“頬張:ほおば” の例文
“頬張:ほおば”を含む作品の著者(上位)作品数
夏目漱石11
ロマン・ロラン4
泉鏡花4
永井荷風3
島崎藤村3
“頬張:ほおば”を含む作品のジャンル比率
文学 > フランス文学 > 小説 物語13.5%
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.0%
文学 > 日本文学 > 日記 書簡 紀行0.4%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
健三は仕方なしにうまくもない海苔巻を頬張ほおばって、い加減烟草タバコで荒らされた口のうちをもぐもぐさせた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
が、此処ここで早速頬張ほおばって、吸子きびしょ手酌てじゃくったところは、我ながら頼母たのもしい。
雛がたり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今度は「一つ、どうです」とも何とも云わずに、木皿が床几しょうぎの上に乗るや否や、自分の方でまず一つ頬張ほおばった。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ハスレルはさらあごの下に置き、バタつきのパンやハムの切れを指でつまみ上げては、子供のように頬張ほおばっていた。
「御互に豚をもって自任しているのかなあ」と甲野さんは、少々なさけなさそうに白い膏味あぶらみ頬張ほおばる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかしこの時彼は、一口も食べそこなうまいとしてやたらに頬張ほおばる、愚鈍なドイツ人の様子をしか示していなかった。
ほおの葉に包んでお民の与えた熱い塩結飯しおむすびをうまそうに頬張ほおばるような年ごろのおくめがいる。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
衣服をあらためて、夜の物を揚げあえず楊枝ようじを口へ頬張ほおば故手拭ふるてぬぐいを前帯にはさんで
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
躊躇ちゅうちょしていると日本服をきた女が物を頬張ほおばりながら、褐色かばいろ白粉おしろいをつけた大きな顔をぬっと出して
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
漁夫たちは口を食物で頬張ほおばらせながら、きのうのりょうのありさまや、きょうの予想やらをいかにも地味な口調で語り合っている。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そうして一本のやや大きな灌木かんぼくの下に立ち止まると、手をばしてその枝から赤い実をぎとっては頬張ほおばっていた。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
自分はやむをえず苦笑しながら一つ頬張ほおばった。彼女は自分のために湯呑ゆのみへ茶をいでくれた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
主人はまたやられたと思いながら何も云わずに空也餅くうやもち頬張ほおばって口をもごもご云わしている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして悪魔あくまは、紳士がビールのコップを手にとって、ぐーっと飲んでるすきに、皿の中の料理をぺろりと頬張ほおばってしまいました。
不思議な帽子 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
しかも頬張ほおばったやつを、唾液つばきぜずに、むやみにくだすので、咽喉のどが、ぐいぐいと鳴るように思われた。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼女は母親のそばに腰掛けて仏蘭西フランス麺麭パンなぞを頬張ほおばりながらっていた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
見ると、赤犬は私がメリーのために用意しておいた、肉と野菜のまぜめしをがつがつ頬張ほおばっている。
犬の生活 (新字新仮名) / 小山清(著)
つちしょうに合うでう出来るが、まだこの村でも初物はつものじゃという、それを、空腹すきばらへ三つばかり頬張ほおばりました。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし、その男が屋根にまたがり、善良な快活な顔つきをし、ほおをふくらましてくぎ頬張ほおばってる様子を見ると、彼はすぐに笑い出した。
斜めに吹きかける雨を片々かたかたの手に持った傘でけつつ、片々の手で薄く切った肉と麺麭パンを何度にも頬張ほおばるのが非常に苦しかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一夜明けるや否や雑煮ぞうにとして頬張ほおばる位のものには違ないが、御目出たい実景の乏しい今日
元日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
渠はそのへんを泳いでいた魚類を五、六尾手掴てづかみにしてむしゃむしゃ頬張ほおばり、さて、腰にげたふくべの酒を喇叭らっぱ飲みにした。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
その晩宗助は到来の菓子折のふたを開けて、唐饅頭とうまんじゅう頬張ほおばりながら、
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「義雄さんにお替りをしてげとくれ」と岸本は肉の片を頬張ほおばりながら輝子に言った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そうしてかくしのキャラメルを取り出して三つ四つ一度に頬張ほおばりながら南方のすそ野から遠い前面の山々へかけての眺望ちょうぼうをむさぼることにした。
小浅間 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「御爺さんはいくつかね」と聞いた。爺さんは頬張ほおばった煮〆にしめみ込んで、
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あるいは正面に動く機会が来るかも知れないと思った時、自分はチョコレートを頬張ほおばりながら、あんにその瞬間をとらえる注意をおこたらなかった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
勿論声を出させないためにも、竹の落葉を頬張ほおばらせれば、ほかに面倒はありません。
藪の中 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
竜子は母の枕元で話をしながらシュウクリイムを一口頬張ほおばった所なので、次の逃出にげだして口のはたと指先とをふいたのち静に元の座に立戻った。
寐顔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「むむ、む。」と言う境の声は、氷を頬張ほおばったように咽喉のどつかえた。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
子供等は頬張ほおばりながら逃出して行った。下婢おんな洋燈ランプを運んで来た。最早酒も沢山だ、と老人が言った。食事を終る毎に、老人は膳に対して合掌した。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
有り合わせの餌を一片二片とだんだん近くへ投げてやると、おしまいには、もう手に持っているカステイラなどをくちばしで引ったくって頬張ほおばる事を覚えてしまった。
沓掛より (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
オーライオーライとばかり頬張ほおばること数十個、これでようやく腹が治まった。
頬張ほおばつて朝のパンを食ふ平凡な午前九時が来て太陽はレデー・メードになる。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
クリストフは非常に喜んで、口いっぱい頬張ほおばりながら、餓鬼のように食べた。
ところでそばを味わうので大切なことは、少しずつつるっつるっとやるんでなしに一度にたくさん頬張ほおばって、ぐうっとそばがのどをこすって入るように食べるんだね。
美味放談 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
私は不承々々そいつを一口頬張ほおばった 妙な味がする しかし悪くはない味だ
鳥料理 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
「アラ、実にシャンねえ。清岡先生の奥様よ。」という声に、ボックスに休んでいた女は一斉に顔を差出した。君江も屑羊羹を頬張ほおばりながら少し及腰およびごしになって、
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それがいやになるとご免をこうむって口の内へ頬張ほおばってしまう。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私は自分の口腔こうこうに吉野の秋を一杯いっぱい頬張ほおばった。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
主人は肖りたい名のもとに、甘垂あまたるい金玉糖きんぎょくとうを幾切か頬張ほおばった。これは酒も呑み、茶も呑み、飯も菓子も食えるようにできた、重宝で健康な男であった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
老人は、それを大切だいじそうに両手のなかで捧げ持って、舌づつみをうちながらゆっくりゆっくり食べはじめる。ひと口頬張ほおばっては、この世にこれ以上の珍味はないというふうに、
キャラコさん:10 馬と老人 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
三十七になっても、さっぱりだめな義兄は、それから板塀の一部をいで、裏の畑の上に敷き、その上にどっかとあぐらをいて坐り、義妹の置いて行ったおにぎりを頬張ほおばった。
薄明 (新字新仮名) / 太宰治(著)
郵便物当番も、もうむろんそのころには帰って来て、仲間に加わっていた。かれは、芋を頬張ほおばりながら、みんなに今日の発信数と、これまでの累計るいけいとを報告したあとで、言った。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
蛾次郎はグビリと頬張ほおばっていたあんころをのみくだして、
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「むむ?」と青年は鳥の肉を口いっぱい頬張ほおばっている。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
武官はパンを頬張ほおばったなり、苦しそうに笑っていた。
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
何となく席がしらけた。誰も口をきかない。勇がふかし甘薯いも頬張ほおばッて、右の頬をふくらませながら、モッケな顔をして文三を凝視みつめた。お勢もまた不思議そうに文三を凝視めた。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
喜平はそう言って、大口に林檎を頬張ほおばった。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
飲みものなしで、彼は、嫌いな米を頬張ほおばる。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
食べにかかると握り飯も御馳走ごちそうもすばらしく美味うまいので、女中のことなどそっちのけにしてむしゃむしゃ頬張ほおばった。女中はじっとそれを見ていたが、もうこらえられなくなったと見えて、
最後の胡弓弾き (新字新仮名) / 新美南吉(著)
私はその翌日よくじつ午飯ひるめしを食いに学校から帰ってきて、昨夜ゆうべ机の上にせて置いた菓子の包みを見ると、すぐその中からチョコレートを塗った鳶色とびいろのカステラを出して頬張ほおばった。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そしてこの佝僂せむしの少年は、ベンチの上に馬乗りになり、口いっぱいに頬張ほおばった食物を急いでみ下そうともせずに、楽しい夢心地のうちにうっとりとなって、もう自分の痛む背骨や病弱な魂をも感じなかった。
それからすっかり腹をかした朝の食事、オオトミイルに牛乳をなみなみと注いで、あなたを見ると、林檎りんご丸噛まるかじりに頬張ほおばっているところ、なにかふっと笑っては、自分に照れ、うつむいてしまいます。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
その上に頗る多食家であって、親しい遠慮のない友達が来ると水菓子だの餅菓子だのと三種みいろ四種よいろも山盛りに積んだのを列べて、お客はそっちのけで片端からムシャムシャと間断しっきりなしに頬張ほおばりながら話をした。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
その片隅の八日ようか巻の時計の下の折釘おれくぎに、墨西哥メキシコかケンタッキーの山奥あたりにしかないようなスバらしく長い、物凄ものすごい銀色の拳銃が二ちょう、十数発の実弾を頬張ほおばったまま並んで引っかかっているのだ。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
極楽にも、あの湯気の立つあつものをフウフウ吹きながら吸う楽しみや、こりこり皮のげた香ばしい焼肉を頬張ほおばる楽しみがあるのだろうか? そうでなくて、話に聞く仙人のようにただかすみを吸って生きていくだけだったら、ああ、いやだ、厭だ。
「もう叱られる気遣きづかいはないか。それじゃ一つやるかな。糸公も一つ御上おあがり。どうだい藤尾さん一つ。——しかしなんだね。阿爺おとっさんのような人はこれから日本にだんだん少なくなるね。惜しいもんだ」とチョコレートを塗った卵糖カステラを口いっぱいに頬張ほおばる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「糠袋を頬張ほおばって、それが咽喉のどつまって、息がふさがって死んだのだ。どうやら手が届いて息を吹いたが。……あとで聞くと、月夜にこの小路へ入る、美しいお嬢さんの、湯帰りのあとをつけて、そして、何だよ、無理に、何、あの、何の真似だか知らないが、お嬢さんの舌をな。」
絵本の春 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
山嵐は無暗むやみに牛肉を頬張ほおばりながら、君あの赤シャツが芸者に馴染なじみのある事を知ってるかと聞くから、知ってるとも、この間うらなりの送別会の時に来た一人がそうだろうと云ったら、そうだぼくはこのごろようやく勘づいたのに、君はなかなか敏捷びんしょうだと大いにほめた。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
(私は一ぺん糖分が夢にはよくくというのでドロップスをどっさり頬張ほおばりながら寝たことがあるが、その朝、私はそのドロップスにそっくりな色の着いた夢を見たっけ……)そう、そう、それから私がマリイ・ロオランサンの絵に夢中になっていたのもあの絵の色が私の夢のそれに似ていたからであった。
鳥料理 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
新しいむしろ筍掘器たけのこほり、天秤棒を買って帰る者、草履ぞうりの材料やつぎ切れにする襤褸ぼろを買う者、古靴を値切ねぎる者、古帽子、古洋燈、講談物こうだんものの古本を冷かす者、稲荷鮨いなりずし頬張ほおばる者、玉乗の見世物の前にぽかんと立つ者、人さま/″\物さま/″\の限を尽す。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
少年は我に返って、頬張ほおばっている食物を呑み下し、近くの水道せんでぐっと水を飲み、それからまた佝僂せむしの背中をかがめながら、跛のよちよちした足取りで、印刷所の受持場所へ帰り、革命のメネ・テケル・ウパルシン(数えられぬ、はかられぬ、分かたれぬ)を他日書くべき、魔法の活字の箱の前に就いた。
酒席の憲法恥をかかすべからずといられてやっと受ける手頭てさきのわけもなくふるえ半ば吸物椀すいものわんの上へしのつかねて降る驟雨しゅううしゃくする女がオヤ失礼と軽く出るに俊雄はただもじもじとはしも取らずお銚子ちょうしの代り目と出て行く後影を見澄まし洗濯はこの間と怪しげなる薄鼠色うすねずみいろくりのきんとんを一ツ頬張ほおばったるが関の山
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)