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塒
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ねぐら
ふりがな文庫
“
塒
(
ねぐら
)” の例文
「その
菰
(
こも
)
の下には小判で二千兩あるんだ、大した寢床だぜ。灯は禁物だが、暫らくの我慢だ。
塒
(
ねぐら
)
へ歸れば、存分に可愛がつてやるぜ」
銭形平次捕物控:046 双生児の呪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
本船へ帰ると、私たちは初めて自分たちの
塒
(
ねぐら
)
に戻ったような気安さを感じた。何かさびしい、あっけないような国境の印象であった。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
沢庵はいいすてて元の
塒
(
ねぐら
)
へはいりかけた。きのう伊織と樹の上で闘っていた時、遠く聞えた尺八の音を城太郎は耳に呼び返していた。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
文学は、小市民的な身辺小説の歴史的な
塒
(
ねぐら
)
から、よしや今宵の枝のありかを知らないでも、既に飛び立たざるを得なくなって来ている。
平坦ならぬ道:国民文学にふれて
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
その
空隙
(
すきま
)
の多い、中実の少ない行李を引っかついだ彼らは、あたかも移住民の一列のように続いて彼らの
塒
(
ねぐら
)
からサロンへとおもむいた。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
▼ もっと見る
われは梯を踏みてその群に近づき、引かるゝまゝに共に舞ひしが、心樂しく身輕きに、曲二つまで附き合ひて、夜更けたる後
塒
(
ねぐら
)
に歸りぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
林の中が静まったので、子を育ててでもいるらしい、母鳥の優しく啼く声が、小高い
梢
(
こずえ
)
の
塒
(
ねぐら
)
の中から、歌うように聞こえて来た。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
衝
(
つ
)
と入る。
袂
(
たもと
)
に
縋
(
すが
)
って、
牲
(
にえ
)
の鳥の乱れ姿や、
羽掻
(
はがい
)
を
傷
(
いた
)
めた袖を悩んで、
塒
(
ねぐら
)
のような戸を
潜
(
くぐ
)
ると、
跣足
(
はだし
)
で下りて、小使、カタリと後を
鎖
(
さ
)
し
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
余は一個の
浮浪
(
ふろう
)
書生
(
しょせい
)
、筆一本あれば、住居は
天幕
(
てんまく
)
でも
済
(
す
)
む自由の身である。それでさえ
塒
(
ねぐら
)
はなれた小鳥の
悲哀
(
かなしみ
)
は、其時ヒシと身に
浸
(
し
)
みた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
メリーはもはや自分の
塒
(
ねぐら
)
にいるが、そこから離れの明りが見える方が、メリーのためにも私のためにもいいような気が私にはするのである。
犬の生活
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
半九郎を初めてここへ誘って来たのは市之助であったが、
塒
(
ねぐら
)
を一つ場所に決めていない彼はいつも半九郎の連れではなかった。
鳥辺山心中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その故に彼は外に出でて
憂
(
うさ
)
を
霽
(
はら
)
すに
忙
(
いそがはし
)
きにあらずや。されども彼の忘れず
塒
(
ねぐら
)
に帰り
来
(
きた
)
るは、又この妻の美き顔を見んが為のみ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
どんな男ともつれあっているのか、そんなことはどうでもいい、とにかく、ここの
塒
(
ねぐら
)
も今夜はふさがっているというわけだ。
赤い手帖
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
宵闇
(
よいやみ
)
の中を歩きながら、
塒
(
ねぐら
)
に騒ぐ鳥の声を聞いて、この季節に著しく感じる澄んだ寂しさが腹の底まで
沁
(
し
)
みるのを知った。
果樹
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
塒
(
ねぐら
)
につかせてやるのが、また通人の情け、無邪気というものも程度を知ることが、また通人の通人たる
所以
(
ゆえん
)
でなければならないという面をして
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ユウツケ鳥は三説あり、『
松屋
(
まつのや
)
筆記』七に鶏は
申
(
さる
)
の時(午後四時)に夕を告げて
塒
(
ねぐら
)
に
籠
(
こも
)
るが故に、夕告鳥というにや云々。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
高いところに鶏の
塒
(
ねぐら
)
も作り付けてあつたが、其は空巣も同然で、鳥らしいものが飼はれて居るとは見えなかつたのである。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
街道は
森閑
(
しん
)
と茂った森にそうていて、人っ子一人通らない。鳥はみな
塒
(
ねぐら
)
にかえってしまった。向うの村は大きなどす黒い
汚点
(
しみ
)
のように見えている。
乞食
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
遠く南洋の島々へ落武者となって悠久の
塒
(
ねぐら
)
を定め、彼地の土人が即興の舞踊を
具
(
つぶ
)
さに写したらんか、すなわちこれと思わるるほど、哀しくおかしい。
寄席行灯
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
そして
塒
(
ねぐら
)
に急ぐらしい数羽の
鴉
(
からす
)
が夕焼けのした空を飛んで行った後には、森の奥の方で何も知らぬ鳥がキキキヽヽヽヽヽとけたたましく
啼
(
な
)
いていた。
逗子物語
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
樹々
(
きぎ
)
の
梢
(
こずえ
)
が水底の
藻
(
も
)
に見え、「水面」を仰ぐと
塒
(
ねぐら
)
へ帰る烏の群が魚に見え、ゼーロンにも私にも
鰓
(
えら
)
があるらしかった。
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
塒
(
ねぐら
)
を追われて、充血した目の
茅潜
(
かやくぐ
)
りの小母が、くやしがって、「教育なんて怪しいものだね」と、俺に訴えたことだ。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
幽
(
かす
)
かに聞える
伝通院
(
でんずういん
)
の
暮鐘
(
ぼしょう
)
の
音
(
ね
)
に誘われて、
塒
(
ねぐら
)
へ急ぐ
夕鴉
(
ゆうがらす
)
の声が、
彼処此処
(
あちこち
)
に聞えて
喧
(
やか
)
ましい。既にして日はパッタリ暮れる、
四辺
(
あたり
)
はほの暗くなる。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
すると須世理姫と葦原醜男とが、まるで
塒
(
ねぐら
)
を荒らされた、二羽の
睦
(
むつま
)
じい小鳥のやうに、
倉皇
(
さうくわう
)
と
菅畳
(
すがだたみ
)
から身を起した。
老いたる素戔嗚尊
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼等の其の道に就くや、鳥の
塒
(
ねぐら
)
に歸るが如かりしのみ。其の心事や渾然たり、豈其の間に目的と手段とあらむや。
美的生活を論ず
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
ふたたび
塒
(
ねぐら
)
を奪はれて、野良犬のやうに路へ追はれるかも知れない。不安であつたが怖ろしいとも思はなかつた。
吹雪物語:――夢と知性――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
安政二年の江戸大地震の十日ばかり前から、利根川附近の村で、鶏が
塒
(
ねぐら
)
に入らず梁の上に上がるので、飼主が困ったといわれる(赤松宗旦、利根川図誌)。
地震なまず
(新字新仮名)
/
武者金吉
(著)
夕闇は川面にはらばい、霧が蘆そよぐ岸辺にほのぼのと
立
(
たち
)
のぼった。
塒
(
ねぐら
)
におくれた
烏
(
からす
)
が三つ四つと帰りを急ぐ。
サレーダイン公爵の罪業
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
傾きやすき冬日の庭に
塒
(
ねぐら
)
を急ぐ
小禽
(
ことり
)
の声を聞きつつ梔子の実を
摘
(
つ
)
み、寒夜孤燈の下に
凍
(
こご
)
ゆる手先を
焙
(
あぶ
)
りながら破れた
土鍋
(
どなべ
)
にこれを煮る時のいいがたき情趣は
十日の菊
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
一生隠れていられる
塒
(
ねぐら
)
を棄て、難渋な峠を幾つも越してきたのは、お前達と一緒に歩いていてえばっかりだ、それだのに、別れてくれとはすげねえ云い草だ。
中山七里 二幕五場
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
いつか
塒
(
ねぐら
)
に迷うた蝙蝠を追うて荒れ地のすみまで行ったが、ふと気がついて見るとあたりにはだれもいぬ。
花物語
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
さても気の長い男め
迂濶
(
うかつ
)
にもほどのあれと、煙草ばかりいたずらに
喫
(
ふ
)
かしいて、待つには短き日も随分長かりしに、それさえ暮れて
群烏
(
むらがらす
)
塒
(
ねぐら
)
に帰るころとなれば
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「こは
好
(
よ
)
きことを聞き得たり」ト、
数度
(
あまたたび
)
喜び聞え、なほ
四方山
(
よもやま
)
の物語に、時刻を移しけるほどに、日も
山端
(
やまのは
)
に
傾
(
かたぶ
)
きて、
塒
(
ねぐら
)
に騒ぐ
群烏
(
むらがらす
)
の、声かしましく聞えしかば。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
「げに歌人、詩人といふは
可笑
(
おか
)
しきものかな。蝶二つ飛ぶを見れば、必ず
女夫
(
めおと
)
なりと思へり。
塒
(
ねぐら
)
に
還
(
かえ
)
る
夕烏
(
ゆうがらす
)
、
嘗
(
かつ
)
て曲亭馬琴に告げて
曰
(
いわ
)
く、おれは
用達
(
ようたし
)
に行くのだ」
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
巣鴨へ迎えに来た長男も次男も、留守に邸を使って居たことなぞ、ひと言もいわなかったが、これで見ると、住宅難で勝手な人間がここを
塒
(
ねぐら
)
にして居たに違いない。
面
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
櫟社の大木は眠って行く空に怪奇な姿を黒々と
刻
(
きざ
)
み出した。この木を
塒
(
ねぐら
)
にしている鳥が何百羽とも知れずその周囲に騒いで居た。鳴声が遠い汐鳴りのように聴えた。
荘子
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
階段
(
きざはし
)
の所に声のよい若い殿上人たちの集められたのが、器楽のあとを歌曲に受け、「青柳」の歌われたころはもう
塒
(
ねぐら
)
に帰っていた
鶯
(
うぐいす
)
も驚くほど
派手
(
はで
)
なものになった。
源氏物語:34 若菜(上)
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
御覧のようにあッしゃ少しばかり
侠気
(
おとこぎ
)
の看板のやくざ者で、神田の
小出河岸
(
こいでがし
)
にちッちゃな
塒
(
ねぐら
)
を構え
旗本退屈男:09 第九話 江戸に帰った退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
まもなく夜明けの空に、
塒
(
ねぐら
)
はなれる朝鳥のさえずりがすがすがしくひびきわたったので、最後にかさねて金剛経一巻を回向申しあげて、西行は山をおり、庵へ帰った。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
なにがしという一人の家を
囲
(
かこ
)
みたるおり、
鶏
(
にわとり
)
の
塒
(
ねぐら
)
にありしが、驚きて鳴きしに、主人すは
狐
(
きつね
)
の来しよと、
素肌
(
すはだか
)
にて起き、戸を出ずる処を、
名乗掛
(
なのりか
)
けて
唯
(
ただ
)
一槍
(
ひとやり
)
に殺しぬ。
みちの記
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
すぐ上の
塒
(
ねぐら
)
では一番鶏が
啼
(
な
)
く。ウトウトしながらも、二時三時と一つも聞き洩さずに一夜を過した。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
私も今宵の
塒
(
ねぐら
)
を捜さねばならない。路傍の農家に一夜の宿を乞い、ここに落着くことになった。
春の遠山入り:(易老岳から悪沢岳への縦走)
(新字新仮名)
/
松濤明
(著)
彼はあたかも遠征を思い立ちし最初の日の夕のごとく
圃
(
はたけ
)
の人の帰るを測りて表の戸より立ち出でたり、彼が推測は
謬
(
あやま
)
らず、圃の人は皆帰り尽し、鳥さえ
塒
(
ねぐら
)
に還りてありし
空家
(新字新仮名)
/
宮崎湖処子
(著)
朝
(
あさ
)
がへりの
殿
(
との
)
がた一
順
(
じゆん
)
すみて
朝寢
(
あさね
)
の
町
(
まち
)
も
門
(
かど
)
の
箒目
(
はゝきめ
)
青海波
(
せいがいは
)
をゑがき、
打水
(
うちみづ
)
よきほどに
濟
(
す
)
みし
表町
(
おもてまち
)
の
通
(
とほ
)
りを
見渡
(
みわた
)
せば、
來
(
く
)
るは
來
(
く
)
るは、
萬年町
(
まんねんてう
)
山伏町
(
やまぶしてう
)
、
新谷町
(
しんたにまち
)
あたりを
塒
(
ねぐら
)
にして
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
のめずり込むというような訳になって……伊之助は大抵お若さんのとこを
塒
(
ねぐら
)
にしておりました。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
太陽
(
ひ
)
の傾くに連れて風の力も漸く衰え、垂れた雲は山膚を白く薄化粧したまま、
塒
(
ねぐら
)
を恋うる鳥のように元の頂きに返って、入日の光に暫し金茶色に燃えたかと思う間もなく
山と村
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
やがて日が暮れると洞庭秋月
皎々
(
こうこう
)
たるを賞しながら
飄然
(
ひょうぜん
)
と
塒
(
ねぐら
)
に帰り、互に羽をすり寄せて眠り、朝になると二羽そろって洞庭の湖水でぱちゃぱちゃとからだを洗い口を
嗽
(
すす
)
ぎ
竹青
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
尊ぶとこそ云へり今一錢二錢の
袖乞
(
そでごひ
)
しても心
清
(
きよ
)
きが
潔
(
いさぎ
)
よし人間萬事塞翁が馬ぢや
又
(
また
)
好
(
よき
)
春
(
はる
)
に花を
詠
(
なが
)
める時節もあらん
斷念
(
あきらめ
)
よと夫婦互に力を
添
(
そ
)
へ
合
(
あひ
)
憂
(
うき
)
物語
(
ものがた
)
りに時移りしに
頓
(
やが
)
て
塒
(
ねぐら
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
明智のやつ、今頃はおそらく、あの鉄管の中でルンペンどもの
虜
(
とりこ
)
になっていることだろうよ。なぜって、あすこには、鉄管を
塒
(
ねぐら
)
にして二、三十人も、ルンペンがいるんだからね。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
塒
(
ねぐら
)
に急ぐ時となり心細さの堪へ難ければ、ひとまづ家に帰らうと、ここまでは参りましたのなれど、思へばかくまで
晩
(
おそ
)
なはりし身の、何といひ訳したものと、心付いては足も進まず。
野路の菊
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
塒
漢検1級
部首:⼟
13画
“塒”を含む語句
塒鳥
塒巣
笹塒
鳥塒