人品ひとがら)” の例文
見るに衣裳なり見苦みぐるしけれども色白くして人品ひとがら能くひなまれなる美男なればこゝろ嬉敷うれしくねやともなひつゝ終に新枕にひまくらかはせし故是より吉三郎もお菊を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
何と気を変えたか、宗匠、今夜は大いにいなって、印半纏しるしばんてんに三尺帯、但し繻珍しゅちん莨入たばこいれ象牙ぞうげの筒で、内々そのお人品ひとがらな処を見せてござる。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
外の我は顔に親譲りの黄八丈、さては黒奉書の羽織に羽ぶり利かしたまふ人よりも、幾層立ち勝りたまいしお人品ひとがらのよさ。
葛のうら葉 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
色白の細面ほそおもてまゆあわいややせまりて、ほおのあたりの肉寒げなるが、きずといわば疵なれど、瘠形やさがたのすらりとしおらしき人品ひとがら
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
をかしかるべき空蝉うつせみのとものにして今歳ことし十九ねんてんのなせる麗質れいしつ、をしや埋木うもれぎはるまたぬに、青柳あをやぎいとのみきゝても姿すがたしのばるゝやさしの人品ひとがら
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
男ぶりといい人品ひとがらといい、花のかんばせ月の眉、女子おなごにして見まほしき優男やさおとこだから、ゾッと身にうした風の吹廻ふきまわしであんな綺麗な殿御とのご此処こゝへ来たのかと思うと
情熱的パッショネートななかに、悲しいあきらめさえみせているので、感じやすいわたしは自分から、すっかりつくりあげた人品ひとがらを「嫦娥じょうが」というふうにきめてしまっていたのだった。
柳原燁子(白蓮) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
人品ひとがらくって、やせっこけて、心配のありそうな、身分のある人が落魄おちぶれたらしい、こういう顔色かおつきの男には、得て奇妙な履歴があるものです。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おほかたそれも拵え取りの、金に飽かした衣裳なり、人形もさすが、あれほどの、御人品ひとがらゆゑその当座は、あつと人眼を眩ませた、それまではよかつたが。
移民学園 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
おゝ/\……お美那みな可愛想かあいさうぢやアないか……見なよ……人品ひとがら可愛かあいらしい子供こぞうだが、生来はらからの乞食こじきでもあるまいがの……あれまア親父おやぢ負傷けがをしたといふので
かへ團扇うちはおもひをせしときくからず打笑うちゑみし口元くちもとなんど、たゞさきたりて、らず沈思瞑目ちんしめいもくすることもあり、さるにても何人なにびと住家すまゐにや、人品ひとがら高尚けだかかりしは
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
木綿島村の甚太夫じんだいふといふ百姓にても家柄いへがらの者の娘なりしが年貢ねんぐ未進みしんに付據ころなく常磐屋へつとめ奉公に出して未だもなきにかれうんつよくして此方の旦那樣に受出され勤めの月日もなき故外の遊女とは大にちがひ人品ひとがらもよしと申に付少しは安心なし居たるに何樣文藏は申に及ばずしうとめにもよくつかへ奉公人迄行渡ゆきわたりの能ければ母のおもせは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いわんや……で、あやの見事さはなお目立つが、さながら紋緞子の野袴である。とはいえ、人品ひとがらにはよく似合った。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
平「其の方は新参者でも蔭日向かげひなたなくよく働くといって大分だいぶ評判がよく、皆のうけがよいぞ、年頃は二十一二と見えるが、人品ひとがらといい男ぶりといい草履取には惜しいものだな」
有無うむあいだまよひしこゝろもとこゝろかへりしときは、花垣はながきつきたかんで、ながれにうつるかげわれ一人ひとりになりぬ、さるにてもひとたれならん、隣家となり植木屋うへきやきゝたるが、おもひのほか人品ひとがらかなと
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その両方のあわいの、もの蔭に小隠れて、意気人品ひとがらな黒縮緬ちりめん、三ツ紋の羽織を撫肩なでがたに、しま大島の二枚小袖、かさねて着てもすらりとした、せぎすでせいの高い。油気の無い洗髪。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
へい/\有難ありがたぞんじます、うも折角せつかくのお厚情なさけでございますから、御遠慮ごゑんりよ申上まうしあげませぬでお言葉ことばしたがつて、御免ごめんかうむります。主「どうもお人品ひとがらなことだ、ちがふのうー……さア/\此方こつちへおはいり。 ...
しての肩縫かたぬひあげ可愛かはいらしき人品ひとがらなりおたかさま御覽ごらんなされ老人としよりなきいへらちのなさあにあにとてをとここと家内うちのことはとんと棄物すてもの私一人わたしひとりつもふもほんにほこりだらけで御座ございますとわらひていざな座蒲團ざぶとんうへおかまひあそばすなとしづごゑにおたかうやむやのむね關所せきしよたれに打明うちあけん相手あひてもなし朋友ともだちむつまじきもあれどそれは
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのおとうさんをつてるが、攝津守せつつのかみだか、有鎭ありしづだか、こゝが柳川やながはせつだからあてにはらない。その攝津守せつつのかみが、わたしつてるころは、五十七八の年配ねんぱい人品ひとがらなものであつた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
で、優柔おとなしく頬被りを取った顔を、と見ると迷惑どころかい、目鼻立ちのきりりとした、細面ほそおもての、まぶたやつれは見えるけれども、目の清らかな、眉の濃い、二十八九の人品ひとがら兄哥あにいである。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)