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輪廓
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りんかく
ふりがな文庫
“
輪廓
(
りんかく
)” の例文
しかも、その細長い眉や、濃い睫毛や、クローバ型の小さな唇の
輪廓
(
りんかく
)
のすべては、初めの通りの美しい位置に静止したままであった。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
今までのよりずっとその
輪廓
(
りんかく
)
がはっきりしていて、そしてその苦痛の度も数層倍
烈
(
はげ
)
しいものであることを知って私は
愕
(
おどろ
)
いたのであった。
三つの挿話
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
鼻が三角で、口が三角、眉を払った
痕
(
あと
)
がまた三角なりで、
頤
(
おとがい
)
の細った頬骨の出た三角を
逆
(
さかさま
)
にして顔の
輪廓
(
りんかく
)
の中に度を揃えて
竝
(
なら
)
んでいる。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
Oは昔し
林檎
(
りんご
)
のように赤い頬と、人一倍大きな丸い眼と、それから女に適したほどふっくりした
輪廓
(
りんかく
)
に包まれた顔をもっていた。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と思ったらその
輪廓
(
りんかく
)
が急に崩れだした。身体が輪廓の方から内部へ向って溶けだしたように見えたが、最後に顔面だけが残った。
四次元漂流
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
資料を古く
弘
(
ひろ
)
く求めてみればみるほど
輪廓
(
りんかく
)
は次第に
茫漠
(
ぼうばく
)
となるのは、最初から名称以外にたくさんの一致がなかった結果である。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
一男は、縦横に組み上げられた鉄材の間から、遠く澄んだ空へ眼を
放
(
はな
)
った。
上総
(
かずさ
)
房州
(
ぼうしゅう
)
の
山波
(
やまなみ
)
がくっきりと、
彫
(
きざ
)
んだような
輪廓
(
りんかく
)
を見せている。
秋空晴れて
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
緊
(
しま
)
りのない肉づきのいい体、
輪廓
(
りんかく
)
の素直さと品位とを
闕
(
か
)
いている、どこか崩れたような顔にも、心を
惹
(
ひ
)
きつけられるようなところがあった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
私は立ち
停
(
どま
)
った。女も私に気が
注
(
つ
)
いたのか、
斜
(
ななめ
)
に後を
揮
(
ふ
)
り返った。その顔の
輪廓
(
りんかく
)
から眼の
辺
(
あたり
)
が、どうしてもお八重であった。
妖影
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
角ばった、ごッつい顔だと思っていたのに、笑うと
輪廓
(
りんかく
)
がほころんで、眼尻に人なつッこい柔味が浮かんだ。それは思いがけないことだった。
工場細胞
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
一
群
(
むれ
)
の人がぴったり
迫
(
せ
)
ぎ合って入日の方に向いて行くのが、暗い形に見えるのだ。多くは自分の
輪廓
(
りんかく
)
に
圧
(
お
)
されているように背中を曲げている。
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
妙見の長い山脚を越えて、千々岩岳、吾妻岳、
九千部
(
くせんぶ
)
岳などが
蒼茫
(
そうぼう
)
として
暮行
(
くれゆ
)
く姿を見せ、
右方
(
うほう
)
有明海の
彼岸
(
ひがん
)
には
多良
(
たら
)
岳が美しい
輪廓
(
りんかく
)
を描く。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
早川の対岸に、空を
劃
(
くぎ
)
って
聳
(
そび
)
えている、連山の
輪廓
(
りんかく
)
を、ほの/″\とした
月魄
(
つきしろ
)
が、くっきりと浮き立たせているのであった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
そのまた奥の方には、めったに好くは見えないが、
微
(
かすか
)
に
遠山
(
とおやま
)
のぼんやりした
輪廓
(
りんかく
)
が現われている。家の前には階段がある。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
眼が大きく、唇が厚く、そして何処までも純日本式の、浮世絵にでもありそうな細長い鼻つきをした
瓜実顔
(
うりざねがお
)
の
輪廓
(
りんかく
)
でした。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その岡の上に
麦酒
(
ビール
)
会社の建築物が現われて、黒い
輪廓
(
りんかく
)
があざやかに、灰色の空を
区画
(
くぎ
)
ったところなど、何とはなしに
外国
(
とつくに
)
の景色を見るようである。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
広重は従来の日本画の如く
輪廓
(
りんかく
)
の線を描くには
悉
(
ことごと
)
く
墨色
(
ぼくしょく
)
を用ひ、彩色は唯画面の単調を補ふ便宜となしたるに過ぎず。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
と絹子さんは
少時
(
しばらく
)
目を離さなかったも道理、
好
(
よ
)
く写っていた。銅版にすると
輪廓
(
りんかく
)
が崩れるものだけれど、鼻筋まで極めて鮮明に写っていたのである。
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
国から
態々
(
わざわざ
)
逢
(
あ
)
いに出て来た大石という男を、純一は頭の中で、
朧気
(
おぼろげ
)
でない想像図にえがいているが、今聞いた話はこの図の
輪廓
(
りんかく
)
を少しも
傷
(
きずつ
)
けはしない。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
極く遠方の屋根、窓、樹木までが、銅版画の如き
輪廓
(
りんかく
)
を以て一つ一つはっきりと見えて来た。視覚ばかりではない。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
第一結晶が極めて美しく、繊細を極めたその枝の端々までが手の切れそうな鮮明な
輪廓
(
りんかく
)
を持っていることである。
雪の十勝:――雪の研究の生活――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
男の児はどれも、どんぐりでも、何かくっきりした
輪廓
(
りんかく
)
をもっている。粒々がある。だから面白い。女の児は女の児という一般性の中に流れこんでいて。
獄中への手紙:05 一九三八年(昭和十三年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
奇異なる面貌の土偶は
疑
(
うたが
)
ひも無く遮光器を着けたる形なり。
輪廓
(
りんかく
)
は遮光器の
周縁
(
しうゑん
)
にして、横線は透かしなるのみ。
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
たいがいこの筆法で、画の筆者の
輪廓
(
りんかく
)
さえ過っているのが殆どである。——にも関わらず、武蔵の画については
随筆 宮本武蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼女には
纔
(
わず
)
かにその
輪廓
(
りんかく
)
だけしか想像されずにゐた長い争闘によつて
傷
(
きずつ
)
いた青年がそこに
横
(
よこた
)
はつてゐた。彼女は
憫
(
あわ
)
れむやうに青年の姿を改めて見直した。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
やがてその二階の窓際には、こちらへ向いたらしい人影が一つ、
朧
(
おぼろ
)
げな
輪廓
(
りんかく
)
を浮き上らせた。
生憎
(
あいにく
)
電燈の光が
後
(
うしろ
)
にあるから、顔かたちは誰だか判然しない。
影
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
満月の
輪廓
(
りんかく
)
はにじんでいた。めだかの模様の
襦袢
(
じゅばん
)
に
慈姑
(
くわい
)
の模様の綿入れ胴衣を重ねて着ている太郎は、はだしのままで村の
馬糞
(
ばふん
)
だらけの
砂利道
(
じゃりみち
)
を東へ歩いた。
ロマネスク
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「びッくりして?」まず、平生通りの調子でこだわりのない声を出したかの女の酔った様子が、なよなよした優しい
輪廓
(
りんかく
)
を、月の光で地上にまでも引いている。
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
否
(
いや
)
でも応でも彼は自分の髪の毛色の違い、皮膚の色の違い、顔の
輪廓
(
りんかく
)
の違い、
眸
(
ひとみ
)
の色の違いを意識しない訳に行かなかった。
逢
(
あ
)
う人
毎
(
ごと
)
にジロジロ彼の顔を見た。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
たとえば、絵画については
輪廓
(
りんかく
)
本位の線画であること、色彩が濃厚でないこと、構図の
煩雑
(
はんざつ
)
でないことなどが「いき」の表現に適合する形式上の条件となり得る。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
なるほど、
鋳型
(
いがた
)
というものはあるでしょう。それを取っておけば、同じような
輪廓
(
りんかく
)
をもち、同じような
色彩
(
いろ
)
をした像を幾つとなく造ることは出来るでありましょう。
墓
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
みずみずしくふくらみ、はっきりした
輪廓
(
りんかく
)
を描いて白く光るあの夏の雲の姿はもう見られなかった。
親子
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
鷺太郎にはその
輪廓
(
りんかく
)
を読みとることが出来、一人はたしか山鹿だ、と断定はしたが、も一人の女性の方は、山鹿と交際していないので誰だったか解ろう
筈
(
はず
)
もなかった。
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
芸に伴って顔の
輪廓
(
りんかく
)
が、人生の
凋落
(
ちょうらく
)
の時になって整って来る。普通の人間なら爺顔になりかけの時が、役者では一番油の乗り切った頃である。立役はその期間が割に長い。
役者の一生
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
何角だかは考えないで、ただ角なるゆえに四角というのである。
輪廓
(
りんかく
)
が
円縁
(
まるぶち
)
であればただちに円いと言い、
屈曲
(
くっきょく
)
さえあれば円いというも、その
円
(
まる
)
というのは円形の意でない。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
だいいち
輪廓
(
りんかく
)
のぼんやり白く光ってぶるぶるぶるぶるふるえていることでもわかります。
ありときのこ
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
と、そんな
吝
(
けち
)
な肉感なんか、忽ちすッとんでしまうほど空はとろけそうに碧く、ギラギラ燃えていた。その空の奥に、あなたの顔の
輪廓
(
りんかく
)
が、ぼおっと浮んだような気がしました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
下頬
(
したほお
)
の膨らんだ円い
輪廓
(
りんかく
)
を幾度も画き直してから眼鼻をつけて最後に鼻柱の真中へ
黒子
(
ほくろ
)
を一つ打った。そうして出来上った
南瓜
(
かぼちゃ
)
のような顔の横へ「ネーサンノカオ」と書いておいた。
火
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
小さな築山と木枝の茂みや、池と庭草は、電灯の光は受けても薄板金で張ったり、針金で
輪廓
(
りんかく
)
を取ったりした小さなセットにしか見えない。
呑
(
の
)
むことだけして吐くことを知らない
闇
(
やみ
)
。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
若者の
背後
(
はいご
)
には何ものにもまさって黒い
彼
(
かれ
)
の
影法師
(
かげぼうし
)
が、
悪魔
(
あくま
)
のように不気味な
輪廓
(
りんかく
)
をくっきり芝生の上に
画
(
えが
)
いていた。老人は若者の背後にまわってそのかげのはしを両足でしっかりふまえた。
おしどり
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
蜑の
裸身
(
はだかみ
)
が、底の方にある時は、青い水の層の複雑な動揺の為に、その身体が、まるで海草の様に、不自然にクネクネと曲り、
輪廓
(
りんかく
)
もぼやけて、白っぽいお
化
(
ばけ
)
みたいに見えているが、それが
押絵と旅する男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
水狐族なるものの発生とその宗教の
輪廓
(
りんかく
)
とが
朧気
(
おぼろげ
)
ながらも解って来た。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
蒼
(
あを
)
く
濁
(
にご
)
れる
頬
(
ほほ
)
の肉よ、
髐
(
さらば
)
へる横顔の
輪廓
(
りんかく
)
よ、曇の懸れる
眉
(
まゆ
)
の下に物思はしき
眼色
(
めざし
)
の凝りて動かざりしが、やがて
崩
(
くづ
)
るるやうに
頬杖
(
ほほづゑ
)
を倒して、
枕嚢
(
くくりまくら
)
に重き
頭
(
かしら
)
を落すとともに寝返りつつ
掻巻
(
かいまき
)
引寄せて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
あの靄の
輪廓
(
りんかく
)
に取り巻かれている
辺
(
あたり
)
には、
大船
(
おおぶね
)
に乗って
風波
(
ふうは
)
を破って
行
(
ゆ
)
く大胆な
海国
(
かいこく
)
の民の住んでいる町々があるのだ。その
船人
(
ふなびと
)
はまだ船の
櫓
(
ろ
)
の
掻
(
か
)
き分けた事のない、沈黙の
潮
(
うしお
)
の上を船で渡るのだ。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
窓の一つをじっと見つめているうちに、ぼくは、ふとなにやら白っぽい
斑点
(
しみ
)
に気がつく。そのしみは、ちっとも動かずいちめんに暗い茶色をした背景の上に、四角い
輪廓
(
りんかく
)
をくっきり浮きたたせている。
かき
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
三千代の顔を頭の中に浮べようとすると、顔の
輪廓
(
りんかく
)
が、まだ出来上らないうちに、この黒い、
湿
(
うる
)
んだ様に
暈
(
ぼか
)
された眼が、ぽっと出て来る。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
正直なところ、わしはデルマの黄金メダルの秘密については、おぼろげながらその
輪廓
(
りんかく
)
を多少聞きかじっているにすぎない。
少年探偵長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
餉台
(
ちゃぶだい
)
におかれたランプの
灯影
(
ひかげ
)
に、薄い
下唇
(
したくちびる
)
を
噛
(
か
)
んで、考え深い目を
見据
(
みす
)
えている女の、
輪廓
(
りんかく
)
の正しい顔が蒼白く見られた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
丁度向いの所にミョンヒスベルヒ
山
(
やま
)
と、その
巓
(
いただき
)
にある城とが、はっきりした
輪廓
(
りんかく
)
をなして、
空
(
そら
)
にえがかれている。明りなぞを
点
(
つ
)
けるには及ばない。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
遠目は絹に近くまた肌ざわりも柔かである上に、何よりも女に嬉しかったのは、衣裳の
輪廓
(
りんかく
)
の美しくなったことである。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
“輪廓”の意味
《名詞》
輪廓(りんかく 「輪郭」に「同音の漢字による書きかえ」がなされる)
輪郭の別表記。
(出典:Wiktionary)
輪
常用漢字
小4
部首:⾞
15画
廓
漢検準1級
部首:⼴
14画
“輪廓”で始まる語句
輪廓的
輪廓線