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崖下
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がけした
ふりがな文庫
“
崖下
(
がけした
)” の例文
父はもう片足の
下駄
(
げた
)
を手に取っていた。そしてそれで母を撲りつけた。その上、母の
胸倉
(
むなぐら
)
を
掴
(
つか
)
んで、
崖下
(
がけした
)
に
衝
(
つ
)
き落すと母を
脅
(
おど
)
かした。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
地震
(
ぢしん
)
の
場合
(
ばあひ
)
に
崖下
(
がいか
)
の
危險
(
きけん
)
なことはいふまでもない。
横須賀停車場
(
よこすかていしやば
)
の
前
(
まへ
)
に
立
(
た
)
つたものは、
其處
(
そこ
)
の
崖下
(
がけした
)
に
石地藏
(
いしじぞう
)
の
建
(
た
)
てるを
氣
(
き
)
づくであらう。
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
嘗て魔界の一ときを経歴したあと、芝の白金でも、今里でも、隠逸の形を取った
崖下
(
がけした
)
であるとか一樹の蔭であるとかいう位置の家を選んだ。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
私は静岡県の古い道路をあるいていて、ある一つの坂の
崖下
(
がけした
)
に、四角な穴を掘り
窪
(
くぼ
)
めて、本ものの馬の頭骨を安置したのを見たことがある。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
山手線の朝の七時二十分の上り汽車が、
代々木
(
よよぎ
)
の電車停留場の
崖下
(
がけした
)
を地響きさせて通るころ、
千駄谷
(
せんだがや
)
の
田畝
(
たんぼ
)
をてくてくと歩いていく男がある。
少女病
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
▼ もっと見る
坂を下りて、一度ぐっと低くなる
窪地
(
くぼち
)
で、途中街燈の光が途絶えて、鯨が寝たような黒い道があった。鳥居坂の
崖下
(
がけした
)
から、
日
(
ひ
)
ヶ窪の辺らしい。
木の子説法
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
西願寺の
崖下
(
がけした
)
に、殆んど毀れかかった共同便所がある。ずっと以前から使われなくなったので、朽ち乾いた板切れをつくねたようにしかみえない。
季節のない街
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
神田明神の
崖下
(
がけした
)
の、ケチな長屋。現在でいうなら、千代田区神田台所町……昔は、敬称をつけて、お台所町と呼んだ。
胡堂百話
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
宗助は自分が坂井の
崖下
(
がけした
)
の暗い部屋に寝ていたのでないと意識するや
否
(
いな
)
や、すぐ起き上がった。縁へ出ると、
軒端
(
のきば
)
に高く
大覇王樹
(
おおさぼてん
)
の影が眼に映った。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
崖下
(
がけした
)
にある一構えの
第宅
(
やしき
)
は郷士の
住処
(
すみか
)
と見え、よほど古びてはいるが、骨太く
粧飾
(
かざり
)
少く、夕顔の
干物
(
ひもの
)
を
衣物
(
きもの
)
とした
小柴垣
(
こしばがき
)
がその
周囲
(
まわり
)
を取り巻いている。
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
金剛山を真正面にのぞみ、
千早川
(
ちはやがわ
)
を
崖下
(
がけした
)
にめぐらしている丘陵のここ一角は、庭といっては当らないほどな山間の自然を、ひっそりと、抱きかかえていた。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お雪は封筒の裏に自分の名も書かずに置いた。
箪笥
(
たんす
)
の上にそれを置いたまま、妹を連れて、鉄道の踏切からずっとまだ向の
崖下
(
がけした
)
にある温泉へ
入浴
(
はいり
)
に行った。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
尤も南をうけた
崖下
(
がけした
)
の暖かい
隈
(
くま
)
なぞには、ドウやらすると
菫
(
すみれ
)
の一輪、紫に笑んで居ることもあるが、二月は中々寒い。下旬になると、
雲雀
(
ひばり
)
が鳴きはじめる。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
なるほど、落ち葉に交じって無数のどんぐりが、
凍
(
い
)
てた
崖下
(
がけした
)
の土にころがっている。妻はそこへしゃがんで熱心に拾いはじめる。見るまに左の手のひらにいっぱいになる。
どんぐり
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
その日も青二は、べんとうを放送局の裏口の受付にとどけ、守衛の父親から鉛筆を一本おだちんにもらい、それをポケットにいれて、
崖下
(
がけした
)
の道を引っかえしていったのである。
透明猫
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
南向きの障子には一ぱい暖かい日が
射
(
さ
)
して、そこを明けると
崖下
(
がけした
)
を流れている江戸川を越して牛込の
窪地
(
くぼち
)
の向うに
赤城
(
あかぎ
)
から
築土八幡
(
つくどはちまん
)
につづく高台がぼうと
靄
(
もや
)
にとざされている。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
始めて引越して来たころには、近処の
崖下
(
がけした
)
には、
茅葺
(
かやぶき
)
屋根の家が残っていて、
昼中
(
ひるなか
)
も
雞
(
にわとり
)
が鳴いていたほどであったから、鐘の
音
(
ね
)
も今日よりは、もっと度々聞えていたはずである。
鐘の声
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
裏は
崖下
(
がけした
)
の広い空地で、厚く
繁
(
しげ
)
った
笹
(
ささ
)
や夏草の上を、真昼の風がざわざわと吹き渡った。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
崖下
(
がけした
)
の岸に沿うて、山吹が茂り咲いている。そこへ鉋屑が流れて来たのである。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
すると城の奥、二丈ばかりの
崖下
(
がけした
)
で敵と渡り合う源太を見つけた。
現代語訳 平家物語:09 第九巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
崖下
(
がけした
)
のかの
狂人
(
きちがひ
)
の一軒家赤くかがやきかがやきやまず
雲母集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
轉
(
こ
)
けてゆく、雲のまつ
黒
(
くろ
)
けの
崖下
(
がけした
)
を。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
宗助
(
そうすけ
)
は
自分
(
じぶん
)
が
坂井
(
さかゐ
)
の
崖下
(
がけした
)
の
暗
(
くら
)
い
部屋
(
へや
)
に
寐
(
ね
)
てゐたのでないと
意識
(
いしき
)
するや
否
(
いな
)
や、すぐ
起
(
お
)
き
上
(
あ
)
がつた。
縁
(
えん
)
へ
出
(
で
)
ると、
軒端
(
のきば
)
に
高
(
たか
)
く
大霸王樹
(
おほさぼてん
)
の
影
(
かげ
)
が
眼
(
め
)
に
映
(
うつ
)
つた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
おなつの生れて育った組長屋は、願成寺という寺のある丘の
崖下
(
がけした
)
にあり、片方がかなり広い草原になっていた。
契りきぬ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
お茶の水の
崖下
(
がけした
)
に死骸が引つ掛つて居るのを通行人に見付けられ、それから大騷動になつたといふことでした。
銭形平次捕物控:198 狼の牙
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
わが、辻三がこの声を聞いたのは、
麹町
(
こうじまち
)
——番町も土手下り、
湿
(
し
)
けた
崖下
(
がけした
)
の
窪地
(
くぼち
)
の寒々とした処であった。
白花の朝顔
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この神田川の苦労の跡を調べることも哀れ深いが、もとこの神田川は
麹町台
(
こうじまちだい
)
の
崖下
(
がけした
)
に沿って流れ、九段下から丸の内に入って日本橋川に通じ、芝浦の海に口を開いていた。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
それは旗男の東京の家の
崖下
(
がけした
)
に、小さな工場を持っている鍛冶屋の大将鉄造さんだった。
空襲警報
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
南側の町裏に当たる
崖下
(
がけした
)
の位置に、静かな細道に添い、
杉
(
すぎ
)
や
榎
(
えのき
)
の木の影を落としているあたりは、水くみの女どもが集まる場所で、町内の出来事はその隠れた位置で手に取るようにわかった。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その次には、喜いちゃんが、毛糸で
奇麗
(
きれい
)
に
縢
(
かが
)
った
護謨毬
(
ゴムまり
)
を
崖下
(
がけした
)
へ落したのを、与吉が拾ってなかなか渡さなかった。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「ね、驚くでせう親分。あの打ち殺しても死にさうも無い、ノラリクラリとした
鰻
(
うなぎ
)
野郎の與三郎が、
腦天
(
なうてん
)
を石で割られてお茶の水の
崖下
(
がけした
)
に投り出されてゐるんだ」
銭形平次捕物控:159 お此お糸
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
氷柱
(
つらら
)
の結ぶ
崖下
(
がけした
)
の穴や、それから吹溜りに
蠢動
(
しゅんどう
)
する熊の背などが、心を
唆
(
そそ
)
るように眼にうかぶ……熊がどの穴からどの道を通るか、鹿はどっちからどの林へ追込むか
夜明けの辻
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「いや、……
崖下
(
がけした
)
のあの谷には、魔窟があると言う。……その
種々
(
いろいろ
)
の意味で。……何しろ十年ばかり前には、
暴風雨
(
あらし
)
に崖くずれがあって、大分、人が死んだ
処
(
ところ
)
だから。」
二、三羽――十二、三羽
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
亭の前の
崖下
(
がけした
)
は
生洲
(
いけす
)
になっていて、
竹笠
(
たけがさ
)
を
冠
(
かぶ
)
った邦人の客が五六人釣をしている。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
崖下
(
がけした
)
には乗合馬車が待っていた。車の中には二三の客もあった。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
崖下
(
がけした
)
の
道
(
みち
)
透明猫
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「私が採って来たんですよ」佐久馬が不審そうに云った、「天神山の
崖下
(
がけした
)
に咲いているのをみつけて、あね上のお好きな花だから折って来たんです、忘れたんですか」
薊
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「さあ
最
(
も
)
う
起
(
お
)
きて
頂戴
(
ちようだい
)
」に
變
(
かは
)
る
丈
(
だけ
)
であつた。
然
(
しか
)
し
今日
(
けふ
)
は
昨夕
(
ゆうべ
)
の
事
(
こと
)
が
何
(
なん
)
となく
氣
(
き
)
にかゝるので、
御米
(
およね
)
の
迎
(
むかひ
)
に
來
(
こ
)
ないうち
宗助
(
そうすけ
)
は
床
(
とこ
)
を
離
(
はな
)
れた。さうして
直
(
すぐ
)
崖下
(
がけした
)
の
雨戸
(
あまど
)
を
繰
(
く
)
つた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
先
(
ま
)
づお
聞
(
き
)
き
申
(
まを
)
すが、
唯今
(
たゞいま
)
、
此
(
こ
)
の
坂
(
さか
)
の
此
(
こ
)
の、われらが
片寄
(
かたよ
)
つて
路傍
(
みちばた
)
に
立
(
た
)
ちました……
此
(
こ
)
の
崖下
(
がけした
)
に、づら/\となぞへに
並
(
なら
)
びました
瓦斯燈
(
がすとう
)
は、
幾基
(
いくだい
)
が
所
(
ところ
)
燈
(
あかり
)
が
點
(
つ
)
いて、
幾基
(
いくだい
)
が
所
(
ところ
)
消
(
き
)
えて
居
(
を
)
ります。
三人の盲の話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
夜露にあてた方がよかろうと云うので、
崖下
(
がけした
)
の雨戸を明けて、庭先にそれを二つ並べて置いた。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「——おらあ
崖下
(
がけした
)
の勘太てえもんだ、いくらおちぶれたって侍の
端
(
はし
)
くれなら竹光ぐれえは差してる筈だ、人を
舐
(
な
)
めやがって、浪人だと云えばおらっちが腰を抜かすとでも思やがるのか」
雪の上の霜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
谺
(
こだま
)
に
曳
(
ひ
)
いて、
崖下
(
がけした
)
の
樹
(
き
)
の
中
(
なか
)
、
深
(
ふか
)
く、
画工
(
ゑかき
)
さんの
呼
(
よ
)
ぶのが
聞
(
き
)
こえて
十和田湖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
夜露
(
よつゆ
)
に
中
(
あ
)
てた
方
(
はう
)
が
可
(
よ
)
からうと
云
(
い
)
ふので、
崖下
(
がけした
)
の
雨戸
(
あまど
)
を
明
(
あ
)
けて、
庭先
(
にわさき
)
にそれを
二
(
ふた
)
つ
並
(
なら
)
べて
置
(
お
)
いた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
始めはわずか二三軒かと思ったら、登るに従って続々あらわれて来た。大きさも長さも似たもんで、みんな
崖下
(
がけした
)
にあるんだから位地にも変りはないが、
向
(
むき
)
だけは
各々
(
めいめい
)
違ってる。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
“崖下”の意味
《名詞》
崖 下(がいか)
崖の下。
(出典:Wiktionary)
崖
常用漢字
中学
部首:⼭
11画
下
常用漢字
小1
部首:⼀
3画
“崖”で始まる語句
崖
崖上
崖道
崖端
崖際
崖縁
崖地
崖土
崖崩
崖路