うらな)” の例文
黒と赤との着物を着たイイナはジプシイうらないをしていると見え、T君にほほみかけながら、「今度はあなたのうんを見て上げましょう」
カルメン (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
名人めいじんうらなしゃは、もはやこのまちにはいませんでした。たびからたびへ、わたどりのようにあるうらなしゃは、どこへかいってしまったのです。
金の魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「今だから打ち明けて話しんすが、わたしには剣難の相があると上手なうらない者さんが言いんした。そんなことがあるかも知れえせんね」
箕輪心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
とにかくこの美しい看護婦から自分は運勢早見うんせいはやみなんとかいう、玩具おもちゃうらないの本みたようなものを借りて、三沢の室でそれをやって遊んだ。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのことが広く知れわたると、近所きんじょの人たちはもちろんのこと、遠くからも大ぜいの人びとがやってきて、いろんな事をうらなってもらった。
「俗衆の前でうらなつてもらふのは私のすべきことでもありませんわ。私は自分一人ですつかり聞きます。お書齋には火があつて?」
八。菩提寺ぼだいじの和尚と、村の手習ひ師匠と、左門町のうらなひ者白井白龍に逢つて、百兵衞の外にあの不思議な謎々の文句の判じ方を
非常に子どもらしい素朴そぼく過ぎたうらないかただけれども、前にはこうして右か左かの疑いをきめるという信仰もあったのではないかと思われる。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
どの神さまのお告げであろうかと急いでうらないの役人に言いつけて占わせてごらんになりますと、それは出雲いずも大神おおかみのお告げで
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
ですから、うっかりじょうだんにうらないなどをてると、それがほんとうになって、とんだ災難さいなんをうけることがあるものです。
夢占 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
拭くのも張合いのないその抽斗ひきだしの底には、どうなるか解らなかった母子の身の上を幾度となくうらなった古い御籤みくじなどが、いまだにしまってあった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
並べてうらなひ此盜賊は男で御座ると云ながら歸去かへりさりけるにぞ九助は種々と工夫し其儘四里廿一丁を一いきに飛が如く水田屋へ到り息を繼々つぎ/\紛失ふんじつの話を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
こんな言葉ことばが、相逢あひあ人々ひと/″\挨拶あいさつのやうに、また天氣てんきうらなふやうに、子供こどもくちにまでのぼるとともに、市中しちうたちましづまりかへつて、ひつそりとなつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
そも何者がうごくのであろうかと、ご承知しょうちでもござりましょうが、先生、ご秘蔵ひぞう亀卜きぼくをカラリと投げてうらなわれました
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私、その猫に、一心いっしんに祈った。そして、金目銀目きんめぎんめの猫、見つかった。それで、私、なお祈った。無事に蒙古もうこへ帰られるかどうか、赤土で猫を作って、うらないした。
金の目銀の目 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
なほさいはひを神に祈るとて、三八巫子かんなぎ祝部はふりを召しあつめて、三九御湯みゆをたてまつる。そもそも当社に祈誓いのりする人は、四〇数の祓物はらへつものそなへて御湯みゆを奉り、吉祥よきさが凶祥あしきさがうらなふ。
玉脇の妻は、もって未来の有無をうらなおうとしたらしかったに——頭陀袋ずだぶくろにも納めず、帯にもつけず、たもとにも入れず、角兵衛がその獅子頭ししがしらの中に、封じて去ったのも気懸きがかりになる。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
易者としてのお銀様は、算木筮竹をもって吉凶と未来とをうらなっているのではないのです。
二上ふたかみ山の大阪の道から行つても跛や盲に遇うだろう。ただ紀伊きいの道こそは幸先さいさきのよい道であるとうらなつて出ておいでになつた時に、到る處毎に品遲部ほむじべの人民をお定めになりました。
ある日、祭司の宿禰は、長羅の行衛不明となったとき彼の行衛をうらなわせた咒禁師じゅこんしを再び呼んで、長羅の病を占わせた。広間の中央には忍冬すいかずらの模様を描いた大きな薫炉くんろえられた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
スマトラのドラゴイア人の中で病人が出来ると、その部落の魔法使いを呼んで来て、その病気が治るか治らないかをうらなわせる。もし不治と云えばその病人の口をして殺してしまう。
マルコポロから (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
うらなふに此艸を盌水に投じ葉開けば其人無事也しぼめば人しといふとぞ又日光山の万年艸は一名万年杉また苔杉などいひ漢名玉柏一名玉遂また千年柏といひて形状かたちと異なり混ずべからず
植物一日一題 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
「ただ今うらなって見ましたところ、吉凶なかばすとございます。凶と出たらまたその時、何んとか思案するとして、ともあれ館に案内あんないを乞い、一夜の宿りを頼む方がよろしいと思います」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
貫一はその相貌そうぼう瞥見べつけんりて、ただちに彼の性質をうらなはんとこころむるまでに、いと善く見極みきはめたり。されども、いかにせん、彼の相するところは始に疑ひしところとすこぶる一致せざる者有り。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
君江はその通り電話の返事をして硝子戸の外へ出ると、その姿を見て、洋服をきた中年のせた男が帳場の台に身をせたまま、「君江さん。」と呼留めて、「どうしました。うらないは。」
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「いいえ、それはわかりませんが、いまね、この婆が畳算たたみざんうらなってみたところ、あなた、三度やり直しても同じ事、どうしても御男子。私の占いは当りますよ。旦那、おめでとうございます。」
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
このうらないがはずれたら銭は取らねえ。長屋じゅうの者はそれで誤魔化されるか知らねえが、おれ達が素直にそれを承知するんじゃあねえ。
半七捕物帳:12 猫騒動 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
自分が眼を閉じて、石を一つ一つ畳の上に置いたとき、看護婦は赤がいくつ黒がいくつと云いながらうらないの文句を繰ってくれた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おうさまの命令めいれいによって、そのうらなしゃは、されました。うらなしゃは、やまのぼって、かねのそばにすわって、いのりをささげたのでした。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
西洋でうらないの杖というのも皆これで、金鉱・地下水の発見の技術も、また北アジア名物の宝捜たからさがしも、もとはすべてこの枝によったのであった。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「『皆さま方の運命をうらなつて差上げる』と申すのでございます。そして、しなければならない、どうしてもするのだと言ひ張つて居ります。」
「そいつは、俺にも見當はつかないよ。八うらなひの言ふことは、十手捕繩でどうなるものか、まア、氣を大きく持つて、樣子を見ることだな」
が、お蓮はそこを通りかかると、急にこの玄象道人に、男が昨今どうしているか、うらなって貰おうと云う気になった。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あやしみて或博士あるはかせうらなはするに日外いつぞやつみなくして殺されたる嫁のたゝり成んと云ければ鎭臺には大に駭かれつかたてて是をまつり訴へたる娘を罪に行ひさきの鎭臺の官を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「いいえ、風変りなうらなしゃが、鈴を振り振り歌って来るのを真似まねて、ゾロゾロいて歩いているんです。へい。……それ、聞えるじゃございませんか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中納言ちゅうなごん奥方おくがたもびっくりして、ぬほどかなしがって、上手じょうずうらなしゃにたのんでみてもらいますと、やはり大江山おおえやまおにられたということがわかりました。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
皇子たちは、その野原でためしにりょうをして、その獲物えものによって、さいさきをうらなってみようとなさいました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
ちょうど半月はんつきばかりたった時、その日も甚兵衛はたずねあぐんで、ぼんやり家にかえりかけますと、ある河岸かし木影こかげに、白髯しろひげうらなしゃつくええて、にこにこわらっていました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
しかし一人ずつ二階へ呼びあげてるので、小夜子が占てもらう間、庸三は下でしばらく待っていた。そのうちに小夜子がおりて来た。うらなわない前と表情に変りはなかった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そこで天の神樣の御命令で鹿の肩の骨をやくうらなかたで占いをして仰せられるには、「それは女のほうさきに物を言つたので良くなかつたのです。歸りくだつて改めて言い直したがよい」
今まで、あたいを頼みに来るのは、山方やまかたばっかりよ。あたいに鳥を追わせたり、蛇をつかまえさせたり、また虫を取って来て天気をうらなわせたりするんだけれど、江戸へ連れて行ってどうするんだろう。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
突然うらないを見てもらう気になったのである。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「もちろん心配して、お神籤みくじを引いたり、うらないに見て貰ったりしているんですが、どうもはっきりした事は判らないようです」
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「ホホホくあたりました。あなたはうらないの名人ですよ。あの男は、貧乏して、日本にいられないからって、私に御金を貰いに来たのです」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
するとここに、あやしげなようすをしたものが、このくににさまよってきました。このものは、人間にんげん運命うんめいうらなって、すえのことをかたるのです。
北海の白鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それよりもうらないや夢の告げ、鳥や獣の導きによって、未来の安住の地を見立てたと伝える方が、まだよっぽど考えやすい。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「丸屋の袋物の内職をさせて貰つて、ちよい/\當らないうらなひもやります。三十二三の浪人者で、好い男ですよ」
うらなしやです。が、この近所のうはさぢや、何でも魔法さへ使ふさうです。まあ、命が大事だつたら、あの婆さんの所なぞへは行かない方が好いやうですよ。」
アグニの神 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かれの精神がすみきらないで、遠知の術のできないときは、この亀卜きぼくといううらないをたてて見るのが常であった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
からすの言葉ことばいて、童子どうじ早速さっそくうらないをててみると、なるほどからすのいったとおりにちがいありませんでしたから、おとうさんのまえへ出て、そのはなしをして
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)