ほぞ)” の例文
「滝川とて、うつけじゃない。おそらく一益、あの禿げ上がったをたたいて、ちと早かったと、を噛んでおるにちがいないわさ」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天丸左陣はこれを聞くと一時は少なからず吃驚りしたが、咄嗟に思案のを決めると、部下の兵を引率して妙高山へ出張って行った。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
一層覚悟のをかためるわけだと思うが、いい作品と自分に向って考えるとき、それはどのような作品として浮んで来るのだろう。
「そりや出来ない事もないが、——しかし温泉へくなぞは贅沢だな。僕はまだ切つて以来、旅行らしい旅行はした事がない。」
塵労 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「僕はほゞ方針をめて、君のところへ相談に来たんだ。折から忠臣蔵を見せて貰ったのは幸先が好い。もう決心のを固めたよ」
首切り問答 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
されども浪子は父の訓戒ここぞと、われをえて何も家風に従わんと決心のを固めつ。その決心を試むる機会は須臾に来たりぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
サイリーナスじゃないが強者だよ。だって、もう永久に覚悟のが決まってるんだからなあ。いや、こんな地口は許してくんなよ。
流石に観念のを据えられたものとみえ、さる日、お側小姓に「短冊を持て」とお命じになり、あおのけに寝たまま筆をとって
玉取物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
愈々H海岸の病院に入院する日が来た。お前たちの母上は全快しない限りは死ぬともお前たちに逢わない覚悟のを堅めていた。
小さき者へ (新字新仮名) / 有島武郎(著)
それが最近に不思議な因縁からある日の東京劇場におけるその演技をの緒切って始めて見物するような回り合わせになった。
生ける人形 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「よし/\その中に、三七郎に頼まれた書き物が入つてゐる筈だ。それを出してくれ、お前の緒書きなんか、要るものか」
そして、鬼神の体は鉄のように固いが、ただの下五六寸の処を、彼が常に覆いかくすのを見ると、そこからが通るらしい
美女を盗む鬼神 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
を噛むとも間に合わぬような失態を演じないうちに!閣下等はこのヘルバート・ドゥ・レルナークをよく御存じのはずだ
冷えしに水せき込みて、覗へば覗ふほど。我に利なきの戦いは、持長守久の外なしと。疑ひのさし堅めて、手をき眼をつぶりたる一郎の。
誰が罪 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
勘弁してらつせえ。うゝとも、すうとも返答もねえだ…先生はれるは、つては最初だでね。」
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
千悔、万悔、んでいる胸元を貫くような午砲。それと同時に「御膳で御座いますよ」。けれど、ほいきたと云ッて降りられもしない。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
しかるに、アダムは陽に向う時、より上は陽に従いて背後に影をなせども、より下は陽にいて、前方に影を落せり。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
私は困つたが茲処の据え時と思つて、平気な風をして、あなた等大きな声で何ですねゑ、と懐ろ手で澄して居ると
ふとした口のすべりから、今年は九一金を出すまいとのこっちの肚を漁夫たちに覚られてしまったということは、を噛んでも及ばない不覚だった。
鰊漁場 (新字新仮名) / 島木健作(著)
二年も三年も泣尽して今日といふ今日どうでも離縁をふて頂かうと決心のをかためました、どうぞ御願ひで御座ります離縁の状を取つて下され
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのものの持っていた「奥羽皆敵」の密書がかれたのが四月十九日であった。五月三日には、それならば——と、を固めて成り立った奥羽聯盟
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
そうして、権十郎と紙屋の夫婦への申訳に、どうしても討死をしなければすまないと、覚悟のをかためたそうです。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
夢と思うは嬉しく、思わぬがつらいからである。戦は事実であると思案のを堅めたのは昨日や今日の事ではない。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
時機至った時に勇ましき決心のを固め、シルラもしくはオリゲネスのごとく後ろを顧みざる者は、幸福なるかな!
あれほど葛岡のためにとを固めた殻の厚さも、りをかけた女の技倆というものも、女の情にすか/\に浸潤み通されて、それに呆れ返った自分は結局
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
銀杏城外の中村では、英雄豊太閤ののために万斛の熱涙を捧げた先生が、今その豊太閤の生みの親であり、日本の武将、政治家の中の最も天才であり
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
『あれ見よ、密夫の狂言とは、名ばかりで相も変らぬ藤十郎じゃ』と、云われては、自分の芸は永久にれるのだと、彼は心の裡に、覚悟のを堅めていた。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
いよ/\来たな、と、道阿弥はもう観念のを固めていたが、今度は松雪院を初め女中たちが愕然とした。
仏国公使の厚意をむなしくしたらあとになってをかんでも追いつかない、これは大事の前の小事である、老中連署が不承知とあれば御一存で処置せられたい
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
結局立ち上つて歩くだけの足損だと観念のをかためてゐるうえでの凝念自若たる木像であらうと思ふ。
今度の決め手が違ったら、もうこれで探偵の看板は下してしまおう! と、覚悟のを固めた。が、いよいよ手を入れるとなると、ここに問題が一つ起ってくる。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
刀はの上から背へ抜けた。宇津木は縁側にぺたりとすわつた。大井は背後へ押し倒してを刺した。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
しるべし、彼等は巨人にして櫓にあらず、またそのより下はの中岸のまはりにあり 三一—三三
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
また、こんな都合のいいところはない、ぜひ入れてもらわなければならぬと決心のをかためた。
この裁判を自分の名誉にかけても片付けなくてはならぬと固い決心のを固めたらしいのです。
霊感! (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その言葉はオリヴィエを恐れさせるどころか、かえって決心のを固めさせることとなった。クリストフは一方ならぬ骨折りをして、二人の狂人に少し辛抱させることにした。
放擲してかかる邪道に踏み迷はば他日必ず後悔をかむ事あらん文筆を好まば唯正業の余暇これをなして可なりかつはまたわれは尾崎や川上とは異なりてかの人々の如く多く門生を
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
それこそピイチクピイチクやかましくおしゃべりする雲雀みたいになってしまったようだが、しかし、もはやそれに対する自己嫌悪や、みたいほどのしい悔恨も感じない。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
このをみろ。一年成りの若実だったら、すんなりとしてもっと青々としておるが、臍がこのとおりしなびて節くれだっているのは、まさしく落ち残りの証拠だよ。ことによると——
今にして文字への盲目的崇拝を改めずんば、後にむともばぬであろう云々
文字禍 (新字新仮名) / 中島敦(著)
決心のを固む 寓居への帰路、馬上よりかの空を眺めますと、世界第一のゴーリサンガの高雪峰の巍然として雲際え千古不磨の姿を現わして居るのをて大いに感じたです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「なに、別段心配はせんがね、ただ時日が迫っているので、何かまた異変でも生じた時、君が居合せないために、後でを噛むようなことがあってはならぬと、ただそれだけを案じたよ」
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
草色薔薇の花、海の色の薔薇の花、ああのあやしい妖女草色薔薇の花、波に漂ふ不思議な珠玉、指が一寸ると、おまへは唯の水になつてしまふ、僞善の花よ、無言の花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
最も力の籠っているのは、蔓と瓜の実とをつなぐで、り物全体の重みを支えなければならぬだけに、秀れた茶壺の捻り返しを見るような、力と鮮やかさとを味わされることが多い。
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
吾等は、重大使命びながら、何時大陸くといふ目的く、此儘空中漂蕩してつて、其間しく豫定期日經※してしまつたならば、後悔むともぶまい。
これゃ一つ参らねばなるまいといよいよ決心のを固めて今朝田舎を後に都上りを致したようなわけである。こう申すと何だか皆様に恩を着せるようだがあまり有難いなどと思われては困る。
イエスキリストの友誼 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
の入つた斑點に汚れた黄色い壁に向つて、これからの生涯を過去の所爲と罪報とに項低れ乍ら、足に胼胝の出來るまで坐り通したら奈何だと魔の聲にでも決斷のを囁かれるやうな思ひを
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
我は彼等にひて立ち、手に持ちたる刑法の卷を開きてさし示し、見よ、分をえたる衣服のは國法の許さゞるところなるぞ、我が告發せん折にむ悔あらんとしたり。工人は拍手せり。
「甥はもう、の緒切っての長旅でござりまして、はい。」
口笛を吹く武士 (新字新仮名) / 林不忘(著)
声たてて小さくしきをまさぐりぬ。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)