“剩(あまつさ)” の例文
新字:剰
……川(かは)も此(こ)の邊(あたり)は最(も)う大溝(おほどぶ)で、泥(どろ)が高(たか)く、水(みづ)が細(ほそ)い。剩(あまつさ)へ、棒切(ぼうぎれ)、竹(たけ)の皮(かは)などが、ぐしや/\と支(つか)へて、空屋(あきや)の前(まへ)は殊更(ことさら)に其(そ)の流(ながれ)も淀(よど)む。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
使の人の文をば讀み給ひぬといふに、君は來給はざりき。剩(あまつさ)へ君は遽(にはか)に物におそるゝ如きさまして、羅馬に還り給ひぬと聞き候ひぬ。當時君が振舞をば、何とか判じ候ふべき。
肩(かた)が頸(くび)より高(たか)く聳(そび)えて、俗(ぞく)に引傾(ひきかたが)りと云(い)ふ代物(しろもの)、青(あを)ン膨(ぶく)れの腹(はら)大(おほい)なる瓜(うり)の如(ごと)しで、一尺(いつしやく)餘(あま)りの棚(たな)ツ尻(ちり)、剩(あまつさ)へ跛(びつこ)は奈何(いかん)。
鑑定 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
剩(あまつさ)へ其(そ)の扉(ドア)には、觀世綟(くわんぜより)の鎖(ぢやう)もさゝず、一壓(ひとお)しに押(お)せば開(あ)くものを、其(そ)の時(とき)まで美少年(びせうねん)は件(くだん)の自若(じじやく)たる態度(たいど)を續(つゞ)けた。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
次手(ついで)にとぼけたのがある。江戸(えど)の掏兒(すり)は、人(ひと)の下駄(げた)を脱(ぬ)がすと聞(き)くが、唐人(たうじん)だけに穿(は)いて居(ゐ)る靴(くつ)を脱(ぬ)がされて、剩(あまつさ)へ屋根(やね)へ上(あ)げられた、と云(い)ふのが一(ひと)つ。
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
尾(を)と頭(あたま)を以(も)つて撃(う)つた炎(ほのほ)の大蛇(おろち)は、黒蛇(くろへび)に變(へん)じて剩(あまつさ)へ胴中(どうなか)を蜿(うね)らして家々(いへ/\)を卷(ま)きはじめたのである。それから更(さら)に燃(も)え續(つゞ)け、焚(や)け擴(ひろ)がりつゝ舐(な)め近(ちか)づく。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
はじめから、形(かたち)と云(い)ひ、毛色(けいろ)と云(い)ひ、剩(あまつさ)へ其(それ)が、井戸川(ゐどがは)の橋(はし)の欄干(らんかん)で、顏洗(かほあら)ひを遣(や)つて居(ゐ)た猫(ねこ)と同一(おなじ)ことで、續(つゞ)いては、お春(はる)の可愛(かはい)がつた黒(くろ)にも似(に)て居(ゐ)る。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
其(そ)の山(やま)が崩(くづ)れたので、當時(たうじ)大地震(おほぢしん)の觸頭(ふれがしら)と云(い)つた場所(ばしよ)の、剩(あまつさ)へ此(こ)の四五日(しごにち)、琅玕(らうかん)の如(ごと)き蘆(あし)ノ湖(こ)の水面(すゐめん)が風(かぜ)もなきに浪(なみ)を立(た)てると、うはさした機(をり)であつたから。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
何(なん)ぞかへつて自(みづか)ら色(いろ)に迷(まよ)ふことをなして、佗(た)の女子(ぢよし)を愛戀(あいれん)し、剩(あまつさ)へ關帝(くわんてい)の髯(ひげ)に紅(べに)を塗(ぬ)る。言語道斷(ごんごだうだん)ぢやと。既(すで)に竹(たけ)の籠(かご)を作(つく)らしめ、これに盛(も)りて江(え)の中(なか)に沈(しづ)めんとす。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
が、事(こと)もおろかや如法(によほふ)の荒海(あらうみ)、剩(あまつさ)へ北國日和(ほくこくびより)と、諺(ことわざ)にさへ言(い)ふのだから、浪(なみ)はいつも穩(おだや)かでない。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
剩(あまつさ)へ辿(たど)り向(むか)ふ大良(だいら)ヶ嶽(たけ)の峰裏(みねうら)は——此方(こちら)に蛾(ひとりむし)ほどの雲(くも)なきにかゝはらず、巨濤(おほなみ)の如(ごと)き雲(くも)の峰(みね)が眞黒(まつくろ)に立(た)つて、怨靈(をんりやう)の鍬形(くはがた)の差覗(さしのぞ)いては消(き)えるやうな電光(いなびかり)が山(やま)の端(は)に空(くう)を切(き)つた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
あ危(あぶ)ない、棚(たな)の破鍋(われなべ)が落(お)ちかゝる如(ごと)く、剩(あまつさ)へべた/\と崩(くづ)れて、薄汚(うすよご)れた紀州(きしう)ネルを膝(ひざ)から溢出(はみだ)させたまゝ、……あゝ……あゝ行(や)つた!……男振(をとこぶり)は音羽屋(おとはや)(特註(とくちう)、五代目(ごだいめ))の意氣(いき)に
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
剩(あまつさ)へ野町(のまち)、野田寺町(のだでらまち)、地黄煎口(ぢくわうぜんぐち)、或(あるひ)は鶴來往來(つるぎわうらい)より、野菜(やさい)を擔荷(にな)ひて百姓(ひやくしやう)の八百物市(やほものいち)に赴(おもむ)く者(もの)、前後疾走(ぜんごしつそう)相望(あひのぞ)みて、氣競(きほひ)の懸聲(かけごゑ)勇(いさ)ましく、御物見下(おものみした)を通(とほ)ること、絡繹(らくえき)として織(お)るが如(ごと)し。
鉄槌の音 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)