“鄙:ひな” の例文
“鄙:ひな”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治16
野村胡堂7
島崎藤村5
北原白秋5
泉鏡花5
“鄙:ひな”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.9%
文学 > 日本文学 > 詩歌1.3%
文学 > 日本文学 > 日記 書簡 紀行0.7%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
岸に並んで洗濯する婦女おんなの風俗などを見ても、田舎にある都会の町はずれとは思われないほどひなびたところであった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
うんざりしながらひなびた小さな停車場をながめていると、突然陽気な人声が聞こえて四、五人の男女が電車へ飛び込んで来た。
寺田さんに最後に逢った時 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
妙にひなびた当時の景色——江戸と云うよりも江戸のはずれの本所ほんじょと云う当時の景色はとうの昔に消え去ってしまった。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そして私は、徳子がアメリカの田舍を曲馬師のサアカスに加はつて俗受けのひな唄を歌つて踊つた時代をこそ見たいと思ひました。
砂がき (旧字旧仮名) / 竹久夢二(著)
つたりしまして、ひなびた言葉ことばなかにも何處どこやさしいところがいでもありません。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
天離あまざかひなにもつきれれどもいもとほくはわかれ来にける 〔巻十五・三六九八〕 新羅使
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
男は木村良雄といって、当時東京の某私立大学に在学中、女は荒川あさ子といって、当時二十歳のひなには稀に見る美人であった。
血の盃 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
ひなびた山の中の温泉には、ろくに食うものがないから、めしを食おうと思えば、どうしてもそこへ行くよりほかはなかった。
鮎の食い方 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
彼の宿舎は、土地の旧家であった。ひなびた民屋だが、その門は頑丈であった。日頃から土賊の来襲へ備えが出来ているのである。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大湫は伊勢参宮または名古屋への別れ道に当たるひなびた宿場で、その小駅から東は美濃みのらしい盆地へと降りて行くばかりだ。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
三十を越したお徳も、土地の歌をうたう時は乙女の心になる、ひなの歌にも情合が満つれば優しい芽が吹いて春の風が誘う。
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あまざかるひなともしる許多ここだくもしげき恋かもぐる日もなく」(巻十七・四〇一九)等の例に見るごとく
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
例えば、一度などは、私たちの非常に驚いたことには、ひなびた恋唄のような、違った歌を歌い出したりしたものだった。
これ等はもちろん児童の命名でなくて、あるいはただ単に花の色のくれないが、ひなまれなることをめでてつけたのかも知れぬ。
節こそひなびてはおれど清らかな高いとおる声で、桑の嫩葉わかばみながら歌をうたっていて、今しも一人ひとり
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
日本橋にほんばしからきたわずかに十ちょう江戸えどのまんなかに、かくもひなびた住居すまいがあろうかと
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
当時、早婚の風は、平安の都ばかりでなく、ひなでも、十三、四、あるいは十五、六歳で妻をもつ者は、幾らもあった。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だだっ広い玄関の座敷にちょっとした椅子場いすばがあり、均平をそこでしばらく待たせることにして、ひなびた菓子とお茶を持って来た。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
らふたけてしかもひなに隱れ住む、すこし世帶やつれのした若い母が、窓のきはで機を織つてゐる夕暮れ、美しい都の姫がたづねてくる。
春宵戯語 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
あまさかる ひな長道ながぢゆ れば、明石あかしより、大和やまとしま
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
しかし、それが縁付くとなると、草莽そうもうの中にひなび、多産に疲れ、ただどこそこのお婆さんの名に於ていつの間にか生を消して行く。
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「実に美しいですね……ひなには稀れ、というけれど、勿論この土地の人でもなかろうし、都会でも稀れですね」
脳波操縦士 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
とよからよく聞いた、ひなびた山家の風景の中にとよの姿をおくことによって、私は私の心を紛すより他はない。
澪標 (新字新仮名) / 外村繁(著)
塩辛しおからい声を振り揚げる髪結い直次の音頭取おんどとりで、ひなびた合唱がまたそのあとに続いた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
珍しくもないひなびた光景であるが、そういうところで、わが彼岸花は、思いのままに村の小供を呼び寄せる。
いや、う六十になるが忘れないとさ、此の人は又ういふよ、其れから此方こっち、都にもひなにも、其れだけの美女を見ないツて。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
座に連なる人々はひなにはまれなる気高き男女、往診料とて紙に包みし謝礼を納めて帰りしは、遠寺の鐘の音
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
玄徳がふとを止めて見ていると、その邸の並びのあんずの並木道を今、ひなにはまれな麗人が、白馬に乗って通ってゆくのが見えた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その門の岸の柳の散る夕を、物哀れに詠歎したあとへ、突如として舟曳く男のひなびたる腰つきを、描写してしかも自然によくつながっている。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
平次はこの美しくはあるが、何んとなくひなびた感じの嫁を慰めて伊豆屋を引上げるほかはなかつたのです。
それにしても上流中流の人達が留守にした巴里の混雑のなかに、優雅な夫人と、ひなびて居ても何処か上品な娘を連れた新吉の一行は人の眼についた。
巴里祭 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
大柄でそんなにみにくくはありませんが、何となくひなびて、若旦那の幾太郎が氣に染まないといふのも、決して無理ではないやうな氣がします。
町は奇麗に掃いてあり、所々に美しい花のかたまりや、変った形をした矮生樹が川に臨み、ここかしこには、ひなびた可愛らしい歩橋が架けてあった。
かれ我に、長き爭ひの後彼等は血を見ん、ひな徒黨ともがらいたく怨みて敵を逐ふべし 六四—六六
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
馬上から野良に働くひなには稀な娘を見つけて、オウイ、俺は関白秀吉だ、俺のウチへ遊びにこいよウ。
二流の人 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
彼女は、ひなに似合わぬ美人で、色白のふっくりとした愛らしい顔と、大きなあおい眼と、やさしい口元とは、見るものを魅せずには置かなかった。
誤った鑑定 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
巨福呂坂こぶくろざかの下あたりから水のれた谷川に沿ってゆくと、程なく、ひなびた板橋に丸木の欄をつけて赤く塗ってあるのが目についた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きのうまでいた双鶴館そうかくかんの周囲とは全く違った、同じ東京の内とは思われないような静かなひなびた自然の姿が葉子の目の前には見渡された。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
ひなも都も怨嗟の聲にち、天下の望み既に離れて、衰亡の兆漸く現はれんとすれども、今日けふよろこびに明日あすの哀れを想ふ人もなし。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
それよりいて、「ひなびたこと」「垢抜のしていないこと」を意味するようになってきた。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
見たところ、至極しごく平凡人である。ひなびた老武士といおうか、素朴の一語で尽きている。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宏やかな自然の風景を写している由子の意識の上に暫く紫の前掛がひなびた形でひらひらした。
毛の指環 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
河岸かしにぎやかなあきない店の中に混って釣船宿が二軒、ひなびて居ります。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そつと平次の横でさゝやいて、ワナワナとふるへる手を合せるのは、三十前後の年増女。あまり綺麗ではありませんが、ひなびた中にも品のある女でした。
「お恥しいひなびし手振——なれど御所望賜いますれば、一さしお目をけがしましょう」
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
木曾少女きそおとめは色白で、そこいらの谷川に洗濯せんたくするようなひなびた姿のものまでが旅人の目につくところから、この侍もつい誘惑に勝てなかった。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
おりから、天下は大動乱だいどうらんひなも都も、そのうずにまきこまれていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
男はひなにゐる間も、二三度京の妻のもとへ、ねんごろな消息をことづけてやつた。
六の宮の姫君 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
あまさかひな伏屋ふせやも、百敷ももしき大宮内おほみやうちも、
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
すべてがひなびてせせっこましいのにもあきれ返らずにいられなかったのです。
棚田裁判長の怪死 (新字新仮名) / 橘外男(著)
小茶ちゃんにいて奥へ通ってゆく彼女のひなに稀れな眉目みめと、どことなく、ろうたけているとでもいうか、品のあるすがたに、眼と囁きを送っていた。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さあ、わからぬが、ひなには稀れな美人。貴公はまた、あれにも心をうごかしたのか」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
松ヶ根のはぎむら、孟宗もうそうの影の映った萱家かややの黄いろい荒壁、はたの音、いかにも昔噺むかしばなしの中のひなびた村の日ざかりであった。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
額縁などがれて見える——あたかもその前にわざとひなめいたあつらえで。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
駅路えきろのさざめきもひなびておもしろく、うさるさの旅人すがた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
天離あまさかひな伏屋ふせやも、百敷もゝしき大宮内おほみやうちも、
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
別府とよぶひなびた港の屋根から半島形に伸びている突端の松ばかりな丘の上である。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時は治承ぢしようの春、世は平家の盛、そも天喜てんぎ康平かうへい以來九十年の春秋はるあき、都もひなも打ち靡きし源氏の白旗しらはたも、保元ほうげん
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
そこへひなのエビスの成功者が氏族の改良身分の向上を希図する慾望から、系図を仮托し良家の婦を迎えるというお極りの道行きが加わって来たのがこの炭焼長者譚である。
この時春琴の姉が十二歳すぐ下の妹が六歳で、ぽっと出の佐助にはいずれもひなにはまれな少女に見えた分けても盲目の春琴の不思議な気韻きいんに打たれたという。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
門前町には茶屋、旅籠が軒を並べ、客をひくおんなの声はひなびております。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
祭を見に来た人達はひなびた絵巻物を繰展くりひろげる様に私の前を通った。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
夜は夜とて、酒肴しゅこうの善美、土地の名物、ひなびた郷土の舞曲など、数々のおとぎ。そして宿殿の外には、夜空も焦がす大篝火おおかがりびを諸所に焚きつらね、
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
織屋はどこへ行ってもこういうひなびた言葉を使って通しているらしかった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なんにしろ明治四十一年の事とて、その頃は、当今の接庇雑踏せっぴざっとうとは異なり、入谷田圃いりやたんぼにも、何処かものひなびた土堤のおもかげが残っていた。
絶景万国博覧会 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そこで、禿や引船に案内されていてゆくと、庭先へひなびた藁草履わらぞうりを五名分そろえる。やわらかな春の雪はその人々の藁草履であとも残さず踏まれてゆく。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
旅芸人の一群が、ひなびた曲楽にあわせ、刀玉取かたなたまとりという曲芸を演じている。ここには戦場の陰影も恐怖もなく、無数な顔がただ嘻々ききとしてそれを見ている。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
都もひな押並おしなべて黒きをる斯大なるかなしみの夜に、余等は茫然ぼうぜんと東の方を眺めて立った。生温なまあたたかい夜風がそよぐ。稲のがする。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
恐らく僕にはこういうひなびたさびに同情する心があったのであろう。
ドナウ源流行 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ひなにはまれ」とは京子のことではないか、こんなところにくすぶっているのは、何か暗い影がありはしないか——と余計な心配を起させる程、優れた美貌の持主だった。
鉄路 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
林の中のあちこちから護謨液採りの土人乙女のひなびた唄声も響いて来る。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私の家に関する私の記憶は、そうじてこういう風にひなびている。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「是は武蔵の国隅田川の渡し守にて候」と云ふ宝生新ほうしやうしん氏の詞と共に、天さかるひなの大川の縹渺へうべうと目の前に浮び上がる所は如何にも静かに出来上がつてゐる。
金春会の「隅田川」 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
けだしひなのエビスは一方では、「お種頂戴」によって氏族の改良を希図すると同時に、一方では勢力にまかせて良家の子女と婚し、それによって身分の向上を怠らなかったものである。
この景色を写生することは出来なかったが、私に印象を与えたのは、実に渋いひなびた橋や、断崖の端に立つ魅力に富んだ小さな茶店や、お茶召せと招く派手な着物を着た娘達やである。
藥師さま附近の一二軒の小料理屋などもひなびていゝものであつた。
ただ、不審といえば不審というべきは、こんな少年を、あの工事中のいずれに於てもまだ見かけなかったこと! この少年がひなに似合わず、目鼻立ちの清らかなということにありました。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
大喇叭おほらつぱひなびたるわらひしてまたもいどめば
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ひなびては居るが、信頼の出来る、古めかしい味ひを持つてゐた。
恐ろしき鬼ヶ島ちふひなの島その荒磯辺ありそべの松風のこゑ
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そして一日の労苦に重い魚籠を誇つて、遂に魚どめの滝で竿を収めて、さて山中暦日なき深山のまことひなびた山の湯に一夜の泊りをする時のうれしさ、それは釣人のみが知る法悦境であらう。
健康を釣る (新字旧仮名) / 正木不如丘(著)
……だから世間の知識にもおうとく、言葉もひなび、礼儀作法とか交際事つきあいごとにもとんとおくらいが——そうした母にも、そなたは嫁女として、心からかしずいてくれるか。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私とはまるで違って、そうしたひなびた場所で孤独な生活をあじわうのが好きな方でしたのと、私は私で、どうかしてこの男をやっつける機会を掴もうとあせっていた際だったものですから
赤い部屋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
おくみが出てゆくと、甲斐はそのまま夜具の中へ横になった。座敷では、鳴物や唄の声が、高くなり低くなり、賑やかに続いていたし、ときには信助のうたう、ひなびたお国ぶりも聞えて来た。
このひなびた舞踏の輪は九度も花嫁の周囲まわりを回った。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
都もひなおしなべて白妙しろたえる風雪の夕
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ひなびた趣ではあるが、さわやかな感じのする句である。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
紅提灯べにちやうちんのきつづき、桃もひなめく
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
花ちる日、市をはなれて、ひなごころ、またと帰らじ。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
客がはしを取っている間に、またへだてのない母子おやこの話。——万太郎はひどく空腹であったので、半ばはこのひなびた馳走の味覚に、半ばは母子おやこの会話に耳をかしていました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひなびた門や庭も、容易ならぬったもので、一木一草にもうんと金を喰って居るのが、主人には自慢の種らしく、弟岩三郎の死骸よりは、そっちの方を見て貰い度そうなのは、苦々しくもあります。
銭形平次捕物控:245 春宵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
町ともつかず村ともつかないひなびた家並がある。
東海道五十三次 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
縁側に出てこの靜かな景色を眺めてゐた乳母のお元は、柱にもたれた肩を搖りながら、ツイホロホロと歌ひ出しました。それは江戸の街では聞くことの出來ないやうな、古風な、そしてひなびた子守唄で、
「一命を助けてとらせた礼を残して行きやれ。たちも、節に合わせて踊ろう程に、そちの故郷ふるさとひなぶり一節ひとふし唄うておみせやれ。盆唄ぼんうたでも、麦搗唄むぎつきうたでも」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
深き眞晝を弗拉曼ブラマンひなの路のべ、
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
丸い肩の上に、五分ほどつまんだ肩上げが、地方から出て来た娘々して、何処かひなびているのを、美妙は、掘りたての、土の着いている竹の子のように、皮をいていった下の、新鮮なものを感じていた。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
お蝶さんは、ひなにはめずらしい美人でした。
狂女と犬 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
ひなびたる鋭き呼子そをきけば涙ながるる。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
軒低きひなしろくかつ照りつ、
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
ひなには、つくし、鼓草たんぽぽの雛。
雛がたり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)