トップ
>
胤
>
たね
ふりがな文庫
“
胤
(
たね
)” の例文
もう少将の
胤
(
たね
)
を宿しているのです。わたしが今死ぬとすれば、子供も、——可愛いわたしの子供も一しょに死ななければなりません。
二人小町
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
驚いて
其
(
その
)
仔細を
訊
(
ただ
)
したが、
彼女
(
かれ
)
は何にも答えなかった。赤児は恐らく重蔵の
胤
(
たね
)
であろうと思われるが、男の
生死
(
しょうし
)
は一切不明であった。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
苦労の中にも
助
(
たすく
)
る神の結び
玉
(
たま
)
いし縁なれや嬉しき
情
(
なさけ
)
の
胤
(
たね
)
を宿して帯の祝い
芽出度
(
めでたく
)
舒
(
の
)
びし
眉間
(
みけん
)
に
忽
(
たちま
)
ち
皺
(
しわ
)
の
浪
(
なみ
)
立
(
たち
)
て騒がしき
鳥羽
(
とば
)
伏見
(
ふしみ
)
の戦争。
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
貴女が僕の
胤
(
たね
)
を
宿
(
やど
)
したということが判ったなら、僕は一体どうなると思うのです。社会的地位も名声も、灰のように飛んでしまいます。
振動魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
母親は高貴の
胤
(
たね
)
を宿して自分を生んだと聽いて、自分も榮耀の限りを盡し、高い身分になりたいと、命がけで心掛けたことだらう。
銭形平次捕物控:289 美しき人質
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
実に年は
往
(
ゆ
)
かないが、是は
矢張
(
やはり
)
松山さんのお
胤
(
たね
)
だけ有って、私ア聞いて居てぽろりと来ました、いやこれは誰でもポロときますよ
松と藤芸妓の替紋
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
二人の娘は浅井の
胤
(
たね
)
であって、柴田の子孫ではないから、これは秀吉の手に托しても仔細はあるまいと、二女を城外に送り出して
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
いかん! いかん! かなわぬ願いだっ。逆賊の
胤
(
たね
)
を世にのこしおけば、やがて予に対して祖父の
讐
(
あだ
)
の母の
仇
(
かたき
)
のと、後日のたたりを
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
死んだ亭主の
胤
(
たね
)
を
暗
(
やみ
)
から暗へやるのも情けないし、済まない済まないと思いながら、時さんにばかり苦労をかけています。
沓掛時次郎 三幕十場
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
わたしはこの間の盆踊りの晩に、誰とも知れぬ男の
胤
(
たね
)
を宿したが、まだ誰にも云わずにいるうちに、文太郎さんが養子に来ることになりました。
いなか、の、じけん
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
島は清休の
子婦
(
よめ
)
、廓清の妻になつて、一子東清を擧げた。若し島が下げられた時、義公の
胤
(
たね
)
を
舍
(
やど
)
してゐたとすると、東清は義公の
庶子
(
しよし
)
であらう。
寿阿弥の手紙
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
聞如何我
胤
(
たね
)
なればとて然る
曲者
(
くせもの
)
を
採用
(
さいよう
)
し後に
害
(
がい
)
をば
殘
(
のこ
)
さんこと
武將
(
ぶしやう
)
の所爲に有ざれば天下の爲に彼をして
強
(
しひ
)
て
僞者
(
にせもの
)
と
言詰
(
いひつめ
)
て
宜敷
(
よろしく
)
刑
(
けい
)
に行ふ可し是を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
それのみならず、にくい良人の
胤
(
たね
)
であるかと思うと、お腹の子までが自分の
仇敵
(
かたき
)
のように思われてなりません。
印象
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
鏡と額田とは、たうてい一つ腹ひとつ
胤
(
たね
)
の姉妹とは思へないほどに、別々の世界の住み手だつたわけである。
鸚鵡:『白鳳』第二部
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
しかし滋幹は、自分の
胤
(
たね
)
ちがいの弟に当る中納言
敦忠
(
あつたゞ
)
に対しては、
餘所
(
よそ
)
ながら深い親愛の情を寄せていた。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ある日「おっかあ、お湯が呑みてえ」と呼んだきり唖となった。何ものが彼の舌を
縛
(
しば
)
ったか。同じ
胤
(
たね
)
と云う彼の弟も盲であるのを見れば、
梅毒
(
ばいどく
)
の遺伝もあろう。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
かれらは世子が藩主の
胤
(
たね
)
であるかどうかあやしい、と云いだしたのである。信濃守は十七歳で結婚した。
屏風はたたまれた
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
自ら護法の
胤
(
たね
)
であることを標榜して、自衛の道を講じたことが子孫に累をなしたのであったかもしれぬ。
憑き物系統に関する民族的研究:その一例として飛騨の牛蒡種
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
あたしがお前さんのお父ッあんの
胤
(
たね
)
でないとは、誰も保証できないじゃないか。
獣
(
けだもの
)
になるのは、いやさ
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
それに致しましても天一坊が公方様のお
胤
(
たね
)
であるかどうかと申す事まではお判りにはなりますまい。
殺された天一坊
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
娘は
終
(
つい
)
にその
俳優
(
やくしゃ
)
の
胤
(
たね
)
を宿して、女の子を産んだそうだが、
何分
(
なにぶん
)
にも、
甚
(
はなは
)
だしい難産であったので、三日目にはその生れた子も死に、娘もその
後
(
のち
)
産後の
日立
(
ひだち
)
が
悪
(
わ
)
るかったので
因果
(新字新仮名)
/
小山内薫
(著)
逗子
(
ずし
)
にある博士の別荘に召使いとして住み込んでいる時分に、ふと博士の
胤
(
たね
)
を
娠
(
はら
)
んだのだということや、ある権門から
嫁
(
とつ
)
いで来た夫人の怒りを怖れてそのことが博士以外の誰にも
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そして自分が死水を取ってやった唯一の親友の檜垣の主人は、結局その姪を自分に
妻
(
め
)
あわして、後嗣の
胤
(
たね
)
を取ろうとする仕掛を、死の断末魔の無意識中にあっさり自分に伏せている。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
フランチェスコ大公妃ビアンカ・カペルロ殿は、ピサ・メディチ家において貴下の
胤
(
たね
)
を秘かに生めり。その女児に
黒奴
(
ムール
)
の乳母をつけ、刈込垣の外に待たせ置きたれば受け取られよ——と。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
浮世はつれなし
親族
(
みより
)
なりける誰れ彼れが作略に、爭そはんも甲斐なや亡き旦那樣こそ照覽ましませ、八幡いつはりなき御
胤
(
たね
)
なれども、言ひ張りてからが欲とやいはれん卑賤の身くやしく
暗夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
遂にその男の
胤
(
たね
)
を宿したのだといふこと、森田は
逓信省
(
ていしんしやう
)
の電信技手とかで、三十前の独身者だが、毎月一度位京都へ出張して来て、その都度浪華亭を宿にしてゐたのだといふこと、ところで
乳の匂ひ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
この
娘
(
こ
)
が小池の兒であつたら、小池の
胤
(
たね
)
であつたら。——
兵隊の宿
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
生
(
しやう
)
あるものの
胤
(
たね
)
を
食
(
は
)
む
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
私は
胤
(
たね
)
をおろさう
小熊秀雄全集-05:詩集(4)小熊秀雄詩集2
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
この母子は町人の
胤
(
たね
)
ではなかった。お菊の父は西国の浪人
鳥越
(
とりごえ
)
なにがしという者で、それに連れ添っていた母も武士の娘である。
番町皿屋敷
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
しかし、その子が、実際次郎の
胤
(
たね
)
かどうか、それは、たれも知っているものがない。
阿濃
(
あこぎ
)
自身も、この事だけは、全く口をつぐんでいる。
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ねえ、その男は、自分の
情婦
(
おんな
)
を、若い男に失敬されちまったんだ。いや、おまけに、情婦というのが、若い男の
胤
(
たね
)
を宿しちまった。いいですか。
夜泣き鉄骨
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「お雪殿の生んだ、
怨敵
(
をんてき
)
五郎次郎の
胤
(
たね
)
と、此處で最期を遂げ、惡逆非道の
裔
(
すゑ
)
をこの世から亡ぼすのが、せめてもの望みだ。怨んでくれるなよ、玉枝殿」
銭形平次捕物控:220 猿蟹合戦
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
たとえどんな
不具
(
かたわ
)
でも、馬鹿でもよいから、お前の
胤
(
たね
)
というものに加藤の家をつがせて、尾張名古屋の城を見返すように、この、わたしがついています
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
話は前へ戻って、
彼此
(
かれこれ
)
するうちに、お蝶さんは妊娠したのであります。即ち、悪漢の
胤
(
たね
)
を宿したのであります。運命はどこまでお蝶さんを虐げるのでしょう。
狂女と犬
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
もうお
胤
(
たね
)
が
留
(
とま
)
っては隠すことは出来ない。
彼
(
あれ
)
は内から膨れて
漸々
(
だん/\
)
前の方へ
糶出
(
せりだ
)
して来るから仕様がない。何うも変だ、様子が
訝
(
おか
)
しいと注意をいたして居ました。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
その水戸樣のお
胤
(
たね
)
の人は若くて亡くなりましたが、血筋は壽阿彌さんまで續いてゐるのだと、承りました。
寿阿弥の手紙
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
母は其子を兼盛の
胤
(
たね
)
では無いと云張り、兼盛は
吾子
(
わがこ
)
だと争ったが、
畢竟
(
ひっきょう
)
これは母が其子を手離したくない母性愛の
本然
(
ほんねん
)
から
然様
(
そう
)
云ったのだと解せられもするが
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「わたくしは亡くなった大旦那さまの側女でございました、産んだ子は大旦那さまのお
胤
(
たね
)
でございます」
柿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
あらゆるモノスゴイ記憶の数々を一パイに含んだ自分の
胤
(
たね
)
を後世に残して死んだ……するとこの胤が又、生き代り死に代り明かし暮して来て、呉一郎に到って又も
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それにしても同じ腹、おなじ
胤
(
たね
)
の皇子でありながら、中ノ大兄とはなんといふ違ひやうであらう。
春泥:『白鳳』第一部
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
同道
(
どうだう
)
致
(
いた
)
し城下へ參り
榎本屋
(
えのもとや
)
三藏に頼み
加納將監
(
かなふしやうげん
)
樣へ
御針
(
おはり
)
奉公に出し
遣
(
つかは
)
し候に其
後
(
のち
)
病氣
(
びやうき
)
なりとて
宿
(
やど
)
へ下り母の
許
(
もと
)
に居候が何者の
胤
(
たね
)
なるか
懷姙
(
くわいにん
)
致し居候故
村中
(
むらぢう
)
取り/″\
噂
(
うはさ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
何進はもと牛や豚を
屠殺
(
とさつ
)
して業としている者であったが、彼の妹が、洛陽にも稀な美人であったので、貴人の娘となって宮廷に入り、帝の
胤
(
たね
)
をやどして
弁皇子
(
べんおうじ
)
を生んだ。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
唖と盲は稲次郎の
胤
(
たね
)
と分ったが、
彼
(
あの
)
二人
(
ふたり
)
は久さんのであろ、とある人が云うたら、否、否、あれは
何某
(
なにがし
)
の子でさ、とある村人は久さんで無い外の男の名を云って
苦笑
(
にがわらい
)
した。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
但し百人一首
一夕話
(
いっせきわ
)
に、夫人在原氏は国経の館から時平に
拉
(
らっ
)
し去られる時に、既に敦忠を懐妊していた、されば敦忠はまことは国経の
胤
(
たね
)
であるが、夫人が本院へ移ってから生れたゝめに
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
猶
(
なほ
)
其人
(
そのひと
)
の
戀
(
こひ
)
しきも
愁
(
つ
)
らく、
涙
(
なみだ
)
に
沈
(
しづ
)
んで
送
(
おく
)
る
月日
(
つきひ
)
に、
知
(
し
)
らざりしこそ
幼
(
をさ
)
なけれ、
憂
(
う
)
き
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
に
憂
(
う
)
きを
重
(
かさ
)
ねて、
宿
(
やど
)
りし
胤
(
たね
)
の
五月
(
さつき
)
とは、
扨
(
さて
)
もと
計
(
ばか
)
り
身
(
み
)
を
投
(
なげ
)
ふして
泣
(
なき
)
けるが、
今
(
いま
)
は
人
(
ひと
)
にも
逢
(
あ
)
はじ
物
(
もの
)
も
思
(
おも
)
はじ
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「ありゃお前様、子供を助けたいからなんでさあ。源氏の
胤
(
たね
)
を残したいから、仕方がなしにああなったんでしょう」
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
此の
児
(
こ
)
はお
前
(
めい
)
さんの
胤
(
たね
)
に
違
(
ちげ
)
い
無
(
ね
)
いというと、男の方では月イ勘定すると
一月
(
ひとつき
)
違うから己の児じゃア
無
(
ね
)
い、顔まで
好
(
よ
)
く
彼奴
(
あいつ
)
に似ていると云うと、女は腹ア立って
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
それは彼女が小女郎狐と親しくしているという噂で、かれはもう狐の
胤
(
たね
)
を宿しているとまで吹聴した。
半七捕物帳:24 小女郎狐
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「じゃあ、それが本当なら、なぜ妾は貴方の
胤
(
たね
)
を宿したのです。誰が
訛
(
だま
)
されるもんですか。嘘つき!」
三人の双生児
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
胤
漢検準1級
部首:⾁
9画
“胤”を含む語句
落胤
御落胤
護法胤
御胤
車胤
但馬守胤統
閭丘胤
後胤
篤胤
平田篤胤
鉄胤
師岡正胤
延胤
末胤
貞胤
胤頼
胤栄
千葉介常胤
胤舜
子胤
...