのにちがいない。この
穏
(
おだや
)
かな死顔を見ると、その辺の消息が察しられるのである。
平賀源内捕物帳:山王祭の大像
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
外は水を打ったように静かな
眺
(
なが
)
めです。月光は青々と
照
(
て
)
り
亙
(
わた
)
り、虫がチロチロと鳴いています。まるで狐に化かされたような
穏
(
おだや
)
かな風景です。
崩れる鬼影
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
穏
(
おだや
)
かに、寛大に、母親らしく、始末をしてやる。そればかりか、翌朝は、甘ったれた小僧のように、にんじんは、
寝床
(
ねどこ
)
を離れる前に食事をする。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
老人の顔附は
最
(
い
)
と
穏
(
おだや
)
かにして
笑
(
えみ
)
を浮めしとも云う
可
(
べ
)
く
殊
(
こと
)
に唇などは今しも友達に向いて親密なる話を
初
(
はじめ
)
んとするなるかと疑わる、読者記臆せよ
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
草
(
くさ
)
に
蔽
(
おほ
)
はれた
丘
(
をか
)
の
坂
(
スロープ
)
が
交錯
(
かうさく
)
し合つて
穏
(
おだや
)
かな
幕
(
まく
)
のやうに流れてゐた。
人家
(
じんか
)
はばう/\とした
草
(
くさ
)
のために
見
(
み
)
えなかつた。
美しい家
(新字旧仮名)
/
横光利一
(著)
しかも
穏
(
おだや
)
かでないことは、あまり目立たない色の手拭か風呂敷を首に捲いて面をつつんでいることであります。
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
遺失
(
おと
)
さん積りで向へ持って
行
(
ゆ
)
きさえすれば事が済むから、此処は此の儘
穏
(
おだや
)
かにしないと、此の
家
(
うち
)
も迷惑するから
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
以前から見ると
面差
(
おもざし
)
が
穏
(
おだや
)
かになって、
取別
(
とりわ
)
けて児供に物をいう時は
物柔
(
ものやさ
)
しく、こうして親子夫婦並んだ処は少しも危険人物らしくも革命家らしくもなかった。
最後の大杉
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
「なぜ早く聞かせなかった。何とか
穏
(
おだや
)
かな方法もあったろうに、何しろ
林
(
りん
)
はまだ若いから」といわれました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
政子はそう云ってから
侍女
(
こしもと
)
を帰した。政子はそうして
穏
(
おだや
)
かに云って侍女を帰したものの、頭の中は穏かでなかった。その政子の頭にちらと浮んだことがあった。
頼朝の最後
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
これに引換え出雲の方は
穏
(
おだや
)
かで温かで細かいところがあります。男性と女性とにも
譬
(
たと
)
うべきでしょうか。一方は波風の烈しい
磯
(
いそ
)
がそうさせたのかも知れません。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
果
(
はた
)
して
間
(
ま
)
もなく
雷雨
(
らいう
)
は、
拭
(
ぬぐ
)
うが
如
(
ごと
)
く
止
(
や
)
み、
山
(
やま
)
の
上
(
うえ
)
は
晴
(
は
)
れた、
穏
(
おだや
)
かな
最初
(
さいしょ
)
の
景色
(
けしき
)
に
戻
(
もど
)
りました。
私
(
わたくし
)
は
夢
(
ゆめ
)
から
覚
(
さ
)
めたような
気分
(
きぶん
)
で、しばらくは
言葉
(
くち
)
もきけませんでした。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
(なお、大柳直次氏の同説がある。)併し、歌の中の妻の死んだのも夏であり、その他の種々の関係が、旅人の妻の死を悼んだ歌として解釈する方が
穏
(
おだや
)
かのように思える。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
手入を怠らぬ庭の樹木と共に
飛石
(
とびいし
)
の上に置いた盆栽の植木は涼しい夏の夜の露をばいかにも心地よげに吸っているらしく
穏
(
おだや
)
かなその影をば滑らかな
苔
(
こけ
)
と土の上に
横
(
よこた
)
えていた。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
大波
(
おおなみ
)
は見るまに、たちまち
媛
(
ひめ
)
を
巻
(
ま
)
きこんでしまいました。するとそれといっしょに、今まで荒れ狂っていた海が、ふいにぱったりと静まって、急に
穏
(
おだや
)
かななぎになってきました。
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
私共の住んでゐた
上田
(
うへだ
)
の町裾を洗つてゐる
千曲川
(
ちくまがは
)
の河原には、小石の間から
河原蓬
(
かはらよもぎ
)
がする/\と芽を出し初めて、町の空を
穏
(
おだや
)
かな曲線で
画
(
くぎ
)
つてゐる
太郎山
(
たらうやま
)
は、もう紫に煙りかけてゐた。
父の死
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
朝凪
(
あさなぎ
)
の海、
穏
(
おだや
)
かに、
真砂
(
まさご
)
を拾うばかりなれば、
纜
(
もやい
)
も結ばず
漾
(
ただよ
)
わせたのに、
呑気
(
のんき
)
にごろりと大の字
形
(
なり
)
、
楫
(
かじ
)
を枕の
邯鄲子
(
かんたんし
)
、太い眉の秀でたのと、鼻筋の通ったのが、
真向
(
まの
)
けざまの寝顔である。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ゴットフリートは
穏
(
おだや
)
かに
笑
(
わら
)
った。クリストフは少しむっとして
尋
(
たず
)
ねた。
ジャン・クリストフ
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
其
(
その
)
後
(
ご
)
の月日は以前よりも
却
(
かえ
)
って
穏
(
おだや
)
かに
過
(
すぎ
)
たのです。養父も秘密を明けて
却
(
かえ
)
って安心した様子、僕も養父母の高恩を思うにつけて、心を傾けて敬愛するようになり、勉学をも励むようになりました。
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
「一体、どういうわけなのよ。わけを敢えてよ」と
穏
(
おだや
)
かに訊きました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
その手紙は普通の親類に
遣
(
や
)
る手紙であるから何でもない事で、その文句の中に、誠に
穏
(
おだや
)
かならぬ
御時節柄
(
ごじせつがら
)
で心配の事だ、どうか
明君
(
めいくん
)
賢相
(
けんしょう
)
が出て来て何とか始末をしなければならぬ
云々
(
うんぬん
)
と
書
(
かい
)
てあった。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
穏
(
おだや
)
かに深く息づく枝豆に夕日あかあかと照りしみやまね
雲母集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
高見さんは
穏
(
おだや
)
かな顔つきで初めて質問を出した
猫八
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
「人殺しは
穏
(
おだや
)
かじゃねえ。誰がどうしたんだ」
銭形平次捕物控:320 お六の役目
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
我に霊あり 偉大なり崇厳なり
穏
(
おだや
)
かなり
小鳥の如き我は
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「これはいよいよ
穏
(
おだや
)
かじゃない。」
一夕話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そして前よりは少し
穏
(
おだや
)
かな調子で
奇巌城:アルセーヌ・ルパン
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
「待て!
穏
(
おだや
)
かならぬ——」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
穏
(
おだや
)
かならぬ
目付
(
めつき
)
して
一握の砂
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
時々接近しようとすると、一種の眼をもって二人を睨み、優しく
穏
(
おだや
)
かで上品ではあったが、一種の声をもって二人を制した。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
大層気むずかしい犬なんです、知ぬ人には誰にでも
嘈
(
うな
)
りますが
唯
(
たゞ
)
私しには時々食う者を貰う為め少しばかり
穏
(
おだや
)
かです
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
「少しは
穏
(
おだや
)
かになったね」と甲野さんは左右の岸に眼を放つ。踏む角も見えぬ切っ立った山の
遥
(
はる
)
かの上に、
鉈
(
なた
)
の音が
丁々
(
ちょうちょう
)
とする。黒い影は空高く動く。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
呼吸
(
いき
)
も大変
穏
(
おだや
)
かになって来ました。やっと気が落付いてきたものと見えます。二階では、コツコツと
跫音
(
あしおと
)
がしています。兄が廊下を歩いているのでしょう。
崩れる鬼影
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
言葉の内容ばかりでなく、その
穏
(
おだや
)
かな音声・
抑揚
(
よくよう
)
の中にも、それを語る時の極めて確信に
充
(
み
)
ちた態度の中にも、どうしても聴者を説得せずにはおかないものがある。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
穏
(
おだや
)
かに口をきいて、同じく源助町の天童利根太郎が、番士達をふり返ったが、誰も答えるものはない。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
此者
(
これ
)
がまた貴公の
処
(
とこ
)
へ嫁す時に、其の千円の持参を持って
往
(
ゆ
)
くのじゃ、
些
(
ちっ
)
とも出すのじゃアない、詰り貴公の懐へ這入るじゃが、然うせんければ事
穏
(
おだや
)
かに治まらん
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
坐っていたものまでが総立ちで騒ぐと、事がいよいよ
穏
(
おだや
)
かでなくなって、おたがいの眼つきになんとなく疑いの色がかかるから、皆々いやな気持がしてしまいました。
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
五日の月はほんのりと庭の
白沙
(
はくさ
)
を照らして、
由比
(
ゆい
)
ヶ
浜
(
はま
)
の方からは
穏
(
おだや
)
かな波の音が、ざアーア、ざアーアと云うように
間遠
(
まどお
)
に聞こえていた。それはもう
子
(
ね
)
の
刻
(
こく
)
に近い
比
(
ころ
)
であった。
頼朝の最後
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
豪慢
(
ごうまん
)
なる、俗悪なる態度は、ちょうど、娘を芸者にして、
愚昧
(
ぐまい
)
なる習慣に安んじ、罪悪に
沈倫
(
ちんりん
)
しながら、しかも
穏
(
おだや
)
かにその日を送っている
貧民窟
(
ひんみんくつ
)
へ、正義道徳、自由なぞを商売にとて
曇天
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
或
(
ある
)
ものは南の方へ、或ものは北の方へ、また西の方へ、東の方へ、てんでんばらばらになって、この風のない、
天
(
そら
)
の晴れた、
曇
(
くもり
)
のない、水面のそよそよとした、静かな、
穏
(
おだや
)
かな
日中
(
ひなか
)
に
処
(
しょ
)
して
三尺角
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
いとも
穏
(
おだや
)
かに
大体
(
だいたい
)
そんな
意味
(
いみ
)
のことを
諭
(
さと
)
されました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
女は
穏
(
おだや
)
かに言葉を
挟
(
はさ
)
んだ。
おしの
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
しかしその後はどう云ってよいか継ぎ穂に
困
(
こう
)
じて黙ってしまった。すると老女は
仮面
(
めん
)
のような顔をわずか
綻
(
ほころ
)
ばして笑ったが
穏
(
おだや
)
かな調子でこう云った。
開運の鼓
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
慈悲だから、呼んでくれるな、
穏
(
おだや
)
かに寝かしてくれと思うかも知れぬ。それでも、われわれは呼び返したくなる。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それにしては余りに
穏
(
おだや
)
かな行動だった——彼の目の前にずかずか現われて、気味をわるがらせる外は……。
空中墳墓
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
穏
常用漢字
中学
部首:⽲
16画
“穏”を含む語句
穏和
穏当
安穏
平穏
穏便
静穏
安穏寺
心穏
不穏
穏健
不穏当
穏田
穏顔
穏便沙汰
穏坊
穏子
穏密方
穏座
穏当人
穏戸
...