際限さいげん)” の例文
朝鮮牛てうせんうし大分だいぶ輸入ゆにふされたがいねころのやう身體からだ割合わりあひ不廉たかいからどうしたものだかなどといふことが際限さいげんもなくがや/\と大聲おほごゑ呶鳴どなうた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
だまつてては際限さいげんもなくつのつてれはれはくせつて仕舞しまひます、だい一は婢女をんなどもの手前てまへ奧樣おくさま威光ゐくわうげて、すゑには御前おまへことものもなく
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そんなことをくりかえしているうちに、泥堆でいたい返波かえしなみがさわいでいるところへさしかかった。波に巻かれて、丸太が際限さいげんもなくまわりだしてとまらない。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
トランクの後を追って書きつけていると際限さいげんがないので、しばらくトランクから離れた話をしようと思う。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
うえればかぎりもないが、したればまだ際限さいげんもないのです。何事なにごとみなふかふか因縁いんねん結果けっかとあきらめて、おたがい無益むやく愚痴ぐぢなどはこぼさぬことにいたしましょう。
錢形平次は際限さいげんもなく浴びせ乍ら、滅茶々々に饒舌り捲つて二階中の客を沈默させてしまひました。
そのうちにくずは、「こうやって文福ぶんぶくちゃがまのおかげでいつまでもおかねもうけをしていても際限さいげんのないことだから、ここらでやすませてやりましょう。」とかんがえました。
文福茶がま (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
しかも、北条遺産の没収地には、限りがあり、恩賞不足、あるいは、恩賞未受の人数には際限さいげんがない。——どんな武士大衆も、ここへきてみな考えた。どう考え出したかといえば。
何時いつまでかんがへてつたとて際限さいげんのないことつは此樣こんなかすのは衞生上ゑいせいじやうにもきわめてつゝしことおもつたのでわたくしげん想像さうぞう材料ざいりようとなつて古新聞ふるしんぶんをば押丸おしまろめて部室へや片隅かたすみ押遣おしや
くらつたのはよるだらう、よるくらさのひろいのは、はたけ平地ひらちらしい、はらかもれない……一目ひとめ際限さいげんよるなかに、すみにじんだやうにえたのはみづらしかつた……が、みづでもかまはん
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ほんとうに! このとき指先でちょっと正九郎をつつく者があったら、かれこしを前に折ってげらげらと笑ったであろう。際限さいげんもなく笑って、しまいには垣根かきねの下にぶったおれたことであろう。
空気ポンプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
そして此の氣懸が際限さいげんも無く彼を惱す。で何うかすると呆返あきれかへつたやうに
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
いつおかへ上がれる事か分らない。そうしてどこへ行くのだか知れない。ただ黒いけぶりを吐いて波を切って行く事だけはたしかである。その波はすこぶる広いものであった。際限さいげんもなくあおく見える。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こんなことはかぞえたてれば際限さいげんもない。もっとひどいのになると、わざと私に過失をさせたり、自分でどうかしておいて、それを私の過失かのように言い張って、この同じ刑罰を私に加えるのだった。
つひにはにしたかま刄先はさきすこしづゝつちをほじくりつゝをんなしろ手拭てぬぐひはし微動びどうさせては俯伏つゝぷしなから微笑びせうしながら際限さいげんもなく其處そこ凝然ぢつとしてようとする。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
わたくしはその当時とうじおもして、おぼえずなみだれつつも、ちかおとずれるこちらの世界せかいははがどんな様子ようすをしていられるかを、あれか、これかと際限さいげんもなく想像そうぞうするのでした。
岡安の電気恐怖病症状については、この上述べると際限さいげんがないので、この辺でよしたい。「俺は電気に殺されるに違いないんだ」と彼は口癖くちぐせのように言っていたもんだ。
電気看板の神経 (新字新仮名) / 海野十三(著)
長々と書くと際限さいげんもありませんが、ざつと筋だけを通すと、その晩進藤勝之助は、深田琴吾、山家斧三郎の二人の惡者を取つて押へて、御隱殿裏の奧方の隱れ家に飛込んで來たのでした。
中には活々いき/\青草あをくさえている古いくづれかけた屋根を見える。屋根は恰で波濤なみのやうに高くなツたり低くなツたりして際限さいげんも無く續いてゐた。日光の具合で、處々光ツて、そしてくろくなツてゐる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
たがいに際限さいげんもなくわらいころげたことだった。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
それも道理だうりゆき夜道よみちしてとはひかねてこゝろならねどまた暫時しばらく二度目にどめれしちやかをうすらぐころになりてもおともなければいまぬものかるものかてにもならずてにして何時いつといふ際限さいげんもなしちがひになるともそれは
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼等かれらはかうしていへうちからこゑてゝはげしくばれるまではおそれ/\も際限さいげんのないはなしふけるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ことわざにもうえにはうえとやら、一つの神界しんかいうえにはさらに一だんたか神界しんかいがあり、そのまたうえにも一そうおく神界しんかいがあるとった塩梅あんばいに、どこまでっても際限さいげんがないらしいのでございます。
それから際限さいげんもなく混亂が續きました。醫者が來る前に、呼び掛ける者、泣き叫ぶもの、水をかける者、背中せなかを叩くもの、滅茶々々な介抱をしましたが、お百合はもう息を吹き返しさうもありません。
その辯舌は際限さいげんもなく發展するのです。