トップ
>
頬張
>
ほおば
ふりがな文庫
“
頬張
(
ほおば
)” の例文
勇がふかし
甘薯
(
いも
)
を
頬張
(
ほおば
)
ッて、右の頬を
脹
(
ふく
)
らませながら、モッケな顔をして文三を
凝視
(
みつ
)
めた。お勢もまた不思議そうに文三を凝視めた。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
そして
悪魔
(
あくま
)
は、紳士がビールのコップを手にとって、ぐーっと飲んでる
隙
(
すき
)
に、皿の中の料理をぺろりと
頬張
(
ほおば
)
ってしまいました。
不思議な帽子
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
漁夫たちは口を食物で
頬張
(
ほおば
)
らせながら、きのうの
漁
(
りょう
)
のありさまや、きょうの予想やらをいかにも地味な口調で語り合っている。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
あるいは正面に動く機会が来るかも知れないと思った時、自分はチョコレートを
頬張
(
ほおば
)
りながら、
暗
(
あん
)
にその瞬間を
捉
(
とら
)
える注意を
怠
(
おこた
)
らなかった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
喜平はそう言って、大口に林檎を
頬張
(
ほおば
)
った。紀久子は父親の言葉に
衝
(
つ
)
かれたらしく、伏せていた目を上げて父親の顔を見た。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
▼ もっと見る
あの湯気の立つ
羹
(
あつもの
)
をフウフウ吹きながら吸う楽しみや、こりこり皮の
焦
(
こ
)
げた香ばしい焼肉を
頬張
(
ほおば
)
る楽しみがあるのだろうか? そうでなくて
悟浄歎異:―沙門悟浄の手記―
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
そうしてかくしのキャラメルを取り出して三つ四つ一度に
頬張
(
ほおば
)
りながら南方のすそ野から遠い前面の山々へかけての
眺望
(
ちょうぼう
)
をむさぼることにした。
小浅間
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
竜子は母の枕元で話をしながらシュウクリイムを一口
頬張
(
ほおば
)
った所なので、次の
間
(
ま
)
へ
逃出
(
にげだ
)
して口のはたと指先とをふいた
後
(
のち
)
静に元の座に立戻った。
寐顔
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
だが、もっとあげようといえば、それは
貰
(
もら
)
うのである。飲みものなしで、彼は、嫌いな米を
頬張
(
ほおば
)
る。ルピック夫人の
御機嫌
(
ごきげん
)
を取るつもりである。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
いや、
正
(
しょう
)
のものの
膝栗毛
(
ひざくりげ
)
で、
聊
(
いささ
)
か気分なるものを
漾
(
ただよ
)
わせ過ぎた形がある。が、
此処
(
ここ
)
で早速
頬張
(
ほおば
)
って、
吸子
(
きびしょ
)
の
手酌
(
てじゃく
)
で
飲
(
や
)
った
処
(
ところ
)
は、我ながら
頼母
(
たのも
)
しい。
雛がたり
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
台所にいる時は絶えず何かを
頬張
(
ほおば
)
っているので、不意に呼ばれると眼を白黒させ、
慌
(
あわ
)
てて後向きになりながら返事をすることがしばしばあること。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
しかしこの時彼は、一口も食べそこなうまいとしてやたらに
頬張
(
ほおば
)
る、愚鈍なドイツ人の様子をしか示していなかった。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
子供等は
頬張
(
ほおば
)
りながら逃出して行った。
下婢
(
おんな
)
が
洋燈
(
ランプ
)
を運んで来た。最早酒も沢山だ、と老人が言った。食事を終る毎に、老人は膳に対して合掌した。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
淡雪
(
あわゆき
)
は水になつた。窓々の扉が開く。
頬張
(
ほおば
)
つて朝のパンを食ふ平凡な午前九時が来て太陽はレデー・メードになる。侯爵は立上つて一九三一年の冬に身震ひした。
雪
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
ところでそばを味わうので大切なことは、少しずつつるっつるっとやるんでなしに一度にたくさん
頬張
(
ほおば
)
って、ぐうっとそばが
喉
(
のど
)
をこすって入るように食べるんだね。
美味放談
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
峠を越して
高平
(
たかひら
)
という処で馬を捨てた。茶屋へ入ったところが作り立ての
饅頭
(
まんじゅう
)
がある。オーライオーライとばかり
頬張
(
ほおば
)
ること数十個、これでようやく腹が治まった。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
かれは、芋を
頬張
(
ほおば
)
りながら、みんなに今日の発信数と、これまでの
累計
(
るいけい
)
とを報告したあとで、言った。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
見ると、赤犬は私がメリーのために用意しておいた、肉と野菜のまぜめしをがつがつ
頬張
(
ほおば
)
っている。メリーはと見れば、小屋の奥の方に小さくなっている様子である。
犬の生活
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
新しい
莚
(
むしろ
)
、
筍掘器
(
たけのこほり
)
、天秤棒を買って帰る者、
草履
(
ぞうり
)
の材料やつぎ切れにする
襤褸
(
ぼろ
)
を買う者、古靴を
値切
(
ねぎ
)
る者、古帽子、古洋燈、
講談物
(
こうだんもの
)
の古本を冷かす者、
稲荷鮨
(
いなりずし
)
を
頬張
(
ほおば
)
る者
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
(私は一ぺん糖分が夢にはよく
利
(
き
)
くというのでドロップスをどっさり
頬張
(
ほおば
)
りながら寝たことがあるが、その朝、私はそのドロップスにそっくりな色の着いた夢を見たっけ……)
鳥料理
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
老人は、それを
大切
(
だいじ
)
そうに両手のなかで捧げ持って、舌づつみをうちながらゆっくりゆっくり食べはじめる。ひと口
頬張
(
ほおば
)
っては、この世にこれ以上の珍味はないというふうに
キャラコさん:10 馬と老人
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
三十七になっても、さっぱりだめな義兄は、それから板塀の一部を
剥
(
は
)
いで、裏の畑の上に敷き、その上にどっかとあぐらを
掻
(
か
)
いて坐り、義妹の置いて行ったおにぎりを
頬張
(
ほおば
)
った。
薄明
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
親しい遠慮のない友達が来ると水菓子だの餅菓子だのと
三種
(
みいろ
)
も
四種
(
よいろ
)
も山盛りに積んだのを列べて、お客はそっちのけで片端からムシャムシャと
間断
(
しっきり
)
なしに
頬張
(
ほおば
)
りながら話をした。
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
食べにかかると握り飯も
御馳走
(
ごちそう
)
もすばらしく
美味
(
うま
)
いので、女中のことなどそっちのけにしてむしゃむしゃ
頬張
(
ほおば
)
った。女中はじっとそれを見ていたが、もう
怺
(
こら
)
えられなくなったと見えて
最後の胡弓弾き
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
縄
(
なわ
)
ですか? 縄は
盗人
(
ぬすびと
)
の有難さに、いつ塀を越えるかわかりませんから、ちゃんと腰につけていたのです。勿論声を出させないためにも、竹の落葉を
頬張
(
ほおば
)
らせれば、ほかに面倒はありません。
藪の中
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
いつでも自由に粉のままを
頬張
(
ほおば
)
っていたというのでこの歌があるのである。
食料名彙
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
一人の旅人は馬に乗ったまま或
宿場
(
しゅくば
)
の茶店の前に在って、その茶店で売っている草の餅を買ってそれを馬上ながら
頬張
(
ほおば
)
りつつあった時、ふとしたはずみにその草餅を取り落としたというのである。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
その片隅の
八日
(
ようか
)
巻の時計の下の
折釘
(
おれくぎ
)
に、
墨西哥
(
メキシコ
)
かケンタッキーの山奥あたりにしかないようなスバらしく長い、
物凄
(
ものすご
)
い銀色の拳銃が二
挺
(
ちょう
)
、十数発の実弾を
頬張
(
ほおば
)
ったまま並んで引っかかっているのだ。
難船小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それからすっかり腹を
空
(
す
)
かした朝の食事、オオトミイルに牛乳をなみなみと注いで、あなたを見ると、
林檎
(
りんご
)
を
丸噛
(
まるかじ
)
りに
頬張
(
ほおば
)
っているところ、なにかふっと笑っては、自分に照れ、
俯
(
うつむ
)
いてしまいます。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
蛾次郎はグビリと
頬張
(
ほおば
)
っていたあんころをのみくだして
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一ツ
頬張
(
ほおば
)
ったるが関の山
かくれんぼ
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
と云いながら、何の苦もなく一番上の
奴
(
やつ
)
を取って
頬張
(
ほおば
)
っちまった。
唇
(
くちびる
)
の厚い口をもごつかせているところを観察すると、
満更
(
まんざら
)
でもなさそうに見えた。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
躊躇
(
ちゅうちょ
)
していると日本服をきた女が物を
頬張
(
ほおば
)
りながら、
褐色
(
かばいろ
)
の
白粉
(
おしろい
)
をつけた大きな顔をぬっと出して、手にしたバナナの皮をお千代の足元へ投げつけた。
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ハスレルは
皿
(
さら
)
を
頤
(
あご
)
の下に置き、バタつきのパンやハムの切れを指でつまみ上げては、子供のように
頬張
(
ほおば
)
っていた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
津村も私も、歯ぐきから
膓
(
はらわた
)
の底へ
沁
(
し
)
み
徹
(
とお
)
る
冷
(
つ
)
めたさを喜びつつ甘い
粘
(
ねば
)
っこい柹の実を
貪
(
むさぼ
)
るように二つまで食べた。私は自分の
口腔
(
こうこう
)
に吉野の秋を
一杯
(
いっぱい
)
に
頬張
(
ほおば
)
った。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
地
(
つち
)
が
性
(
しょう
)
に合うで
好
(
よ
)
う出来るが、まだこの村でも
初物
(
はつもの
)
じゃという、それを、
空腹
(
すきばら
)
へ三つばかり
頬張
(
ほおば
)
りました。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
有り合わせの餌を一片二片とだんだん近くへ投げてやると、おしまいには、もう手に持っているカステイラなどをくちばしで引ったくって
頬張
(
ほおば
)
る事を覚えてしまった。
沓掛より
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
彼女は母親の
傍
(
そば
)
に腰掛けて
仏蘭西
(
フランス
)
の
麺麭
(
パン
)
なぞを
頬張
(
ほおば
)
りながら
喰
(
く
)
っていた。この家族の食事するさまを楽しげに
眺
(
なが
)
めながら、同じ部屋に居て岡も簡単な昼食を始めていた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
渠はそのへんを泳いでいた魚類を五、六尾
手掴
(
てづか
)
みにしてむしゃむしゃ
頬張
(
ほおば
)
り、さて、腰に
提
(
さ
)
げた
瓢
(
ふくべ
)
の酒を
喇叭
(
らっぱ
)
飲みにした。
旨
(
うま
)
かった。ゴクリゴクリと渠は音を立てて飲んだ。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
そうして一本のやや大きな
灌木
(
かんぼく
)
の下に立ち止まると、手を
伸
(
の
)
ばしてその枝から赤い実を
揉
(
も
)
ぎとっては
頬張
(
ほおば
)
っていた。それは何の実だと
訊
(
き
)
いたら、「
茱萸
(
ぐみ
)
だ」と彼等は返事をした。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
夜の物を揚げあえず
楊枝
(
ようじ
)
を口へ
頬張
(
ほおば
)
り
故手拭
(
ふるてぬぐい
)
を前帯に
揷
(
はさ
)
んで、
周章
(
あわて
)
て二階を降りる。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
武官はパンを
頬張
(
ほおば
)
ったなり、苦しそうに笑っていた。
保吉の手帳から
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
主人は肖りたい名の
下
(
もと
)
に、
甘垂
(
あまた
)
るい
金玉糖
(
きんぎょくとう
)
を幾切か
頬張
(
ほおば
)
った。これは酒も呑み、茶も呑み、飯も菓子も食えるようにできた、重宝で健康な男であった。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そしてこの
佝僂
(
せむし
)
の少年は、ベンチの上に馬乗りになり、口いっぱいに
頬張
(
ほおば
)
った食物を急いで
呑
(
の
)
み下そうともせずに、楽しい夢心地のうちにうっとりとなって
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
糠袋を
頬張
(
ほおば
)
って、それが
咽喉
(
のど
)
に
詰
(
つま
)
って、息が
塞
(
ふさが
)
って死んだのだ。どうやら手が届いて息を吹いたが。
絵本の春
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「義雄さんにお替りをして
進
(
あ
)
げとくれ」と岸本は肉の片を
頬張
(
ほおば
)
りながら輝子に言った。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
シャクの最も熱心な聴手だった縮れっ毛の青年が、焚火に顔を
火照
(
ほて
)
らせながらシャクの
肩
(
かた
)
の肉を
頬張
(
ほおば
)
った。例の長老が、
憎
(
にく
)
い
仇
(
かたき
)
の
大腿骨
(
だいたいこつ
)
を右手に、骨に付いた肉を
旨
(
うま
)
そうにしゃぶった。
狐憑
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
私は不承々々そいつを一口
頬張
(
ほおば
)
った 妙な味がする しかし悪くはない味だ
鳥料理
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
君江も屑羊羹を
頬張
(
ほおば
)
りながら少し
及腰
(
およびごし
)
になって
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
一夜明けるや否や
雑煮
(
ぞうに
)
として
頬張
(
ほおば
)
る位のものには違ないが、御目出たい実景の乏しい今日、御目出たい想像などは容易に新聞社の頭に宿るものではない。
元日
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
頬
部首:⾴
15画
張
常用漢字
小5
部首:⼸
11画
“頬”で始まる語句
頬
頬杖
頬冠
頬被
頬辺
頬骨
頬白
頬髯
頬桁
頬笑