をか)” の例文
それは病氣の問題だ。彼の病はもう左肺ををかして居ると云ふことを彼は自覺して居つた。病氣で死ぬ位なら、いつそ××の爲に死なう。
計画 (旧字旧仮名) / 平出修(著)
激しい苦惱を、自分の胸一つに疊んだ、いぢらしくも健氣けなげな姿——嫁のお信には、さう言つたをかし難い美しさがあつたのです。
或は多少の危険さへをかせば、談林風の鬼窟裡きくつり堕在だざいしてゐた芭蕉の天才を開眼かいげんしたものは、海彼岸の文学であるとも云はれるかも知れない。
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
過しけるが或時喜内は不※ふと風邪ふうじやをかされてふしたるに追々熱氣強く十日餘りも床に着ければ其間若黨二人一夜代り/\に次の間へ打臥うちふし夜中の藥を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
醫者いしやすこ呼吸器こきふきをかされてゐるやうだからとつて、せつ轉地てんちすゝめた。安井やすゐこゝろならず押入おしいれなか柳行李やなぎがうり麻繩あさなはけた。御米およね手提鞄てさげかばんぢやうおろした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
心をいらだゝせるものや、そゝるものゝ、めまぐるしい曠野であつて、眞の生命の知識を探さうと危險ををかして
これらが交互に、熱病にをかされた時のやうにとりとめもなく、脳の中を行つたり来たりしたわけである。
日本三文オペラ (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
警備隊けいびたいから、驚破すはかけつけた兵員達へいゐんたちは、外套ぐわいたうなかつたのがおほいさうである。危險きけんをかして、あの暴風雨ばうふううなかを、電柱でんちうぢて、しとめたのであるといた。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いかなれば齋藤瀧口、今更いまさら武骨者の銘打つたる鐵卷くろがねをよそにし、負ふにやさしき横笛の名にめる。いかなれば時頼、常にもあらで夜ををかして中宮の御所ごしよには忍べる。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
この身代しんだいを譲られたりとて、他姓たせいをかして得謂えいはれぬ屈辱を忍ばんは、彼のいさぎよしと為ざるところなれども、美き宮を妻に為るを得ば、この身代も屈辱も何か有らんと
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
危險きけんをかしてめたといひ、十一歳じゆういつさいになる糸井重幸いとゐしげゆきといふ島津小學校しまづしようがつこう四年生よねんせいは、祖母そぼいもうととも下敷したじきになりながら、二人ふたりには退くちをあてがつて、自分じぶんだけはつてかへ
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
天満橋筋長柄町東入四軒屋敷に住す。数世にして喜内と云ふものあり。其弟を助左衛門、其子を政之丞成余と云ふ。成余の子を平八郎敬高と云ふ。敬高の弟志摩出でて宮脇氏ををかす。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
相互さうご權能けんのうえて領域りやうゐきをかとき其處そこにはかなら葛藤かつとうともなはれるはずでなければらぬ。若者わかものあひあつまればみな不平ふへいじやうかたうて、勝手かつて勘次かんじ邪魔じやまなこそつぱいものにしてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かれははげしき熱にをかされて、病の床によこたはりつつ
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
秋霧あきぎりをかされ給うて——
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其困難ををかして新しい議案が持ち出され、又其議案が過半の多数につて通過されたとすると、現に非常な変化が英国民の頭のうちに起りつつある証拠になる。
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
うら若き女子をなごの身にて夜ををかして來つるをば、蓮葉はすはのものと卑下さげすみ給はん事もあらば如何にすべき。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
バアトンは最初から取次業者を眼中に置かず、危険ををかして自分で刊行しようと企てたのである。知名の文学者なり又文学団体の協賛けふさんを希望したけれども、誰れ一人ひとり応じなかつた。
もう既にをかされてゐる多くの少女たちは、たゞ死ぬ爲めに家へ歸るのであつた。あるものは、學校で息を引きとり、病氣の性質が猶豫を許さなかつたので、靜かに手速てばやはうむられた。
そでいておもてはらへば、はるかくもなかに、韓湘かんしやうあり。唯一人たゞいちにんゆきをかして何處いづこよりともなく、やがて馬前ばぜんきたる。みの紛々ふん/\として桃花たうくわてんじ、微笑びせうして一揖いちいふす。叔公をぢさんのちはと。
花間文字 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
妾山内氏の生んだ女子には婿養子が出來て、南部家に仕へた。内山善吉と云ふ二百石取がそれである。栗山の名は人に故主の非を思はせるからと云つて、利章がわざと外戚の苗字めうじをかさせた。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
それが實生活じつせいくわつおごそかな部分ぶぶんをかやうになつたのは、まつためづらしいとはなければならなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其處そこで、暑中休暇しよちうきうか學生がくせいたちは、むしろ飛騨越ひだごえ松本まつもとけんをかしたり、白山はくさんうらづたひに、夜叉やしやいけおく美濃路みのぢわたつたり、なかには佐々成政さつさなりまさのさら/\ごえたづねたえらいのさへある。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
三人は風雨ををかして、間道を東北の方向に進んだ。風雨はやう/\午頃ひるごろんだが、肌までとほつて、寒さは身にみる。からうじて大和川やまとがはの支流幾つかを渡つて、に入つて高安郡たかやすごほり恩地村おんちむらに着いた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
しか御心配ごしんぱいになることはありません。場合ばあひに、もしわる結果けつくわおこるとすると、屹度きつと心臟しんざうなうをかすものですが、いま拜見はいけんしたところでは双方共さうはうとも異状いじやうみとめられませんから」と説明せつめいしてれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)