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撓
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た
ふりがな文庫
“
撓
(
た
)” の例文
また或は我邦にては
果
(
み
)
を得んとのみ願ひて枝を
撓
(
た
)
め幹を矮くするため、我も人もまことの梨の樹のふり花のおもむきをも知ること少く
花のいろ/\
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
こは實に今の批評家の弊を
撓
(
た
)
むる論なり。唯夫れ弊を撓むる論なり。かるが故に
寖
(
やゝ
)
偏なるにはあらずやとおもはるゝふしなきにあらず。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
「——
一刻
(
いっとき
)
ばかりが大事なところだ、おれも今すぐに出向くから、持場を離れずに
撓
(
た
)
めていてくれ。日ごろの稽古を試すのは今宵だぞ」
八寒道中
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
寧
(
むし
)
ろ
甥
(
おい
)
の性格のなかに自分と同位元素のあることを認め、これを
撓
(
た
)
め直すこと己れの為すが如くせよとさえ思ったくらいである。
評釈勘忍記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
と転がして、
発奮
(
はず
)
みかかって、ちょいと留めて、一つ
撓
(
た
)
めておいて、ゆらりと振って放す時、得も言われず銀鈴が
谺
(
こだま
)
に響く。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
それでもなお余ったのが
烏
(
からす
)
や
鼠
(
ねずみ
)
の
餌
(
えさ
)
となるのだが、中にはそれらの動物の目にも触れないで、
撓
(
た
)
わんだ枝のまま地に
埋
(
うずま
)
って腐っているのもあった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
さて負はれ、のびあがり、見ゆと見ゆとし我が言へば、なよあはれ、
五十年
(
いそとせ
)
の昔の
温
(
ぬく
)
み、よろぼふ腰に力を
撓
(
た
)
むる。
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
情をも
撓
(
た
)
めず欲をもいとわない生の肯定はこの先達があとから歩いて来るものにのこして置いて行った宿題である。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
教育者がいたずらに生徒の
本性
(
ほんせい
)
を
撓
(
た
)
めて、僕の手柄を見給えと誇るようなもので
毫
(
ごう
)
も非難すべき理由はない。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
義理人情の美風といふものも歌舞伎芝居の二番目ものなどで見る親分子分の關係などでは、歪んだ——
撓
(
た
)
めた窮屈なもので、無條件では好いものだといひかねる。
凡愚姐御考
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
故意
(
わざ
)
とならぬ
眺
(
ながめ
)
はまた格別なもので、火をくれて枝を
撓
(
た
)
わめた
作花
(
つくりばな
)
の
厭味
(
いやみ
)
のある色の及ぶところでない。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
物置から
鉤
(
はり
)
箱を出してくることであったり、時には庭の梅の木の枝ぶりを
撓
(
た
)
めることであったりした。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
取組は二本差しの朝の森を
貫
(
かんぬき
)
で
撓
(
た
)
めてるうち左外がけで押し倒される。出羽ヶ嶽星取表——●●●○
怪物取組画譜:出羽ヶ嶽その日その日
(新字旧仮名)
/
岡本一平
(著)
久保田君と君の主人公とは、
撓
(
た
)
めんと欲すれば撓むることを得れども、折ることは必しも容易ならざるもの、——たとえば、雪に伏せる竹と趣を一にすと云うを得べし。
久保田万太郎氏
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
日々の営みの努力は、ひんまがった釘を、まっすぐに
撓
(
た
)
め直そうとする努力に、全く似ています。
八十八夜
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
成長するにつれて、健全な英國風の教育は、大いに彼女の佛蘭西の缺點を
撓
(
た
)
めた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
正面
(
まえ
)
へ廻って藤吉はその
柘榴
(
ざくろ
)
のような突傷を
撓
(
た
)
めつ
眇
(
すが
)
めつ眺めていたが、いっそう身体を伏せると、指で傷口を辿り出した。それから手習いをするように自分の掌へ何かしら書いていた。
釘抜藤吉捕物覚書:01 のの字の刀痕
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
文化の末ごろからの
流行
(
はやり
)
で、坂の両がわから根津神社のあたりまで、四丁ほどのあいだに目白おしに小屋をかけ、枝を
撓
(
た
)
め花を組みあわせ、
熊谷
(
くまがい
)
や
敦盛
(
あつもり
)
、立花屋の弁天小僧、高島屋の
男之助
(
おとこのすけ
)
。
顎十郎捕物帳:22 小鰭の鮨
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
淡褐色となって
鱗
(
うろこ
)
のように脱落したのもある、風に
撓
(
た
)
められて「出」字状に
臂
(
ひじ
)
を張った枝は、
屈
(
かが
)
めた頭さえ推参者めがと叱るように突き退ける、栂の黒色の幹が、朽ちて水の中に浸っている
梓川の上流
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
庭の内に
高低
(
こうてい
)
参差
(
しんし
)
とした十数本の松は、何れも
忍
(
しの
)
び得る
限
(
かぎ
)
り雪に
撓
(
た
)
わんで、最早
払
(
はら
)
おうか今払おうかと思い
貌
(
がお
)
に枝を
揺々
(
ゆらゆら
)
さして居る。
素裸
(
すっぱだか
)
になってた
落葉木
(
らくようぼく
)
は、
従順
(
すなお
)
に雪の積るに任せて居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「そうですか、では御随意に、
角
(
つの
)
を
撓
(
た
)
めようとして牛を殺さないように」
誘拐者
(新字新仮名)
/
山下利三郎
(著)
感情
濫用
(
らんよう
)
の
弊
(
へい
)
を
撓
(
た
)
める必要
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
『数右衛門ではめずらしくない事だ。……源吾。そちにも、云い含めておいたはずではないか。ちと、あの
粗暴
(
そぼう
)
を
撓
(
た
)
め直すようにせいと』
濞かみ浪人
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
自分でもそれを
撓
(
た
)
めようとして、父の死ぬまえには、永平寺へいって百日ほど参禅したこともあったし、いまでも禅に関する書物は熱心に読んだ。
十八条乙
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それ、
躓
(
つまず
)
くまい、見当を狂わすなと、
俯向
(
うつむ
)
きざまに、面をぱくぱく、鼻の穴で
撓
(
た
)
める様子が、クン、クンと
嗅
(
か
)
いで
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鳥を半分銜えてふくらんだ頭が、弓なりに
撓
(
た
)
められて折れずにいた籠の竹に
支
(
つか
)
えて抜けずにいるので、上半身の重みが籠に加わって、籠は四十五度位に傾いた。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
激しかる我が
性
(
さが
)
をしも
言
(
こと
)
撓
(
た
)
めて堪へ堪へて居れ蝉の鳴きいづ
黒檜
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「はははは、ちと勝手が違ったか。まあよいわさ、まだ十九か
二十歳
(
はたち
)
のお身で倖せ、初心に返れば、どうにでも
撓
(
た
)
め直しはきく」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
汗のある手は当てない秘蔵で、芽の出づる頃より、ふた葉の頃より、枝を
撓
(
た
)
めず、
振
(
ふり
)
は直さず、
我儘
(
わがまま
)
をさして甘やかした、千代田の
巽
(
たつみ
)
に
生抜
(
はえぬ
)
きの気象もの。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
撓
(
た
)
め直そうと努めました、ずいぶんそう努めたのですけれど、まわりの見る眼はもうそれを許しませんでした、小雪はなみ外れていなくてはならないのです
山だち問答
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
櫓
(
やぐら
)
に
撓
(
た
)
むる石火矢に
新頌
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
その時、すさまじい声をもって、さっきから静観の槍先を横たえたまま、
撓
(
た
)
め切っていた十数名の門下の坊主たちへ、号令したのである。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「や、」と倒れながら、激しい
矢声
(
やごえ
)
を、掛けるが響くと、宙で
撓
(
た
)
めて、とんぼを切って、ひらりと
翻
(
かえ
)
った。
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
こういうことを口外されたそうである。このことは右衛門の耳に伝わったらしい、そして彼は臣下としてかなりまじめに反省し、自分の性行を
撓
(
た
)
めなおすことに努めた。
思い違い物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
乱世だ、乱調子の世だ、これを
撓
(
た
)
め
統
(
す
)
べるには、多少自分たちに
辛
(
つら
)
くてもよい、厳格
峻烈
(
しゅんれつ
)
に臨まれてもいい。——その代りに
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
土間はたちまち春になり、花の
蕾
(
つぼみ
)
の一輪を、
朧夜
(
おぼろよ
)
にすかすごとく、お町の唇をビイルで
撓
(
た
)
めて、飲むほどに、蓮池のむかしを
訪
(
と
)
う身には本懐とも言えるであろう。
古狢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
志保はまずそれを
撓
(
た
)
めることから始めたのである、……晋太郎はすなおにその気持をうけ
容
(
い
)
れた。
菊屋敷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
さらには、幕府の方針も、両家の反目をもって、つねに両勢力を
撓
(
た
)
めておく巧みな治策としていたのもいうまではない。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と
驚
(
おどろ
)
いた
顔
(
かほ
)
をして、ちよつきをがつくりと
前屈
(
まへかゞ
)
みに、
肱
(
ひぢ
)
を
蟹
(
かに
)
の
手
(
て
)
に
鯱子張
(
しやちこば
)
らせて、
金時計
(
きんどけい
)
を
撓
(
た
)
めながら
銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
父親の百助は彼の性分を
撓
(
た
)
め直そうとした。ずいぶん手を尽したが、結局うまくいかなかった。
似而非物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
すばやく、お綱が逃げた、とは知ったが、それを追うどころでなく、左の
拇指
(
おやゆび
)
で、肉へ食いこむ縄の力を
撓
(
た
)
めながら、あおむけざまに踏みこたえる。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何某
(
なにがし
)
の令夫人だった貴婦人は、我が身も
同
(
おんな
)
じに、
悲
(
かなし
)
み
傷
(
いた
)
んで、何は
措
(
お
)
いても、その悪い癖を
撓
(
た
)
め直そうと、
千辛万苦
(
せんしんばんく
)
したけれども、お綾は、
怪
(
あやし
)
い情を制し得ない。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
撓
(
た
)
めるだけ撓めていたちからでどっと燃えあがったのだ、ちょうど巨大な
坩堝
(
るつぼ
)
の蓋をとったように、それは焔の柱となって噴きあがり、眼のくらむような華麗な光の
屑
(
くず
)
を八方へ
撒
(
ま
)
きちらしながら
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その至難の道の途中で、たまたま、つかれ果て、虚無に襲われ、無為に閉じ
籠
(
こ
)
められる時——卒然として、
撓
(
た
)
めていた敵は、影を
顕
(
あらわ
)
して来るものとみえた。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
七兵衛は腰を
撓
(
た
)
めて、
突立
(
つった
)
って、
逸疾
(
いちはや
)
く一間ばかり
遣違
(
やりちが
)
えに川下へ流したのを、振返ってじっと
瞶
(
みつ
)
め
葛飾砂子
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
遠い
天星
(
てんせい
)
の青光りが、ギラッとつづらの側によれ合った。一方のつづらへは有村の剣! ひとつのほうへは天堂一角が、今にも突き出さんと
撓
(
た
)
め澄ます
光鋩
(
こうぼう
)
。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、片手に
撓
(
た
)
めて、袖に載せた
拳銃
(
ピストル
)
は、更に、
抽取
(
ぬきと
)
った、血のままなる
狼
(
おおかみ
)
の
牙
(
きば
)
のように見えた。
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
王
(
おう
)
婆もまた、もちろん今日の寸法は呑みこんでいる。いい首尾を作るにも、男の
逸
(
はや
)
り気を
撓
(
た
)
め、女の待ち
汐
(
しお
)
を見、そこの
櫓楫
(
ろかじ
)
の取り方は
媒
(
なかだ
)
ち役の腕というもの。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
また
其
(
そ
)
の
饀
(
あん
)
がかりの
三人
(
さんにん
)
の、すくつて、
引
(
ひ
)
いて、
轉
(
ころ
)
がして、
一
(
ひと
)
ツ
捻
(
ひね
)
つてツイと
遣
(
や
)
るが、
手
(
て
)
を
揃
(
そろ
)
へ、
指
(
ゆび
)
を
揃
(
そろ
)
へて、ト
撓
(
た
)
めて
刺
(
さ
)
す
時
(
とき
)
、
胸
(
むね
)
を
据
(
す
)
ゑる
處
(
ところ
)
まで、
一樣
(
いちやう
)
に
鮮
(
あざや
)
かなものである。
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
多少、そのあいだに、もちまえの一徹や野望の角も
撓
(
た
)
められ、一思案の時期に入ったのではあるまいか。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
撓
漢検1級
部首:⼿
15画
“撓”を含む語句
撓々
不撓
可撓性
撓曲
蝋質撓拗性
不撓不屈
不屈不撓
屈撓性
百折不撓
軟撓
豪胆不撓
袋撓刀
蝋質撓拗症
背撓馬
撓舟
撓直
撓柔
撓枉過中
撓屈
撓垂
...