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鍬
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くわ
ふりがな文庫
“
鍬
(
くわ
)” の例文
鍬
(
くわ
)
かたげし農夫の影の、橋とともに
朧
(
おぼ
)
ろにこれに
映
(
う
)
つる、かの舟、音もなくこれを
掻
(
か
)
き乱しゆく、見る間に、舟は葦がくれ去るなり。
たき火
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
と、いうことは
素気
(
そっけ
)
ないが、話を
振切
(
ふりき
)
るつもりではなさそうで、肩を
一
(
ひと
)
ツ
揺
(
ゆす
)
りながら、
鍬
(
くわ
)
の
柄
(
え
)
を返して
地
(
つち
)
についてこっちの顔を見た。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鍬
(
くわ
)
を忘れたと気付き、取り帰ってさすがは烏だ、内の鶏なんざあ何の役にも立たぬと
誹
(
そし
)
ると、鶏憤ってトテコーカアと鳴いたという。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
鍬
(
くわ
)
を肩に掛けて行く男もあり、
肥桶
(
こえたご
)
を担いで腰を
捻
(
ひね
)
って行く男もあり、
爺
(
おやじ
)
の煙草入を腰にぶらさげながら
随
(
つ
)
いて行く児もありました。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
いちどわが
家
(
や
)
へ戻って
鍬
(
くわ
)
を持ち出し、夜もすがら
裏藪
(
うらやぶ
)
のあたりを歩いていたが、やがて、西久保の山へ上って、その金を
埋
(
い
)
けていた。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
畑の中には大きな石がゴロゴロしている。家の廻りには
鍬
(
くわ
)
の
把
(
は
)
、
天秤棒
(
てんびんぼう
)
、下駄など、山で荒削りにされたまま軒下に積まれてある。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
突然
庫裏
(
くり
)
の方から、声を震わせて
梵妻
(
だいこく
)
が現われた。手に
鍬
(
くわ
)
の
柄
(
え
)
のような堅い棒を持ち、
肥
(
ふと
)
った体を
不恰好
(
ぶかっこう
)
に波うたせ、血相かえて来た。
果樹
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
仮りにも主君の
恣意
(
しい
)
がそれを強要したなぞとは、それは夢にも現われてならぬ想念であった。生れてはじめて
鍬
(
くわ
)
をとった彼らであった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
「
谷地
(
やち
)
の境について、紛らわしいことを云って来るんです。寺池領の者が、地境を無視して涌谷領へ
鍬
(
くわ
)
をいれる、というんですが」
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
もうこれ
迄
(
まで
)
です。男の血は槍や
鳶口
(
とびぐち
)
や棒や
鋤
(
すき
)
や
鍬
(
くわ
)
を染めて、からだは雪に埋められました。検視の来る頃には男はもう死んでいました。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
鍬
(
くわ
)
をかついでいる
百姓
(
ひゃくしょう
)
の
親爺
(
おやじ
)
さんといったほうが適当であり、講義の調子も、その風貌にふさわしく、
訥々
(
とつとつ
)
として
渋
(
しぶ
)
りがちだった。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
〽さいこたくまか出た、てけれっつのぱあ ——圓好の手が
鍬
(
くわ
)
になる。孟斎芳虎えがくの唐人に、さっと赤土が高座をかつちる。
随筆 寄席風俗
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
わたくしがはだかで
鍬
(
くわ
)
を運んでますていと、畑のところまで○○子爵からのお使いがあって、いつ、何時からという約束になりましたが
猫八
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
この種の仕事に馴れない大川時次郎は、
艀
(
はしけ
)
の中で、「入れ
鍬
(
くわ
)
」をした。スコップで、籠に、石炭を入れる役である。女の領分だ。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
と
思
(
おも
)
いながら、
半分
(
はんぶん
)
は
気味
(
きみ
)
が
悪
(
わる
)
いので、いきなり
鍬
(
くわ
)
を
振
(
ふ
)
り上げて、
打
(
う
)
ち
殺
(
ころ
)
そうとしますと、
雷
(
かみなり
)
は
気
(
き
)
がついて、あわててお
百姓
(
ひゃくしょう
)
を
止
(
と
)
めました。
雷のさずけもの
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
鍬
(
くわ
)
、
鋤
(
すき
)
の類をはじめとしての
得物
(
えもの
)
は、それぞれ柳の木に立てかけられたり、土手の上に転がされたりして、双方が
素手
(
すで
)
で無事に入り交って
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
暫くの間、私はこのあたりに無言でせっせっと
鍬
(
くわ
)
を入れて来た自分の相棒の内生活を
窺
(
のぞ
)
く興味に
溢
(
あふ
)
れ、なお高次郎氏の歌集を読んでいった。
睡蓮
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
ばくち打ちの親分になって贅沢するよりも、
鋤
(
すき
)
鍬
(
くわ
)
もって五穀をつくるのが人間の本筋だって、ゆうべもつくづくいってました。
沓掛時次郎 三幕十場
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
尻切
(
しりきれ
)
草履突かけて
竹杖
(
たけづえ
)
にすがって行く婆さんの
背
(
うしろ
)
から、
鍬
(
くわ
)
をかついだ四十男の久さんが、婆さんの白髪を引張ったりイタズラをして甘えた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
麦の種を
蒔
(
ま
)
くために鉄の
鍬
(
くわ
)
で掘り割られる時に、地面が受くるような感じを、彼もおそらく感じたであろう。その時はただ傷をのみ感ずる。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
母はまがった腰に
鍬
(
くわ
)
を取り、肥をかついで、狭い庭の隅々までも耕して畑にしていた。病人の息子に新鮮な野菜を与えたいだけの一心だった。
黒猫
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
私から
引
(
ひ
)
っ
攫
(
たく
)
り取った鞄を、片手にヨチヨチと、
鍬
(
くわ
)
を
担
(
かつ
)
いで通りかかった下男が、またその鞄を受取って、甥を取り巻いて
洟
(
はな
)
を垂らしながら
仁王門
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
向うの方で
凸凹
(
でこぼこ
)
の地面をならして新墓地を作っている男が、
鍬
(
くわ
)
の手を休めて私たちを見ていた。私たちはそこから左へ切れてすぐ街道へ出た。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
人夫は、棺の周囲の土へ、
鍬
(
くわ
)
を打込んで行った。鍬の先が、棺の木に当って、土に汚れて、薄黒くなった肌に、白い傷が、いくつも、ついた。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
工業的
(
こうぎょうてき
)
の機械を用うる事はなく、
鍬
(
くわ
)
、
鋤
(
すき
)
、
鎌
(
かま
)
などが彼等
唯一
(
ゆいつ
)
の用具であくまでもそれを保守して、新らしい機械などには見向きもしない有様で
農村
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
金属工芸の進まなかった時代から、土を耕す
鍬
(
くわ
)
はすでに備わり、また火を
焚
(
た
)
く炉の上の鉤も欠くべからざるものであった。
こども風土記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
二人は小さな蝋燭の光をたよりに、棺桶をその穴の底に落し入れると、その辺に投げ捨ててあった
鍬
(
くわ
)
とシャベルを取って、棺の上に土をかけた。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
白い頭を
手拭
(
てぬぐ
)
いに包んで、
鍬
(
くわ
)
の
柄
(
え
)
を杖に、
綻
(
ほころ
)
びかけた梅の花を仰いでいるお爺さんを想い描かずにはおられないのです。
季節の植物帳
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
自
(
みづか
)
ら
資
(
し
)
を
投
(
とう
)
じ、
自
(
みづか
)
ら
鍬
(
くわ
)
を
取
(
と
)
り、
自
(
みづか
)
ら
其破片
(
そのはへん
)
をツギ
合
(
あは
)
せて、
然
(
しか
)
る
上
(
うへ
)
に
研究
(
けんきう
)
を
自
(
みづか
)
らもし、
他
(
た
)
が
來
(
きた
)
つて
研究
(
けんきう
)
する
材料
(
ざいれう
)
にも
供
(
きやう
)
するにあらざれば——
駄目
(
だめ
)
だ。
探検実記 地中の秘密:01 蛮勇の力
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
女は、掘りかけて
鍬
(
くわ
)
をそこに捨てて休んだ。
湿
(
しめ
)
っぽい風は女の油気のない、赤茶けた髪をなぶって吹いた。木々の葉は、
冷笑
(
あざわら
)
うように鳴っていた。
森の暗き夜
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
雨はわたしが豆畠に
鍬
(
くわ
)
を入れるのをさまたげはするが、それは豆畠の手入れよりはるかに一層値打ちのあるものなのだ。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
その後から年とった女達が
鍬
(
くわ
)
の上に泥を引っかけたのを
提
(
さ
)
げて弾薬補給の役目をつとめるためについて行くのである。
五月の唯物観
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
今や敵国に対して
復讐戦
(
ふくしゅうせん
)
を計画するにあらず、
鋤
(
すき
)
と
鍬
(
くわ
)
とをもって残る領土の曠漠と闘い、これを田園と化して敵に奪われしものを補わんとしました。
デンマルク国の話:信仰と樹木とをもって国を救いし話
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
その中で、どうしても一個所竹竿の通らない処を、父が
鍬
(
くわ
)
で掘出して土管を埋め直し、若い叔父さま二人に水を汲んで来て流して見ろと命じていた。
父杉山茂丸を語る
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
武士たちは、こわごわちかづいて見ると、
高麗錦
(
こまにしき
)
、
呉
(
くれ
)
の
綾
(
あや
)
、
倭文織
(
しずおり
)
、
縑
(
かとり
)
、
楯
(
たて
)
、
矛
(
ほこ
)
、
靫
(
ゆき
)
、
鍬
(
くわ
)
などのたぐいで、いずれも権現から紛失した宝物であった。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
家の戸口は開かれて、
鍬
(
くわ
)
、
鋤
(
すき
)
、
如露
(
じょうろ
)
なぞは、
黄
(
きいろ
)
き
日光
(
ひかげ
)
に照されし貧しき
住居
(
すまい
)
の門の前、色づく夕暮の
中
(
うち
)
に
横
(
よこた
)
はりたり。
珊瑚集:仏蘭西近代抒情詩選
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
小学校の校庭に死骸が埋めてあって、それを掘り出さねばいけないというので、私は
鍬
(
くわ
)
を振って地面にうち下した。
風宴
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
吾々が怠れば品物の方は決して近附かない。
凡
(
すべ
)
ての所が処女地であった。精出して
鋤
(
すき
)
や
鍬
(
くわ
)
を
容
(
い
)
れない限り
実
(
みのり
)
はない。
地方の民芸
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
「
収入
(
みいり
)
どころか、牛も馬も
鋤
(
すき
)
も
鍬
(
くわ
)
もありません。何よりも先にそれを手に入れなくちゃいけません。そうすりゃ、やがてお金も入って来るでしょう。」
イワンの馬鹿
(新字新仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
がちりと、何か
鍬
(
くわ
)
の先にあたったものがありました。それからまた、がちりがちりと、鍬は少しもとおりません。丸彦はそのへんを掘りひろげました。
長彦と丸彦
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
けれど
鍬
(
くわ
)
を持つには健康が侵され、ペンではお金を得るどころでなく、お金がかかるようなしだいで困っています。
青春の息の痕
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
ともとの道へ帰ろうとする山の
際
(
きわ
)
の、
信行寺
(
しんぎょうじ
)
と云う寺から出て来る百姓
体
(
てい
)
の男が、
鋤
(
すき
)
鍬
(
くわ
)
を持って泥だらけの手で、一人は草鞋一人は素足で
前
(
さき
)
へ立って
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
清作はびっくりして顔いろを変え、
鍬
(
くわ
)
をなげすてて、足音をたてないように、そっとそっちへ走って行きました。
かしわばやしの夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
上州
(
じょうしゅう
)
の
田舎
(
いなか
)
の話である。
某日
(
あるひ
)
の夕方、一人の農夫が畑から帰っていた。それは
柄
(
え
)
の長い
鍬
(
くわ
)
を肩にして、
雁首
(
がんくび
)
を
蛇腹
(
じゃばら
)
のように叩き
潰
(
つぶ
)
した
煙管
(
きせる
)
をくわえていた。
棄轎
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
歌麿
(
うたまろ
)
がかったものにも色気を出す、
大雅堂
(
たいがどう
)
や
竹田
(
ちくでん
)
ばたけにも
鍬
(
くわ
)
を入れたがる、運が好ければ
韓幹
(
かんかん
)
の馬でも百円位で買おう気でおり、支那の
笑話
(
しょうわ
)
にある通り
骨董
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
学校へゆく
二人
(
ふたり
)
の
兄妹
(
きょうだい
)
に着物を着せる、座敷を一通り
掃除
(
そうじ
)
する、そのうちに佐介は
鍬
(
くわ
)
を肩にして田へ出てしまう。お千代はそっとおとよの部屋へはいって
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
黒木長者の雇人が二三十人、木刀や
手槍
(
てやり
)
まで持出して、地蔵様を屋敷内に移そうとすると、土地の人は、
鍬
(
くわ
)
、鎌、竹槍で
鎧
(
よろ
)
って、そうはさせねえという騒ぎ。
銭形平次捕物控:009 人肌地蔵
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
すると、彼の前へ、とつぜんパイプをくわえ、肩に
鍬
(
くわ
)
をかついだ農夫が姿をあらわした。そして農夫の顔を見たとき、隆夫のたましいは、あっとおどろいた。
霊魂第十号の秘密
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
少し離れて三人の武士、高くたいまつをささげている。さらに離れて二人の武士、
鋤
(
すき
)
と
鍬
(
くわ
)
を地に突いている。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
枯れ萎れた茎の根へ、ぐいと一と
鍬
(
くわ
)
入れて引き起すと、その中にちらりと猿の臀のような色が覗く。茎を掴んで引き抜くと、下に芋が赤く重なってついている。
千鳥
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
“鍬”の解説
鍬(くわ)は、表土の掘り起こしに用いられる農工具の一種。農耕具であるとともに、掘鑿(掘削)用手道具類にも分類される。英語名でHoeと呼ばれる手道具に相当する。
(出典:Wikipedia)
鍬
漢検準1級
部首:⾦
17画
“鍬”を含む語句
鋤鍬
唐鍬
鍬形
一鍬
三本鍬
黒鍬組
馬鍬
鍬鍛冶
黒鍬谷
小鍬
小萬鍬
黒鍬
鍬形蕙斎
萬鍬
鍬鋤
姫鍬形
鍬目
二鍬
鍬柄
初鍬
...