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喚
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わめ
ふりがな文庫
“
喚
(
わめ
)” の例文
金が入って来ると、十人近い女は自分の持ち番の客の有る無しに
係
(
かかわ
)
らず、ドッと
喚
(
わめ
)
いて一斉に彼に飛びついてゆくという騒ぎである。
ゴールデン・バット事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
生きながら? 私は血だらけな妻の手を握ったまま、また何か
喚
(
わめ
)
きました。と、妻もまた繰返して、「あなた。」と一言申しました。
疑惑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
夜中の
喚
(
わめ
)
き
罵
(
のゝし
)
る声に驚いて雨戸まで開けた近所の人達は朝には肩を並べて牛を引いて
田圃
(
たんぼ
)
に出て行く私共父子を見て
呆気
(
あつけ
)
にとられた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
撲られるたびに、泣くような
喚
(
わめ
)
くような声も聞こえ、その一群れは、この木賃長屋と
船玉
(
ふなだま
)
神社のあいだを通って、往来へ出て行った。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と
親仁
(
おやぢ
)
が
喚
(
わめ
)
くと、
婦人
(
をんな
)
は
一寸
(
ちよいと
)
立
(
た
)
つて
白
(
しろ
)
い
爪
(
つま
)
さきをちよろちよろと
真黒
(
まツくろ
)
に
煤
(
すゝ
)
けた
太
(
ふと
)
い
柱
(
はしら
)
を
楯
(
たて
)
に
取
(
と
)
つて、
馬
(
うま
)
の
目
(
め
)
の
届
(
とゞ
)
かぬほどに
小隠
(
こがく
)
れた。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
▼ もっと見る
転がつた
無頼漢
(
ならずもの
)
は、埃のなかで蛙のやうに手足をばたばたさせながら
喚
(
わめ
)
いた。
附近
(
あたり
)
には同じやうな無気味の
輩
(
てあひ
)
がぞろぞろ
集
(
たか
)
つて来た。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
油断してはならぬというそのものの声と、何をこれしきのことと——鼻で
嘲
(
あざ
)
けるいらいらした声が、彼の頭のなかで
喚
(
わめ
)
きあっていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
「
俺
(
おら
)
んとこは無人で敢り次ぎが居んさかい、この圓窓が取り次ぎや。……この窓
開
(
あ
)
けて
喚
(
わめ
)
いて呉れ、
家
(
うち
)
にゐたら俺が出て來るぞ。」
太政官
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
只もう校舎を
撼
(
ゆす
)
ってワーッという声の
中
(
うち
)
に、無数の円い顔が黙って大きな口を
開
(
あ
)
いて躍っているようで、何を
喚
(
わめ
)
いているのか分らない。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
もう仕方がない!
喚
(
わめ
)
かれてはやむを得なかった。カチリ、シューッ! カチリ、シューッ! と続けざまに私の
拳銃
(
ピストル
)
は火花を発した。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
すぐ表の坂を
轟々
(
ごうごう
)
と戦車が通りすぎて行った。すると、かぼそい彼の声は騒音と生徒の
喚
(
わめ
)
きで、すっかり
捩
(
も
)
ぎとられてしまうのであった。
秋日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
『やあ、生きだ/\。また生きだでア。』と
喚
(
わめ
)
きながら、皆は豐吉を先立てゝ村の方に遁げ出した。私は
怎
(
どう
)
したものか足が動かなかつた。
二筋の血
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
もう少したって、今度は自分が、彼女よりも大きな声で、できるだけ大きな声で、
喉
(
のど
)
がつぶれるほど
喚
(
わめ
)
いてやろうと思っている。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
乱脈なヒクソスの進軍歌を
喚
(
わめ
)
きたてながら、吾と吾が胸を滅多打ちの
銅鑼
(
どら
)
と掻き鳴らす乱痴気騒ぎの風を巻き起してここを先途と突進した。
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
その天皇を責めたてて、四十余日、夜もねむらず門前にがんばりつづけ、
喚
(
わめ
)
きつづけて、天皇を根負けさせているのであった。
道鏡
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
其鴨のやうに首を捻ぢちぎられて、何もわからぬものになつたことも、かうつと、姉御が墓の戸で哭き
喚
(
わめ
)
いて、歌をうたひあげられたつけ。
死者の書:――初稿版――
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
七面鳥マルガリイダ婆さんは一そうがんがん
喚
(
わめ
)
いて家じゅうを駈けめぐり——さあ! お部屋の用意は出来てるかい? 何でもいいから花を
踊る地平線:08 しっぷ・あほうい!
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
こうして一時に
喚
(
わめ
)
き出したかと思うと、その中から一人、火のつくように泣き出したのがあります。与八が飛んで出て見ると
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
いずれもルンペンみたいな風態の客ばかりで、それが狭い店のなかで大声で
喚
(
わめ
)
いている。そんな奴らに俺は眼もくれなかった。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
喚
(
わめ
)
く、怒る、
譫言
(
うわごと
)
をいう、人を怒りつける、大声あげてあんあんと泣く、したい放題のことをして最早遠慮も何もする余地がなくなって来た。
病牀苦語
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
笠松博士はそう
喚
(
わめ
)
きながら、私を研究室の
扉
(
ドア
)
の外に残して置いて、研究の実験に供する女を部屋の中に拉れ込むのであった。
三稜鏡:(笠松博士の奇怪な外科手術)
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
そしてやや
暫
(
しばら
)
く黙っていてから、また煙管をはたき、三服めを吸いつけて、
喚
(
わめ
)
きたてた、「なんにもおっ建たなかっただよ」
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
どうせ今日はムチに見舞はれると思つたので、その時は両手で耳と頭を抱へて、力一ぱい
喚
(
わめ
)
き上げようと、みんなコツソリ相談し合ひました。
先生と生徒
(新字旧仮名)
/
槙本楠郎
(著)
子供達は、お涌も時に
交
(
まじ
)
つて、その土蔵の外の
溝板
(
どぶいた
)
に忍び寄り、
俄
(
にわ
)
かに足音を踏み立てて「ひとりぼつち——土蔵の皆三」と声を
揃
(
そろ
)
へて
喚
(
わめ
)
く。
蝙蝠
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
と、無我夢中で
喚
(
わめ
)
いた。なんのためか自分にもわからぬ。木の葉のやうなタタラに取り巻かれた巨大な船体から黒煙が真一文字に流れてゐた。
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
そうして計らずも道に迷った。と、木の陰に四五人の
樵夫
(
きこり
)
が、何か大声で
喚
(
わめ
)
いていた。近寄って見ると彼らの
中
(
うち
)
に、一人の老人が雑っていた。
大捕物仙人壺
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その男が帰って来ると、そのお母さんが言うのよ、ああああ、
煩
(
うるさ
)
いことだ、また
喚
(
わめ
)
き立てるんだろう、頭がわれそうだって。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
偶々
(
たまたま
)
看護人でも近寄ろうものなら大声を上げて
喚
(
わめ
)
き出す始末で、他人の患部へ手を触れることを
烈
(
はげ
)
しく拒絶するのだった。
三狂人
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
崖下の
黯
(
くろ
)
い水も、何か
喚
(
わめ
)
きながら、高股になって、石を
跨
(
また
)
ぎ、抜き足して駈けている。崖の端には、車百合の赤い花が、ひときわ明るく目立つ。
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
「伴奏というのは別の曲を弾くことなんだ。メロディばかりじゃないか。」と、これも唱いながら噛みつくように
喚
(
わめ
)
いた。
幻影の都市
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
時にその師、仏の説法場に至り高声に、仏は大詐欺者だ。わがこの娘を私愛してかくボテレンに仕上げたと
喚
(
わめ
)
き散らした。
十二支考:11 鼠に関する民俗と信念
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
手前がこの紙を張って置いて、人
騒
(
さわ
)
がせに
喚
(
わめ
)
き立てたとおっしゃるので——? 聞えません。殿様、そいつア聞えません。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
湯にむせ返って、看視人たちにしっかり抑えつけられた手足を
痙攣的
(
けいれんてき
)
にもがきながら、
喘
(
あえ
)
ぎ喘ぎ、何やら取留めのないことを
喚
(
わめ
)
き立てるのだった。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
部屋の中空に
淀
(
よど
)
んでいた煙草の煙の集りが、流れるように動き出した。お次の番だよお次の番だよと大声で
喚
(
わめ
)
き出した。
風宴
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
クリストフは、そのピアノは自分のもので人に手を触れさせるものかと、ますます強く
喚
(
わめ
)
きたてた。彼はひどい折檻を受けることと期待していた。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
明日ありと思う心の
仇桜
(
あだざくら
)
、など
馬鹿
(
ばか
)
な事を
喚
(
わめ
)
いて
剃髪
(
ていはつ
)
してしまいまして、それからすぐそっと鏡を
覗
(
のぞ
)
いてみたら、私には
坊主頭
(
ぼうずあたま
)
が少しも似合わず
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
すると一層大声で
喚
(
わめ
)
き出す。女中はそんな騒ぎが起っているのも知らずに寝ている。と云うようなことが始終であった。
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その衝撃の強さは、瞼筋までも強直させたほどで、レヴェズは、なにやら訳の判らぬことを、
唖
(
おし
)
のように
喚
(
わめ
)
きはじめた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「ほんとにまあ、駄目だつてば、駄目だよ! お前はどうかしてゐるんだよ。でなきやこんなに
喚
(
わめ
)
き立てるつて法はないよ。さあ、
退
(
ど
)
けつてば!」
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
「何だって私の居ないのに渡した、え何だって渡した。
怪
(
けし
)
からんことだ」と
喚
(
わめ
)
きつつ抽斗の中を見ると革包が出ていてしかも口を開けたままである。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
そこで、今度は私が大声に
喚
(
わめ
)
いてみた。これなら
如何
(
いか
)
に寝込んでいても目を覚ますだろうと思ったが、どうした事か、
内部
(
なか
)
からは何の物音も聞えない。
火縄銃
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
女は何かヒステリックに叫んで、大声をあげて泣き
喚
(
わめ
)
き、群集をかき分けて、屍体の方へ近づこうとするのだった。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
「ヂヤ、与太、吉田屋の婆さんに
能
(
よ
)
く言うて呉れよ、
何
(
いづ
)
れ近日
返金
(
おけえし
)
するつてツたつてナ」と
前車
(
まへ
)
の御者は
喚
(
わめ
)
きつゝ、大宮行の馬車は
国神宿
(
くにがみじゆく
)
に停車せり
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
さしも息苦き
温気
(
うんき
)
も、
咽
(
むせ
)
ばさるる
煙
(
けふり
)
の渦も、皆狂して知らざる如く、
寧
(
むし
)
ろ喜びて
罵
(
ののし
)
り
喚
(
わめ
)
く声、
笑頽
(
わらひくづ
)
るる声、
捩合
(
ねぢあ
)
ひ、
踏破
(
ふみしだ
)
く
犇
(
ひしめ
)
き、一斉に揚ぐる
響動
(
どよみ
)
など
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
頭に籠を載せた魚賣の女の
疳走
(
かんばし
)
ツた呼聲やらがたくり車の
喇叭
(
らつぱ
)
の音やら、また何やら
喚
(
わめ
)
く聲叱る聲、其等全く慘憺たる生活の響が
混同
(
ごつちや
)
になツて耳に入る。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
「へつ、この中にやあ、野豚がまるまる一匹入つてゐるよ!」さう
喚
(
わめ
)
きざま、彼女は嬉しさのあまり手を拍つた。
ディカーニカ近郷夜話 後篇:02 降誕祭の前夜
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
「一人で、誰もゐないとこで
喚
(
わめ
)
いて来たのです。のどがやぶれて、血を吐いて死んでしまへばよかつたのです。」
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
泣
(
な
)
く
聲
(
こゑ
)
、
喚
(
わめ
)
く
聲
(
こえ
)
、
哀
(
あはれ
)
に
救助
(
たすけ
)
を
求
(
もと
)
むる
聲
(
こゑ
)
は、
悽
(
すさ
)
まじき
怒濤
(
どとう
)
の
音
(
おと
)
と
打交
(
うちまじ
)
つて、
地獄
(
ぢごく
)
の
光景
(
ありさま
)
もかくやと
思
(
おも
)
はるゝばかり。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
「
赤
(
あか
)
い
鳥
(
とり
)
を
呼
(
よ
)
んでみせろというだけの
約束
(
やくそく
)
であったのです」と、
子供
(
こども
)
は
答
(
こた
)
えました。けれどみんなは、
口々
(
くちぐち
)
に
勝手
(
かって
)
なことを
喚
(
わめ
)
いて、
承知
(
しょうち
)
をしませんでした。
あほう鳥の鳴く日
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「オヽ、
之
(
これ
)
だ! 之だ!」彼は拳を空に打ち振つて
喚
(
わめ
)
いた。「オヽ、今こそ、俺はあの聖像を造らう! あゝ、もう俺に造れる! 造れる! 有り難い!」
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
喚
常用漢字
中学
部首:⼝
12画
“喚”を含む語句
叫喚
喚起
喚声
喚叫
招喚
阿鼻叫喚
召喚
喚出
喚問
喚上
泣喚
喚子鳥
喚覚
叫喚合唱
想念喚起
大叫喚
喚発
喚鈴
愛嬌喚
喚醒
...