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律義
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りちぎ
ふりがな文庫
“
律義
(
りちぎ
)” の例文
そう云う言葉さえ聞き取りにくい田舎
訛
(
なま
)
りで、こちらが物を尋ねてもはかばかしい答えもせずに、ただ
律義
(
りちぎ
)
らしく
時儀
(
じぎ
)
をして見せる。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
不正なる
行為
(
こうい
)
は富の外にも行われる。不正なる行為をもって名誉を得る者もある。その代りには
律義
(
りちぎ
)
一
色
(
しょく
)
で金を
拵
(
こしら
)
える者もある。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
あの通り正直で
律義
(
りちぎ
)
で自分から脳の鈍いのを
言立
(
いいたて
)
て
外
(
ほか
)
の人より二倍も三倍も勉強するからああいう人が末に
至
(
いた
)
って大成するよ。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
「つまらない遠慮をするものだ。どうも大兄は
律義
(
りちぎ
)
すぎて、現代人でなさ過ぎるよ、……よろしいと、受けてしまえばよいに」
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
自分は失望した。Hさんに責任を忘れるような軽薄はなかった。しかしこちらの予期通り
律義
(
りちぎ
)
にそれを果してくれないほどの
大悠
(
たいゆう
)
はあった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
この人は前垂を
〆
(
し
)
めてはいるが、武術の心得も有るらしい体格で、大きな
律義
(
りちぎ
)
そうな手を出して、旦那や客に酒を勧めた。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
雲南地方の山地には
苗
(
びょう
)
または
※
(
よう
)
という一種の蛮族が棲んでいるが、老女もその一人で、老年でありながら能く働き、
且
(
かつ
)
は正直
律義
(
りちぎ
)
の人間であるので
中国怪奇小説集:16 子不語(清)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
馬上の人はお礼の寸志として、いくらかの金を与えようとしたのを、
律義
(
りちぎ
)
な百姓は容易に受けようとしませんでした。
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
雨もまだ止まないようですから、坊ちゃんの御参考までに申上げましょうかね? 私の父は君公の御馬前で討死をするのを理想と心得ていた
律義
(
りちぎ
)
もの
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
悪気でするではなし、私の
詞
(
ことば
)
を
立
(
たて
)
て
呉
(
く
)
れても女のすたるでもあるまい、
斯
(
こう
)
しましょ、
是
(
これ
)
からあの正直
律義
(
りちぎ
)
は口つきにも聞ゆる
亀屋
(
かめや
)
の亭主に御前を預けて
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
あいつのことを、みんなこう言っていた、「
律義
(
りちぎ
)
な男だ、無邪気なもんだ。意地の悪いことはしそうもない……」
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
厭なら無理に行ってくれとは言わない。だがもうそれは受け取らないよ。火にくべようと、または
律義
(
りちぎ
)
者の
真似
(
まね
)
を
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
ブライアン氏は
農夫
(
ひやくしやう
)
の
律義
(
りちぎ
)
さうな言葉を聞いて、にこ/\しい/\手を出した。
農夫
(
ひやくしやう
)
は嬉しさうにそれを握つた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「じゃ、
律義
(
りちぎ
)
もののくまや、
勇敢
(
ゆうかん
)
なおおかみが、
人間
(
にんげん
)
を
助
(
たす
)
けたことはあるが、
人間
(
にんげん
)
は、どうだ、くまや、おおかみを
見
(
み
)
つけたが
最後
(
さいご
)
殺
(
ころ
)
してしまうだろう。」
深山の秋
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
おまえ、どうかすると馬鹿ではないかと思うときがあるが、使いようによっては、なかなか
律義
(
りちぎ
)
もんじゃな。
山県有朋の靴
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
叔父は
園田孫兵衛
(
そのだまごべえ
)
と言いて、文三の亡父の為めには実弟に当る男、慈悲深く、
憐
(
あわれ
)
ッぽく、しかも
律義
(
りちぎ
)
真当
(
まっとう
)
の気質ゆえ人の
望
(
う
)
けも宜いが、
惜
(
おしい
)
かな
些
(
ち
)
と気が弱すぎる。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
彼
(
あの
)
オトナしい角谷、
今年
(
ことし
)
十九の彼
律義
(
りちぎ
)
な若者が——然し此驚きは、我
迂濶
(
うかつ
)
と
浅薄
(
せんぱく
)
を
証拠
(
しょうこ
)
立
(
だ
)
てるに過ぎぬ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
父は
律義
(
りちぎ
)
な人であり、正直な人であり、キチンとした、小心の人であった。そして多くの場合、機嫌のよい人であったが、どうかするとかなり不機嫌の時もあった。
私の父
(新字新仮名)
/
堺利彦
(著)
お
律義
(
りちぎ
)
お
律義
(
りちぎ
)
、いつもその
思召
(
おぼしめし
)
で
願
(
ねが
)
ひたい、と
何
(
ど
)
の
道
(
みち
)
此処
(
ここ
)
は
自腹
(
じばら
)
でないから、
私
(
わたし
)
は
一人
(
ひとり
)
で
褒
(
ほ
)
めてゐる。
十和田湖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
尾藤孝肇
(
びとうかうてう
)
曰ふ、
律義
(
りちぎ
)
とは
蓋
(
けだ
)
し
直
(
ちよく
)
にして信あるを謂ふと。余謂ふ、孤城を
援
(
えん
)
なきに守るは、谷中將の如くば可なりと。嗚呼中將は忠且つ勇なり、而して孝其の
中
(
うち
)
に在り。
南洲手抄言志録:03 南洲手抄言志録
(旧字旧仮名)
/
秋月種樹
、
佐藤一斎
(著)
が、彼の
律義
(
りちぎ
)
な人格は、
咄嗟
(
とっさ
)
に彼の慾情の
妄動
(
もうどう
)
をきっぱりと、制し得たのである。藤十郎は、宗山清兵衛の事を考えた。また、貞淑と云う
噂
(
うわさ
)
の高いお梶の事を考えた。
藤十郎の恋
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「あんな大した腕持つてる
律義
(
りちぎ
)
な職人でせエ此の始末だ、さうかと
思
(
お
)
もや、悪い泥棒見たいな奴が立身して、
妾
(
めかけ
)
置いて車で通つて居る、神も仏もあつたもんぢやねエ」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
お島は
昔気質
(
むかしかたぎ
)
の
律義
(
りちぎ
)
な父親に手をひかれて、或日の晩方、自分に深い憎しみを持っている母親の
暴
(
あら
)
い怒と
惨酷
(
ざんこく
)
な
折檻
(
せっかん
)
から
脱
(
のが
)
れるために、野原をそっち
此方
(
こっち
)
彷徨
(
うろつ
)
いていた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
斯道にあつき志しは却りて其大家などゝいはるゝを厭へば、おのづから隱逸といふ風もある隱居さまにて、家をゆづりし息子の
律義
(
りちぎ
)
なるにかへり見る煩はしさもなければ
花ごもり
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
藤次郎が東雲と号したことについては
所以
(
いわれ
)
のあることで、この東雲という人は非常な師匠思い……したがって正直
律義
(
りちぎ
)
であり、製作にかけてもなかなか
優
(
すぐ
)
れている所からして
幕末維新懐古談:06 高村東雲の生い立ち
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
彼も貫一の偏屈なれども
律義
(
りちぎ
)
に、愛すべきところとては無けれど、憎ましきところとては
猶更
(
なほさら
)
にあらぬを愛して、何くれと心着けては、彼の為に計りて善かれと祈るなりける。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
二人の
律義
(
りちぎ
)
な法律家は、そういう冷評を苦にし、自分の後ろからどっと起こる笑声に少なからず威厳を傷つけられて、名前を変えようと決心し、ついに思い切って国王に請願した。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
遠慮深くて
律義
(
りちぎ
)
な君が、こんな電報を僕に打って寄こすのは、よほどの事であろう。
未帰還の友に
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
四辺
(
しへん
)
の空気が、冷え冷えとして来て墓地に近づいた。が、寺は無かった。独立した広い墓地だけに遠慮が無く
這入
(
はい
)
れた。
或
(
あ
)
る墓標の
傍
(
そば
)
には、大株の
木蓮
(
もくれん
)
が白い
律義
(
りちぎ
)
な花を盛り上げていた。
かの女の朝
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
盡
(
つく
)
し又大旦那五兵衞殿へ廿年來
律義
(
りちぎ
)
に勤て主思ひの聞えも取たる其方成らずや何とて千太郎殿を
締殺
(
しめころ
)
したるや我にも更に仔細が
譯
(
わか
)
らず
一伍
(
いちぶ
)
一什
(
しじふ
)
を御奉行樣へ申上よと六右衞門の言葉に久八涙を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
堅苦しく、うはべの
律義
(
りちぎ
)
のみを喜ぶ国
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
親鸞 あれは
律義
(
りちぎ
)
な、いい老人じゃ。
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
「上杉家は、謙信以来、士風正しく、義理明白な国がらではあったが、当主の景勝も、まことに
律義
(
りちぎ
)
な
人体
(
にんてい
)
とみえる……」
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
弥太郎は武士
気質
(
かたぎ
)
の強い、正直
律義
(
りちぎ
)
の人物であったが、酒の上がすこしよくないので、酔うと往々に喧嘩口論をする。
鷲
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それから当分のあいだ三四郎は毎日学校へ通って、
律義
(
りちぎ
)
に講義を聞いた。必修課目以外のものへも時々出席してみた。それでも、まだもの足りない。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そうかといって、
野幇間
(
のだいこ
)
の仙公には
懲
(
こ
)
りている。
薬籠持
(
やくろうもち
)
の国公は
律義
(
りちぎ
)
なだけで気が
利
(
き
)
かず、子分のデモ倉あたりは、気が早くって腰が弱いからいけない。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ましてその頃はまだ武士
気質
(
かたぎ
)
の、
律義
(
りちぎ
)
な男でござりましたから、お女中の御機嫌をうかゞうことなどは出来そうもござりませなんだのに、お二た方の御前へ出ますと
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
しかるにまた大多数の人〻はそれでは
律義
(
りちぎ
)
過ぎて面白くないから、コケが東西南北の
水転
(
みずてん
)
にあたるように、
雪舟
(
せっしゅう
)
くさいものにも眼を
遣
(
や
)
れば
応挙
(
おうきょ
)
くさいものにも手を出す
骨董
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「そんなことなら
些
(
ち
)
っとも遠慮は要らない。君は案外
律義
(
りちぎ
)
だね。僕も実はその縦に振った方だよ」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
しているけれど、嫂の兄さんがばかに
律義
(
りちぎ
)
な人でね、どこだどこだってしきりに聞くんだ
挿話
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
まだ
縁
(
ゑん
)
づかぬ
妹
(
いもと
)
どもが
不憫
(
ふびん
)
、
姉
(
あね
)
が
良人
(
おつと
)
の
顏
(
かほ
)
にもかゝる、
此山村
(
このやまむら
)
は
代〻
(
だい/\
)
堅氣
(
かたぎ
)
一
方
(
ぱう
)
に
正直
(
しようじき
)
律義
(
りちぎ
)
を
眞向
(
まつかう
)
にして、
惡
(
わ
)
い
風説
(
うわさ
)
を
立
(
た
)
てられた
事
(
こと
)
も
無
(
な
)
き
筈
(
はづ
)
を、
天魔
(
てんま
)
の
生
(
うま
)
れがはりか
貴樣
(
きさま
)
といふ
惡者
(
わる
)
の
出來
(
でき
)
て
大つごもり
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
蓄
(
たく
)
はへ後江戸へ
轉居
(
ひきうつ
)
りて今
斯
(
かゝ
)
る
大層
(
たいそう
)
の暮しはすれども
生得
(
しやうとく
)
律義
(
りちぎ
)
の男にて少も
惡氣
(
わるき
)
なく人の言事を何に寄ず
眞實
(
まこと
)
なりと思ふにぞ此度も吾助が言葉を
眞實
(
まこと
)
と思ひ
聊
(
いさゝ
)
か疑ふ心なく奉公の中に五十兩金を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
彼の三枝松政吉(私の兄弟子)が私に代って師匠歿後のことを一切引き受けてやるようになってから、政吉と衝突しまして、正直
律義
(
りちぎ
)
の人であったから、かえってむか腹を立てて暇を取りました。
幕末維新懐古談:77 西町時代の弟子のこと
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
百草の花のとじめと
律義
(
りちぎ
)
にも衆芳に
後
(
おく
)
れて折角咲いた黄菊白菊を、何でも御座れに寄集めて
小児騙欺
(
こどもだまし
)
の
木偶
(
でく
)
の
衣裳
(
べべ
)
、洗張りに
糊
(
のり
)
が過ぎてか何処へ触ッてもゴソゴソとしてギゴチ無さそうな
風姿
(
とりなり
)
も
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
が、こうした生活にも
拘
(
かかわ
)
らず、天性
律義
(
りちぎ
)
な藤十郎は、若い時から、不義非道な色事には、一指をだに染めることをしなかった。そうした誘惑に接する
毎
(
ごと
)
に、彼は猛然として、これと戦って来ている。
藤十郎の恋
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
門前を通れば、常に、あいさつだけでもして行くのがこの老人の
律義
(
りちぎ
)
であったようだ。その訪れを見て玄関の小侍は
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
排外的に見える藤井は、
律義
(
りちぎ
)
に叔父の訪問を返そうともしなかったが、そうかと云って彼を
厭
(
いや
)
がる様子も見せなかった。彼らはむしろ快よく談じた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
女の差し出たことをいうとただ一口に云わるるか知らねど、正直
律義
(
りちぎ
)
もほどのあるもの、親方様があれほどに云うて下さる異見について一緒にしたとて
恥辱
(
はじ
)
にはなるまいに
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
律義
(
りちぎ
)
なところがあるせいであろうか、青年時代から持ち越しの、「たった一人の女を守って行きたい」と云う夢が、
放蕩
(
ほうとう
)
と云えば云えなくもない目下の生活をしていながら
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ことし十九の坂田源三郎は、兄の市之助とはまるで人間の違ったような
律義
(
りちぎ
)
一方の若者であった。彼は兄のように小唄を歌うことを知らなかったが、武芸は兄よりも優れていた。
鳥辺山心中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
“律義”の意味
《名詞》
律義(りちぎ)
義理がたいこと。実直。
(出典:Wiktionary)
律
常用漢字
小6
部首:⼻
9画
義
常用漢字
小5
部首:⽺
13画
“律義”で始まる語句
律義者
律義人
律義顔
律義一遍