人品じんぴん)” の例文
道庵先生と相対している、同じ年配の、頭だけを僧体にした見慣れない人品じんぴんが一つあります。これはこの寺の方丈ではありますまい。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
念のために容子ようすを聞くと、年紀としは六十近い、被布ひふを着ておらるるが、出家しゅっけのようで、すらりと痩せた、人品じんぴん法体ほったいだという。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
みらるゝにひさしく浪々なし殊に此程は牢舍らうしやせし事ゆゑはなはやつれ居ると雖も自然と人品じんぴんよく天晴の武士さぶらひなりしかば大岡殿しづかに言葉を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
崋山かざんに至りては女郎雲助の類をさへ描きてしかも筆端に一点の俗気を存せず。人品じんぴんの高かりしためにやあらむ。到底とうてい文晁輩の及ぶ所に非ず。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
其処そこから出て来た女は年頃三十八九で色浅黒く、小肥こぶとりにふとり、小ざっぱりとしたなりをいたし人品じんぴんのいゝ女で、ずか/\と重二郎のそばへ来て
曹操もはや四十を幾つかこえ、威容人品じんぴんふたつながら備わって、覇気熱情はきねつじょうも日頃は温雅典麗おんがてんれいな貴人の風につつまれている。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
故郷くに靜岡しづをか流石さすが士族出しぞくでだけ人品じんぴん高尚かうしようにて男振をとこぶりぶんなく、さいありがくあり天晴あつぱれの人物じんぶついまこそ内科ないくわ助手しよしゆといへども行末ゆくすゑのぞみは十のさすところなるを
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「だからビーヤホールの女なぞにふざけていないで、少しきちんとして立派にして下さいよ。あんなものを相手にする人、私は大嫌い、人品じんぴんが下りますよ」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
するととき鎌倉かまくらのあるところに、能狂言のうきょうげんもようしがありまして、親子おやこにんれでその見物けんぶつ出掛でかけましたおり不図ふと間近まじかせき人品じんぴんいやしからぬ若者わかものかけました。
すると、そこへ、白いズボンをはいた人品じんぴんのいいおじいさんが出て来て、にこにこしながら
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
人身攻撃じんしんこうげきのごとき、あるいは卑怯ひきょうなる言葉におちいって、自己が弁護せんとする議題をもかえってそこなわれ、加うるにおのれの人品じんぴんまで下劣にすることは往々おうおうにして見ることである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
時には朝晩立つことがあるので、私も気が附き、その人の人品じんぴんを見覚えるようになった。
……これ程に清らかな、人品じんぴんのいい若侍をどうして疑う気になったのであろう……。
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
せいぜい十二、三人ほどだが、みんな相当のインテリらしい人品じんぴんである。アロハの兄ちやんや闇屋風の者は一人もゐない。買物かごをさげた主婦の姿もない。むづかしい顔をして熱心に聞いてゐる。
ハビアン説法 (新字旧仮名) / 神西清(著)
人品じんぴんを落すほどにつくッて、衣服もなりたけいのをえらんで着て行く。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「えゝ。あなたはこの頃人品じんぴんが上って参りましたよ」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
大正今日の官吏とは大に人品じんぴんを異にしている。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
五十六七にもなろう、人品じんぴんのいい、もの柔かな、出家すがたの一客が、火鉢に手を重ねながら、髯のない口許くちもとに、ニコリとした。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
悪口あっこうをいいながらつか/\と台所へ出て来ますと、惣吉は取って十歳、田舎育ちでも名主の息子でございますから、何処どこ人品じんぴんが違います
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
格子の中より六十餘の人品じんぴんよき老女らうぢよこゑかけ其許そのもとひさしの下に居るともれ給ふべし此方へいりて雨をしのがれよと念頃ねんごろに申せしかば彦兵衞大いによろこさらば仰せにしたが暫時しばし雨舍あまやどりを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
人數にんずのそそくさに此女中このぢよちゆうと、ほかには御飯ごはんたきらしき肥大女ふとつちよおよび、其夜そのよりてよりくるまばせて二人ふたりほどきたりしひとあり、一人ひとり六十ろくじふちかかるべき人品じんぴんよき剃髮ていはつ老人らうじん
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「イヤ、どう致して」見ると、若いが地味づくりの男、落ちつきもあるし人品じんぴんも立派だ。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其体そのからだおなじく、人品じんぴんなんとなくさはりがフツクリしてゐる。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
純子どんす座蒲団ざぶとんの上に坐って、金無垢きんむく煙管きせるで煙草を吸っている春見は今年四十五歳で、人品じんぴんい男でございます。
口許くちもととともに人品じんぴんくづさないでがある……かほだちがおびよりも、きりゝと細腰ほそごしめてた。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
所持なし出店でだな親類又は番頭若い者に至る迄大勢召仕ひゆたかに世をおくりけるが一人のせがれ吉之助とて今年ことし十九歳人品じんぴんよきうまれにて父母の寵愛ちようあいかぎりなくれども田舍ゐなかの事なれば遊藝いうげい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たとえば先頃、野火の戦野で出会って挨拶を交わした——赤備あかぞなえの一軍の大将、孟徳曹操もうとくそうそうなどという人物は、まだ若いが、人品じんぴんといい、言語態度といい、まことに見あげたものだった。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さりとてはほど人品じんぴんそなへながらおぼえたげいきか取上とりあげてもちひるひときかあはれのことやとはまへかんじなり心情しんじやうさら/\れたものならずうつくしきはなとげもあり柔和にゆうわおもて案外あんぐわい所爲しよゐなきにもあらじおそろしとおもへばそんなもの
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
粥河圖書は年齢としごろ二十六七で、色の白い人品じんぴんひとで、尤も大禄を取った方は自然品格が違います。
「——会って来たが、なるほど、聞きしに勝る人品じんぴんだ。大した器量人だ」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
文金ぶんきん高髷たかまげ唐土手もろこしで黄八丈きはちじょう小袖こそでで、黒縮緬くろちりめんに小さい紋の付いた羽織を着た、人品じんぴんのいゝこしらえで、美くしいと世間の評判娘、年は十八だが、世間知らずのうぶな娘が
人品じんぴんの常ならぬのを見て、曹操は自身でただした。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すくなからずあなた様の人品じんぴんを軽からしめます
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)