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疵
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きず
ふりがな文庫
“
疵
(
きず
)” の例文
大柄で筋骨
逞
(
たくま
)
しい
身体
(
からだ
)
や、額の
疵
(
きず
)
や、
赤銅
(
しゃくどう
)
色の刻みの深い顔など、悪人らしくはありませんが、大親分の昔を忍ばせるには充分です。
銭形平次捕物控:045 御落胤殺し
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
頭の
頂上
(
てっぺん
)
にチクチク痛んでいる小さな打ち
破
(
わ
)
り
疵
(
きず
)
が、いつ、どこで、どうして出来たのかイクラ考えても思い出し得ないのであった。
斜坑
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
また、参考源平盛衰記には、義仲の首には、左右の眉の上に
疵
(
きず
)
があって、その疵かくしに、米の粉が塗ってあったと、描写してある。
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「オウ、こりゃブレインさんに違いないわい。ブレインさんは左の耳にたしかにこの
疵
(
きず
)
があったで」ブラウンは静かにこういった。
秘密の庭
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
………四十五歳トイウ年齢ニ達スルマデ、ソノ間ニハ女児ヲ一人
分娩
(
ぶんべん
)
シナガラヨクモソノ皮膚ニ少シノ
疵
(
きず
)
モシミモ附ケズニ来タモノヨ。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
(興奮しつつ、びりびりと傘を破く。ために、
疵
(
きず
)
つき、指さき腕など
血汐
(
ちしお
)
浸
(
にじ
)
む——取直す)——畜生——畜生——畜生——畜生——
山吹
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
秀才の女房は
眼蓋
(
まぶた
)
の上に
疵
(
きず
)
がある——しばらく逢わないが呉媽はどこへ行ったかしらんて……惜しいことにあいつ少し脚が太過ぎる
阿Q正伝
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
意地のねえ、どれどれこいつは我が背負って行ってやろう、十兵衛が肩の
疵
(
きず
)
は浅かろうな、むむ、よしよし、馬鹿どもさようなら。
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「艶じゃア無い、
真個
(
ほんと
)
にサ。如才が無くッてお世辞がよくッて男振も好けれども、唯
物喰
(
ものぐ
)
いの
悪
(
わり
)
いのが
可惜
(
あったら
)
瑜
(
たま
)
に
疵
(
きず
)
だッて、オホホホホ」
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
出口の板橋へ向うとき、わたくしは「あの話聞いてどう思った」と訊きますと、葛岡は「先生も小さいときに
疵
(
きず
)
を入れられた人間だね」
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
又「打ったで済むか、
殊
(
こと
)
に面部の此の
疵
(
きず
)
縫うた処が
綻
(
ほころ
)
びたら何うもならん、亭主の横面を
麁朶
(
そだ
)
で打つてえ事が有るか、
太
(
ふて
)
え奴じゃア
汝
(
おのれ
)
」
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
学校の内、きわめて清楚、壁に
疵
(
きず
)
つくる者なく、座を汚す者なく、妄語せず、乱足せず、取締の法、ゆきとどかざるところなし。
京都学校の記
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
姑は
微
(
かす
)
かなかすり
疵
(
きず
)
を負って逃げ出した。こうして意外な悲劇が突発し、嫁が姑を刺したという稀有な故殺未遂犯が成り立った。
姑と嫁について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
二十一二の若い男で、色白の小綺麗な、旗本屋敷の若侍とでも云いそうな
風体
(
ふうてい
)
で、
匕首
(
あいくち
)
か何かで突かれたらしい
疵
(
きず
)
が四カ所……。
半七捕物帳:51 大森の鶏
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
後年、人呼んで此の傷を左衛門
疵
(
きず
)
と云った。池田と酒井とは、前夜信長の前で、家康を先陣にするかしないかで議論をし合った仲なのだ。
姉川合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
その、どこやら物足らなさを、彼女の魂の中の暴君が、誇を
疵
(
きず
)
つけられたように感じ、恋もし、慕いもしたが、また悔みもした。
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
これで顔にむこうッ
疵
(
きず
)
でもあれば、うってつけの
服装
(
つくり
)
なんですが、それこそ、辻のお地蔵さんへあげるお饅頭みたいな、
愛
(
あい
)
くるしい顔だ。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
このほか「古い」とか「珍らしい」とか「
疵
(
きず
)
がない」とか、色々の価値標準を持ち出して、それに適合すれば「これはよい」と安心する。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
指先をつかうことがだんだん慣れてくると、テーブルに手を触れただけでも、どこに
疵
(
きず
)
があるか、また、汚点があるかもわかるようになる。
触覚について
(新字新仮名)
/
宮城道雄
(著)
杜氏は、こういう風にして、一寸した
疵
(
きず
)
を突きとめられ、二三年分の貯金を不有にして出て行った者を既に五六人も見ていた。
砂糖泥棒
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
「そなたのやうな生物しり。……。唐山にはかういふ故事がある。……。和漢の書を引て
瞽家
(
こけ
)
を
威
(
おど
)
し。しつたぶりが一生の
疵
(
きず
)
になつて……」
西鶴と科学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
ある時一尺ばかりなる小蛇来つて、この鐘を尾を以て
扣
(
たた
)
きたりけるが、一夜の内にまた本の鐘になつて、
疵
(
きず
)
付ける所
一
(
ひと
)
つもなかりけり云々。
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
耳の際を切った
疵
(
きず
)
が腐って来て
膿
(
うみ
)
が出るので、それに
鼠
(
ねずみ
)
がついて初めは一二匹であったものが、次第に多くなって防ぐことができないので
四谷怪談
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
終夜夫アレサンドロ氏によって
残酷
(
むご
)
たらしき責め折檻に遭わされたらしく、額部より顔面へかけて三カ所の
摺
(
す
)
り
疵
(
きず
)
があった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
これではいかぬと思うて、
少
(
すこし
)
く頭を後へ引くと、視線が変ったと共にガラスの
疵
(
きず
)
の具合も変ったので、火の影は細長い
鍵
(
かぎ
)
のような者になった。
ランプの影
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
アヽお
歸
(
かへ
)
りかと
起返
(
おきかへ
)
る
母
(
はゝ
)
、お
父
(
とつ
)
さんは
御寢
(
げし
)
なツてゞすかさぞ
御不自由
(
ごふじいう
)
で
御座
(
ござ
)
いましたらう
何
(
なに
)
もお
變
(
かは
)
りは
御座
(
ござ
)
いませんかと
裏問
(
うらと
)
ふ
心
(
こゝろ
)
は
疵
(
きず
)
もつ
足
(
あし
)
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
そして、もう鵞鳥も鳴きやみましたので、エミリアンはお爺さんに別れ、
疵
(
きず
)
のなほつた鵞鳥にも別れて、旅をつゞけました。
エミリアンの旅
(新字旧仮名)
/
豊島与志雄
(著)
死ぬるどころか、双方かすり
疵
(
きず
)
一つ受けないことだって在り得る。たいてい、そんなところだろう。死ぬるなんて、並たいていの事ではない。
女の決闘
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
もしその時、弟子が袖をかざして、慌てゝ顔を隠さなかつたなら、きつともう
疵
(
きず
)
の一つや二つは負はされて居りましたらう。
地獄変
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それから神棚の方へ頤をしゃくったが、「五郎蔵の賭場、一度の
疵
(
きず
)
も附いたことのねえのは、天国様が附いているからよ。喜代三、勝負しろ」
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そうして自分が爪の先で突いた小さな
疵
(
きず
)
が石と共に大きくなっているので、びっくりしてこの水神様の前へ投げ出しました。
日本の伝説
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
... 持って来てくれたそうだ。随分
滑稽
(
こっけい
)
さね。大原君だって別段に悪い点もないが
何
(
な
)
にしろあの大食では恐れる」小山「大食だけがあの男の
疵
(
きず
)
だ。 ...
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
正月の十日に各家の家長は
疵
(
きず
)
なき当歳の牡の羔羊を選び取って十四日まで守りおき(すなわち十日から十四日までが過越の祭りの準備である)
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
貨幣の面には少しも
疵
(
きず
)
がつかないように両片をくりぬき、その縁に
螺旋条
(
らせんじょう
)
をつけて、また両片がうまく合わさるようにこしらえることがある。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
其方儀
主人
(
しゆじん
)
妻
(
つま
)
何程
(
なにほど
)
申付候共又七も主人の
儀
(
ぎ
)
に
付
(
つき
)
致方
(
いたしかた
)
も
有之
(
これある
)
べき處主人又七に
疵
(
きず
)
を
付
(
つけ
)
剩
(
あまつ
)
さへ
不義
(
ふぎ
)
の申
掛
(
かけ
)
を致さんとせし段
不屆至極
(
ふとゞきしごく
)
に付
死罪
(
しざい
)
申
付
(
つく
)
る
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
それに横わると、
殆
(
ほとん
)
どすべての抵抗がとれて、肉体の
疵
(
きず
)
も魂の
疼
(
うずき
)
も
自
(
おのずか
)
ら少しずつ
医
(
いや
)
されてゆく椅子——そのような椅子を彼は夢想するのだった。
苦しく美しき夏
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
強い
胡麻
(
ごま
)
塩の髪をぴったり刈りつけて、額が女の様に迫って頬には大きな
疵
(
きず
)
がある政の様子は、田舎者に一種の恐れを抱かせるに十分であった。
栄蔵の死
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
新内流
(
しんないながし
)
にて幕あくと女巡査二人
下手
(
しもて
)
より出で上手に入る。遊び人斎藤(年廿五、六。顔に
疵
(
きず
)
あり。色白の美男。洋服。)
渡鳥いつかへる:軽演劇一幕四場
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
色白の
細面
(
ほそおもて
)
、
眉
(
まゆ
)
の
間
(
あわい
)
ややせまりて、
頬
(
ほお
)
のあたりの肉寒げなるが、
疵
(
きず
)
といわば疵なれど、
瘠形
(
やさがた
)
のすらりとしおらしき
人品
(
ひとがら
)
。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
造ります際に数の都合上どうしても、
疵
(
きず
)
のあるのを一つ使わねばならないので、
庇
(
ひさし
)
の蔭に眼のつかない所へ
嵌
(
は
)
めたのです
真珠塔の秘密
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
貪慾な所有者は家宝の花瓶に少しくらい
疵
(
きず
)
のついた時には、くやしくて、残念で、二晩や三晩は眠れないかも知れない。
犠牲者
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
この世においでにならぬ御名にさえ
疵
(
きず
)
をおつけすることになってはならぬと、何事にも控え目になっている女王はどちらからも返事をしなかった。
源氏物語:48 椎が本
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
二人はそれを伏し拝んで、かすかな
燈火
(
ともしび
)
の明りにすかして、地蔵尊の額を見た。
白毫
(
びゃくごう
)
の右左に、
鏨
(
たがね
)
で彫ったような十文字の
疵
(
きず
)
があざやかに見えた。
山椒大夫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
年は四十ばかりで、
軽
(
かろ
)
からぬ
痘痕
(
いも
)
があッて、口つき鼻つきは尋常であるが、左の
眼蓋
(
まぶた
)
に
眼張
(
めっぱ
)
のような
疵
(
きず
)
があり、見たところの
下品
(
やすい
)
小柄の男である。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
持
(
もち
)
たる
木鋤
(
こすき
)
にて和尚を
掘
(
ほり
)
いだしければ、和尚大に
笑
(
わら
)
ひ
身
(
み
)
うちを見るに
聊
(
いさゝか
)
も
疵
(
きず
)
うけず、
耳
(
みゝ
)
に
掛
(
かけ
)
たる
眼鏡
(
めかね
)
さへつゝがなく
不思議
(
ふしぎ
)
の命をたすかり給ひぬ。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
道庵としてはまことに
角
(
かど
)
のない、当り
障
(
さわ
)
りのない、海老蔵にも、海土ちゃんにも、
疵
(
きず
)
のつかないような挨拶をしました。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
いくら歌劇「ボリスゴドノフ」をうたっては世界一であろうとも、こんなにわがままでは人間としての値打に
疵
(
きず
)
がつく、惜しいものだと思いました。
お蝶夫人
(新字新仮名)
/
三浦環
(著)
憎み
怨
(
うら
)
める
怒
(
いかり
)
の余に投返されて、人目に
曝
(
さら
)
さるる事などあらば、
徒
(
いたづら
)
に身を
滅
(
ほろぼ
)
す
疵
(
きず
)
を求めて終りなんをと、遣れば火に入る虫の
危
(
あやふ
)
く、捨つるは惜くも
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「さうすりやはあ、お
互
(
たげえ
)
にえゝ
鹽梅
(
あんべえ
)
で
疵
(
きず
)
もつかねえんだから、
俺
(
お
)
れもさうは
思
(
おも
)
つちや
居
(
ゐ
)
んだが、
此
(
こ
)
れ、いふのもをかしなもんで」
卯平
(
うへい
)
の
頬
(
ほゝ
)
には
稍
(
やゝ
)
紅
(
べに
)
を
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
親指の中ほどで
疵
(
きず
)
は少しだが、血が意外に出た。僕は早速紙を裂いて結わえてやる。民子が両手を赤くしているのを見た時非常にかわいそうであった。
野菊の墓
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
疵
漢検1級
部首:⽧
10画
“疵”を含む語句
無疵
疵口
大疵
疵所
疵痕
瑕疵
疵瑕
疵付
鉄砲疵
向疵
古疵
疵物
手疵
生疵
矢疵
突疵
打疵
太刀疵
切疵
鎗疵
...