多勢おほぜい)” の例文
あのしろ着物きものに、しろ鉢巻はちまきをした山登やまのぼりの人達ひとたちが、こしにさげたりんをちりん/\らしながら多勢おほぜいそろつてとほるのは、いさましいものでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
『おまへ洋卓テーブルだとはらなかつたのよ』とあいちやんはつて、『それは三にんばかりでなく、もつと多勢おほぜいのためにかれてあるんだわ』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
けると、多勢おほぜい通學生つうがくせいをつかまへて、山田やまだその吹聽ふいちやうといつたらない。ぬえいけ行水ぎやうずゐ使つかつたほどに、こと大袈裟おほげさ立到たちいたる。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
今宵こよひ家例かれいり、宴會えんくわいもよふしまして、日頃ひごろ別懇べっこん方々かた/″\多勢おほぜい客人まろうどまねきましたが、貴下こなたそのくみくははらせらるゝは一だん吾家わがや面目めんもくにござる。
をんな五月繩うるさときには一時ちよつとをどりめて對手あひてしかつたりたゝいたり、しかその特性とくせいのつゝましさをたもつて拍子ひやうしあはなが多勢おほぜいあひだまれつゝどうせん反覆はんぷくしつゝをどる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
其処そこ多勢おほぜいの義士が誘ひに来て散散さんざんに辱めた上飽迄あくまでも躊躇して居るキニゼイに告別して行つて仕舞しまふと、キニゼイ先生もつひに決心して許嫁いひなづけ突除つきのけ同志のあとを追つてく。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
饗ばれる学生は多勢おほぜいだし、饗ぶのはたつた二人だしするから、珈琲屋カフエー位で済ます事にめたのは、流石に頭脳明晰であるが、さて肝腎の生徒にそれを伝へる段になると、急に頭が変になつて
あづけたあづからないのあらそひになつたところが、出入でいりの車力しやりき仕事師しごとし多勢おほぜいあつまつてて、此奴こいつ騙取かたりちがひないとふので、ポカ/\なぐつておもて突出つきだしたが、証拠しようこがないから表向訴おもてむきうつたへることが出来できない。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
いつもは多勢おほぜいの人の群の中に、いやにじろじろと此方こつちを見る眼の中に、叮嚀に口をきく旅舎の人達の中にわるく皮肉になつたかれ等を見出すのが常であるのに——今はさういふものからすべて離れて
山間の旅舎 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
多勢おほぜいの人間はなにも知らずにゐる。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
南無冥加なむみょうがあらせたまへ! 多勢おほぜいそだてた嬰兒あかさんうちいっ可憐いたいけであったはおまへぢゃ。そのまへ御婚禮ごこんれいることが出來でくれば、わし本望ほんまうでござります。
ほか多勢おほぜいるものを、をんなで、とさうおもつて、うつちやつてはきたくなし、さればツててもられず、ほんとにうしようかとおもつて、はツ/\したんだから
迷子 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
巴里パリイへ著いてまだ一ヶ月にしかならないおれは、突然多勢おほぜいの若い女の間へまじつたのですくなからずどぎまぎした。主人の紹介した所にると、どの女の名の上にもマダムが附いて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
多勢おほぜい旅人たびびと腰掛こしかけて、めづらしさうにお蕎麥そばのおかはりをしてました。伯父をぢさんはとうさんたちにもやまのやうにりあげたお蕎麥そばをごりまして、草臥くたぶれてつたあしやすませてれました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
心臟ハート王樣わうさま女王樣ぢよわうさまとがおちやくになり、玉座ぎよくざにつかせられましたとき多勢おほぜいのものどもが其周そのまはりにあつまつてました——骨牌カルタつゝみおなじやうな、小鳥ことりけもののこらず、軍人ネーブくさりつながれて
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
多勢おほぜいの人間が眠つてゐる。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
此時このとき領主りゃうしゅ公爵こうしゃく多勢おほぜい從者じゅうしゃ引連ひきつれて出る。モンタギュー長者夫婦ちゃうじゃふうふ、カピューレット長者夫婦ちゃうじゃふうふ其他そのた多勢おほぜい出る。
とほりがかりのものは多勢おほぜいあつた。女中ぢよちうも、あひだはなれたが、みな一齊いつせい立留たちどまつて、あふいだ——とふのである。わたしいて、夫人ふじんが、わかいうつくしいひとだけに、なんとなくすごかつた。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
下宿人は多勢おほぜい居るが家族と一緒に食事をするのは僕の外に四人の美しい娘だけだ。この家の細君が余程よほど変つて居てがあればピアノにむかふか、でなくばをどりの真似をして高い声で歌つて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
多勢おほぜいのものはのこらず言下ごんかに、ねずみ中心まんなかにしておほきなつくつてすわりました。あいちやんは怪訝けゞんかほしながらはなさずました、でも早速さつそく乾燥かわかさなければ屹度きつとわる風邪かぜくとおもひましたから。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)