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鈍
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どん
ふりがな文庫
“
鈍
(
どん
)” の例文
私は、これまで斎藤茂吉についてはいろいろ余り書きすぎたので、今、いくら
鈍
(
どん
)
な
頭
(
あたま
)
をひねっても、どうしても書く事が浮かんでこない。
茂吉の一面
(新字新仮名)
/
宇野浩二
(著)
初回のときは、別になんとも思わんじゃったけんど、あんまり、毎回じゃけ、
鈍
(
どん
)
なわたしも、変に思うて見るようになりました。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
預けられた茶山の塾の壁に「山
凡
(
ぼん
)
、
水
(
みず
)
愚
(
ぐ
)
、先生
鈍
(
どん
)
」の出奔遺書をのこして京地へ走った一書生の頼久太郎は、今では、山陽外史
頼襄
(
らいじょう
)
の名を
梅颸の杖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「おまえは、
鈍吉
(
どんきち
)
だ。」と、いったのが
原因
(
げんいん
)
となって、
生徒
(
せいと
)
たちは、
彼
(
かれ
)
のことを
鈍
(
どん
)
ちゃんとあだ
名
(
な
)
するようになりました。
からす
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
鈍
(
どん
)
な、はずみの
無
(
な
)
い、
崩
(
くづ
)
れる
綿
(
わた
)
を
踏越
(
ふみこ
)
し
踏越
(
ふみこ
)
しするやうに、
褄
(
つま
)
が
縺
(
もつ
)
れる、
裳
(
もすそ
)
が
亂
(
みだ
)
れる……
其
(
それ
)
が、やゝ
少時
(
しばらく
)
の
間
(
あひだ
)
見
(
み
)
えました。
人魚の祠
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
▼ もっと見る
ロミオ
心臟
(
しんざう
)
が
此處
(
こゝ
)
に
殘
(
のこ
)
ってゐるのに、
何
(
なん
)
で
歸
(
かへ
)
ることが
出來
(
でき
)
ようぞい?
鈍
(
どん
)
な
土塊
(
つちくれ
)
め、
引返
(
ひッかへ
)
して、おのが
中心
(
たましひ
)
を
搜
(
さが
)
しをれ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
而
(
しか
)
して
再
(
ふたた
)
び白の独天下になった。
可愛
(
かあい
)
がられて、大食して、弱虫の白はます/\弱く、
鈍
(
どん
)
の性質はいよ/\鈍になった。よく
寝惚
(
ねぼ
)
けて
主人
(
しゅじん
)
に吠えた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
けれども僕には僕でまた相当の
云草
(
いいぐさ
)
があるんだ。僕の
鈍
(
どん
)
は必ずしも
天賦
(
てんぷ
)
の能力に原因しているとは限らない。僕に時を与えよだ、僕に金を与えよだ。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
鈍
(
どん
)
な私たちにもよく腹に入りました。極楽へ参らせていただくためには、ただ念仏すればよいのでございますな。ただそれだけでよいのでございますな。
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
穀物のどっさりある連中は、難民のことをぶすくさ言う。そうとも。……飢えのため人間は頭が変になる。
鈍
(
どん
)
する、兇暴になる。飢えは甘いもんじゃない。
妻
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
俗にいわゆる貧すれば
鈍
(
どん
)
するとの言は心理学上の事実にして経済学上の原理なり、富者ますます富めば貧者はいよいよ貧なり、貧より来る苦痛の中にこの絶望に沈むこと
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
「
折角
(
せつかく
)
の
御越
(
おこし
)
やさかい、
山中
(
やまぢう
)
捜
(
さが
)
しましたが
唯
(
たつた
)
一
本
(
ぽん
)
ほか
見附
(
みつか
)
りまへなんので、
甚
(
えら
)
い
鈍
(
どん
)
な
事
(
こと
)
とす」
茸の香
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
貧
(
ひん
)
すりゃ
鈍
(
どん
)
になったように自分でせえおもうこのおれを捨ててくれねえけりゃア、
真
(
ほん
)
の
事
(
こっ
)
たあ、明日の富に当らねえが
最期
(
さいご
)
おらあ強盗になろうとももうこれからア
栄華
(
えいが
)
をさせらあ。
貧乏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
貴孃
(
あなた
)
は
齋藤
(
さいとう
)
の
阿關
(
おせき
)
さん、
面目
(
めんもく
)
も
無
(
な
)
い
此樣
(
こん
)
な
姿
(
なり
)
で、
背後
(
うしろ
)
に
目
(
め
)
が
無
(
な
)
ければ
何
(
なん
)
の
氣
(
き
)
もつかずに
居
(
ゐ
)
ました、
夫
(
そ
)
れでも
音聲
(
ものごゑ
)
にも
心
(
こゝろ
)
づくべき
筈
(
はづ
)
なるに、
私
(
わたし
)
は
餘程
(
よつぽど
)
の
鈍
(
どん
)
に
成
(
な
)
りましたと
下
(
した
)
を
向
(
む
)
いて
身
(
み
)
を
恥
(
はぢ
)
れば
十三夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
たいていの
鈍
(
どん
)
な親なら、これだけ聞かされてはおさまるはずがなく、「なにをぬかす、鰻掻きめら」と、ありあう
笯
(
ど
)
を蹴散らしていきり立つところだが、さすがは
老骨
(
ろうこつ
)
、そんな未熟な
所為
(
しょい
)
はしない。
うすゆき抄
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「他あやん、えらい
鈍
(
どん
)
なこっちゃけど、こらわいには読めんわ。」
わが町
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
大きな水車がしぶきの息をふき、雫の汗をたらしてぐわらぐわらぐわらと恐しくまはつてゐる。糠埃のこもつた
舂
(
つ
)
き
場
(
ば
)
には無数の杵がこつとんこつとんと
鈍
(
どん
)
な音をたてて一本足の踊るやうに米をつく。
銀の匙
(新字旧仮名)
/
中勘助
(著)
「そりや嫌さ。
貧
(
ひん
)
すれば
鈍
(
どん
)
するツていふからね。」
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
「人間は矢っ張り
鈍
(
どん
)
な
奴
(
やつ
)
が結局勝つものらしい」
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「そこが、
床
(
ゆか
)
しい。
鈍
(
どん
)
じゃ、鈍じゃ、と其許はよく、庄次郎を叱りおったが、やはり、見どころがあった。ああいう
質
(
たち
)
が、晩成するものじゃて」
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
Oは東北の人だから、口の
利
(
き
)
き
方
(
かた
)
に私などと違った
鈍
(
どん
)
でゆったりした調子があった。そうしてその調子がいかにもよく彼の性質を代表しているように思われた。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
命を
賭
(
と
)
しても此帷幕の
隙見
(
すきみ
)
をす可く努力せずに居られぬ人を
哂
(
わら
)
うは
吾儕
(
われら
)
が
鈍
(
どん
)
な
高慢
(
こうまん
)
であろうが、同じ
生類
(
しょうるい
)
の進むにも、鳥の道、魚の道、
虫
(
むし
)
の道、また
獣
(
けもの
)
の道もあることを忘れてはならぬ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
まゝ
子
(
こ
)
たる
身
(
み
)
のおぬひが
此瀬
(
このせ
)
に
立
(
た
)
ちて
泣
(
な
)
くは
道理
(
だうり
)
なり、もの
言
(
い
)
へば
睨
(
にら
)
まれ、
笑
(
わら
)
へば
怒
(
おこ
)
られ、
氣
(
き
)
を
利
(
き
)
かせれば
小
(
こ
)
ざかしと
云
(
い
)
ひ、ひかえ
目
(
め
)
にあれば
鈍
(
どん
)
な
子
(
こ
)
と
叱
(
し
)
かられる、二
葉
(
ば
)
の
新芽
(
しんめ
)
に
雪霜
(
ゆきしも
)
のふりかゝりて
ゆく雲
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「他あやん、えらい
鈍
(
どん
)
なこっちゃけど、こらわいには読めんわ」
わが町
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
ずいぶんお前も
鈍
(
どん
)
ですね。エエ、なんてえ血の
巡
(
めぐ
)
りが悪いんだろう。あれほど、私が嫌だという気ぶりをみせていたものを
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
またあまり物に驚かない、いたって
鈍
(
どん
)
な男です。けれども出立
前
(
ぜん
)
あなたからいろいろ依頼を受けたため、兄さんに対してだけは、妙に鋭敏になりたがっていました。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
短気の石山さんが、
鈍
(
どん
)
な久さんを
慳貪
(
けんどん
)
に叱りつける。「車の
心棒
(
しんぼう
)
は
鉄
(
かね
)
だが、鉄だァて
使
(
つか
)
や
耗
(
へ
)
るからナ、
俺
(
おら
)
ァ段々
稼
(
かせ
)
げなくなるのも無理はねえや」と、
小男
(
こおとこ
)
ながら小気味よく稼ぐ
辰
(
たつ
)
爺さんがこぼす。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
物見役には、動作も鈍くて、すべてがのろい男だったが、元康は、
側
(
そば
)
物見として、大勢の
隼
(
はやぶさ
)
の中には、きっと一羽、この
鈍
(
どん
)
な
鴉
(
からす
)
を
交
(
ま
)
ぜて使った。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
美的にも倫理的にも、智的にも鋭敏過ぎて、つまり自分を苦しめに生れて来たような結果に
陥
(
おちい
)
っています。兄さんには甲でも乙でも構わないという
鈍
(
どん
)
なところがありません。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
かんのわるい子だったよ、物覚えものろかった。夜道にころんで、崖のソギ竹で片目をわるくしたような
鈍
(
どん
)
な子だった。
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「好いだろう」と答えた僕の声はいかにも
鈍
(
どん
)
に聞こえた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「いや笑えません。どうしてそれがしは、こう人の心を見るに
鈍
(
どん
)
なのでしょう。むしろ己れの不敏に哀れを催します」
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いくら
鈍
(
どん
)
な武松にでも、その三名の殺気満々な眼つきには、すぐこう気づかずにいられないものがある。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
嫂
(
ねえ
)
さんだって、お忙しいでしょ。兄はあの通りな
真正直者
(
ましょうじきもの
)
。清河県にいた頃から、
鈍
(
どん
)
で才覚なしでただ稼ぐ一方と、世間さまからもとかく小馬鹿にされ勝ちな兄でしたからね。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかも、北条遺産の没収地には、限りがあり、恩賞不足、あるいは、恩賞未受の人数には
際限
(
さいげん
)
がない。——
鈍
(
どん
)
な武士大衆も、ここへきてみな考えた。どう考え出したかといえば。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
周瑜
(
しゅうゆ
)
の
愚
(
ぐ
)
、孔明の
鈍
(
どん
)
、いまこの所へ来てさとった。彼、偶然にも、赤壁の一戦に、我を
破
(
やぶ
)
って、勢い大いにふるうといえども、要するに
弓下手
(
ゆみべた
)
にもまぐれあたりのあるのと同じだ。
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
堂上における“尊氏なし”などという排他的空気にも、彼は
鈍
(
どん
)
のようでいて鈍感ではない。とくに六月六日の宵からは、すでに非常をさとって、六波羅一帯は急武装にかかっていた。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「それや大した内助だ。いくら
鈍
(
どん
)
な足利殿でも、内には誰か一人ぐらい経理の才物がいるに相違ないと見ていたが、それが武蔵守師直だったか。師直と申す
狒々
(
ひひ
)
だったのか。あはははは」
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鈍
(
どん
)
に生れついた性分なら仕方がないようなものの、
阿呆
(
あほう
)
もいい加減にしろ、いい加減に。——馬鹿には馬鹿なりの辛抱づよいところがあるものだが、貴様ときたひには、その辛抱もない。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
貧
(
ひん
)
すれば
鈍
(
どん
)
するという
諺
(
ことわざ
)
どおりに成り落ちる人間もあるし、また反対に、逆境に立つや、なお持ち前の生命力の
充溢
(
じゅういつ
)
を示して、逆境いよいよその人の深い所の素質をゆかしく
湛
(
たた
)
えて見せ
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
世に生きとし生ける雑多な人間——
迂
(
う
)
、
愚
(
ぐ
)
、
鈍
(
どん
)
、
痴
(
ち
)
、お天気、軽薄、
付焼刃
(
つけやきば
)
、いかなる凡才にせよ、何かの役に立たないという者はなく、何か一面の特性をもたないという者はないけれど
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お杉ばばは、年よりの
鈍
(
どん
)
を、若い者たちから見くびられたように取って
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
(使者というものは、
鈍
(
どん
)
にも卑屈にもなれる者でのうては出来ぬ)
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あいかわらず思考力の
鈍
(
どん
)
な“ぶらり駒殿”とでも見ているらしい。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
鈍
(
どん
)
さんには適任というものだ」
旗岡巡査
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“鈍”の意味
《名詞》
(なまくら)鈍い刃物。
(出典:Wiktionary)
鈍
常用漢字
中学
部首:⾦
12画
“鈍”を含む語句
愚鈍
遅鈍
魯鈍
鈍色
鈍刀
鈍物
鈍重
青鈍
薄鈍
鈍痴
鈍間
鈍々
利鈍
手鈍
鈍痴漢
鈍臭
遲鈍
鈍児
鈍遅
鈍人
...