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鄙
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ひな
ふりがな文庫
“
鄙
(
ひな
)” の例文
なんにしろ明治四十一年の事とて、その頃は、当今の
接庇雑踏
(
せっぴざっとう
)
とは異なり、
入谷田圃
(
いりやたんぼ
)
にも、何処かもの
鄙
(
ひな
)
びた土堤の
悌
(
おもかげ
)
が残っていた。
絶景万国博覧会
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
﨟
(
らふ
)
たけてしかも
鄙
(
ひな
)
に隱れ住む、すこし世帶やつれのした若い母が、窓のきはで機を織つてゐる夕暮れ、美しい都の姫がたづねてくる。
春宵戯語
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
林の中のあちこちから護謨液採りの土人乙女の
鄙
(
ひな
)
びた唄声も響いて来る。亡国的の哀調を含んだ、しかものびやかな調べである……。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
見るに
衣裳
(
なり
)
は
見苦
(
みぐる
)
しけれども色白くして
人品
(
ひとがら
)
能く
鄙
(
ひな
)
に
稀
(
まれ
)
なる美男なれば
心
(
こゝろ
)
嬉敷
(
うれしく
)
閨
(
ねや
)
に
伴
(
ともな
)
ひつゝ終に
新枕
(
にひまくら
)
を
交
(
かは
)
せし故是より吉三郎もお菊を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
しかし、それが縁付くとなると、
草莽
(
そうもう
)
の中に
鄙
(
ひな
)
び、多産に疲れ、ただどこそこのお婆さんの名に於ていつの間にか生を消して行く。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
▼ もっと見る
だだっ広い玄関の座敷にちょっとした
椅子場
(
いすば
)
があり、均平をそこでしばらく待たせることにして、
鄙
(
ひな
)
びた菓子とお茶を持って来た。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
巨福呂坂
(
こぶくろざか
)
の下あたりから水の
涸
(
か
)
れた谷川に沿ってゆくと、程なく、
鄙
(
ひな
)
びた板橋に丸木の欄をつけて赤く塗ってあるのが目についた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
男は木村良雄といって、当時東京の某私立大学に在学中、女は荒川あさ子といって、当時二十歳の
鄙
(
ひな
)
には稀に見る美人であった。
血の盃
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
彼女の発音には
鄙
(
ひな
)
びた響があって、そうしてどことなく野の匂い、土の香りのようなものがまだ消えずに残っている感じだった。
朴歯の下駄
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
鄙
(
ひな
)
の中にも
鄙
(
ひな
)
なる山にのみ籠って、朝から晩まで本当の真っ黒になって立ち働いて、都の文化は愚かな事、里人との交りすらも殆どなく
炭焼長者譚:系図の仮托と民族の改良
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
きのうまでいた
双鶴館
(
そうかくかん
)
の周囲とは全く違った、同じ東京の内とは思われないような静かな
鄙
(
ひな
)
びた自然の姿が葉子の目の前には見渡された。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
座敷では、鳴物や唄の声が、高くなり低くなり、賑やかに続いていたし、ときには信助のうたう、
鄙
(
ひな
)
びたお国ぶりも聞えて来た。
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
大柄でそんなに
醜
(
みにく
)
くはありませんが、何となく
鄙
(
ひな
)
びて、若旦那の幾太郎が氣に染まないといふのも、決して無理ではないやうな氣がします。
銭形平次捕物控:107 梅吉殺し
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
いや、
最
(
も
)
う六十になるが忘れないとさ、此の人は又
然
(
そ
)
ういふよ、其れから
此方
(
こっち
)
、都にも
鄙
(
ひな
)
にも、其れだけの美女を見ないツて。
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
お
城
(
しろ
)
の
松
(
まつ
)
も
影
(
かげ
)
を
曳
(
ひ
)
きそうな、
日本橋
(
にほんばし
)
から
北
(
きた
)
へ
僅
(
わずか
)
に十
丁
(
ちょう
)
の
江戸
(
えど
)
のまん
中
(
なか
)
に、かくも
鄙
(
ひな
)
びた
住居
(
すまい
)
があろうかと、
道往
(
みちゆ
)
く
人
(
ひと
)
のささやき
交
(
かわ
)
す
白壁町
(
しろかべちょう
)
。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
これ等はもちろん児童の命名でなくて、あるいはただ単に花の色のくれないが、
鄙
(
ひな
)
に
稀
(
まれ
)
なることをめでてつけたのかも知れぬ。
野草雑記・野鳥雑記:01 野草雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
都も
鄙
(
ひな
)
も
押並
(
おしな
)
べて黒きを
被
(
き
)
る斯大なる
哀
(
かなしみ
)
の夜に、余等は
茫然
(
ぼうぜん
)
と東の方を眺めて立った。
生温
(
なまあたた
)
かい夜風がそよぐ。稲の
香
(
か
)
がする。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「
天
(
あま
)
ざかる
鄙
(
ひな
)
とも
著
(
しる
)
く
許多
(
ここだ
)
くもしげき恋かも
和
(
な
)
ぐる日もなく」(巻十七・四〇一九)等の例に見るごとく、加行上二段に活用する動詞である。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
母親
(
はは
)
が
大
(
たい
)
へん
縹緻
(
きりょう
)
よしなので、
娘
(
むすめ
)
もそれに
似
(
に
)
て
鄙
(
ひな
)
に
稀
(
まれ
)
なる
美人
(
びじん
)
、
又
(
また
)
才気
(
さいき
)
もはじけて
居
(
お
)
り、
婦女
(
おんな
)
の
道
(
みち
)
一と
通
(
とお
)
りは
申分
(
もうしぶん
)
なく
仕込
(
しこ
)
まれて
居
(
お
)
りました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
鄙
(
ひな
)
にはめづらしからねど、かざりなき親切のうれしく、荷物迄預けて、やがてかの娘を伴ひて西行菴へと山路をたどりぬ。
山家ものがたり
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
鄙
(
ひな
)
びた山の中の温泉には、ろくに食うものがないから、
飯
(
めし
)
を食おうと思えば、どうしてもそこへ行くよりほかはなかった。
鮎の食い方
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
三十を越したお徳も、土地の歌をうたう時は乙女の心になる、
鄙
(
ひな
)
の歌にも情合が満つれば優しい芽が吹いて春の風が誘う。
大菩薩峠:08 白根山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
鄙
(
ひな
)
びた、ささやかな、むしろ可憐な感じのものながら、
流石
(
さすが
)
に初夏の宵の縁日らしい
長閑
(
のどか
)
な行楽的な気分が漂っていた。
早稲田神楽坂
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
古い時代の墓地であったのであろうか。珍しくもない
鄙
(
ひな
)
びた光景であるが、そういうところで、わが彼岸花は、思いのままに村の小供を呼び寄せる。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
町は奇麗に掃いてあり、所々に美しい花のかたまりや、変った形をした矮生樹が川に臨み、ここかしこには、
鄙
(
ひな
)
びた可愛らしい歩橋が架けてあった。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
なんの変哲もない
田圃
(
たんぼ
)
の中の温泉であるが、東京に近いわりには
鄙
(
ひな
)
びて静かだし、宿も安直なので、私は仕事がたまると、ちょいちょいそこへ行って
黄村先生言行録
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
鄙
(
ひな
)
にもまれな新手村の小町娘楓をそそのかして、夜のとばりがせめてもに顔の醜さをかくしてくれようと、肩を並べてぬけぬけと氏神詣りに出掛けたが
猿飛佐助
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
私の家に関する私の記憶は、
惣
(
そう
)
じてこういう風に
鄙
(
ひな
)
びている。そうしてどこかに薄ら寒い
憐
(
あわ
)
れな影を宿している。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「実に美しいですね……
鄙
(
ひな
)
には稀れ、というけれど、勿論この土地の人でもなかろうし、都会でも稀れですね」
脳波操縦士
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
「是は武蔵の国隅田川の渡し守にて候」と云ふ
宝生新
(
ほうしやうしん
)
氏の詞と共に、天さかる
鄙
(
ひな
)
の大川の
縹渺
(
へうべう
)
と目の前に浮び上がる所は如何にも静かに出来上がつてゐる。
金春会の「隅田川」
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
とよからよく聞いた、
鄙
(
ひな
)
びた山家の風景の中にとよの姿をおくことによって、私は私の心を紛すより他はない。
澪標
(新字新仮名)
/
外村繁
(著)
この時春琴の姉が十二歳すぐ下の妹が六歳で、ぽっと出の佐助にはいずれも
鄙
(
ひな
)
には
稀
(
まれ
)
な少女に見えた分けても盲目の春琴の不思議な
気韻
(
きいん
)
に打たれたという。
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
きのふまで君を
慕
(
した
)
ひしも、けふは
忽
(
たちま
)
ち
怨敵
(
あた
)
となりて、
本意
(
ほい
)
をも
遂
(
と
)
げたまはで、いにしへより
八九
例
(
あと
)
なき
刑
(
つみ
)
を得給ひて、かかる
鄙
(
ひな
)
の国の土とならせ給ふなり。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
かゝる
片邊
(
かたほとり
)
なる
鄙
(
ひな
)
には何珍しき事とてはなけれども、其の哀れにて思ひ出だせし、世にも哀れなる一つの話あり。問ひ給ひしが
因果
(
いんぐわ
)
、
事長
(
ことなが
)
くとも聞き給へ。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
馬上から野良に働く
鄙
(
ひな
)
には稀な娘を見つけて、オウイ、俺は関白秀吉だ、俺のウチへ遊びにこいよウ。待つてるゾウ。胸毛を風になぶらせて、怒鳴つてゐる。
二流の人
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
世間知らぬ山の町の人たちだけではなかった。都も
鄙
(
ひな
)
もおしなべて、朝でも晩でも、何の権力もない人間が、善良な者の安穏な生活を、こじてまわる時代だった。
花幾年
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
そうした
鄙
(
ひな
)
びた場所で孤独な生活を
味
(
あじわ
)
うのが好きな方でしたのと、私は私で、どうかしてこの男をやっつける機会を掴もうとあせっていた際だったものですから
赤い部屋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
麓
(
ふもと
)
の
霞
(
かすみ
)
は幾処の村落を
鎖
(
とざ
)
しつ、
古門
(
こも
)
村もただチラチラと散る火影によりてその端の人家を
顕
(
あら
)
わすのみ、いかに静かなる
鄙
(
ひな
)
の景色よ、いかにのどかなる野辺の夕暮よ
空家
(新字新仮名)
/
宮崎湖処子
(著)
低い砂丘のその松原は予想外に
閑寂
(
かんじゃく
)
であった。松ヶ根の
萩
(
はぎ
)
むら、
孟宗
(
もうそう
)
の影の映った
萱家
(
かやや
)
の黄いろい荒壁、
機
(
はた
)
の音、いかにも
昔噺
(
むかしばなし
)
の中の
鄙
(
ひな
)
びた村の日ざかりであった。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
牛込
(
うしごめ
)
のとッぱずれのだらだら坂を、とうにすぎて、ここは、星かげも
鄙
(
ひな
)
びている
抜弁天
(
ぬけべんてん
)
に近い
田圃
(
たんぼ
)
中——一軒家があって、不思議にも、赤茶けたあんどんに、お泊り宿——
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
正月には鳥追いが来、在方の農家の娘たちは
催馬楽
(
さいばら
)
という輪舞いのようなものをおどって来た。
鄙
(
ひな
)
びたものだが美しかった。それから忘れられないのは「敦盛さま」である。
光り合ういのち
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
オモロに
鄙
(
ひな
)
も都もということを
京鎌倉
(
きやかまくら
)
といったり、勝連城を
日本
(
やまと
)
の
鎌倉
(
かまくら
)
に
譬
(
たと
)
えたりした所などを見ると、当時京都と鎌倉との関係が琉球の
都鄙
(
とひ
)
に知れ渡っていたことが知れる。
土塊石片録
(新字新仮名)
/
伊波普猷
(著)
すなわち通人粋客に対して、世態に通じない、人情を解しない
野人
(
やじん
)
田夫
(
でんぷ
)
の意である。それより
惹
(
ひ
)
いて、「
鄙
(
ひな
)
びたこと」「垢抜のしていないこと」を意味するようになってきた。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
かれ我に、長き爭ひの後彼等は血を見ん、
鄙
(
ひな
)
の
徒黨
(
ともがら
)
いたく怨みて敵を逐ふべし 六四—六六
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
「草の戸ごしの麦畑」という淋しい
鄙
(
ひな
)
びた、元日らしからぬ景色が生きて来るのである。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
うんざりしながら
鄙
(
ひな
)
びた小さな停車場をながめていると、突然陽気な人声が聞こえて四、五人の男女が電車へ飛び込んで来た。よほど
馳
(
か
)
けて来たらしく息を切らしている人もある。
寺田さんに最後に逢った時
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
王の繁華の地を嫌ひて、
鄙
(
ひな
)
に住まひ、昼寝ねて夜起きたまふは、久しきほどの事なり。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
宏やかな自然の風景を写している由子の意識の上に暫く紫の前掛が
鄙
(
ひな
)
びた形でひらひらした。段々その幻影がぼやけ、紐だけはっきり由子の心に遺った。紐は帯留めのお下りであった。
毛の指環
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
そして一日の労苦に重い魚籠を誇つて、遂に魚どめの滝で竿を収めて、さて山中暦日なき深山のまこと
鄙
(
ひな
)
びた山の湯に一夜の泊りをする時のうれしさ、それは釣人のみが知る法悦境であらう。
健康を釣る
(新字旧仮名)
/
正木不如丘
(著)
そして私は、徳子がアメリカの田舍を曲馬師のサアカスに加はつて俗受けの
鄙
(
ひな
)
唄を歌つて踊つた時代をこそ見たいと思ひました。かう考へるのは、必ずしも徳子を侮辱した事ではありません。
砂がき
(旧字旧仮名)
/
竹久夢二
(著)
“鄙(
田舎
)”の解説
田舎(いなか、en: Countryside, Rural area)は、都市、都会、都(みやこ)などの対義語となる概念。
本項では田舎(いなか)や田園(でんえん)、鄙(ひな)や郷(ごう、さと)と呼ばれるものについて解説する。学術や政策においては、「村落」「農村地域」「農山漁村地域」「多自然居住地域」などの表現が用いられることが多い。これらの表現は、焦点の当て方により使い分けられる。
(出典:Wikipedia)
鄙
漢検1級
部首:⾢
14画
“鄙”を含む語句
辺鄙
鄙吝
鄙劣
都鄙
鄙歌
鄙陋
鄙俗
野鄙
鄙唄
邊鄙
鄙見
鄙事
偏鄙
鄙夫
鄙人
鄙少女
鄙近
鄙辺
鄙猥
國鄙語
...