“直垂:ひたたれ” の例文
“直垂:ひたたれ”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治10
中里介山6
泉鏡花5
岡本綺堂5
芥川竜之介4
“直垂:ひたたれ”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 演劇 > 演劇史 各国の演劇3.3%
文学 > 日本文学 > 戯曲2.4%
文学 > 日本文学 > 小説 物語0.9%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
五位は綿の四五寸もはいつた、黄いろい直垂ひたたれの下に、楽々と、足をのばしながら、ぼんやり、われとわが寝姿を見廻した。
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
よくると荒っぽい手法で刻み上げた烏帽子直垂ひたたれ姿のいかめしい武夫が、大紋の袖を束ねて稽首しているさまがある。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
花火の相図と共に、立烏帽子たてえぼしに緑色の直垂ひたたれを着て、太刀をいた二人の世話係が東から出て来ました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
烏帽子えぼし直垂ひたたれとでもいったような服装をした楽人達が色々の楽器をもって出て来て、あぐらをかいて居ならんだ。
雑記(Ⅰ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
烏帽子えぼしをかぶったり、直垂ひたたれを着たり、太刀をいたりして、一体どんな格好をしてどんな芝居をするであろうと
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
——次郎はその時、月あかりに、汗にぬれた赤ひげと切り裂かれた樺桜かばざくら直垂ひたたれとを、相手の男に認めたのである。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そのなかには三浦介義明も木蘭地もくらんじ直垂ひたたれに紺糸の下腹巻をして、中黒藤なかぐろとうの弓を持って控えていた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
(桂は頼家の仮面を持ちて顔には髪をふりかけ、直垂ひたたれを着て長巻を持ち、手負ておいの体にて走り出で、門口に来たりて倒る。)
修禅寺物語 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
向うより那須与五郎宗春、二十歳、烏帽子、直垂ひたたれにて蓑をつけ、松明たいまつを持ち、あとより玉琴も蓑をつけ、附添うていず。
平家蟹 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
此時の義元の軍装は、赤地の錦の直垂ひたたれ、胸白の具足、八竜打った五枚冑を戴き、松倉郷、大左文字だいさもんじの太刀脇差を帯びて居た。
桶狭間合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
武士はなんどきでも鎧を投げかける用意がなければならぬと言って、わが家に打ちくつろいでいる時でも彼はかならず直垂ひたたれを身につけていた。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
肥えたわりに背の低い胴長な体に、赤地錦の直垂ひたたれ、大鎧をつけ、胸白の具足に、八龍を打った五まいしころかぶとをかぶった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちょうどその頃、先輩の玄洋社連が、大院君を遣付やっつけるべく、烏帽子えぼし直垂ひたたれ驢馬ろばに乗って、京城に乗込んでいるんだぜ。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
かりにその背広服を、直衣のうし直垂ひたたれにかえ、頭に冠をのせたら、人品すでに、その物である。
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この烏帽子えぼし直垂ひたたれの祭主殿がすなわち、さいぜんから声のみを聞かせて姿を見せず、心ある人に気をもませたこれが道庵先生でありました。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その火に映った侍は三十五六の小肥りの男で、諸籠手もろこての上に朽葉色の直垂ひたたれを着て、兵庫鎖ひょうごぐさりの太刀を長く横たえていた。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
艦上には、三藩の兵が、ささつつをして、五卿は烏帽子えぼし直垂ひたたれで立っていた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、館の出口に、紺村濃こんむらご直垂ひたたれに、小具足を附けて、ひざまずいている若者がある。常胤の息子でもなし、孫とも見えないので、
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
羽織袴はおりはかまの役人衆の後ろには大太鼓が続き、禰宜ねぎの松下千里も烏帽子えぼし直垂ひたたれの礼装で馬にまたがりながらその行列の中にあった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
これに直垂ひたたれを着せ、衣紋えもんをただし、袴をはかせて見ると、いかなる殿上人てんじょうびともおよび難き姿となって、「おとこ美男」の名を取る。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
直垂ひたたれに月がさして、白梅の影が映っても、かかる風情はよもあらじ。お夏の手は、愛吉の焼穴だらけの膝をさすった。愛吉たらたらと全身に汗を流し、
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
直垂ひたたれを着た男の死骸がちょうど彼女の寝ている真上へ、逆さに釣るされて揺れている。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かれの直垂ひたたれそでをかすめて、まッ黄色な金糸雀カナリアがツウ——と飛んだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
牛若うしわか腹巻はらまきをして、その上にしろ直垂ひたたれました。
牛若と弁慶 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
振り返ると、それはもう六十に近い、人品のよい武士で、引立ひきたて烏帽子をかぶって、萌黄と茶との片身替わりの直垂ひたたれを着て、長い太刀をいていた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「おんたまものの光は身に添い、案山子かかしのつづれもにしき直垂ひたたれ。」
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(金窪兵衛尉行親、三十余歳。烏帽子えぼし直垂ひたたれ、籠手、臑当にて出づ。)
修禅寺物語 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
身分の低い者のは錦などでは無いが、先ずは直垂ひたたれであるから、鎧直垂とも云う。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
従四位といへば、絵で見る天神様のやうにかんむりて、直垂ひたたれでも着けてゐなければならぬ筈だのに、亡くなつた八雲氏はまがひもない西洋人である。
結局は甲冑の如く床の間に飾られ、弓術の如く食後の腹ごなしにもてあそばれ、烏帽子えぼし直垂ひたたれの如く虫干むしぼしに昔しをしのぶ種子となる外はない。
その十六人は、いずれもみやびたるよろい直垂ひたたれを着ていました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
知事が衣冠束帯して赤地金襴の覆いかけたる唐櫃を奉侍して神社に詣でるとか、烏帽子えぼし直垂ひたたれ伶人れいじん綾錦あやにしき水干すいかんに下げ髪の童子
教育と迷信 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
又太郎は、やっと眼をさました。めた顔は、いとどあどけないほど若々しくて、ただまぶしげにニヤリと笑う。そして、直垂ひたたれの袖ぐちで、あごのよだれを横にこすった。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
青地錦の直垂ひたたれ黄金こがねづくりのつるぎく。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今はたとい足許が水になって、神路山の松ながら人肌を通すながれに変じて、胸の中に舟をもやう、烏帽子えぼし直垂ひたたれをつけた船頭なりとも、乗れとなら乗る気になった。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
女は年頃十八あまり、頭には黄金の烏帽子えぼしを冠ぶり腰に細身の太刀たちき、萌黄色もえぎいろ直垂ひたたれを着流した白拍子しらびょうしろうたけた姿である。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
男は、樺桜かばざくら直垂ひたたれ梨打なしうち烏帽子えぼしをかけて、打ち出しの太刀たち濶達かったついた、三十ばかりの年配で、どうやら酒に酔っているらしい。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
義家よしいえおおせをうけると、すぐよろい直垂ひたたれかためて、弓矢ゆみやをもって御所ごしょのおにわのまん中にって見張みはりをしていました。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
其の兵七十騎を従えて、錦直垂ひたたれを着用すとある。
応仁の乱 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
すでに夜も明け方になりしかば、武蔵坊弁慶は居たところへずんと立ち、いつも好むかちん直垂ひたたれ、水にをしどり脇楯わきだてし、三引両みつひきりやう弓籠手ゆごてさし……
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
長くなった白髪しらが梨打烏帽子なしうちえぼしをかぶり、水色の直垂ひたたれを召した聖人様がお輿から出て、舟にお乗りなされた時のおいとしいお姿は、まだ私の目の前にあるようでございます。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
薄化粧しているかとおもわれる白面紅顔に、うるしのような髪の毛を、紫紐できりりと結び、直垂ひたたれを着て、袴をつけ、小刀は差して太刀たちき、中啓様ちゅうけいようのものを手に持って
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「みどりの糸をくりおきて夏へて秋は機織はたおりぞ啼く。」と、さわやかに詠じますと、たちまちそれは静まり返って、萩模様のある直垂ひたたれを一領、格子の間から月の光の中へ、押し出して下さいました。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
いずれも平和なほほえみをもって、恭しく祭壇に向って黙祷を捧げているところの、烏帽子えぼし直垂ひたたれの祭主の方のみを気にしていると、この祭主殿が、やがて思いがけなくも、すっくと立ち上りました。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
烏帽子えぼしを冠り、古風な太刀たちを帯びて、芝居の「しばらく」にでも出て来そうな男が、神官、祭事掛、子供などと一緒に、いずれも浅黄の直垂ひたたれを着けて、小雨の降る町中の〆飾を切りに歩いた。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
衣冠そくたい、小袿衣こうちぎ、よろい直垂ひたたれ、などの風俗画的時代は、さぞかし、のん気なとも想像されるが、いま書いている後醍醐治下の、建武三年の正月などは、暮も元日もあったものではなかったのである。
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、ここで急に同勢がかえりみ合っても、どれが後村上やら分らず、やがてのこと、おん直垂ひたたれのまま、鞍に錦で包んだはこをお置きになっているのが、天皇だとわかって、初めて警固の隊を組むような有様だった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
“白石毛”とよぶ白馬にまたがり、赤地錦の直垂ひたたれに、おどしのよろいを着、兵庫グサリの丸鞘まるざやの太刀をはき、重籐しげどうの弓をお手に、こうはね征矢そやをえびらに負っておられたという。
七郎左衛門の家には、三浦氏から山上氏、山上氏から青山氏と分かれて行ったくわしい系図をはじめ、祖先らの遺物と伝えらるる古い直垂ひたたれから、武具、書画、陶器のたぐいまで、何百年となく保存されて来たものはかなり多い。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その日の彼の支度を見ると、肌には練絹ねりぎぬの二ツ小袖、上には墨で蝶散らしを描いた白の鎧直垂ひたたれをかけ、かぶとはかぶらず、浅葱あさぎ絹のふくろ頭巾に、朱の頬楯ほおだてをして、緒をあごにむすんでいた。
大谷刑部 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
翌朝になって見ると、この貴公子は上壇の間に、赤地の錦の直垂ひたたれを着て、髪は平紐で後ろへたれ、目のさめるほどの公達きんだちぶりで座をかまえておりましたが、やがて、その周囲へ集まったこの屋敷の頭株が、みな臣従するほどに丁寧に扱っているのが不思議で、
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
頼政よりまさおおせをうけたまわりますと、さっそく鎧胴よろいどうの上に直垂ひたたれ烏帽子えぼうしかぶって、丁七唱ちょうしちとなう猪早太いのはやたという二人ふたり家来けらいをつれて、御所ごしょのおにわにつめました。
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
脚本は在来の「和田合戦女舞鶴わだかっせんおんなまいづる」をそのままであったが、かの門破りの場に出る板額は、下げ髪にうしろ鉢巻、直垂ひたたれ小手こて脛当すねあてをつけて毛沓けぐつ穿いているという活歴式かつれきしきのこしらえで、観客をおどろかした。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
舞台なりし装束を脱替えたるあり、まだなるあり、烏帽子えぼし直垂ひたたれ着けたるもの、太郎冠者たろうかじゃあり、大名あり、長上下なががみしもを着たるもの、髪結いたるあり、垂れたるあり、十八九をかしらにて七歳ななつばかりのしのぶまで、七八人ぞたちならべる。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ところが、十一月のしもの朝、義経は、赤地錦あかじにしき直垂ひたたれに、萠黄縅もえぎおどしよろいをつけ、きょう西国へ下るとその邸を出て、妻の静、その老母、その他、足弱あしよわな者たちを、先へ立たせ、わずかの精兵を従えて、御所の門前に、しゅくとして整列した。
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
のりとをあげた祭壇の神官、そのとき、バサッとへいをきって、直垂ひたたれそでをたくしあげ、四方へつるをならすしきをおこなってから紫白しはくふたいろこまかい紙片しへんをつかんで、だんの上から試合しあい広庭ひろにわゆきのようにまきちらす。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
赤地にしきの直垂ひたたれ緋縅ひおどしのよろい着て、頭に烏帽子えぼしをいただき、弓と矢は従者に持たせ、徒歩かちにて御輿みこしにひたと供奉ぐぶする三十六、七の男、鼻高くまゆひいで、目には誠忠の光をたたえ口元には知勇の色をぞうす、威風堂々としてあたりをはらって見える。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
あの女は気違いのように、何でも船へ乗ろうとする。舟子ふなごたちはそれを乗せまいとする。とうとうしまいにあの女は、少将の直垂ひたたれすそつかんだ。すると少将はあおい顔をしたまま、邪慳じゃけんにその手をねのけたではないか? 女は浜べに倒れたが、それぎり二度と乗ろうともせぬ。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
この世は遊ぶためにあって、百姓庶民は自分たちを遊び飽かせる為に生きている——そういう公達きんだちの頭には、太政入道が空脛からすねの青年時代に、瀕死ひんしの親の医者を迎えるため医師へ行っても来てくれず、薬価の算段に歩いても何処でもすげなく断られ、あかじみた破れ直垂ひたたれ一枚で、冬空の下を、
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)