物言ものい)” の例文
物言ものいふは用事ようじのあるとき慳貪けんどんまをしつけられるばかり、朝起あさおきまして機嫌きげんをきけば不圖ふとわきひてには草花くさばなわざとらしきことば
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
フランクの周囲には、その風格をしたい、その作品に傾倒する青年達が集まった。まさに桃李とうり物言ものいわずの感である。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
幾度いくどけてもチヤンと、存生中ぞんしやうちゆう物言ものいとほり、音色おんしよくはつするのだから其人そのひとふたゝ蘇生よみかへつ対話たいわでもするやうな心持こゝろもちになるのだから、おほきにこれ追善つゐぜんためからうと考へられまする。
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
あとはもう聞えないくらいのひく物言ものいいでとなりの主人からは安心あんしんたようなしずかな波動はどうがだんだんはっきりなった月あかりのなかをながれて来た。そして富沢とみざわはまたとろとろした。
泉ある家 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
最初さいしよねえさんは可愛かあいあいちやんのゆめ、それからまたひざきついたちひさなやら、そのすゞしい可愛かあい自分じぶんつめてゐるのをゆめました——物言ものいこゑきこえました
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
乳母 物言ものいうては、わるいかいな?
物言ものいはじ父は長柄の人柱——」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
れならどうしてとはれゝばことさまざまれはうでもはなしのほかのつゝましさなれば、れに打明うちあけいふすぢならず、物言ものいはずしておのづとほゝあかうなり
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
片親かたおやるかとおもひますると意地いぢもなく我慢がまんもなく、わび機嫌きげんつて、なんでもことおそつて、今日けふまでも物言ものいはず辛棒しんぼうしてりました、御父樣おとつさん御母樣おつかさん
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
れにても同胞はらからかとおもふばかりの相違さうゐなるに、あやしきは母君はヽぎみ仕向しむけにて、流石さすがかるがるしき下々しも/″\たちへだてはけれども、おな物言ものいひの何處どこやらがく
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
物言ものいへばやがあらそひの糸口いとくち引出ひきいだし、いてうらんでれ/\のなかに、さりともくからぬ夫婦めをとおりふしのこなしわすれがたく、貴郎あなたうなされ、あなされとへば
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ちつとやそつとのやさしい言葉ことばぐらゐではうごきさうにもなく執拗すねぬきしほどに、旦那だんなさまあきれてをばたまふ、まだ家内うち/\言葉ことばあらそひのるうちはよきなれども、物言ものいはずにらふやうにりては
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ひとにもせずおとさぬやう御覽ごらんれろと吾助ごすけひしは、よりもきに相違さうゐはなし、是非ぜひ人形にんぎやうたまはれとて手渡てわたしするに、何心なにごヽろなくらきていちぎやうよむとせしが、物言ものいはずたヽみて手文庫てぶんこをさめれば
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一身いつしんつかれてせにせし姿すがた兄君あにきみこヽろやみにりて、醫藥いやく手當てあてづからの奔走ほんそういよいよかなしく、はて物言ものいはずなみだのみりしが、八月やつき壽命じゆみやう此子このこにあれば、月足つきたらずの、こゑいさましくげて
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
とりさまへ諸共もろともにとひしをみち引違ひきたがへてかたへと美登利みどりいそぐに、おまへしよにはれないのか、何故なぜ其方そつちかへつて仕舞しまふ、あんまりだぜとれいごとあまへてかゝるを振切ふりきるやうに物言ものいはずけば
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)