うるは)” の例文
これは意志いしぢゃ、おもんじておくりゃらば、顏色がんしょくうるはしうし、そのむづかしいかほめておくりゃれ。祝宴最中いはひもなか不似合ふにあひぢゃわい。
鼻のあたり薄痘痕うすいもありて、口を引窄ひきすぼむる癖あり。歯性悪ければとて常にくろめたるが、かかるをや烏羽玉ぬばたまともふべくほとん耀かがやくばかりにうるはし。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
しかしてこの物いよ/\美しくわが目に見ゆるに從ひ、いよ/\うるはしきやはらかき聲にて(但し近代ちかきよの言葉を用ゐで) 三一—三三
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
ここにわたの神の女豐玉毘賣とよたまびめ從婢まかだち玉盌たまもひを持ちて、水酌まむとする時に、井にかげあり。仰ぎ見れば、うるはしき壯夫をとこあり。いとあやしとおもひき。
此群に十二歳をえじと見ゆる、すぐれてうるはしき娘あり。アヌンチヤタとなるべき姿にもあらず、さればとて又サンタとなるべき貌にもあらず。
おほきくなるにしたがつて少女をとめかほかたちはます/\うるはしくなり、とてもこの世界せかいにないくらゐなばかりか、いへなかすみからすみまでひかかゞやきました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
天禀てんぴんならむは教へずとも大なる詩人となりぬべし。野にふる花卉くわきうるはしさ、青山の自然の風姿、白水のおのづからなる情韻、豈人間の所爲ならむ。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
が、僕の作文は、——と云ふよりも僕等の作文は、大抵たいてい所謂いはゆる美文だつた。「富士の峯白くかりがね池のおもてくだり、空仰げば月うるはしく、余が影法師黒し。」
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
あらひ或時は酒の給仕きふじなどにも出るにお花は容顏かほかたちうるはしければ是をしたひ多くの旅人の中には種々なるたはぶれ事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たつた今、あなたが描いて見せた畫は、むしろ壓倒し過ぎるほどの對照を暗示ほのめかしてゐるのだ。あなたの言葉はみやびやかなアポロの姿をいともうるはしく描き出してゐる。
の方にうるはしき声して、此の軒しばし恵ませ給へといひつつ入り来るを、あやしと見るに、年は廿はたちにたらぬ女の、顔容かほかたち三一かみのかかりいとにほひやかに、三二遠山ずりの色よききぬ
唐、天竺は愚か、羅馬ろおま以譜利亜いげりやにも見られぬ図ぢや。桜に善う似たうるはしい花のの間に、はれ白象が並んでおぢやるわ。若い女子等が青い瓶から甘露かんろんでおぢやるわ。赤い坊様ぼんさまぢや。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
みやこなる父母ふぼかへたまひぬ。しうとしうとめらぬきやく許多あまたあり。附添つきそ侍女じぢよはぢらひにしつゝ、新婦よめぎみきぬくにつれ、浴室ゆどのさつ白妙しろたへなす、うるはしきとともに、やまに、まちに、ひさしに、つもれるゆきかげすなり。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その町の娘たちは、わたくしの知つてゐるばかりでも、二人や三人の美人ではなく、しかもそれが、ちよつと群をぬいたうるはしさだつたが、みな深窓のひととなりで、人の眼に觸れることが尠なかつた。
「郭子儀」異変 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
歳月としつきは かなしきかなや うるはしの み子らほろびて 蜻蛉あきつながるる
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
ただうるはしき人すごし
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
今彼は、クリストに從はざることのいかに貴き價を拂ふにいたるやを知る、そは彼このうるはしき世とそのうらとを親しく味ひたればなり 四六—四八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
ここに𧏛貝比賣きさげ集めて、蛤貝比賣待ちけて、おも乳汁ちしると塗りしかばうるはしき壯夫をとこになりて出であるきき。
戀人こひゞとそのうるはしい光明ひかりで、戀路こひぢやみをもらすといふ。またこひめくらならば、よるこそこひには一だん似合にあはず
圖するところはヂドに扮したるアヌンチヤタが胸像なりき。氣高けだかうるはしきその面輪おもわ、威ありてけはしからざる其額際、皆我が平生の夢想するところに異ならず。
唯後に残つたは、向うの岸の砂にさいた、したたかな柳の太杖で、これには枯れ枯れな幹のまはりに、不思議やうるはしいくれなゐの薔薇の花が、かぐはしく咲き誇つて居つたと申す。
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
みつともな婦人をんなといふものは創造のうるはしい顏の汚點だと見なします。でも殿方とのがたにはたゞ力と勇武だけをおそなへになれば結構ですわ。その座右の銘としては——狩獵、射撃、戰ですわ。
知らねばうたがはるゝも道理もつともなりいで其譯そのわけは斯々なり宵に御身たちが出行いでゆきし跡へ年の頃廿歳ばかり容顏ようがんうるはしき若者來れりいづれにも九しうへん大盡だいじん子息むすこならずば大家たいけつかはるゝ者なるべし此大雪にみち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
山のうるはしとふも、つちうづたかき者のみ、川ののどけしと謂ふも、水のくに過ぎざるを、ろうとして抜く可からざる我が半生の痼疾こしつは、いかつちと水とのすべき者ならん、と歯牙しがにも掛けずあなどりたりしおのれこそ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
うるはしき壯夫をとこの、その名も知らぬが、ごとに來りて住めるほどに、おのづからにはらみぬ」といひき。
叔父御をぢごカピューレット殿どのおなじく夫人ふじんおなじく令孃達むすめごがたうるはしきめひのローザライン。リヸヤ。
尤も、遠眼の事とて、しかとはわきまへ難く候へども、里血色至極うるはしき様に相見え、折々母の頸より手を離し候うて、香炉様の物より立ち昇り候煙を捉へんとする真似など致し居り候。
尾形了斎覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
言ふことなかれ、汝が心のきずは尚血をしたゝらすと。針につらぬかれたる蝶の猶その五彩の翼をふるふを見ずや。落ちたぎつ瀧の水のしぶきと散りて猶うるはしきを見ずや。これはこれ詩人の使命なり。
... 私は正に——比喩的ひゆてきに云つて——こんな鎖にあなたをつないでおきませう」(彼の時計の鎖に觸りながら)「えゝ、『うるはしく小さきものよ、我が胸に汝を帶びむ、我が寶石を失はざらん爲め。』」
をみな心のうるはしき徳性さへもうせにしか。