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奧方
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おくがた
家に
居る
時は
齋藤の
娘、
嫁入つては
原田の
奧方ではないか、
勇さんの
氣に
入る
樣にして
家の
内を
納めてさへ
行けば
何の
子細は
無い
いふ
心夢とは
常平生こゝろに思ふ事を見るをいふなりこの時
奧方の見給ふは
靈夢にして天下の
主將に
成べき
兆を
後々思ひしられたり
と
揚場から
奧方が
聲を
懸ける。
一寸斷つて
置くが、
此の
方は
裸體でない。
衣紋正しくと
云つた
風で、
朝からの
厚化粧、
威儀備はつたものである。
南の
池を、それ/″\
奧方の
阿蘇津妃命、
長子たる
速瓶玉命の
靈場と
考へられてあつた。
本に
商賣人とて
憎くらしい
物と
次第におもふ
事の
多くなれば、いよ/\
寢かねて
奧方は
縮緬の
抱卷打はふりて
郡内の
蒲團の
上に
起上り
給ひぬ。
奧方にはあまりふしぎなる夢なれば
迚大納言光貞卿に
告給へば光貞卿
深く
悦びこの度
懷姙の子
男子ならば
器量勝れ世に名を
道人の
曰く、
君常に
官に
宿直の
夜に
當りては、
奧方必ず
斯の
馬に
乘つて
出でらるゝなり。
君更に
知りたまふまじ。
されば
奧方の
町子おのづから
寵愛の
手の
平に
乘つて、
強ち
良人を
侮るとなけれども、
舅姑おはしまして
萬づ
窮屈に
堅くるしき
嫁御寮の
身と
異なり
指るゝな立派な出世致すべし
斯てこそ予に
對し
忠義なるぞと申聞られ
一人々々に
盃盞を下され夫より夜の
明るを
待ける此時越前守の
奧方には奧御用人を
と
奧方衣紋を
合せて、
序に
下襦袢の
白い
襟と
云ふ
處を
厭味に
出して、
咽喉元で
一つ
扱いたものなり。
それ
熱ければ
梅、ぬるければ
竹、
客を
松の
湯の
揚場に、
奧方はお
定りの
廂髮。
大島擬ひのお
羽織で、
旦那が
藻脱の
籠の
傍に、
小兒の
衣服の
紅い
裏を、
膝を
飜して
控へて
居る。
子爵の
寵愛子よりも
深く、
兩親なき
妹の
大切さ
限りなければ、
良きが
上にも
良きを
撰らみて、
何某家の
奧方とも
未だ
名をつけぬ十六の
春風、
無慘や
玉簾ふき
通して
此初櫻ちりかヽりし
袖
奧方は
火鉢を
引寄せて、
火の
氣のありやと
試みるに、
宵に
小間使ひが
埋け
參らせたる、
櫻炭の
半は
灰に
成りて、よくも
起さで
埋けつるは
黒きまゝにて
冷えしもあり、
烟管を
取上げて一二
服
御覽ぜよ
奧方の
御目には
我れを
憎しみ
殿をば
嘲りの
色の
浮かび
給ひしを。