)” の例文
依って我輩は東西両洋文明の大勢を踪索そうさくして、いて現下の世界の大勢に及ぼし、以て今後に於ける我が国民の覚悟を促そうと思う。
日本の文明 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
家庭の平和と純潔とを乱せば一身の破滅ばかりでなく、いては一家の協同生活を危くし、社会の幸福をもそこなう結果が予想せられる。
私の貞操観 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
『新撰菟玖波集』の修撰のことからいて、宗祇と宮廷との関係を生じたのは、これはひとえに実隆の取成しによったもののようだ。
が、今はもう、秋もくれがたであります。野原の草は一面に枯れて、赤白く年寄りの髪の毛をいた様に、ほおけ拡がって居ます。
トシオの見たもの (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それが現在の浅草に於ける芝居、活動の観覧料の標準となり、いて日本全国の活動や何かの料金にも或る影響を与えている訳である。
この風いては今日にまで伝わり、田舎者の事務に熟練して腹のしっかりした者は、年々引き上げられて大家の相続人になった。
家の話 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「それが、平次のしたことと判ってみねえ、入智恵をした与力の笹野様をはじめいては御奉行朝倉様の御迷惑になるだろう」
抽斎は三人を奥の四畳半にいた。三人の言う所によれば、貴人は明朝を待たずして金を獲ようとして、この使を発したということである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
如何いか南北朝なんぼくちょうの戦乱が、我邦わがくにの武備機関を膨脹せしめ、しこうしてその余勇は、漏らすによしなく、いて支那シナ辺海をみだしたるよ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
媼は我をきて進み入りぬ。小屋のうちは譬へば大なる蜂窩はちのすの如くにして、一方口より出で兼ねたる烟は、あたりの物を殘なく眞黒まくろに染めたり。
食後ナイエル夫人は亡夫の肖像を掛けた一室へ僕等三人をいてカンキナしゆの小さなさかづきを勧め、自身はピヤノにいて二三の小歌こうたい声で歌つた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
一刻も自分を忘るゝ事の出來ぬ自己主義の、いて其處から出た現實主義物質主義に凝り固まつてゐる阿米利加に禁酒令のかれたは故ある哉である。
いては、欧米各国民と日本国民との相互の理解を容易にすると云ふ利益がある。或は国際間の平和も、これから促進されると云ふ事があるであらう。
手巾 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
日本アルプスでは誤った設備の為に、例せば一の上河内を失うと、一つの損失にとどまらないで、いて全体の損失となってしまうことを考えて頂きたい。
日本アルプスの五仙境 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
余ノ吟咏ぎんえいヲ好ムヤ二十年来作ル所千余首ヲ下ラズ。去月望、都下ノ大災イテワガニ及ベリ。炎威惨虐ニシテ百物蕩尽セリ。稿本マタ一紙ヲ留メズ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
... しんひそか(九九)留心りうしんきをおそる」と。武矦ぶこうすなははん、「奈何いかんせん」と。きみつて武矦ぶこうつてへ、「こころみに(一〇〇)くに公主こうしゆもつてせよ。 ...
われ等は盆踊よりいて、人間に於ける動物的慾情の消長に及び、その根本的本能の性のいかに吾人人類の上に烈しく恐るべき勢力を有せるかを嘆きぬ。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
釧路川と太平洋にはさまれた半島の岬端で、東面すれば太平洋、西面すれば釧路湾、釧路川、釧路町を眼下に見て、当面とうめんには海と平行して長くいたおかの上
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
その婿趙文挙ひどく寡婦を好み、自分の妻を妹といつわり、き入れて同宿せしめ中夜にこれに就くに翀大いに呼んで従わず。趙無理やりその衣を剥げば男子なり。
事は些細ささいながら、家の面目と責任というようなことへいて行くことも考えていないはずはないでしょう。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
かかる次第しだいにして小栗等が仏人をいて種々計画けいかくしたるは事実じじつなれども、その計画は造船所の設立、陸軍編制等の事にして、もっぱ軍備ぐんびを整うるの目的もくてきに外ならず。
取扱方の同様なのをき伸ばして行くと、つまり取り扱われるものが同様だからと云う妙な結論に到着してくる。自分はふらふらとそこへ到着していたと見える。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すなわち先ずコレを我牧農の小村落に実施し、いて他に及ぼさんことを期し、コレを積善社と名づく。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
我出版界のため、我読書界のため、いては我学界のため、我経済界のため、黙過すべからざる重大の社会問題として、一円本流行の害毒を列挙すること左の如しである
主人は己をいて、はしごを一つ登つた。その着てゐる長い上衣の裾が、大理石の階段の上を曳いて、微かな、鈍い音をさせる。己の靴の踵がその階段を踏んで反響を起す。
復讐 (新字旧仮名) / アンリ・ド・レニエ(著)
多年軍需相として、重要な内政の一面に才腕をふるっていた李厳の退職は、何といっても、蜀軍の一時的休養と、いては国内諸部面の大刷新をうながさずにはおかなかった。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かつこの問題は一歩を進めると、彼のいうほねっぽいとは何を意味するかという疑問も起こり、いては近ごろ称せらるる硬教育もいかなるものであるか、疑問として胸に浮ぶ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
きて東洋全体に自由主義を及ぼし、ついに世界各国に政法を立てんと希望したるは板垣氏の『無上政法論』に明らかなり、しかして改進論派は人智の劣等国力の微弱を自信し
近時政論考 (新字新仮名) / 陸羯南(著)
但だ予はくの如くに神を見、而してこれよりいて天地の間の何物を以てしても換へがたき光栄無上なる「吾れは神の子なり」てふ意識のうつとしてうちより湧き出づるを覚えたり。
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
こゝに於て王って入り、珙を宮中にきてつばらそうせしむ。珙諦視ていしすることやや久しゅうしていわく、殿下は龍行虎歩りゅうこうこほしたまい、日角にっかく天をさしはさむ、まことに異日太平の天子にておわします。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
万年草まんねんそう 御廟のほとりに生ずこけたぐひにして根蔓をなし長く地上にく処々に茎立て高さ一寸ばかり細葉多くむらがりしょうず採り来り貯へおき年を経といへども一度水に浸せばたちまち蒼然そうぜんとしてす此草漢名を
植物一日一題 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
姉なる人が全盛の余波なごりいては遣手やりて新造しんぞが姉への世辞にも、美いちやん人形をお買ひなされ、これはほんの手鞠代てまりだいと、くれるに恩を着せねば貰ふ身の有がたくも覚えず、まくはまくは
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
我々朋友ばかりではない、いて高等中学の名折なをれにもなるのだから、是非あの美人を君が妻君にするやうに、これは我々が心をいつにしてむすぶの神にいのつた酒だから、辞退するのは礼ではない。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
各藩の有為な人物をもいて、身をもって時代に当たろうとしたのも彼だ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
第七 窖蔵こうぞうノ氷雪夏月鳥魚諸肉ノ敗餒はいだいヲ防ギ水漿すいしょうヲ冷ヤシテ収儲しゅうちょときクコトヲ得イハユル氷雪冬時コレヲ蔵シ夏時コレヲ開キ食肉ノろく喪祭賓客用ヒザルコト無シコレまた輔相調爕ちょうしょうノ一事トコレナリ
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
河岸の連中のいまゝでより一層肩を入れるようになったのは勿論いて大根河岸だいこがしだの多町たちょうだの、およそ由良を贔負にするそうしたさかり場からとも/″\幕だののぼりだのがかれへまで来るようになり
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
主人あるじのエルは喜んで私を応接間へいて、「過日は別荘の方へ御立寄おたちより下すったそうでしたが、アノ通りの田舎家で碌々ろくろくお構い申しも致さんで、えらい失礼しました」と鄭寧ていねいな挨拶、私はひどく痛みって
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
男子の獣行をほしいままにせしむるは男子その者の罪に止まらず、いて一家の不和不味と為り、兄弟姉妹相互の隔意と為り、其獣行翁の死後には単に子孫に病質を遺して其身体を虚弱ならしむるのみならず
新女大学 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
いて江戸文学の礎石そせきの一つとなったものである。
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
歸依きえけばやした
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
いては物理学、博物学等にも及ばなければならぬのであるから、物質的文明を開いたものは医者であったというも決して過言ではない。
いては一国の歴史との交渉点も見出さるる訳であるから、将来の青年に対する訓育的の効果は決して少なくはないと思う。
名字の話 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
列のかしらは軍装したる国王、紅衣のマイニンゲン夫人をき、つづいて黄絹きぎぬ裾引衣すそひきごろもを召したる妃にならびしはマイニンゲンの公子なりき。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
然れども太平の酔客は、霜天そうてん晨鐘しんしょうに目をさますを欲せず。いて寛政五年露船松前まつまえに来り、我が漂民を護送して通商を請う。幕府これをしりぞく。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
博士にかれて一家に入れば、その中庭に大なる枯井あるを見る。井の裏には螺旋梯らせんばしごを架したり。博士われ等を顧みて云ふやう。見給へ人々。
が、彼が正秀の慟哭を不快に思ひ、いては彼自身の涙をもいさぎよしとしない事は、さつきと少しも変りはない。
枯野抄 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そんな事よりでもあろうか、パーシー人は、人死すれば右様の犬(本邦の俗四つの眼と呼ぶ)をいてその屍を視せ、もはや悪鬼が近付かずとて安心すという。
……ソ……そこだて……そこがトテモ面白いこの話の眼目になるところで、いては大正の今日に於けるめいはま事件の根本問題にまで触れて来るところなんだ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
けれども、ただ客をいては話を聞くだけで、丹後守自身には何もこれと自慢めいた話はない。
赤木さんは屋上の展望台へ私達をいて長春全市の説明をされ、濱田氏は愛蔵の支那古陶器を携へて来て示され、本城氏も多年蒐集された古銭の代表的な物を持参して見せられた。