“鯔”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
ぼら85.2%
いな14.8%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
ぼらの煮附けとポーランド・ソースが出た。サモイレンコは二人の皿に一尾ずつ分けて、自分でソースを掛けてやった。二分ほどは沈黙のうちに過ぎた。
決闘 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
明けがたには、ひとさかぼらが釣れる。すこし陽が出てからは、きす釣り舟が、笹の葉をいたように、釣竿をならべて、糸をあげていた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これから次第に秋深み、黒鯛の当歳子とぼらの釣季に入れば、銀座の石畳の道を彷彿とさせて壮観であるそうだ。
姫柚子の讃 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
紀州の沖や土佐の沖ぢや、一網に何萬とぼらが入つたのぶりが捕れたのと云ふけれど、この邊の内海ぢや魚の種が年々盡きるばかりだから、次第に村同士で漁場の悶着が激しうなるんぢや。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
「ほら、まるでぼらを焼くのと同じことだ。脂がプスプスいつてゐる」と誰かが気軽な調子で云つた。
小さな村 (新字旧仮名) / 原民喜(著)
獲ものゝ魚はいなであることは、この魚特有の精力的ななまぐさいにおいが近づくまえに鼻をうつので知られました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「マア一口……。」と言って、初手しょてに甘ッたるい屠蘇とそを飲まされた。それから黒塗りの膳が運ばれた。膳には仕出し屋から取ったらしい赤い刺身や椀や、いなの塩焼きなどがならべてあった。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そして彼は、これから大漁が続くと予言しながら、漁の少い夏場だけやって来る旅客をけなし、遅くまで居残ってる私をほめ、第一これからは、川に群れてるいなにも脂がのってくる、鯔の食える季節は、山に初茸の出る時期の間だけだと、そんなことを話してきかした。
初秋海浜記 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
美妙はいなの背のように光ったベラベラ着物に角帯かくおびをキチンと締め、イツでも頭髪あたまを奇麗に分けて安香水やすこうすいの匂いをさしていたが、紅葉はくすんだ光らない着物に絞りの兵児帯へこおびをグルグル巻いて、五分刈頭の紺足袋で八幡黒やわたぐろの鼻緒の下駄が好きであった。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
こどものとき小学校へ送り迎えをして呉れたり、わたくしの好きないなのおへそを焼いて呉れたり、母がわたくしを乞食のすえと罵るのを庇って呉れたり、想い出せば親切だったと思うことも沢山あります。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)