支那シナ)” の例文
昔、支那シナある田舎に書生しょせいが一人住んでいました。何しろ支那のことですから、桃の花の咲いた窓の下に本ばかり読んでいたのでしょう。
女仙 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ところが、お前の中にいる『古代支那シナの衣冠を着けたいかさま君子』や『ヴォルテエルづらをした狡そうな道化』と来たら、どうだ。
支那シナにおいては、古代絵画に依って刑法を公示し、これに依って文字を知らない朦昧もうまいの人民に法禁を知らしめる方法が行われた。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
隣国支那シナでいう聘金へいきんが、今までの養育費をつぐなう意味であるらしきに反して、此方こちらは是から入用なものを貰って行くかわりである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
されどドレスデンの宮には、陶もののといふありて、支那シナ日本の花瓶はながめたぐいおほかたそなわれりとぞいふなる。国王陛下へいかにはいま始めて謁見えっけんす。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
支那シナ海南の航路は、なお皇国の山をみるように思われる。夕暮れの空に雲のわだかまるところ、ひとなすりするほどの影は台湾である。)
南半球五万哩 (新字新仮名) / 井上円了(著)
「私は若い頃支那シナへ行った。さよう、三度も参ったかな。その頃あの地で纐纈を見た。この紅巾に違いない。……いや、待てよ、少し違う」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
如何いか南北朝なんぼくちょうの戦乱が、我邦わがくにの武備機関を膨脹せしめ、しこうしてその余勇は、漏らすによしなく、いて支那シナ辺海をみだしたるよ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
日本の対支外交や排日問題などについて意見を述べたり、英米の対支文化事業や支那シナ女性の現代的覚醒かくせいを驚嘆していた。支那の陶器の話も出た。
小唄のレコード (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
武器を支那シナへ売りこもうとして失敗して以来、日本の軍部でも次第に独逸製品を拒むような機運が向いて来た。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
支那シナごと朝鮮テウセンごときはえずその侵害しんがいかふむりつゝある、此時このときあたつて、東洋とうやう覇國はこくともいふわが大日本帝國だいにつぽんていこくそのところじつおもく一ぱう東洋とうやう平和へいわたもたんが
このf音は西洋諸国語や支那シナ語におけるごとき歯唇音ししんおん(上歯と下唇との間で発する音)ではなく、今日のフの音の子音に近い両唇音りょうしんおん(上唇と下唇との間で発する音)であって
駒のいななき (新字新仮名) / 橋本進吉(著)
南蛮船が来航し、次で和蘭陀オランダからもって来る。支那シナとの交通はもとよりのことである。香木の伽羅きゃらを手に入れることで、熊本の細川家と仙台の伊達だて家との家臣が争っている。
今はどの国も地漆がほとんどなくなって、材料を支那シナ印度インドに仰ぐが、どうもいい漆とはいえぬ。何といっても日本の漆にくはない。それが地元で出来るのだから強味である。
陸中雑記 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
浅草を愛する会といったものをやろうという話が、私と朝野光男の間で交されたのは、小柳雅子がK劇場の慰問団に加わって支那シナへ行くまだ前だったから、思えば十月のことである。
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
わが国は今より十数年前に一度支那シナと戦うて勝ち、また数年前には世界の強国なるロシアと戦うてこれに勝ち、その結果として国の位置が非常に進んで、一等国と称せられるにいたった
民族の発展と理科 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
支那シナのものでも、例えば厨子ずしの扉へあるいは飾箱のふた嵌込はめこまれたりあるいは鏡の裏へあるいは胸飾りとして、あるいは各種の器具へ嵌込まれたものが多いのであります、その絵としての価値も
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
おまけに窓の外を見ると、始終ごみごみした横町よこちょうに、麦藁帽むぎわらぼうをかぶった支那シナの車夫が、所在なさそうにうろついている。………
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
倭寇わこう八幡船ばはんせん胡蝶軍こちょうぐん、名こそ様々に呼ばれてはおれ、支那シナ高麗こうらいに押し寄せて、武威を揮う大船隊、その船隊の頭領として
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
二、呂宋ルソン行 昨夜からの雷雨がとおりすぎ、晴天をえらんで海峡を船出した。太陽は支那シナ海に沈み、船は呂宋湾に停泊した。
南半球五万哩 (新字新仮名) / 井上円了(著)
鎖国令行われてより以来、我邦わがくにと通商するものは、僅かに支那シナ和蘭オランダにして、その地方もまた長崎の猫額ねこのひたい大の天地に限れり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
支那シナ聯句れんくはもとよりのこと、俳諧でも談林派の時代までは、これをただ言葉の続きがらのように、考えるくせが止まなかった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その頃支那シナからやって来た天才的な少年棋士のこと。新聞将棋のこと。日本の漢詩人のこと。支那の政局のこと。
斗南先生 (新字新仮名) / 中島敦(著)
亜字は支那シナ太古の官服の模様として「取臣民背悪向善、亦取合離之義去就之義」といわれているが、勧善懲悪かんぜんちょうあく合離去就ごうりきょしゅうがあまり執拗しつように象徴化され過ぎている。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
ちょうど女中がたすきがけでき掃除に働いている時間だったが、ある家では刑事と見られた感じを受けた。支那シナの留学生の巣が、ごみごみしたその辺に軒を並べていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
したがつなにゆゑとなくむつましくはなれがたくおもはれたが、其後そのゝちかれ學校がくかう卒業そつぎやうして、元來ぐわんらいならば大學だいがくきを、大望たいもうありとしようして、幾何いくばくもなく日本ほんごくり、はじめは支那シナあそ
中国駐在の——当時は支那シナと言っていたが、その駐支総領事が外務省との打ち合わせで帰京した。打ち合わせが終って中国に帰ろうというその前夜、ホテルの一室で「自殺」をした。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
「それでも貴様はあれきり、支那シナ人の物を取らんようになったから感心だ。」
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
支那シナの文人などには、独酌の趣をえいじた作品が古くからあったようだが、此方こちらでは今でも普通の人は酒に相手をほしがる。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
最後しまいの二句を解釈すると、昔支那シナに悪王があって、死後塚のあばかれんことを恐れ、七十二個の贋塚にせづかを作ったが、それでもとうとうあばかれてしまった。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
支那シナ上海シャンハイある町です。昼でも薄暗い或家の二階に、人相の悪い印度インド人の婆さんが一人、商人らしい一人の亜米利加アメリカ人と何かしきりに話し合っていました。
アグニの神 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それが何に原因するものであるかを三造は知らない。伯父はまた常に、三造には無目的としか思えないような旅行を繰返していた。支那シナには長く渡っていた。
斗南先生 (新字新仮名) / 中島敦(著)
寛永の鎖国令こそ千秋せんしゅうの遺憾なれ。もしこの事だになくは、我が国民は南洋群島より、支那シナ印度インド洋におよび、太平洋の両岸に、その版図を開きしものそれ幾何いくばくぞ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
支那シナ料理などの目貫めぬきの商店街であったが、一歩横町へ入ると、モダアニズムの安価な一般化の現われとして、こちゃこちゃした安普請のカフエやサロンがぎっちり軒を並ベ
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ほん煙筒えんとうに四ほんマストすこぶ巨大きよだいふねである、此度このたび支那シナおよ日本につぽん各港かくかうむかつての航海こうかいには、おびたゞしき鐵材てつざいと、黄金わうごん眞珠等しんじゆなどすくなからざる貴重品きちやうひん搭載たうさいしてさうで、その船脚ふなあし餘程よほどふかしづんでえた。
(外輪船は日夜波まを走りつづけ、千里も遠ざかったかと思われたがなお日本の山が見られた。支那シナ海の南のかたを望めばその終わるあたり、白い雲のわだかまるところが台湾なのであった。)
南半球五万哩 (新字新仮名) / 井上円了(著)
支那シナ浪人だ」
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
伯父の死後七年にして、支那シナ事変が起った時、三造は始めて伯父の著書『支那分割の運命』をひもといて見た。
斗南先生 (新字新仮名) / 中島敦(著)
いや、西洋どころではない。隣国の支那シナのことを伝へたのでも、このくらゐの間違ひは家常茶飯かじようさはんである。
日本の女 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
支那シナの旧書に見えるような、さかずきの話はあまり聴かないが、大抵は例の焼酎しょうちゅう入れ、または小さな酒徳利さかどっくりの携帯用のもの、時としては腰下こしさげの煙草たばこ入れなどもあって
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「長老」と庄三郎は熱心に、「支那シナにありました纐纈城の話、詳しくお聞かせくださいますよう」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私たちはまだきわめることができずにいるが、少なくとも支那シナ東夷とういといいまた島夷といった方面において、その最も明らかな痕跡こんせきを永くとどめたのは沖縄の諸島である。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
太い白い雨脚を見ながら、私は、昔の支那シナ人の使った銀竹という言葉を爽かに思い浮かべていた。
案内に応じて通されたのは、日当りのい座敷だった。その上主人が風流なのか、支那シナの書棚だのらんの鉢だの、煎茶家せんちゃかめいた装飾があるのも、居心いごころい空気をつくっていた。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「この紅巾は日本織りだ。決して支那シナの布ではない」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そろそろと不老不死の術を恋いこがれ、ついに道士どうしの言にあざむかれて無益の探求をくわだつるに至ったなどは、いわば支那シナ古代の小説の一つの型であって、たまたまその中の特に美しく
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
但し、昔の支那シナ人のいう茘枝と我々の呼ぶ茘枝と、同じものかどうか、それは知らない。
ぜんか、法華ほっけか、それともまた浄土じょうどか、なににもせよ釈迦しゃかの教である。ある仏蘭西フランスのジェスウイットによれば、天性奸智かんちに富んだ釈迦は、支那シナ各地を遊歴しながら、阿弥陀あみだと称する仏の道を説いた。
おぎん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ゴオテイエが娘の支那シナは既に云ひぬ。José Maria de Heredia が日本もまた別乾坤べつけんこんなり。簾裡れんりの美人琵琶びはたんじて鉄衣の勇士のきたるを待つ。景情もとより日本ならざるに非ず。
編輯者へんしゅうしゃ 支那シナへ旅行するそうですね。南ですか? 北ですか?
奇遇 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)