トップ
>
撥
>
は
ふりがな文庫
“
撥
(
は
)” の例文
たかが熊本君ごときに、酒を飲む人の話は、信用できませんからね、と憫笑を以て言われても、私には、すぐに
撥
(
は
)
ね返す言葉が無い。
乞食学生
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
撥
(
は
)
ね返す力がないわけではないのに、ひつきりなしに先手を打たれるのは、必ずしも年齢の差によるものとばかりは思はれなかつた。
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
渦
(
うず
)
を巻いている処、
波状
(
はじょう
)
になった処、
撥
(
は
)
ねた処、ぴったりと引っ
附
(
つ
)
いた処と、その毛並みの趣が、一々実物の趣が現わされている。
幕末維新懐古談:35 実物写生ということのはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
今の場合、自分は、認定で送れるのだと云われても、ただ常識で、そんな不合理なことがあるか! と
撥
(
は
)
ねかえすばかりなのであった。
刻々
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
彼らの
身体
(
からだ
)
に、そのときあつい血が
湧
(
わ
)
きあがって来た。
撥
(
は
)
じかれたようにとび出したのは阿賀妻であった。彼は流れの中に駈けこんだ。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
▼ もっと見る
薪割りから水汲みと、越後から来た
飯炊男
(
めしたきおとこ
)
のように実を運んでも、笹の雪、
撓
(
しな
)
うと見せて肝腎なところへくるとポンと
撥
(
は
)
ねかえす。
平賀源内捕物帳:山王祭の大像
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
盛り上がる古桐の長い胴に、
鮮
(
あざや
)
かに眼を
醒
(
さ
)
ませと、への字に渡す糸の数々を、幾度か抑えて、幾度か
撥
(
は
)
ねた。曲はたしか
小督
(
こごう
)
であった。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それが今、手が柄に掛ると
同瞬
(
どうしゅん
)
、そのまま
撥
(
は
)
ね上げればいいのだ。刀は、みずから糸を断ち、羽織の
裾
(
すそ
)
を潜って、眼前に躍り出る。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「いいえ、孔子様だけ。孔子様が右の手をこんな風に握つて、小指をこんなに
撥
(
は
)
ねてゐます。」と、言つて、学校へ行きました。
愚助大和尚
(新字旧仮名)
/
沖野岩三郎
(著)
兄にも妹にも
撥
(
は
)
ね付けられて、内田は失望した。その失望から彼は根もないことを
捏造
(
ねつぞう
)
して、赤座兄妹を傷つけようと
企
(
たく
)
らんだ。
青蛙堂鬼談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それに若い時、
撥
(
は
)
ね火で
怪我
(
けが
)
をしたとかいうことで、右の一眼がつぶれているため、その片目の人相が、いかにも一
癖
(
くせ
)
ありげに見られる。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
男
(
をとこ
)
の
裾
(
すそ
)
を
見出
(
みだ
)
ししかば、ものをも
言
(
い
)
はず
一嘴
(
ひとくちばし
)
、
引咬
(
ひつくは
)
へて
撥
(
は
)
ね
飛
(
と
)
ばせば、
美少年
(
びせうねん
)
はもんどり
打
(
う
)
つて、
天上
(
てんじやう
)
に
舞上
(
まひあが
)
り、
雲雀
(
ひばり
)
の
姿
(
すがた
)
もなかりしとぞ。
妙齢
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
私はいつの間にか新橋を渡り、芝口の通りを真っ直ぐにぴちゃぴちゃ泥を
撥
(
は
)
ね上げながら金杉橋の方まで歩いてしまいました。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
度々来ているうち、その事もなげな様子と、それから人の気先を
撥
(
は
)
ね返す
颯爽
(
さっそう
)
とした若い気分が、いつの間にか老妓の手頃な言葉
仇
(
がたき
)
となった。
老妓抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「女ではない、力のある男だ。お吉ほどの丈夫さうな女が、死物狂ひになつても、下から風呂の蓋を
撥
(
は
)
ね上げられないほどの力のある人間だ」
銭形平次捕物控:158 風呂場の秘密
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
脱ぎしをとってまた
被
(
き
)
すれば、よけいな世話を焼かずとよし、腹掛け着せい、これは要らぬ、と利く右の手にて
撥
(
は
)
ね退くる。
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
蛇が動き出して、客間の軒へ移りましたので、棒を入れて
撥
(
は
)
ねましたら、ばたりと庭へ落ちました。それは一間足らずの青大将だったのです。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
わたしはむろん、きっぱりと
撥
(
は
)
ねつけました。すると、『きさまじゃ分からん、直接西村に談判するんだ。それで承知しなきゃ殴り殺してやる』
五階の窓:03 合作の三
(新字新仮名)
/
森下雨村
(著)
種吉は、娘の頼みを
撥
(
は
)
ねつけるというわけではないが、別れる気の先方へ行って
下手
(
へた
)
に顔見られたら、どんな目で見られるかも知れぬと断った。
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
染八の
首級
(
くび
)
は、
碇綱
(
いかりづな
)
のように下がっている
撥
(
は
)
ね
釣瓶
(
つるべ
)
の縄に添い、落ちて来たが、地面へ届かない
以前
(
まえ
)
に消えてしまった。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
一息に語りつづけてしまった弁信の長物語に、抑えつけていた者も
呆
(
あき
)
れたらしいが、言葉が途切れると急に
撥
(
は
)
ね返って
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
しかし、彼は三度の入学試験に、三度とも
撥
(
は
)
ねられた。今の彼の心には、田園生活がとぐろを巻いているのであった。
土竜
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
怒牛角を
閃
(
ひらめ
)
かして馬でも人でも突き刺し、
撥
(
は
)
ね上げて、その落ちて来るのを待って角に懸けて振り廻す——こう言った、馬血人血
淋漓
(
りんり
)
たるところが
踊る地平線:07 血と砂の接吻
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
別れの座なりを二つ三つ交わした後上り口まで行った助五郎は、ずかずかと引っ返して来て、何を思ったものか矢庭にお神棚の下の風呂敷を
撥
(
は
)
ね退けた。
助五郎余罪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
そこへまた、
何
(
なに
)
か
雷
(
かみなり
)
のやうに
怒鳴
(
どな
)
る
聲
(
こえ
)
がしたかと
思
(
おも
)
ふと、
小牛
(
こうし
)
ほどもある
硬
(
かた
)
い
氷
(
こほり
)
の
塊
(
かたまり
)
がピユーツと
墜
(
を
)
ちてきて、
真向
(
まつこう
)
からラランのからだを
撥
(
は
)
ね
飛
(
と
)
ばした。
火を喰つた鴉
(新字旧仮名)
/
逸見猶吉
(著)
撥
(
は
)
ねる音すなわち「ン」で表わす音とか、つまる音、すなわち
促音
(
そくおん
)
、そういうものが現れるようになったのは
古代国語の音韻に就いて
(新字新仮名)
/
橋本進吉
(著)
太子のあの気性で
手酷
(
てひど
)
く
撥
(
は
)
ね付けて、もしこれ以上の圧迫でも太子の身に加わるようなことがあってはと、二人ともそれをひどく案じ切っているのであった。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「露助……それよりも僕は猫みたいな氣がしたぜ、眼が變に光つて、髭がぴんと横つちよに
撥
(
は
)
ねてて……」
猫又先生
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
女房が何かねだると、末造はいつも「馬鹿を言うな、手前なんぞは己とは違う、己は附合があるから、為方なしにしているのだ」と云って
撥
(
は
)
ね附けたのである。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
叢
(
くさむら
)
の中からぬっと
迫
(
せ
)
り出して来て笠を
撥
(
は
)
ね
除
(
の
)
け、
脇差
(
わきざし
)
を抜いて見得を切るあの顔そっくり。その顔で
癇癪玉
(
かんしゃくだま
)
を破裂させるのだから、たいがいの者がぴりぴりした。
桜林
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
機敏に眼を働かして、品物を
択
(
よ
)
る指の怪しげな働き方を監視し、いざとなれば、素早く、意地のきたない
蠅
(
はえ
)
を追うように、その指を
撥
(
は
)
ね
退
(
の
)
けようと身構えている。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
仙台河岸へ船をもやって一服
喫
(
や
)
ってると、船の中へザブリと水が跳ね込んだから、何だと思って苫を
撥
(
は
)
ねて向うを見ると、頭巾を冠った侍が
長
(
なげ
)
えのを
引抜
(
ひっこぬ
)
いて立って
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
蝋燭の火は
元宵
(
げんしょう
)
(正月)の晩のようにパチパチと
撥
(
は
)
ね
迸
(
ほとばし
)
ったが、彼の思想も火のように撥ね迸った。
阿Q正伝
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
私ははじめて見る藁屋根や、破れた土壁や、ぎりぎり音のする
撥
(
は
)
ね
釣瓶
(
つるべ
)
などがひどく気にいつて伯母さんとそこへ菓子を買ひにゆくのが大きな楽しみのひとつになつた。
銀の匙
(新字旧仮名)
/
中勘助
(著)
そして、ホールの人人のサッと裂け開いた中へ流れ込むと、時を移さず急調子に鳴りひびいたバンドに合せ、踊り
撥
(
は
)
ねる小鹿の群れのような新鮮な姿態で踊りつづけた。
罌粟の中
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
「や、
去
(
かえ
)
るな。いよいよ去るな」と、善吉は
撥
(
は
)
ね起きて障子を開けようとして、「またお梅にでもめッけられちゃア
外見
(
きまり
)
が悪いな」と、障子の
破隙
(
やぶれ
)
からしばらく覗いて
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
愛
(
あい
)
ちやんは
處
(
こ
)
れは
奇妙
(
きめう
)
だと
思
(
おも
)
つて、
近寄
(
ちかよ
)
つて
凝
(
じつ
)
と
見
(
み
)
てゐますと、やがて
其中
(
そのなか
)
の
一人
(
ひとり
)
が
云
(
い
)
ふことには、『
意
(
き
)
をお
注
(
つ
)
けよ、
何
(
なん
)
だね、
五點
(
フアイブ
)
!こんなに
私
(
わたし
)
に
顏料
(
ゑのぐ
)
を
撥
(
は
)
ねかして!』
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
その雨の音を
撥
(
は
)
ねのけるように、空色の壁の向うでは、今もまた
赤児
(
あかご
)
が泣き続けている。………
母
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
私は、リード夫人の指圖した部屋の中へ連れ込まれて、
腰掛
(
こしかけ
)
の上へ投げ出されてゐた。私は、盲動的に、バネのやうに
撥
(
は
)
ね起きようとしたが、二組の手がすぐ取り押へた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
どういう
撥
(
は
)
ね方がおもしろいとか、そのほか筆に力を入れるとか入れないとか、太いとか細いとか、そういった外観を飾る技術工作が一番重大事件のように考えられて来る。
現代能書批評
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
皆無言で、そして
泥汁
(
どろ
)
を
撥
(
は
)
ね上げぬ樣に、極めて靜々と、一足毎に氣を配つて歩いて居るのだ。兩側の屋根、低い家には、時に十何年前の同窓であつた男の見える事がある。
葬列
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
更紗
(
さらさ
)
の
掻巻
(
かいまき
)
を
撥
(
は
)
ねて、毛布をかけた敷布団の上に
胡座
(
あぐら
)
を掻いたのは主の新造で、年は三十前後、キリリとした目鼻立ちの、どこかイナセには出来ていても、真青な色をして
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
爺さんの言ふのでは、これまで女に申込むで、一度だつて
撥
(
は
)
ねつけられた事は無かつた。もしか今度の
談
(
はなし
)
がうまく
纏
(
まと
)
まれば、
恰
(
ちやう
)
ど十五度目の結婚になる訳だつたのださうだ。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
自動車は、また、八寸置きに布片の目じるしをくゝりつけた田植縄の代りに木製の新案特許の
枠
(
わく
)
を持って来た。
撥
(
は
)
ね
釣瓶
(
つるべ
)
はポンプになった。
浮塵子
(
うんか
)
がわくと白熱燈が使われた。
浮動する地価
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
その上に密生して
簇
(
むらが
)
っている細かい枝までがこの木特有の癖を見せて、屈曲して垂れさがり、その
尖
(
さき
)
を一せいに
撥
(
は
)
ねあげる。柘榴の
木立
(
こだち
)
の姿はそういうところに、魅力がある。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
国際通りへ出ると、折から国際劇場の松竹少女歌劇の昼の部が
撥
(
は
)
ねたところらしく、そのお客らしい華やかな少女の群が舗道をいっぱいに埋めて、田原町の方へと流れて行く。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
鍬は音を立てないように、しかしめまぐるしく、まだ固まり切らない墓土を
撥
(
は
)
ね返した。
死屍を食う男
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
つづいて、水を
撥
(
は
)
ね返して逃出す音が、忍び笑いの声と交って聞え、それが静まると、また元の静寂に返った。疲れているので、午後の水浴をしている娘どもにからかう気も起らない。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
それらの無数に起伏して異った中心を作る諸性が互に
輔
(
たす
)
け合い、埋め合せ、もしくは互に
撥
(
は
)
ね返し、闘争して、不断の流転を続けることに由って私の自我は成長し、私の生活は開展する。
母性偏重を排す
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
一男にもこれという
当
(
あて
)
はなかったけれども、わざと
撥
(
は
)
ね
返
(
かえ
)
すように彼は答えた。
秋空晴れて
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
“撥”の解説
撥(ばち)とは、弦楽器の弦をはじく(引っ掛けて離す、または打つ)ために用いる棒状の道具である。
桴・枹(ばち、Percussion mallet)は、楽器という点では共通だが、打楽器を叩く棒である。枹と桴は音(フ)も意味も同じ漢字だが、撥は音(バチ)も意味も異なる別の漢字であり、区別される。
(出典:Wikipedia)
撥
漢検1級
部首:⼿
15画
“撥”を含む語句
撥条
撥返
反撥力
撥飛
撥條
撥退
撥橋
弾撥
反撥
撥音
撥無
反撥心
撥釣瓶
挑撥
反撥的
撥付
一撥
撥屋
撥袋
撥鬢奴
...