“栄螺:さざえ” の例文
“栄螺:さざえ”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花14
海野十三4
柳田国男2
吉川英治2
夏目漱石1
“栄螺:さざえ”を含む作品のジャンル比率
歴史 > 伝記 > 個人伝記0.9%
文学 > 日本文学 > 小説 物語0.7%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)0.3%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
さて、おさかなには何よけん、あわび、さだえか、かせよけん、と栄螺さざえはまぐりが唄になり、皿の縁に浮いて出る。
雛がたり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
栄螺さざえが、そろそろとふたをもちあげるように、いまこの豆潜水艇は、昇降口の蓋を、そろそろともちあげはじめました。
豆潜水艇の行方 (新字新仮名) / 海野十三(著)
潰島田の人形を思った、栄螺さざえはまぐりを思った、吸口の紅を思って、火を投げるに忍びなくって、——橋に棄てた。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……残酷じゃないか、君、生身を大根研子でおろされる時の感じは、どんなだろうね。それから、栄螺さざえの壺焼だって……。
野ざらし (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
私はただ屏風びょうぶいわおに、一介の栄螺さざえのごとく、孤影煢然けいぜんとして独りふたを堅くしていた。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それをみるや、兵曹長は栄螺さざえのような拳固をかためて、手もとに近い敵から、その頬ぺたを、ぱしんぱしんとなぐりつけました。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
祭礼まつりそろいかな、蛤提灯——こんなのに河豚も栄螺さざえもある、畑のものじゃ瓜もあら。……茄子なすびもあら。」
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どこの城将でも、またいかに戦乱でも、栄螺さざえのように、そうのべつ城のなかにとじ籠っているわけもない。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
信州の南のほうではこれを法螺ほらの貝に緒を通すといい、加賀の江沼えぬま郡などでは栄螺さざえからの底に穴をあけて、蟻をはわせて見よと
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
若い衆はへさきに待ってて、声が切れると、栄螺さざえの殻をぴしぴしと打着ぶッつけますの。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その島の周りが吾々の漁場であって、章魚たことかさごと栄螺さざえとが主な獲物であった。
真夏の日本海 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
先刻さっき、君は私の手料理になる栄螺さざえを、鱈腹たらふくべてくれたね。
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
口取は焼玉子、栄螺さざえ(?)栗、あんず及び青きかん類のたる者。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
こんな川でも、動揺どよみにゃ浪を打つわ、濡れずば栄螺さざえも取れねえ道理よ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
栄螺さざえはその殻を以て天地となし、蓑虫みのむしはその外包を以て世界とす。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
廉平は雲をいだくがごとく上から望んで、見えるか、見えぬか、あわただしくうなずき答えて、直ちに丘の上にくびすめぐらし、栄螺さざえの形に切崩した
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
身を切って客に抱かせもしないであろうが、飯蛸いいだこなぞもそうである……栄螺さざえ黄螺ばい、生の馬刀貝まてがいなどというと、張出した軒並を引込ひっこんで
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
最初、泣くとも呻くとも判らない押しつぶしたような低い悲鳴が、さっきのままで栄螺さざえの蓋のように窓を締められたまま電気のともっていた煙草屋の二階のほうから聞えて来た。
銀座幽霊 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
つら赭黒あかぐろく、きば白く、両の頬に胡桃くるみり、まなこ大蛇おろちの穴のごとく、額の幅約一尺にして、眉は栄螺さざえを並べたよう。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
浜には、栄螺さざえを起す男も見え、いわしを拾うわらべも居る。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
最早節句の栄螺さざえを積んだ船が下田の方から通って来る時節である。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
七兵衛をやり過ごして、同じ栄螺さざえの壺焼屋から出た旅の男は、これもすっすと風を切って上って行く。七兵衛も足が早いがこの男も足が早い。みるみる七兵衛に追いついてしまいました。
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
栄螺さざえや、とこぶし、もろあじの開き、うるめいわしの目刺など持ちましては、飲代のみしろにいたしますが、その時はお前様、村のもとの庄屋様、代々長者の鶴谷つるや喜十郎様
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……第一寄進に着いた電燈に対してもお鹿の女房が辞退するのを、遠慮は要らない、で直ぐに、あの、前刻さっきのあれ、ひな栄螺さざえはまぐりの新聞包みを振下ぶらさげて出た。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
リキーは、いまや太刀川の頭上に、栄螺さざえのような鉄拳をうちおろそうとしたところだったが、このときうむとうなって、目を白黒、顔色がさっと蒼ざめて、その場にだらんとなってしまった。
太平洋魔城 (新字新仮名) / 海野十三(著)
王朗は、命からがら城へひきあげたが、その損害は相当手痛いものだったので、以来、栄螺さざえのように城門をかたく閉めて、「うかつに出るな」と、もっぱら防禦に兵力を集中してうごかなかった。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして稀れには栄螺さざえが同居していることもある。
真夏の日本海 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
「うむ、動かばこそと云ったような按排あんばいじゃないか。こう云う風に」と四角な肩をいとど四角にして、いた方の手に栄螺さざえの親類をつくりながら、いささか我も動かばこその姿勢を見せる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
縄でなくては栄螺さざえを取り巻く覚悟はつかぬ。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ここの名物は栄螺さざえ壺焼つぼやき
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ここを過ぎて、一つ二銭の栄螺さざえかな。
ダス・ゲマイネ (新字新仮名) / 太宰治(著)
そのはぎの白さ、常夏とこなつの花の影がからみ、磯風に揺れ揺れするでしゅが——年増も入れば、夏帽子も。番頭も半纏のすそをからげたでしゅ。巌根いわねづたいに、あわび、鰒、栄螺さざえ、栄螺。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それから桃、栄螺さざえなどを彫った。
回想録 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
「軍医どのの栄螺さざえ料理が無ければ、わしは五十五分間ずつ寝るつもりだった」と川波大尉が、ポカポカ湯気ゆげのあがっている真黒の栄螺のつぼを片手にとりあげ、お汁をチュッと吸ってから、そう云った。
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかし、もみじや、山茶花さざんかの枝をわざと持って、悪く気取って歩行あるくよりはましだ、と私が思うより、売ってくれた阿媽おっかあの……栄螺さざえこぶしで割りそうなのが見兼みかねましてね、
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やあ火の玉の親分か、わけがある、打捨うっちゃっておいてくれ、と力を限り払いけんともが焦燥あせるを、栄螺さざえのごとき拳固げんこ鎮圧しずめ、ええ、じたばたすればり殺すぞ、馬鹿め。
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
が、巌山いわやま巉崕ざんがいを切って通した、栄螺さざえつのに似たぎざぎざのふもとこみちと、浪打際との間に、築繞つきめぐらした石のしがらみは、土手というよりもただ低い欄干に過ぎない。
半島一奇抄 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
待乳山まつちやまの森浅草寺せんそうじの塔の影いづれか春の景色ならざる。実に帝都第一の眺めなり。懸茶屋かけぢゃやには絹被きぬかつぎの芋慈姑くわい串団子くしだんごつら栄螺さざえの壼焼などをもひさぐ。
向嶋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
尤も島津は太閤様以来栄螺さざえの蓋を固めて、指一本指させぬ天険に隠れておるけに、徳川も諦めておろう。……されば九州で危いのはまず黒田と細川(熊本)であろう……と備後びんご殿(栗山)も美作みまさか殿(黒田)も吾儕われらに仰せ聞けられたでのう。
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
………チッツンチッツン、ツン、チンリン、チンリンやしょめ、やしょめ、京の町の優女やしょめ、………大鯛おおだい小鯛、ぶり大魚おおうおあわび栄螺さざえ蛤子々々はまぐりこはまぐりこ、蛤々、蛤召ッさいなと、売ったる者は優女やしょめ
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「あの小説の中の人物には栄螺さざえとか鱒次郎ますじらうとか安甲あんかふとか、大抵たいてい魚貝ぎよばいの名がついてゐる。志賀氏にもヒユウモラス・サイドはないのではない。」すると客は驚いたやうに、「成程なるほどさうですね。そんな事には少しも気がつかずにゐました」と云つた。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
倭名鈔わみょうしょう』には都比(ツビ)に甲蠃子、または海蠃をて、是を螺類つびるいの総名のごとく解しているために、田螺たにしのツブまたは栄螺さざえのツボ焼きなどと、結びつけて考えようとする人もあるが、右の南方諸島のシビ・スビと対照してみると、この解は或いはまちがいと言えるだろう。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
向う岸はまた一座の山のすそで、頂の方は真暗まっくらだが、山のからその山腹を射る月の光に照し出されたあたりからは大石小石、栄螺さざえのようなの、六尺角に切出したの、つるぎのようなのやら、まりの形をしたのやら、目の届く限り残らず岩で、次第に大きく水にひたったのはただ小山のよう。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ははあ、栄螺さざえ壺焼つぼやきといった形、大道店で遣りますな。……松並木を向うに見て、松毬のちょろちょろ火、蛤の煙がこの月夜に立とうなら、とんと竜宮の田楽でんがくで、乙姫様おとひめさま洒落しゃれあねさんかぶりを遊ばそうという処、また一段のおもむきだろうが、わざとそれがために忍んでも出られまい。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いつか絵本を見るとね、灯をともした栄螺さざえだの、かぶとを着た鯛だの、少しわいせつなたこだのが居る中に、黄螺の女房といってね、くるくると巻いたすそを貝から長々といて、青い衣服きもの脱出ぬけだした円髷まるまげが乱れかかって、その癖、色白で、ふっくりとした中年増がいてあったが、さもうまそうに見えたのさ。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)