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偶
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たまたま
ふりがな文庫
“
偶
(
たまたま
)” の例文
尋
(
つ
)
いでわたくしは保さんを
訪
(
と
)
おうと思っていると、
偶
(
たまたま
)
女
(
むすめ
)
杏奴
(
あんぬ
)
が病気になった。
日々
(
にちにち
)
官衙
(
かんが
)
には
通
(
かよ
)
ったが、公退の時には家路を急いだ。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「近時余ガ詩格一変ス。
偶
(
たまたま
)
一絶ヲ得タリ。」として「自喜新編旧習除。才仙詩訣在吾廬。一窓梅影清寒夜。月下焚香読詩書。」
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
偶
(
たまたま
)
夜
(
よる
)
の
雨
(
あめ
)
が
歇
(
や
)
んでふうわりと
軟
(
やはら
)
かな
空
(
そら
)
が
蒼
(
あを
)
く
割
(
わ
)
れて
稍
(
やゝ
)
昇
(
のぼ
)
つた
其
(
その
)
暖
(
あたゝ
)
かな
日
(
ひ
)
が
斜
(
なゝめ
)
に
射
(
さ
)
し
掛
(
か
)
けると、
枯
(
か
)
れた
桑畑
(
くはばたけ
)
から、
青
(
あを
)
い
麥畑
(
むぎばたけ
)
から
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
偶
(
たまたま
)
、伝書の様な姿に見えても、実は独立した成立を持つものと見てよいのである。東観漢紀に於ける紀の用法も、其である。
日本書と日本紀と
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
藤木川
(
ふぢきがは
)
の岸を
徘徊
(
はいくわい
)
すれば、
孟宗
(
まうそう
)
は黄に、
梅花
(
ばいくわ
)
は白く、
春風
(
しゆんぷう
)
殆
(
ほとん
)
ど
面
(
おもて
)
を吹くが如し。
偶
(
たまたま
)
路傍の
大石
(
たいせき
)
に一匹の
蝿
(
はへ
)
のとまれるあり。
病中雑記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
次郎さんの小さな時、
縁
(
えん
)
の上から下に居る弟を飛び越し/\しては遊んで居ると、
偶
(
たまたま
)
飛び
損
(
そこ
)
ねて弟を倒し、自分も倒れてしたゝか
鼻血
(
はなぢ
)
を出した。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
それを
此様
(
こん
)
な読方をして、
難有
(
ありがた
)
がって、
偶
(
たまたま
)
之を読まぬ者を
何程
(
どれほど
)
劣等の人間かのように
見下
(
みくだ
)
し、得意になって語る友も友なら、其を聴いて敬服する私も私だ。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
私は老境に入りかけ、業務多端のために媼にも全く無音に過ぎた。ただ
偶
(
たまたま
)
心に暇があるときに、媼の身の上の多幸ならむことを
希
(
こひねが
)
つてゐる。(昭和三年十月記)
日本媼
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
髪かたちも妓家の風情をまなび、○
伝
(
でん
)
しげ
太夫
(
だゆう
)
の心中のうき名をうらやみ、故郷の兄弟を恥いやしむ者有り、されども
流石
(
さすが
)
故園情
(
こえんのじょう
)
に
不堪
(
たえず
)
、
偶
(
たまたま
)
親里に帰省するあだ者成べし
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
事変以来、小学教員の不足と、その不足を至急に補うことから生じる質の低下とは心ある者を考えさせていたが、
偶
(
たまたま
)
小学校教員の万引横領事件が発覚したということである。
女性週評
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
さて、
偶
(
たまたま
)
、或る休み日に、彼女の映画が市内の何処の活動小屋にも掛っていなかったのである。そこで、Y君は諦めがたく、夕景頃から、彼女の住居のあたりを散歩してみたい気持に誘われた。
アンドロギュノスの裔
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
偶
(
たまたま
)
不平を以って鳴けば、
遽
(
にわか
)
に多言の
咎
(
とがめ
)
を獲、悔、
臍
(
ほぞ
)
を
噬
(
か
)
むも及ぶなし。尾を
揺
(
うご
)
かして憐を乞うを恥ず。今其罪名を責むるを蒙り、其状を
逼
(
せま
)
らる。伏して竜鱗を
批
(
う
)
ち竜頷を探る。
豈
(
あ
)
に敢て生を求めんや。
令狐生冥夢録
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
離会
豈
(
あに
)
偶
(
たまたま
)
なりと
云
(
い
)
はんや。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
或日
(
あるひ
)
正寧が
偶
(
たまたま
)
この事を聞き知って、「辞安は足はなくても、腹が
二人前
(
ににんまえ
)
あるぞ」といって、女中を戒めさせたということである。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
偶
(
たまたま
)
電気と文芸所載の諸家の芭蕉論の中に、一二
孟浪杜撰
(
まんらんづざん
)
の説を見出した故に、不平のあまり書きとどめる。(十一月四日)
雑筆
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
東歌に地名の多いのは、
偶
(
たまたま
)
東歌が真の東歌でない事を証して居る、と云ふ人もある。併し、其は民謡と地名との関係に理会がないから出た議論である。
万葉集のなり立ち
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
コレヨリ(治ヲ)請フ者日ニ多シ。居ルコト二、三年
頗
(
すこぶる
)
三径ノ資ヲ得タリ。
偶
(
たまたま
)
唐人ガ僧院ノ詩ヲ読ミ
帯雪松枝掛薜蘿
(
ゆきをおぶるのしょうしへいらをかく
)
トイフニ至ツテ
浩然
(
こうぜん
)
トシテ山林ノ志アリ。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
偶
(
たまたま
)
力
(
ちから
)
が
足
(
た
)
りないで
吹
(
ふ
)
き
散
(
ち
)
らされたのは、さういふ
時
(
とき
)
に
非常
(
ひじやう
)
に
便利
(
べんり
)
なやうに
捲
(
ま
)
いてあるので、どんな
陰
(
かげ
)
でも
其
(
そ
)
の
身
(
み
)
を
託
(
たく
)
する
場所
(
ばしよ
)
を
求
(
もと
)
めてころ/\と
轉
(
ころ
)
がつて
行
(
い
)
つては
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
自分は
此様
(
こん
)
な下らん真似をしていながら、
他
(
た
)
の額に汗して着実の浮世を渡る人達が
偶
(
たまたま
)
文壇の事情に通ぜぬと、直ぐ俗物と
罵
(
ののし
)
り、俗衆と
罵
(
ののし
)
って、独り
自
(
みずか
)
ら高しとしていた。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
偶
(
たまたま
)
、「芭蕉俳句定本」を読んでゐるうちに、海彼岸の文学の影響を考へたから、「芭蕉雑記」の後に加へることにした。
芭蕉雑記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
抽斎は決して
冷酒
(
れいしゅ
)
を飲まなかった。
然
(
しか
)
るに安政二年に地震に
逢
(
あ
)
って、ふと冷酒を飲んだ。その
後
(
ご
)
は
偶
(
たまたま
)
飲むことがあったが、これも三杯の量を過さなかった。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
一
黄梅
(
こうばい
)
の時節漸く過ぐ、正に
曝書
(
ばくしょ
)
すべし。
偶
(
たまたま
)
趙甌北
(
ちょうおうほく
)
の詩集を
繙
(
ひもと
)
くに左の如き絶句あるを見たり。
一夕
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
「
偶
(
たまたま
)
好機会が有ッて言出せば、その通りとぼけておしまいなさるし、考えて見ればつまらんナ」
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
これは
偶
(
たまたま
)
、安易な表現・不透明な観照・散文的な生活に満足してゐる、桂園派の欠陥を
曝
(
サラ
)
け出してゐるので、歴史的に存在の価値を失うてゐる人々の、無理会な放言に対して
古語復活論
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
李小二は、
陶朱
(
とうしゅ
)
の富を得た。
偶
(
たまたま
)
、その仙人に遇ったと云う事を疑う者があれば、彼は、その時、老人に書いて貰った、四句の語を出して示すのである。
仙人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
更に言へば、時間観念を挿入すれば、もつと適切に感じられるところだ。さうした方法をとらないところに、
偶
(
たまたま
)
、この語に限つて古い文法様式を保存してゐる痕が見えるのだ。
形容詞の論:――語尾「し」の発生――
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
偶
(
たまたま
)
立止る者が有るかと思えば、
熟
(
つらつ
)
ら視て、金持なら、うう、貧乏人だと云う、学者なら、うう、無学な奴だと云う、詩人なら、うう、俗物だと云う、
而
(
そう
)
して
匇々
(
さッさ
)
と行って了う。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
大正十四年
乙丑
(
いっちゅう
)
ノ歳晩予
偶
(
たまたま
)
『
有隣舎
(
ゆうりんしゃ
)
ト
其
(
その
)
学徒』ト題シタル新刊ノ書ヲソノ著者ヨリ恵贈セラレタリ。著者ハ
尾張国
(
おわりのくに
)
丹羽
(
にわ
)
郡丹陽村ノ人石黒万逸郎氏トナス。余イマダ石黒氏ト
相識
(
あいし
)
ラズ。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
山客、
偶
(
たまたま
)
「文芸春秋」二月号を読み、我鬼先生の愚を
嗤
(
わら
)
ふと共に佐佐木君の
屈
(
くつ
)
を歎かんと欲す。佐佐木君、請ふ、安心せよ。君を知るものに山客あり
矣
(
い
)
。
八宝飯
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
而も、此等は
偶
(
たまたま
)
古代的詞章の、片影の固定したものを包含した、其さへも古い時代のものゝ中に見られるのである。殆全部が、新しくなつた中に、ほんの少し俤を止めたもの、と言ふに過ぎない。
副詞表情の発生
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
維新の際福井藩の
貢進生
(
こうしんせい
)
となり大学南校に入りそのいまだ業を
卒
(
お
)
へざるに先立ちて
偶
(
たまたま
)
起立工商
(
きりつこうしょう
)
会社の
巴里
(
パリー
)
博覧会に陳列所を
設
(
もうく
)
るの挙あるを聞き、陳列所の通弁を
兼
(
かね
)
て売子となり仏国に渡航したり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
大豆右衛門、二十三歳の時、「さねかづら取りて京の歴々の女中方へ売べしと
逢坂山
(
あふさかやま
)
にわけ登り」しが、
偶
(
たまたま
)
玉貌
(
ぎよくばう
)
の
仙女
(
せんぢよ
)
と逢ひ、
一粒
(
いちりふ
)
の
金丹
(
きんたん
)
を服するを得たり。
案頭の書
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
頃日
(
けいじつ
)
偶
(
たまたま
)
書林の店頭に、数冊の
古
(
ふる
)
雑誌を見る。題して
紅潮社
(
こうていしや
)
発兌
(
はつだ
)
紅潮第何号と云ふ。知らずや、漢語に紅潮と云ふは女子の月経に
外
(
ほか
)
ならざるを。(四月十六日)
骨董羹:―寿陵余子の仮名のもとに筆を執れる戯文―
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
水滸伝の一節が、
偶
(
たまたま
)
彼の気分の上に、予想外の結果を及ぼしたのにも、実はこんな理由があつたのである。
戯作三昧
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
偶
(
たまたま
)
衆客
(
しゆうかく
)
皆
(
みな
)
杯
(
さかづき
)
を挙げて主人の健康を祝するや、ユウゴオ
傍
(
かたはら
)
なるフランソア・コツペエを顧みて云ふやう、「今この席上なる二詩人
迭
(
たがひ
)
に健康を祝さんとす。
亦
(
また
)
善からずや」
骨董羹:―寿陵余子の仮名のもとに筆を執れる戯文―
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
偶
(
たまたま
)
明子の満村に嫁して、
未
(
いまだ
)
一児を挙げざるは、
恰
(
あたか
)
も天意亦予が計画を
扶
(
たす
)
くるに似たるの観あり。
開化の殺人
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
狩野芳涯
(
かのうはうがい
)
常に
諸弟子
(
しよていし
)
に教へて
曰
(
いはく
)
、「
画
(
ぐわ
)
の神理、唯
当
(
まさ
)
に
悟得
(
ごとく
)
すべきのみ。師授によるべからず」と。一日芳涯病んで
臥
(
ふ
)
す。
偶
(
たまたま
)
白雨天を傾けて来り、
深巷
(
しんかう
)
寂
(
せき
)
として
行人
(
かうじん
)
を絶つ。
骨董羹:―寿陵余子の仮名のもとに筆を執れる戯文―
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
偶
(
たまたま
)
丸善へ行つて見たら、イバネス、ブレスト・ガナ、デ・アラルコン、バロハなぞの
西班牙
(
スペイン
)
小説が
沢山
(
たくさん
)
並べてあつた為め、こんな事を
記
(
しる
)
して置く気になつた。(二月一日)
点心
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
この劇は太虚及び
龔芝麓
(
ろうしろく
)
賊に降り、後に清朝の兵入るを聞くや、急に逃れて杭州に至り、追兵の至るに驚いて、
岳飛
(
がくひ
)
墓前、鉄鋳の
秦檜
(
しんくわい
)
夫人の
跨下
(
こか
)
に
匿
(
かく
)
る、
偶
(
たまたま
)
この鉄像の
月事
(
げつじ
)
に値ひ
八宝飯
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
東京の川にもこんな
水怪
(
すゐくわい
)
多し。
田舎
(
ゐなか
)
へ行つたら
猶
(
なほ
)
の事、
未
(
いまだ
)
に河童が
芦
(
あし
)
の中で、
相撲
(
すまふ
)
などとつてゐるかも知れない。
偶
(
たまたま
)
一遊亭
(
いちいうてい
)
作る所の
河太郎独酌之図
(
かはたらうどくしやくのづ
)
を見たから、思ひ出した事を
記
(
しる
)
しとどめる。
雑筆
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
偶
(
たまたま
)
僕の目に触れた或新聞の批評家なぞにも、全然あれがわからぬらしかつた。これは一方現状では、
尤
(
もつと
)
ものやうな心もちがする。同時に又一方では、尤もでないやうな心もちもする。(一月十日)
点心
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
けれども
偶
(
たまたま
)
かう言つたにしろ、直ちに僕を軽蔑するならば、それは
勿論
(
もちろん
)
大早計である。僕にも
亦
(
また
)
時に好意を表する女性の読者のない
訣
(
わけ
)
ではない。彼等の
一人
(
ひとり
)
は去年の夏、のべつに僕に手紙をよこした。
変遷その他
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
偶
常用漢字
中学
部首:⼈
11画
“偶”を含む語句
偶然
配偶
木偶
土偶
配偶者
偶人
偶々
偶〻
偶像
木偶坊
偶中
匹偶
偶数
偶然性
土偶像
時偶
偶合
偶時
偶座
土偶人形
...