)” の例文
旧字:
子供こどもらは、はじめのうちは、おじいさんのくバイオリンのめずらしいものにおもって、みんなそのまわりにあつまっていていました。
海のかなた (新字新仮名) / 小川未明(著)
「そう言われるのは決して平凡なお手並みでない芸に違いない。一所懸命に法皇の所へ来ておきになるのを自分も聞きたいものだ」
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
日本間の方ではお師匠さんが待ち草臥くたびれているのか、三味線をき始めた。社長は無言のまゝ、それを指の先で合せていたが、忽ち
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
次の音曲は元山谷で鳴らした老練のおばさん、大すましでく唄う、占めたっと、発声機をかけてみれば、いやはやなにも聞えぬ。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
さほどに懇意でない人は必ず私の母をば姉であろうといた位でした。江戸の生れで大の芝居好き、長唄ながうたが上手でこともよくきました。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それに合わせて誰かゞきんのことをく。扇で拍子を取りながら唱歌をうたう。つゞいてそうのことや、和琴わごんや、琵琶びわが運び出された。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ふと耳をそばだてると向うの二階でいていた三味線はいつの間にかやんでいた。残り客らしい人の酔った声が時々風を横切って聞こえた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「座敷へ上がり込んじゃ興がめる。ほうも、く方も、外でこそ流しの味、金襖きんぶすまでは野暮やぼになる。そうおっしゃっておくんなさい」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と法水は、糸を人形時計の方へ引いて行って、観音開きを開き、その音色をく廻転筒を、報時装置に続いている引っ掛けからはずした。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
詩も作る、ヴァイオリンもく、油絵の具も使う、役者も勤める、歌骨牌うたがるたうまい、薩摩琵琶も出来るサア・ランスロットである。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
何故なぜお前のいた糸のが丁度石瓦いしかわらの中にめられていた花のように、意識の底に隠れている心の世界を掻き乱してくれたのか。
めばことをもくなり。彼が手玩てすさみと見ゆる狗子柳いのこやなぎのはや根をゆるみ、しんの打傾きたるが、鮟鱇切あんこうぎりの水にほこりを浮べて小机のかたへに在り。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
君のピアノの弟子が正しい指の使い方と正確なリズムとを会得して、譜を間違わずにけるようになったならば演奏法に注意を払いたまえ。
感激家の芳衛さんは、座興までにといって、ヴァイオリンをいた。熱心のあまり、すこしキイキイいわせすぎたようだった。
シゲティーは単にヴァイオリンの技巧のために作った曲をかないと放言し、「他の楽器に編曲して、著しく芸術的価値を損ずるごとき曲」
ピアノは折角持って来ましたけれど……。こちらへ来た当座は五、六たびいてみたこともありますけれど……。あんなものを
探偵夜話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
家にいると、仕立てものをするか、三味線をくかして、やっと日を暮したが、そうしていてもやはり心が淋しそうであった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
町のかどごとに立って胡弓きがひく胡弓にあわせ、鼓を持った太夫たゆうさんがぽんぽんと鼓をのひらで打ちながら、声はりあげて歌うのである。
最後の胡弓弾き (新字新仮名) / 新美南吉(著)
秀夫はそのじょちゅうにビールの酌をしてもらいながら、琵琶びわいていたきれいな婢のことを聞こうと思ったが、それはまりがわるくて聞けなかった。
牡蠣船 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
いつぞや有楽座で、チェホフの「叔父おじワーニャ」を素人しろうとの劇団の方たちが演じたおり、奥村さんがギターをく役をなさった事がありました。
平塚明子(らいてう) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
あなたはうて居られた彼露台バルコニーゆうべ! 家の息達と令嬢とマンドリンをいて歌われた彼ヹランダの一夜! 彼ヷロンカの水浴! 彼すずしい
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
わずかに彼が座についてから十五分とたたないうちに、不意にどこか非常に近いところで、ギターをく音が聞こえてきた。
感謝の声のあまのぼり 琴の調しらべに入らん時 歌にこもれる人の子が 地上の罪の響きなば く手とどめて天津乙女あまつをとめ 耻かしの 色や浮ぶらめ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
歩いて行くうちに、何処かで稽古でもして居るらしい三味線の音が聞える。何をいて居るとも分らず、時々快い音が静かな通りに流れて来る。
六日月 (新字新仮名) / 岩本素白(著)
「さあ今度はお前さんの番だよ、猫ちゃん、何か一ついてごらん」とイヴァン・ペトローヴィチが娘に向かって言った。
イオーヌィチ (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「おい、琵琶をく、めくらの、おしゃべりの坊主やあーい、離れ島にたった一人で残された坊主——無事でいるか、やあい」
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
下座げざの三味線きのお玉さんの根岸の家で死んだのは、つい一咋年のことだったが、なんだか随分昔のような気もする。
三つの挿話 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
「唄」が終ると、なよたけのいている美しい和琴の音だけがひびき残る。………老爺ろうやはさらさらと竹籠を編んでいる。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
三味線さみせんは「よいは待ち」をく時、早く既に自ら調子を合せることが出来、めりやす「黒髪」位に至ると、師匠に連れられて、所々しょしょ大浚おおざらえに往った。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
一ぴきはチェロをき、一ぴきはバイオリンをひき、三びきめのは、ラッパを口にあてがって、いっしょうけんめいにっぺたをふくらませました。
そのとき私は、メントール侯が、いつも音叉おんさをもちあるいて、相手に歌をうたわせながら、音叉をぴーんといて耳をかたむけていたことを思い出した。
暗号音盤事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
三味しゃみかせると、ぺこんぺこんとごまかし弾きをするばかり。面白くもないが、僕は酔ったまぎれに歌いもした。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
三味線さみせんきて折々おりおりわがかどきたるもの、溝川みぞかわどじようを捕ふるもの、附木つけぎ草履ぞうりなどひさぎに来るものだちは、皆このどもが母なり、父なり、祖母などなり。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
彼れはこれから手風琴をいて聞かせるから、もう少しこの座に居てれと、さも私を慰撫ゐぶするやうにささやいて呉れた。
アリア人の孤独 (新字旧仮名) / 松永延造(著)
例の椀大わんだいのブリキ製のさかずき、というよりか常は汁椀しるわんに使用されているやつで、グイグイあおりながら、ある者は月琴げっきんを取り出して俗歌の曲をうたいかつ
遺言 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
吉備津神社きびつじんじゃ神主香央造酒かんぬしかさだみきの娘は、うまれつき優美典雅で教養があり、父母にもよく孝養をつくして、そのうえ和歌もうまくよみ、ことも上手にきます。
我々がその晩のうちにやったことは、まだまだそれだけではなかった! ピアノもけば、歌もうたい、おどりもおどれば、ジプシーの群れの真似まねもした。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
時には高台の空き地に小屋をたてて、踊ったり、跳ねたり、いたり、うたったり、芝居や狂言きょうげん真似まねまでもした。
『ただのバイオリンき Kun en Spilmand』とか、ここに訳出した『絵のない絵本 Billedbog uden Billeder』
絵のない絵本:02 解説 (新字新仮名) / 矢崎源九郎(著)
ろくろ首が三味線をいている、それから顔は人間で胴体は牛だと称する奇怪なものや、海女あまの手踊、軽業かるわざ、こままわし等、それから、竹ごまのうなり声だ
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
『ただのバイオリンき Kun en Spilmand』とか、ここに訳出した『絵のない絵本 Billedbog uden Billeder』
母に勧められて、母のピアノにヴァイオリンを合せたけれども、美奈子は何時いつになく幾度も幾度もき違えた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
私は部屋の隅の方へチョコナンと正坐すわりどんなことをするかと見ておりますと、やがて、お袋さんがき出すと、その若い男の弟子が立って踊り出した。
私この七弦琴に合わせてくことが出来るのよ。けれども文句を知らないから口で歌うことは出来ないのよ。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
時々やつて来て三味線なんかをく女が……。を明けると、老僧の赤い顔、太い腕、女の変に笑つた顔!
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
と云いかけて再び言葉をよどました。妻は興有りげに一心になって聞いている。庭には梧桐を動かしてそよそよとわたる風が、ごくごく静穏せいおんな合の手をいている。
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
うちにはく者は無い筈だが……と耳を澄していると、やがて歌い出す声は如何どうしてもうちだ。例のに違いない。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ちょっとためらった後、ショパンの作品九番の第二の夜曲をさぐりさぐりき出す。甚だしくまずい。少し弾いて直ぐ行詰まってしまう。立ち上って、楽譜をさがす。
みごとな女 (新字新仮名) / 森本薫(著)
姉がヴァイオリンをいてともたのしんだある夏の夕暮だったが、いま姉も一緒につれてここをこうして旅したなら、どんなことを姉は云い出すだろうと空想したりした。
罌粟の中 (新字新仮名) / 横光利一(著)
漁師の一人娘で生れつきの盲目めくらが居た。色白の丸ポチャで、三味線なら何でもくのが自慢だったので、方々の寄り合い事に、芸者代りに雇われて重宝がられていた。
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)