白妙しろたへ)” の例文
裾野すそのけむりながなびき、小松原こまつばらもやひろながれて、夕暮ゆふぐれまくさら富士山ふじさんひらとき白妙しろたへあふぐなる前髮まへがみきよ夫人ふじんあり。ひぢかるまどる。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そへて遣したるやと有に藤八は其安五郎殿が連立つれだち參られし白妙しろたへいふ女は私し遠縁とほえんの者濱松天神町なる醫師いしの娘に候間此縁を以て九助が方へ手紙を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
我が養家は大藤村の中萩原なかはぎはらとて、見わたす限りは天目山てんもくざん大菩薩峠だいぼさつたうげの山々峰々かきをつくりて、西南にそびゆる白妙しろたへの富士のは、をしみて面かげを示めさねども
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
鳥追の声はさらなり、武家のつゞきて町に遠所には江鰶こはだすしたひのすしとうる声今もあり、春めくもの也。三月は桜草うる声に花をおもひ、五月は鰹々かつを/\白妙しろたへの垣根をしたふ。
はるぎて夏きたるらし白妙しろたへころもほしたりあめ香具山かぐやま 〔巻一・二八〕 持統天皇
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
春過ぎて夏来るらし白妙しろたへのところてんぐさ取る人のみゆ
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
襁褓むつきを縫ひ、面帕かほぎぬを縫ふ白妙しろたへの手によりて
(旧字旧仮名) / アダ・ネグリ(著)
葉もなき花の白妙しろたへ雪間ゆきまがくれにまどはしく
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
永く負されたる白妙しろたへ苦悶くもんより白鳥の
白鳥 (旧字旧仮名) / ステファヌ・マラルメ(著)
みれどもあかぬ白妙しろたへ
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
衿にほのめく白妙しろたへ
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
山嶺さんれいゆきなほふかけれども、白妙しろたへくれなゐや、うつくしきかなたまはる松籟しようらいときとしてなみぎんずるのみ、いておどろかすかねもなし。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
着たるは一がう往々まゝある事加之そのうへ女が死骸も他人にて白妙しろたへに相違なし然らば惣内里では有まじサア有體ありていに白状致せ左右とかく強情を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
養家やうか大藤村おほふぢむら中萩原なかはぎはらとて、わたすかぎりは天目山てんもくざん大菩薩峠だいぼさつたうげ山〻やま/\峰〻みね/\かきをつくりて、西南せいなんにそびゆる白妙しろたへ富士ふじは、をしみておもかげをめさねども
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
鳥追の声はさらなり、武家のつゞきて町に遠所には江鰶こはだすしたひのすしとうる声今もあり、春めくもの也。三月は桜草うる声に花をおもひ、五月は鰹々かつを/\白妙しろたへの垣根をしたふ。
白妙しろたへのころもゆたけく笙の笛吹きて遊べりからの人かも
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
葉もなき花の白妙しろたへは雪間がくれにまどはしく
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
雄鶏をどりしき白妙しろたへ
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
この一面に白妙しろたへ
薄紗の帳 (旧字旧仮名) / ステファヌ・マラルメ(著)
美女たをやめ背後うしろあたる……山懐やまふところに、たゞ一本ひともと古歌こか風情ふぜい桜花さくらばな浅黄あさぎにも黒染すみぞめにも白妙しろたへにもかないで、一重ひとへさつ薄紅うすくれなゐ
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其方儀そのはうぎ石川安五郎小松屋遊女いうぢよ白妙しろたへ同道にて立退たちのき候節私しの趣意しゆいを以て追掛おひかけ彌勒みろく町番人重五郎と申者さゝへ候を切害せつがいに及び候段不埓ふらち至極しごくに付死罪申付る
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さるほどに今歳ことしむなしくはるくれてころもほすてふ白妙しろたへいろさく垣根かきねはな、こゝにも一玉川たまがはがと、遣水やりみづながほそところかげをうつして、ぜかなくてもすゞしきなつ夕暮ゆふぐれ、いとあがりの散歩そゞろあるき
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
和毛にこげの胸の白妙しろたへてんずる聲のあはれなる。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
山邊やまべ赤人あかひとを、もゝはなかすみあらはし、それ百人一首ひやくにんいつしゆ三枚さんまいめだ……田子たごうら打出うちいでてれば白妙しろたへの——ぢやあない、……田子たごうらゆ、さ、打出うちいでてれば眞白ましろにぞ、だと
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
和毛にこげの胸の白妙しろたへてんずる声のあはれなる。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
千山せんざん萬岳ばんがく疊々てふ/″\と、きたはしり、西にしわかれ、みなみよりせまり、ひがしよりおそ四圍しゐたゞたか白妙しろたへなり。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
白妙しろたへ清き旗じるし……
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
みやこなる父母ふぼかへたまひぬ。しうとしうとめらぬきやく許多あまたあり。附添つきそ侍女じぢよはぢらひにしつゝ、新婦よめぎみきぬくにつれ、浴室ゆどのさつ白妙しろたへなす、うるはしきとともに、やまに、まちに、ひさしに、つもれるゆきかげすなり。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
雲の御髮みぐしや、白妙しろたへ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)