吉原よしはら)” の例文
へえ観音様くわんおんさまのうしろに……あなたは吉原よしはら熊蔵丸屋くまざうまるやの月の華魁おいらんぢやアございませんか。女「おやうしてわたしを御存知ごぞんぢです。 ...
南瓜は綽号あだなだよ。南瓜の市兵衛いちべゑと云つてね。吉原よしはらぢや下つぱの——と云ふよりや、まるでかずにはいつてゐない太鼓持たいこもちなんだ。
南瓜 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ことに、その引手茶屋ひきてぢややには、丁度ちやうど妙齡としごろになるむすめ一人ひとりあつて、それがその吉原よしはらるといふことを、兼々かね/″\非常ひじやうきらつてる。むすめまち出度でたいとふ。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
長吉ちやうきちは第一に「小梅こうめ伯母をばさん」とふのはもと金瓶大黒きんぺいだいこく華魁おいらんで明治の初め吉原よしはら解放の時小梅こうめ伯父をぢさんを頼つて来たのだとやらふ話を思出おもひだした。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
一體八景といふのは隨分長い間の流行はやり言葉であつて、何八景かに八景、しまひには吉原よしはら八景、辰巳たつみ八景とまで用ゐられて、ふけて逢ふ夜は寢てからさきのなぞと
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
或時には吉原よしはらで焼死んだ遊女の死骸を三列ばかりにして並べて、そこに警官がひとり立つてゐる写真を載せ、これは本国の日本で既に発表禁止になつたものだと註したことなどもある。
日本大地震 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
吉原よしはら身賣みうりせし金子にてたしかなりそれと申も十八ヶ年以前の御恩がへしとぞんじていたしたる其金故にかへつて文右衞門樣のあだとなりしはまこと御氣毒おきのどくともなにとも申樣も御座なくことに又肝腎の町所名前を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あねさま唐茄子とうなすほうかふり、吉原よしはらかふりをするもり、且那だんなさまあさよりお留守るすにて、お指圖さしづたまおくさまのふうれば、小褄こづまかた友仙ゆふぜん長襦袢ながじゆばんしたながく、あか鼻緒はなを麻裏あさうらめして、あれよ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「その代り當れば千兩で、——一箱ありや吉原よしはらの大門だつて閉められる」
吉原よしはら中店ちうみせ
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
もう地獄ぢごくへも汽車きしや出来できたかえ、おどろいたね。甲「へえゝどうも旦那だんな、誠にしばらく……。岩「いやア、アハヽヽこれは吉原よしはら幇間たいこもち民仲みんちうだね。 ...
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
僕はこの一行いちぎやうの中に秋風しうふうの舟を家と頼んだ幇間ほうかんの姿を髣髴はうふつした。江戸作者の写した吉原よしはらは永久にかへつては来ないであらう。
ふるくから、ひとつた有名いうめい引手茶屋ひきてぢやや。それが去年きよねん吉原よしはら火事かじけて、假宅かりたく營業しやうばいをしてたが、つゞけて營業しやうばいをするのには、なほしをしなくてはならぬ。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そへせがれ夫婦ふうふならびに喜八が是まであつ世話せわなりれいとしてつかはしまた吉原よしはら男藝者をとこげいしや五八は心實しんじつなる者故吉右衞門きちゑもんよろこびの餘りせがれいのちの親なりとがう禮金れいきん三百兩をおくまた初瀬留はせとめよりも衣類いるゐ其外目録もくろくにして委細ゐさいの文を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それ以来吉原よしはらは、今でもあいつのうはさで持ちきつてゐるやうだ。かくこれで見ても、なんでも冗談じようだんだと思ふのは危険だよ。
南瓜 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
こゝくだんむすめたるや、いまもおはなししたとほり、吉原よしはらことはぢとし、待合まちあひこといやだとつた心懸こゝろがけなんだから、まあはたからすゝめても、結綿いひわたなんぞにはうよりは
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それに以前もと吉原よしはら一遍いつぺんでもあなたの所へ出たことがあるんですから、良人うちのひとに知れると悋気りんきではありませんが、いやな顔でもされるとあなたも御迷惑ごめいわくでございませうから内々ない/\で。
吉原よしはら玉屋山たまやさん三郎方へ五十兩に身賣みうりして其内廿五兩を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これは吉原よしはらの焼け跡にあつた無数のり紙の一つである。「舟の中にります」と云ふのは真面目まじめに書いた文句もんくかも知れない。しかし哀れにも風流である。
なにふんだな、さつき身延山みのぶさんへおまゐりにた人が道に迷つて此処こゝたが、それは吉原よしはらにゐた時に出た客なんだよ、三りやうつゝんで出したがあと切餅きりもち(二十五りやうづゝみ)二へうぐらゐはある様子やうす
引添ひきそつて、手拭てぬぐひ吉原よしはらかぶりで、えん蹴出けだしの褄端折つまぱしよりをした、前髮まへがみのかゝり、びんのおくれ明眸皓齒めいぼうかうし婦人ふじんがある。しつかりした、さかり女中ぢよちうらしいのが、もう一人ひとりあとについてゐる。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いつか、吉原よしはら大火たいくわもおなじであつた。しかもまだだれわすれない、あさからすさまじい大風おほかぜで、はなさかりだし、わたし見付みつけから四谷よつや裏通うらどほりをぶらついたが、つちがうづをいてけられない。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)