間柄あいだがら)” の例文
この両人ふたりが卒然とまじわりていしてから、傍目はためにも不審と思われるくらい昵懇じっこん間柄あいだがらとなった。運命は大島おおしまの表と秩父ちちぶの裏とを縫い合せる。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
書くことが少し先走りしすぎたが、要するに、道江とぼくとの間柄あいだがらは、どちらのがわからいっても、親類ないし友だち以上のものではない。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
決して風波ふうはを起させないと云うのは、畢竟ひっきょう養父母と養子との間柄あいだがらの悪いのは養子の方の不行届ふゆきとどきだと説を極めてたのでしょう。所が私は正反対で
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
愛情あいじょうともなわぬつめたい夫婦ふうふ間柄あいだがら……他人ひとさまのことはぞんじませぬが、わたくしにとりて、それは、にもあさましい、つまらないものでございました……。
「どれ、その根掛ねがけというのは。」といって、老人ろうじんかって、しました。たがいにかおなじみの間柄あいだがらである、商売仲間しょうばいなかまだとわかりました。
らんの花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれども、私の高慢と、彼の真実の威厳とは、いつも二人を「言葉をかわすくらいの間柄あいだがら」にしていたのであった。
かの六月の夜が過ぎてからほどもなく木部と葉子とは恋という言葉で見られねばならぬような間柄あいだがらになっていた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「成程私は意久地なしだ、意久地なしに違いないが、しかしなんぼ叔母甥の間柄あいだがらだと言ッて面と向ッて意久地なしだと言われては、腹も立たないがあんまり……」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ほんとうに親一人子一人の間柄あいだがらであったが、そういう間柄であればある程、あの妙な肉親憎悪とでもいう様な感情の為に、おたがいに何となく隔意かくいを感じ合っていた。
夢遊病者の死 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
修験者は二三年ぜんから浦戸に来て、長者の家へ出入でいりしている者で、老人達とも親しい間柄あいだがらでありました。
宇賀長者物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
けれどみなこういう気持でいることはよくお互いに知りきっている間柄あいだがらだけにおのずとわかっていた。
悪右衛門あくうえもんおどろいてかえると、それはおな河内国かわちのくに藤井寺ふじいでらというおてら和尚おしょうさんでした。そのおてら石川いしかわいえ代々だいだい菩提所ぼだいしょで、和尚おしょうさんとは平生へいぜいから大そう懇意こんい間柄あいだがらでした。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
また小林はかねての持論に、仮令たとい如何いかに親密なる間柄あいだがらたるも、決して、人の意をげしめて、おのれの説に服従せしむるは、我の好まざる所、いわんやわれわれ計画する処の事は
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
三の重要な人物と相識そうしき間柄あいだがらであるが、今や夫人はすこぶる重大な訴訟そしょうを起していて、彼女自身の運命もまたその子女の運命も、かかってそれら人物の手中にあるというのである。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
……なあ、姉ちゃん、なんぼ親しい間柄あいだがらかてこんなこというたら自分の恥やし、愛憎あいそつかされるかも分れへん思てじっと辛抱しんぼしててんけど、もうもう今日は何も彼もいうてしもてんし。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
太子の御父母も、御祖父母も、すべて蘇我家と親密な間柄あいだがらにあり、太子の妃たる刀自古郎女とじこのいらつめもまた馬子の娘であった。同族をもって戦う悲痛はすでに青年の日に身をもって知っておられた。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
そんなことから、先生の深山理学士と生徒の白丘ダリアとは、何でもずかずかと云い合う間柄あいだがらになった。しかしこの少女が、まだ十八歳であるとは、学士の容易に信じかねるところであった。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
久しぶりに君の顔を見た喜びも大きかったが、それよりも、君とマア坊が、まるで旧知の間柄あいだがらのように、にこにこ笑って並んで歩いて来たのを見て、仰天したのだ。お伽噺とぎばなしのような気がした。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
船大工の与兵衛老爺おやじとこの船の船頭の助蔵とは、入魂じっこん間柄あいだがらと見えました。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
平生往来しない仲でも、僅か二年か三年に一遍ぐらいしか会わないでも、昔し親しくした間柄あいだがらめんむかった時にいい知れないなつかしさがある。滅多に会わないでも永い別れとなると淋しい感がある。
鴎外博士の追憶 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
自分達夫婦の間柄あいだがらを考えて見ても、そこに無理はないのだと思い返せないほど理窟りくつとおらない頭をもった津田では無論なかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そうしますと、これまで毎日まいにちなかむつまじく、らしていた二人ふたりは、てき味方みかた間柄あいだがらになったのです。それがいかにも、不思議ふしぎなことにおもわれました。
野ばら (新字新仮名) / 小川未明(著)
……実は私は、女学校を卒業前後から、いつとはなしに、恭一きょういちさんと私とは許婚いいなずけ間柄あいだがらだとばかり信じて来ました。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
一体塾生の乱暴と云うものはれまで申した通りであるが、その塾生同士相互あいたがい間柄あいだがらと云うものはいたって仲のいもので、決してあらそいなどをしたことはない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
二人ふたりはたして本当ほんとう御姉妹ごきょうだい間柄あいだがらなのか、それとも豐玉姫とよたまひめ御分霊ごぶんれい玉依姫たまよりひめでおありになるのか、うもそのへんがまだ充分じゅうぶんわたくしちないのでございます。
それに、井関さんの細君さいくんというのが又、非常な交際家で、私の家内のみならず、会員達の細君れんと大変親しくしていまして、おたがいに訪問をし合うような間柄あいだがらになっていたのです。
覆面の舞踏者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
どうせ此処ここまで知れてしもた以上、自分と光子さんとの間柄あいだがら納得さして、それ承認してくれたら、自分は夫大事にする、きっと夫婦仲も円満に行く、綿貫の奴どんな妨害したところで
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それを差しいて里へ手紙をやる必要はほとんどあるまいとまで平生から信じていたお延は、筆を持ったまま、目下自分と津田との間柄あいだがら
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すべて修行場しゅぎょうばひとによりてめいめいちがう。家屋かおく内部なかかるるものもあれば、やまなかかるるものもある。親子おやこ夫婦ふうふ間柄あいだがらでも、一しょにはけっしてむものでない。
私達はそれを機縁に、それから度々たびたび手紙のやり取りをした程の間柄あいだがらとなったのである。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
しまいには、本名ほんみょうをいうよりか、仲間なかま間柄あいだがらだけに、あだぶほうが、したしみのあった場合ばあいもあるが、そばをとおったどらねこに、いしげるのがおそかったからといって、こころから軽蔑けいべつした意味いみ
からす (新字新仮名) / 小川未明(著)
前にいえる棄てて顧みずとは、父子の間柄あいだがらにても、その独立自由を妨げざるの趣意のみ。西洋書の内に、子生れてすでに成人に及ぶの後は、父母たる者は子に忠告すべくして命令すべからずとあり。
中津留別の書 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
従兄いとこうちのついむこうなので、両方のものが出入ではいりのたびに、顔を合わせさえすれば挨拶あいさつをし合うぐらいの間柄あいだがらであったから。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼女との間柄あいだがらを、今まで通り混り気のないものにして置きたいと思うのである。
木馬は廻る (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
自分のひざを突っつきながら、「なぜあいつに対して、そう改まってるんです。元から知ってる間柄あいだがらじゃありませんか」と冷笑ひやかすような句調くちょうで云った。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
恐らくこれは栗原さんの取って置きの話のたねで、彼は誰にでも、そうした打開うちあけ話をしても差支さしつかえのない間柄あいだがらになると、待兼まちかねた様に、それを持出すのでありましょうが、私もある晩のこと
モノグラム (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
四人よつたりぜんに向いながら話をした。お兼さんは佐野とはだいぶ心やすい間柄あいだがらと見えて、時々向側から調戯からかったりした。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すべてこれらの諸点において、先生とていたりがたくけいたりがたき間柄あいだがらにありながら、しかも丁寧に頭を下げるのは、まられて仕方なしに下げるのではない。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
昔はお辞儀の仕方が気に入らぬと刀のつかへ手をかけた事もありましたろうが、今ではたとい親密な間柄あいだがらでも手数のかかるような挨拶あいさつはやらないようであります。
文芸と道徳 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
往来で行き会う時だけ、「好い御天気で」などと声をかけるくらいの間柄あいだがらに過ぎなかったらしく思われる。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もし第二の親子という言葉が使えるなら、それは最も適切にこの二人の間柄あいだがらを説明するものであった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私は兄さんのこの態度で辟易へきえきするほどに臆病ではありませんでした。また思う事を云いおおせずに引込むほどうと間柄あいだがらでもありませんでした。私は一歩前へ進みました。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私も多少知っている間柄あいだがらだから気の毒に思って、職業は無いか職業は無いかぐらい人に尋ねて見るが、どこにもそう云う口が転がっていないので残念ながらまだそのままになっています。
道楽と職業 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私は意見の相違はいかに親しい間柄あいだがらでもどうする事もできないと思っていましたから、私の家に出入りをする若い人達に助言はしても、その人々の意見の発表に抑圧よくあつを加えるような事は
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
余と銀杏返しの間柄あいだがらにこんなせつないおもいはないとしても、二人の今の関係を、この詩のうち適用あてはめて見るのは面白い。あるいはこの詩の意味をわれらの身の上に引きつけて解釈しても愉快だ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
同じく瓜と云う字のつく所を以て見ると南瓜も糸瓜も親類の間柄あいだがらだろう。親類付合のある南瓜の句を糸瓜仏に奉納するのに別段の不思議もないはずだ。そこでついでながら此句も霊前に献上する事にした。