)” の例文
その様子を見るとまた身体からだでも良くないと思われて、真白い顔が少し面窶おもやつれがして、櫛巻くしまきにった頭髪あたまがほっそりとして見える。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
青銅からかねの鳥居をくぐる。敷石の上に鳩が五六羽、時雨しぐれの中を遠近おちこちしている。唐人髷とうじんまげった半玉はんぎょく渋蛇しぶじゃをさして鳩を見ている。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そうかと思うと又ふいと娘がこの中に来ていはせぬかと思って、銀杏返しにっている、若い女をり出すようにして見ることなどがある。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
髪を天神髷にっていた。その襟足がばかに真白だったが、先刻さっきちらと見たところでは、顔は濃い白粉おしろいを脂で拭きとったらしくつるりとしていた。
溺るるもの (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
が、入る時見た、襖一重ふすまひとえが直ぐ上框あがりかまち兼帯の茶の室で、そこに、まげった娑婆気しゃばきなのが、と膝を占めて構えていたから。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それはおかしいの、大久保おおくぼさんも本多ほんださんも北小路きたこうじさんもみんな丸髷まるまげってね、変に奥様じみているからおかしいわ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「あすこの土間で、お納戸なんど色の羽織をきて、高島田につてませう。いまちよいと中腰になつてます、あれですよ、」
二黒の巳 (新字旧仮名) / 平出修(著)
そこにお母さんがちゃんと着がえをして、頭を綺麗きれいって、にこにことして僕を見詰めていらしった。
碁石を呑んだ八っちゃん (新字新仮名) / 有島武郎(著)
暑さ盛りをうつら/\と臥てゐたお柳は今し方起き出して、東向の縁側で靜子に髮をはしてる樣子。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「そうですね、もう四五年前のことでしょう、お上さんがまだ島田なんぞってなすったころで」
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
「おう、光坊みつぼうか、お前、つい、この間頭をったんじゃないか。浅草の観音様へでも行くのか」
しと/\階子はしごを下りて参り、長手の火鉢の前に坐りましたが髪が、たてでお化粧しまい為立したてで、年が十九故十九つゞ二十はたちというたとえの通り、実に花を欺くほどの美くしい姿で
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
高い腰掛こしかけに坐つて、ヂョウジアァナは鏡に向つて、髮をつてゐた。屋根裏の抽斗の中で彼女が前にさがしておいた造花ざうくわと色のせた羽根はねを捲き毛に編み込まうといふのだ。
ただ艶々つやつやしく丸髷まるまげった年増としまかみさんが出て来て茶を入れたことだけは記憶して居る。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
眉の濃い、頬の豊かな、笑顔の美しい、耳かくしにつて巧みに髪をウエブさせた女、髪を短く断つて快活に街頭を歩いて行く女、電車の混雑の中にチラリと見た美しい眉……。
赤い鳥居 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
「お師匠さん、その御遠慮には及びませんよ」といいながら、庭先の枝折戸しおりどを開けて、つかつかとはいって来たのは、大丸髭まるまげった二十七八の水も垂れるような美女であった。
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
物を言う時には絶えず首をうごかす、其度にリボンが飄々ひらひらと一緒にうごく。時々は手真似もする。今朝った束髪がもう大分乱れて、後毛おくれげが頬をでるのを蒼蠅うるさそうに掻上かきあげる手附もい。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
丁字髷ちょんまげったおさむらいと男の子のむきあっている絵の読本の時間だった。
先生はこんな顔だちどないお考えになりますか? 日本髪よう似合うてますやろ?——はあ、お母様かあさん日本髪好きやとかいうことで、ときどきやはりまして、学校いもその頭で来やはりましてん。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「じゃ、私がそこをわえて上げよう」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの左側のさくってある所の
堅気らしい丸髷まるまげってぞろりとした風をした女や安お召を引っ張って前掛けをした女などがぞろぞろ二階に上ったり下りたりしている。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「だって娘は島田にっているとさっき云ったじゃないか」「前夜は島田さ、しかも見事な島田さ。ところが翌朝は丸薬缶さ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そうそう。あの時山木のむすめと並んで、垂髪おさげって、ありあ何とか言ったっけ、葡萄色ぶどういろはかまはいて澄ましておどってたのは、たしか浪さんだっけ」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「まさか、巻込まれたのなら知らないこと——お婿さんをとるのに、間違ったら、高島田におうという娘の癖に。」
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大野が来賓席の椅子いすに掛けていると、段々見物人が押して来て、大野のひざの間の処へ、島田にった百姓の娘がしゃがんだ。お白いと髪の油とのにおいがする。
独身 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「アノ丸髷にッた方は、あれは夫人おくさまですか」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「チョンまげっておくれ。」
あとは、日本服をて、わざと島田につた令嬢と、長らく紐育ニユーヨークで商業に従事してゐたと云ふ某が引き受けた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「うるさいでしょう。ざっとってた方がよかないの? ね、ちょっと結いましょう。——そのままでいいわ」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
と、そこへ、酒さかな、水菓子を添えて運んで来た。するとね、円髷まげった仲居らしいのが、世話をして、御連中、いずれもお一ツずつは、いい気なもんです。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
爺いさんが隠居所に這入ってから二三日立つと、そこへあさんが一人来て同居した。それも真白な髪を小さい丸髷まるまげっていて、爺いさんに負けぬように品格が好い。
じいさんばあさん (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「宮ちゃん、さっき君のところ階段はしごだんの下に突っ立っていたあの丸髷にったひとは何というの」
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
と云うやいなや、ひらりと、腰をひねって、廊下を軽気かろげけて行った。頭は銀杏返いちょうがえしっている。白いえりがたぼの下から見える。帯の黒繻子くろじゅす片側かたかわだけだろう。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こゝくだんむすめたるや、いまもおはなししたとほり、吉原よしはらことはぢとし、待合まちあひこといやだとつた心懸こゝろがけなんだから、まあはたからすゝめても、結綿いひわたなんぞにはうよりは
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
洗うのはわけは無いから、わたしがするよ。お前髪はゆうべったのだからそれで好いわね。早く着物をお着替よ。そしてなんにもお土産が無いから、これを持ってお出
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
いつもなら何をおいても小さなまげった母が一番先へ出て来て、義理ずぐめにちやほやしてくれるところを、今日に限って、劈頭へきとうにお秀が顔を出したばかりか
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「可いのよ、小母さん、髪結さんのとこだから、極りが悪いからそう云って来たけれど、髪なんぞわなくったって構わなくってよ。ちっとも私、結いたくはないの、」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さっぱりとした銀杏返いちょうがえしにって、こんな場合に人のする厚化粧なんぞはせず、殆ど素顔と云ってもい。それが想像していたとは全く趣が変っていて、しかも一層美しい。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
「山だって海だって、奥さん、その娘を一目あなたに見せたいと思うくらいですよ、文金ぶんきん高島田たかしまだに髪をいましてね」「へえー」と細君はあっけに取られている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あれが来るから、と云って、お前、昨夜ゆうべ髪をったそうだ。ああ、島田がく出来た、己が見たよ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夫人は紺飛白こんがすりのお召縮緬めしちりめんの綿入れの上に、青磁色の鶉縮緬うずらちりめんに三つ紋を縫わせた羽織をかさねて、髪を銀杏返いちょうがえしにって、真珠の根掛を掛け、黒鼈甲くろべっこう蝶貝ちょうかいを入れたくししている。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「お部屋を片づけてね、それから奥さんの御髪おぐしって上げたんですよ。それにしちゃ早いでしょう」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
用を聞いて、円髷まげった女中が、しとやかにひらきを閉めてったあとで、舟崎は途中も汗ばんで来たのが、またこうこもったので、火鉢を前に控えながら、羽織を脱いだ。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
草履ぞうりを脱ぎ散らして、障子をがらりと開けて飛び込んで見ると、おばさんはどこかの知らない娘と一しょに本を開けて見ていた。娘は赤いものずくめの着物で、髪を島田にっている。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
しかし今朝けさ下女がってやったというその髪は通例のひさしであった。何の奇も認められない黒い光沢つやが、くしの歯を入れたあとを、行儀正しくたてに残しているだけであった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その円髷まげったあねの方は、竹の橋から上ったのだと言いました。つい一条路ひとすじみちの、あの上りを、時刻も大抵同じくらい、貴下は途中でお逢いになりはしませんでしたか。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小さい銀杏返いちょうがえしをって、黒繻子くろじゅすの帯を締めている中婆ちゅうばあさんである。相手にとは云っても、客が芸者を相手にしている積りでいるだけで、芸者はすこしもこの客を相手にしてはいない。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
その上を白帆しらほを懸けた船が何艘なんぞうとなくったり来たりした。河岸かしにはさくった中へまきが一杯積んであった。柵と柵の間にある空地あきちは、だらだらさがりに水際まで続いた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
……手切てぎれかもじも中にめて、芸妓髷げいしゃまげった私、千葉の人とは、きれいにわけをつけ参らせそろ
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)