“藍色:あいいろ” の例文
“藍色:あいいろ”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花6
芥川竜之介6
夏目漱石4
森鴎外3
島崎藤村3
“藍色:あいいろ”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 芸術・美術 > 芸術史 美術史40.0%
自然科学 > 植物学 > 植物学8.3%
芸術・美術 > 絵画 > 日本画2.0%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
そうしてまたみんな申し合わせたように眉毛まゆげをきれいにり落としてそのあとに藍色あいいろの影がただよっていた。
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
谷をおおう黒ずんだ青空にはおりおり白雲が通り過ぎるが、それはただあちこちの峰に藍色あいいろの影を引いて通るばかりである。
花物語 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
濃い藍色あいいろに煙りあがったこの季節の空は、そのとき、見れば見るほどただ闇としか私には感覚できなかったのである。
蒼穹 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
ただ広々として、山の頭がいくつとなく起伏している一角に、藍色あいいろの海が二カ処ほどひらたく見えるだけである。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
藍色あいいろに黒ずんだ二十間ほどの幅の潮の流れが瀬波のような音をたて、流木やごみが船といっしょに流れている。
藤九郎の島 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
海の色も、真夏に見るような濃藍のうらんの色を失って、それだけ親しみやすい軽い藍色あいいろに、はる/″\と続いていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
河水は、日増ひましに水量を加えて、軽い藍色あいいろの水が、処々の川瀬にせかれて、淙々そうそうの響を揚げた。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
明智が指で土をかきのけて行くと、その奥から、黒髪を乱した藍色あいいろの死人の顔が現れ、プンと異臭が鼻をついた。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
使節はうやうやしくそれを受け、五つ所紋のついた藍色あいいろな礼服の一つを頭の上に高くあげて深く謝意を表した。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あなたはブランコが揺れるままに、何時いつかしら、藍色あいいろのキモノに身を包んで藍色の大海原を帆走る一個の船夫かこであった。
少年・春 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
空はその上にうすい暗みを帯びた藍色あいいろにすんで、星が大きく明らかに白毫びゃくごうのように輝いている。
槍が岳に登った記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
藍色あいいろを漂わす大空にはまだ消えやらぬ薄靄うすもやのちぎれちぎれにたなびきて、晴れやかなる朝の光はあらゆるものに流るるなり。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
藍色あいいろの夕闇がうっすらと竹の林に立ちこめて、その幹の一つ一つに、西ぞらの残光が赤々と照り映えていた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
部屋のなかは、濃い褐色セピアと黒っぽい藍色あいいろのなかに沈んでいるのに、外景には三鞭酒シャンパン色の明るい光が氾濫している。
川をはさんだ山は紅葉と黄葉とにすきまなくおおわれて、その間をほとんど純粋に近い藍色あいいろの水が白いあわいて流れてゆく。
日光小品 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そこへどこからかからすが一羽、二三町隔った砂浜の上を、藍色あいいろにゆらめいたものの上をかすめ、更に又向うへさがった。
蜃気楼 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
仏は、ネラと呼ばれる女と、藍色あいいろようやく濃い研究所の庭を、砂利をふみつつ、奥の方へ歩いていった。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
今、お雪は、自分の身を、藍色あいいろをした夕暮の空の下、はてしを知らぬ大きな湖の傍で見出しました。
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「よく見たまえ、この回数券は戦前もずっと前の、藍色あいいろの表紙じゃないか、あと三枚きりしかない。こんな物いまどき通用するもんかね。」
蜜のあわれ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
藍色あいいろの夏服を着た、敏捷びんしょうそうな奴である、ボイは、黙って、脇にかかえていた新聞の一束ひとたばを、テーブルの上へのせる。
Mensura Zoili (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
浦島太郎は考えずともい、漁夫の着物は濃い藍色あいいろ腰蓑こしみのは薄い黄色きいろである。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
窓の硝子越ガラスごしながめると田、野菜畠、桑畠、皆な雪におおわれて、谷の下の方を暗い藍色あいいろな千曲川の水が流れて行った。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
フランツが二度目に出掛けた頃には、巓という巓が、藍色あいいろに晴れ渡った空にはっきりと画かれていた。
木精 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
彼の頭は嫁菜よめなの汁で染められた藍色あいいろからむしきれを巻きつけ、腰には継ぎ合したいたちの皮がまとわれていた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
隣室の線香が絶えんとする時、小野さんは蒼白あおじろい額を抑えて来た。藍色あいいろの煙は再び銀屏ぎんびょうかすめて立ちのぼった。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼らはそれに気づいて、藍色あいいろをふかめた彼方かなたの海を、はるかにそッとながめやった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
これもおそろいの、藍色あいいろの勝った湯帷子ゆかたそでひるがえる。足に穿いているのも、お揃の、赤い端緒はなおの草履である。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
遠くの愛宕あたごから西山の一帯は朝暾あさひを浴びて淡い藍色あいいろに染めなされている。
黒髪 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
さて半時ばかりの後、散策子の姿は、一人、彼処かしこから鳩の舞うのを見た、浜辺の藍色あいいろの西洋館のかたわらなる、砂山の上にあらわれた。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私達の頭の上では、木の葉の間からちらっと覗いている藍色あいいろが伸びたり縮んだりした。
風立ちぬ (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
さて雲のみねは全くくずれ、あたりは藍色あいいろになりました。そこでベン蛙とブン蛙とは、
蛙のゴム靴 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それ以上深くなると、こい緑色となり、三十尋(五十五メートル)以上では、藍色あいいろ
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
その日は照り続いた八月の日盛りの事で、限りもなく晴渡った青空の藍色あいいろしたたり落つるが如くに濃く、乾いて汚れた倉の屋根の上に高く広がっていた。
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
幾個いくつかの皿すでに洗いおわりてかたわらに重ね、今しも洗う大皿は特に心を用うるさまに見ゆるは雪白せっぱくなるに藍色あいいろふちとりし品なり。
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
……畑中の並木が紫に烟り、昼間は藍色あいいろに見えていた遠くの山々が、今は夕栄ゆうばえの光りを受けてほとんど淡紅色と云い得るまでに淡く薄い色になってゆく。
田舎医師の子 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
藍色あいいろの雲の間から、弱い弱い日脚ひあしが唯一筋はすに落ちて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
白山は、藍色あいいろの雲間に、雪身せっしんの竜に玉の翼を放ってけた。悪く触れんとするものには、その羽毛が一枚ずつ白銀しろがね征矢そやになって飛ぼう。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
津田は竪横たてよこに走る藍色あいいろわくの上にくずれ散ったこの粉末に視覚を刺撃されて、ふと気がついて見ると、彼は煙草を持った手をそれまで動かさずにいた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
とうとう、半蔵らの旅は深い藍色あいいろの海の見えるところまで行った。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
藍色あいいろの、嫌に光るくすりの掛かった陶器の円火鉢である。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
女の美しい顔は、濃い藍色あいいろであった。恨めしげに見開いた目は真赤であった。唇はドス黒く見えた。眉をしかめ、目を狐のように逆立て、口を大きく開いて、わめいている形相の物凄さ。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
すなわち赤色、橙色だいだいいろ、黄色、緑色、青色、藍色あいいろ、紫色がこれでありまして、日光光線を分光器で分析しますと、いわゆるスペクトルとなって、これらの美しい色にわかれます。
紫外線 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
空にかかった大鷲の影も、遠き夕照ゆうでりをうけて金羽きんうさんらんとして見えるかと思えば、またたちまち藍色あいいろの空にとけて、ただものすごき一点の妖影ようえいと化している。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
海は広い砂浜の向うに深い藍色あいいろに晴れ渡っていた。
蜃気楼 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
枕を削る山颪やまおろしは、激しく板戸いたどひしぐばかり、髪をおどろに、藍色あいいろめんが、おのを取つて襲ふかとものすごい。……心細さはねずみも鳴かぬ。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
けれどもあの透きとおるような海の藍色あいいろと、白い帆前船などの水際みずぎわ近くに塗ってある洋紅色ようこうしょくとは、僕の持っている絵具えのぐではどうしてもうまく出せませんでした。
一房の葡萄 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
で手をみ手を揉み、正面まともには顔を上げずに、ひょこひょこして言う。この古女房は、くたびれた藍色あいいろ半纏はんてんに、茶の着もので、紺足袋に雪駄穿せったばきで居たのである。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
霧も薄し、こちらからは吃驚びっくりするほど、大きく見た、が、澄切った藍色あいいろの空をはるかに来たように、その胸から上半分の娘の方は、さも深そうに下の墓をのぞいて、帽子を転がして
藍色あいいろほろを張った支那馬車である。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
の間から高い窓が見えて、その窓のすみからケーベル先生の頭が見えた。わきから濃い藍色あいいろの煙が立った。先生は煙草たばこんでいるなと余は安倍あべ君に云った。
ケーベル先生 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
富士の影がなぎさを打って、ひたひたと薄くかぶさる、藍色あいいろの西洋館のむねたかく、二、三羽はとはねをのして、ゆるく手巾ハンケチり動かすさまであった。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二つ三つ藍色あいいろの浪をいた提灯ちょうちんともれて、にぎやかなような、陰気なような、化けるような、時々高笑たかわらいをする村の若衆わかいしゅの声もしていたのが、やがて
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それはもっともっと縮んで、たんぽぽとれんげ草の花畑はなばたけとなり、もっともっと縮んで飛行機から見下ろした武蔵野の風景となり、それから南と北に分れて太平洋と日本海が藍色あいいろに見えだした。
ふしぎ国探検 (新字新仮名) / 海野十三(著)
母様の庭で、母様の膝の上で、母様の手に抱かれて、母様のほおにあなたは両手をあてながら、母様の藍色あいいろの床しさをあやしみつつ見詰めた。そして情あふれる母様の声をうれしくきいた。
少年・春 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
流るる藍色あいいろの川を切って暗くした。
「この部屋の……この部屋の階段の右手に、奥にひっこんだ戸棚とだながある。そのまん中あたりに立っている横幅よこはば二メートル、高さも二メートルの機械で、正面のパネルは藍色あいいろに塗ってある。それが制御台だ」
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
赤い封蝋ふうろう細工のほおの木の芽が、風にかれてピッカリピッカリと光り、林の中の雪には藍色あいいろの木のかげがいちめんあみになって落ちて日光のあたる所には銀の百合ゆりが咲いたように見えました。
雪渡り (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
わたしは、利助りすけさくがたまらなくきだ。まあ、この藍色あいいろえていてみごとなこと。金粉きんぷんいろもその時分じぶんとすこしもわらない。上等じょうとうのものを使つかっていたとみえる。」
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かくの如く二色摺板画は寛保三、四年に始まりしが数年ならずして、宝暦元年頃(一七五一、二年)に至るやいつともなく緑紅のうちより緑色の分解によりて黄色を作り、また紅色こうしょくの上に藍色あいいろ(青)を摺りて紫を得、以て三色摺となしぬ。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
国貞の役者絵には彩色を施さざる白き地紙じがみに人物を濃く浮立たせたるもの多し。この種類のうちにて吾人は藍色あいいろの濃淡殊に美しき衣裳をつけたるものを称美す。然れども彼はまた全く反対の方法を取り、黒ずみたる背景の山水に鮮明なる衣裳の色彩を対照せしむる事あり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
フランスの古い壁画の示すところによれば、ブルターニュ公とブールボン公とは、武装し紋章をつけ戦いのしるしをつけ、馬にまたがり、まさかりを手にし、鉄の面と鉄のくつと鉄の手袋をつけ、一つは黄色の馬飾りを施し、一つは藍色あいいろの馬衣を置いて、互いに相まみえた。
しからばすなわち燕子花とはなにか、燕子花の本物はキツネノボタン科に属するヒエンソウの一種で、オオヒエンソウ、すなわち Delphinium grandiflorum L. と呼ぶ陸生宿根草本りくせいしゅっこんそうほんで、藍色あいいろ美花びかを一花穂かすいに七、八花も開くものである。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)