トップ
>
山裾
>
やますそ
ふりがな文庫
“
山裾
(
やますそ
)” の例文
昔
(
いにしえ
)
の国主の貴婦人、
簾中
(
れんちゅう
)
のように
称
(
たた
)
えられたのが名にしおう中の
河内
(
かわち
)
の
山裾
(
やますそ
)
なる
虎杖
(
いたどり
)
の里に、寂しく
山家住居
(
やまがずまい
)
をしているのですから。
雪霊記事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
かなり長い急な
山裾
(
やますそ
)
の切通し坂をぐるりと廻って上りきった突端に、その耕吉には恰好だという空家が、ちょこなんと建っていた。
贋物
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
S——町の
垠
(
はずれ
)
を流れている川を
溯
(
さかのぼ
)
って、重なり合った
幾箇
(
いくつ
)
かの
山裾
(
やますそ
)
を
辿
(
たど
)
って行くと、
直
(
じき
)
にその温泉場の白壁や
屋
(
や
)
の
棟
(
むね
)
が目についた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
アメリカの興行家が、巨万の小切手を眼の前に置いても、
山裾
(
やますそ
)
の町から決して出ようとせず、素朴な農民たちと、膝を交えて暮している。
胡堂百話
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
山裾
(
やますそ
)
に石の小さい門があって、そこから松並木が山腹までつづき、その松並木の尽きるあたりに、二
棟
(
むね
)
の建物の屋根が見える。
パンドラの匣
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
▼ もっと見る
野というよりは、斜めに起伏を落している
山裾
(
やますそ
)
である。彼を呼んだ男は、三笠山の山道のほうからその裾野へ出て来たらしく
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
雪童子は眼を丘のふもとに落しました。その
山裾
(
やますそ
)
の細い雪みちを、さつきの
赤
(
あか
)
毛布
(
けつと
)
を着た子供が、一しんに山のうちの方へ急いでゐるのでした。
水仙月の四日
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
やがて眼界
頓
(
にわか
)
に開けた所へ出れば、
重畳
(
ちょうじょう
)
せる群山波浪のごとく起伏して、
下瞰
(
かかん
)
すれば
鬼怒
(
きぬ
)
の清流真っ白く、新しき
褌
(
ふんどし
)
のごとく
山裾
(
やますそ
)
を
迂
(
め
)
ぐっている。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
今年
(
こんねん
)
の参府のお土産はそれにしようと、勝手にひとりぎめして、
紐差
(
ひもさし
)
の
山裾
(
やますそ
)
に、さっさと鋳造所をこしらえてしまった。
ひどい煙
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
むかし、ある
山裾
(
やますそ
)
に、小さな村がありました。村のうしろは、大きな森から山になっていまして、前は、広い平野にうつくしい小川が流れていました。
天狗笑
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
部落はかなり
勾配
(
こうばい
)
の急な
山裾
(
やますそ
)
の、南向きの日当りの
好
(
よ
)
い谷間にあった。田というものは一枚もない。あるのは山と、それを
開墾
(
きりひら
)
いた畑とだけであった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
その麓のS岳村から五六町離れた
山裾
(
やますそ
)
に、この
界隈
(
かいわい
)
での
物持
(
ものもち
)
と云われている藤沢病院が建っていた。
復讐
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そこらの人間に心当りをいって問い問い元気を出して向うの
山裾
(
やますそ
)
の小山の
字
(
あざ
)
まで探ねて往った。
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
東叡山
(
とうえいざん
)
寛永寺
(
かんえいじ
)
の
山裾
(
やますそ
)
に、
周囲
(
しゅうい
)
一
里
(
り
)
の
池
(
いけ
)
を
見
(
み
)
ることは、
開府以来
(
かいふいらい
)
江戸
(
えど
)
っ
子
(
こ
)
がもつ
誇
(
ほこ
)
りの一つであったが、わけても
雁
(
かり
)
の
訪
(
おとず
)
れを
待
(
ま
)
つまでの、
蓮
(
はす
)
の
花
(
はな
)
が
池面
(
いけおも
)
に
浮
(
う
)
き
出
(
で
)
た
初秋
(
しょしゅう
)
の
風情
(
ふぜい
)
は
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
そこは草や
雑木
(
ぞうき
)
の生えた
小藪
(
こやぶ
)
になっていて、すぐ右手に箱根八里の街道へ
脱
(
ぬ
)
ける
間道
(
ぬけみち
)
があって、それがだらだらとおりて
土橋
(
どばし
)
を渡り、
前岸
(
ぜんがん
)
の
山裾
(
やますそ
)
を上流に向ってうねうねと通じていた。
山寺の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
倶知安
(
くっちゃん
)
からK村に通う国道はマッカリヌプリの
山裾
(
やますそ
)
の
椴松帯
(
とどまつたい
)
の間を縫っていた。彼れは馬力の上に
安座
(
あぐら
)
をかいて瓶から口うつしにビールを
煽
(
あお
)
りながら
濁歌
(
だみうた
)
をこだまにひびかせて行った。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
はるかな
山裾
(
やますそ
)
にひろがっている牧場をながめて、胸のふくらむ思いをしていたのであるが、ある夏の日、この宿からは遠く離れている牧場にはいりこんで、山の人に牛の話などを聞いたことがある。
乳と蜜の流れる地
(新字新仮名)
/
笠信太郎
(著)
千年の秋の
山裾
(
やますそ
)
善光寺
六百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
幽邃
(
ゆうすい
)
の趣きをたたえた
山裾
(
やますそ
)
の水の
畔
(
ほとり
)
を歩いたりして、日の暮れ方に帰って来たことなどもあって、また二日三日と日がたった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ここを入って行きましょうと、
同伴
(
つれ
)
が言う、私設の市場の入口で、外套氏は振返って、その
猪
(
しし
)
の鼻の
山裾
(
やますそ
)
を仰いで言った。
古狢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
山裾
(
やますそ
)
から二、三町ほど、先へ眼をやると、
黒末川
(
くろすえがわ
)
の流れが帯のように
蜿
(
うね
)
って、
知多
(
ちた
)
半島の海へ
注
(
そそ
)
いでいる。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そのときはもう、
銅
(
あかがね
)
づくりのお日さまが、南の
山裾
(
やますそ
)
の
群青
(
ぐんじやう
)
いろをしたとこに落ちて、野はらはへんにさびしくなり、
白樺
(
しらかば
)
の幹などもなにか粉を噴いてゐるやうでした。
かしはばやしの夜
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
彼らは竹のきれや、木の枝を
箸
(
はし
)
ぐらいの長さにきって便所の箱の中に入れておく。そしてその
御用済
(
ごようずみ
)
の分は別の箱の中に入れておく。溜まると
一纏
(
ひとまと
)
めにして
山裾
(
やますそ
)
の清流で洗ってまたそれを使う。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
街路は整頓され、洋風の建築は起こされ、郊外は四方に発展して、いたるところの
山裾
(
やますそ
)
と海辺に、
瀟洒
(
しょうしゃ
)
な別荘や住宅が新緑の木立のなかに
見出
(
みいだ
)
された。
蒼白い月
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
近くに
藁屋
(
わらや
)
も見えないのに、その
山裾
(
やますそ
)
の草の
径
(
みち
)
から、ほかほかとして、女の子が——
姉妹
(
きょうだい
)
らしい二人づれ。
若菜のうち
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そのときはもう、
銅
(
あかがね
)
づくりのお日さまが、南の
山裾
(
やますそ
)
の
群青
(
ぐんじょう
)
いろをしたとこに落ちて、野はらはへんにさびしくなり、
白樺
(
しらかば
)
の幹などもなにか粉を
噴
(
ふ
)
いているようでした。
かしわばやしの夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
半刻
(
はんとき
)
の後には、彼はすでに馬上だった。星青き夜空の下、三千の人馬と、
炬火
(
たいまつ
)
の数が、うねうねと湖畔の城を
出
(
い
)
で、松原を
縫
(
ぬ
)
い、日吉坂を登って、
四明
(
しめい
)
ヶ
嶽
(
だけ
)
の
山裾
(
やますそ
)
へかくれてゆく。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
遠くは
山裾
(
やますそ
)
にかくれてた
茅屋
(
かやや
)
にも、咲昇る
葵
(
あおい
)
を
凌
(
しの
)
いで牡丹を高く見たのであった。が、こんなに心易い処に咲いたのには逢わなかった。またどこにもあるまい。
灯明之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
いうと、にわかに、道をもどって、朝霧の
山裾
(
やますそ
)
へさしてどんどん行ってしまった。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
たまには傘をさして、橋を渡って、
山裾
(
やますそ
)
の
遊廓
(
ゆうかく
)
の方へ足を入れなどした。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
その反対の、
山裾
(
やますそ
)
の
窪
(
くぼ
)
に当る、石段の左の端に、べたりと
附着
(
くッつ
)
いて、
溝鼠
(
どぶねずみ
)
が
這上
(
はいあが
)
ったように、ぼろを
膚
(
はだ
)
に、笠も
被
(
かぶ
)
らず、
一本杖
(
いっぽんづえ
)
の細いのに、しがみつくように
縋
(
すが
)
った。
貝の穴に河童の居る事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
崖の上はゆるい傾斜を持っている
山裾
(
やますそ
)
の原だった。彼は一望に夜明けを見た。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
其
(
そ
)
の
頃
(
ころ
)
の
近國
(
きんごく
)
の
知事
(
ちじ
)
の
妾
(
おもひもの
)
に
成
(
な
)
りました……
妾
(
めかけ
)
とこそ
言
(
い
)
へ、
情深
(
なさけぶか
)
く、
優
(
やさし
)
いのを、
昔
(
いにしへ
)
の
國主
(
こくしゆ
)
の
貴婦人
(
きふじん
)
、
簾中
(
れんちう
)
のやうに
稱
(
たゝ
)
へられたのが
名
(
な
)
にしおふ
中
(
なか
)
の
河内
(
かはち
)
の
山裾
(
やますそ
)
なる
虎杖
(
いたどり
)
の
里
(
さと
)
に
雪霊記事
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「あの
山裾
(
やますそ
)
が、左の方へ入江のように拡がって、ほんのり奥に
灯
(
あかり
)
が見えるでございましょう。
善光寺平
(
ぜんこうじだいら
)
でございましてね。灯のありますのは、善光寺の町なんでございますよ。」
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
急
(
せ
)
かつしやるな。
此
(
こ
)
の
山裾
(
やますそ
)
の、
双六温泉
(
すごろくをんせん
)
へ、
湯治
(
たうぢ
)
に
来
(
き
)
さつせえた
人
(
ひと
)
だんべいの。」
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
貧しい場末の
町端
(
まちはずれ
)
から、
山裾
(
やますそ
)
の浅い
谿
(
たに
)
に、
小流
(
こながれ
)
の
畝々
(
うねうね
)
と、次第
高
(
だか
)
に、何ヶ寺も皆日蓮宗の寺が続いて、天満宮、
清正公
(
せいしょうこう
)
、弁財天、
鬼子母神
(
きしぼじん
)
、七面大明神、
妙見宮
(
みょうけんぐう
)
、寺々に祭った神仏を
瓜の涙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
半分気味の悪そうに狐に
魅
(
つま
)
まれでもしたように
掌
(
てのひら
)
に受けると——二人を、
山裾
(
やますそ
)
のこの坂口まで、導いて、上へ指さしをした——その来た時とおんなじに妹の手を引いて、少しせき足にあの
径
(
みち
)
を
若菜のうち
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
雲
(
くも
)
は
黒髪
(
くろかみ
)
の
如
(
ごと
)
く
野
(
の
)
に
捌
(
さば
)
けて、
棟
(
むね
)
を
絡
(
まと
)
ひ、
檐
(
のき
)
に
乱
(
みだ
)
るゝとゝもに、
向
(
むか
)
うの
山裾
(
やますそ
)
に、ひとつ、ぽつんと
見
(
み
)
える、
柴小屋
(
しばごや
)
の
茅屋根
(
かややね
)
に、
薄
(
うす
)
く
雨脚
(
あめあし
)
が
掛
(
か
)
かつて、
下草
(
したぐさ
)
に
裾
(
すそ
)
をぼかしつゝ
歩行
(
ある
)
くやうに、
次第
(
しだい
)
に
此方
(
こちら
)
へ
十和田湖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
山
常用漢字
小1
部首:⼭
3画
裾
常用漢字
中学
部首:⾐
13画
“山”で始まる語句
山
山家
山路
山羊
山茶花
山間
山中
山谷
山毛欅
山車