丸太まるた)” の例文
丸太まるたぼうを立てて、そのいちばん下を力いっぱいはらったのと変わらない。モンクスは自分の足を上に、ずでーんとたたきつけられた。
柔道と拳闘の転がり試合 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
この蟹は螯脚こうきゃくがむやみと大きく、それが小さい甲羅こうらから二本ぬっと出ている姿は、まるで団子だんご丸太まるたをつきさしたような恰好かっこうである。
南画を描く話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
翌日よくじつ見まわると、ロボの足跡あしあとはわなからわなへと続いていたが、わなはみなほじり出されて、鉄鎖てっさ丸太まるたもむきだしになっている。
金兵衛は小刻みに走り出したが、下立売しもたてうりから丸太まるた町を抜けて、所司代の番士のお長屋の、塀の側まで間もなく来た。と、お粂が立っていた。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「さっきね丸太まるたぼうのようなものを持ってね、ここを通ったから声をかけるとね、おれは大どろぼうを打ち殺しにゆくんだといってたっけ」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
それは丸太まるたんで出来できた、やっと雨露うろしのぐだけの、きわめてざっとした破屋あばらやで、ひろさはたたみならば二十じょうけるくらいでございましょう。
ちゃくわと二方をしきった畑の一部を無遠慮に踏み固めて、棕櫚縄しゅろなわ素縄すなわ丸太まるたをからげ組み立てた十数間の高櫓たかやぐらに人は居なかった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
まっ赤なシャツの骸骨男は、丸い演技場のむこうのはしまで走っていくと、そこにさがっている長い丸太まるたにとびつきました。
サーカスの怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
十二代じゆうにだい景行天皇けいこうてんのうが、筑紫つくし高田たかだ行宮あんぐう行幸ぎようこうされたときには、なが九千七百尺きゆうせんしちひやくしやくのその丸太まるたが、はしになつてかゝつてゐました。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
その小屋は丸太まるたやしばをつかねてつくったもので、屋根も木のえだのたばをみ重ねて、雪が間から流れこまないようにかたくなわでしめてあった。
第一幕と同じさびしき浜辺はまべ熊野権現くまのごんげんの前。横手にまずしき森。その一端に荒き丸太まるたにてつくれる形ばかりの鳥居とりい見ゆ。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
「ああ、それで、矢来やらいにする竹や丸太まるたや、獄門台ごくもんだいをつくる道具どうぐをかついで、みんながさっき向こうへいったんだな」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そういいながら吉は釣瓶の尻の重りにしばけられたけやき丸太まるたを取りはずして、その代わり石を縛り付けた。
笑われた子 (新字新仮名) / 横光利一(著)
やがまたれい丸太まるたわたるのぢやが、前刻さつきもいつたとほりくさのなかに横倒よこだふれになつてる、木地きぢ丁度ちやうどうろこのやうでたとへにもくいふがまつうわばみるで。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その音は自分の足の下で起ったのか、頭の上で起ったのか、尻をけた丸太まるたも、黒い天井てんじょうも一度におどり上ったから、分からない。自分のくびと手と足が一度に動いた。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
千住せんじゅ大橋おおはしで真ん中になる丸太まるたを四本、お祭りの竿幟のぼりにでもなりそうな素晴らしい丸太を一本一円三、四十銭位で買う、その他お好み次第の材料が安く手に這入りました。
晝飯が終ると三人は又手に/\得物えものを持つて出かけて行く。夕餉の膳に對して彼等の口は際限もなく動く。而して夜が彼等を丸太まるたのやうに次ぎの朝まで深い眠りに誘ひ込む。
小さき影 (旧字旧仮名) / 有島武郎(著)
ごんごろがねをおろすのは、庭師にわしやすさんが、おおきい庭石にわいしうごかすときに使つか丸太まるた滑車せみ使つかってやった。わか人達ひとたち手伝てつだった。れないことだからだいぶん時間じかんがかかった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
與吉よきち不自由ふじいうから燐寸マツチうばふやうにしてけてた。卯平うへい與吉よきちのするまゝにして、丸太まるたはしはなした腰掛こしかけ身體からだゑてやつれたやはらかなしかめてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いままでに、こんな小屋は見たことがありません! かべは、丸太まるたが二列にならんでいるだけで、すぐそれから屋根になっています。天井張てんじょうばりがないために、棟木むなぎまでも見えます。
それも製作技術の智慧からではあるが、丸太まるたを組み、割竹わりだけを編み、紙をり、色をけて、インチキ大仏のその眼のあなから安房あわ上総かずさまで見ゆるほどなのを江戸えどに作ったことがある。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「カワタ」の「タ」は弟人おとうとをオトト、素人しろうとをシロトという如く、皮人かわうとをカワトとつづめ、それがカワタと訛ったものか、或いは番太ばんた売女ばいた丸太まるた・ごろた(丸くごろごろする石)などの「タ」の如く
エタ源流考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
「このごろぼら丸太まるたが食うそうだ」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
やがて二かい寐床ねどここしらへてくれた、天井てんじやうひくいが、うつばり丸太まるた二抱ふたかゝへもあらう、むねからなゝめわたつて座敷ざしきはてひさしところでは天窓あたまつかへさうになつてる、巌丈がんぢやう屋造やづくり
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
丸太まるた町あたりと思われる辺から、人をとがめる犬の吠え声が、猛々たけだけしくひとしきり聞こえて来たが、拍子木の音の遠のいたころに、これも吠え止めてひっそりとなった。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その近所きんじょにはいまでもきつねたぬきがいるそうで、ふゆよるなど、ひと便所べんじょにゆくため戸外こがいるときには、をあけるまえに、まず丸太まるたをうちあわせたり、はしらたけでたたいたりして
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
いくらもがいても丸太まるた鉄鎖てつぐさりが一そうもつれるばかりで、さすがのロボもいまはどうしようもないのである。それでもその雪のように白い大きいきばをむき出して、鉄鎖をかみ切ろうとする。
見ると丸太まるたの上に腰をかけている。数は三人だった。丸太はつや丸太まるたで、軌道レールの枕木くらいなものだから、随分の重さである。どうして、ここまで運んで来たかとうてい想像がつかない。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ぼら丸太まるた蒲鉾かまぼこが釣れる」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
やがて、つや丸太まるたの上へうんとこしょと腰をおろして
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)