)” の例文
国手こくしゅと立花画師との他は、皆人足で、食糧を持つ他には、道開き或いは熊けの為に、手斧ておののこぎりかまなどを持っているのであった。
壁の眼の怪 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
なるほど門人種員の話した通り打水うちみず清き飛石とびいしづたい、日をける夕顔棚からは大きな糸瓜へちまの三つ四つもぶら下っている中庭を隔てて
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
僕等は弘法麦こうぼうむぎの茂みをけ避け、(しずくをためた弘法麦の中へうっかり足を踏み入れると、ふくらはぎかゆくなるのに閉口したから。)
海のほとり (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
某は身をかわしてけ、刀は違棚ちがいだなの下なる刀掛に掛けありし故、飛びしざりて刀を取り抜き合せ、ただ一打に横田を討ち果たし候。
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
つけ走るとき鳴り響きて人をけさするやうにして有り四挺の車にやつの金輪リン/\カチヤ/\硝子屋びいどろやが夕立に急ぐやうなり鹽灘の宿しゆく
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
けもかわしも出来ぬ早業はやわざ、軍十郎はまるで名剣で斬られたごとく、真っ向を割下げられて後ろざまにすっ飛ぶ。同時に兵右衛門が
半化け又平 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
どうかすると、連の二人はズンズン先へ歩いて行ってしまった。曾根は深張の洋傘こうもりに日をけながら、三吉と一緒に連の後を追った。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「それは判らない。だが、まあ、ここらに網を張っているよりほかはあるまい。風をけるために、この門の下にはいっていろ」
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
たけより高い茅萱ちがやくぐって、肩で掻分かきわけ、つむりけつつ、見えない人に、物言いけるすべもないので、高坂は御経おきょうを取って押戴おしいただ
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
真葛まくずはら女郎花おみなえしが咲いた。すらすらとすすきを抜けて、くいある高き身に、秋風をひんよくけて通す心細さを、秋は時雨しぐれて冬になる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お銀様は驚いてそれをけました。それを避けるとその次に、また一人の折助が通りかかって、同じようにお銀様に突き当ろうとしました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
父は威張つた恰好かつかうで尻を高くはしより再び街道の真中を歩いた。その老翁を乗せて後から来た人力車は今度は僕らをけて追越して行つた。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
「かわいらしいかえるだこと、まないようにしてゆきましょうね。」と、おんなたちはいって、けてあるいてゆきました。
お母さんのひきがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
無数の障碍物しょうがいぶつを持ちながら、その障碍物を巧みにけて、互いに呼び合うことによって、一定の間隔をいつも保ち、疾風のように走って行く。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
翌日学士が来た時、女は話しをしないようにけていた。しかし学士はきょうは女の顔なんぞに構わない様子で病人とばかり話しをしていた。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
電車通りを踏み切って自動車をけてかれもせずに歩いていながら、眼前のことは瞬時に頭から抜け去って、今自分がどこをどう歩いたか
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
もとより上洛の目標は一途いちずに志すところではあるが、家康にかぎっては、路傍の邪魔石と、ただけて通るわけには参らぬ。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平次と八五郎が鍵屋の店口みせぐちけて、お勝手口から入つて行くと、下女の取次に驚いて、主人の源兵衞が頭を出しました。
つまり日中をけて、朝のと夕方だけ馬を歩かせるので、あんまり速く馬を歩かせたり、モウ夏になりかけている日光に当てたりなんかすると
狂人は笑う (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ハッと思ってその枝をけようとする途端とたんに馬は進む。私は仰向けになるという訳でとうとう馬から落ちてしまいました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
身を楯にかばいながら白刄しらはの光をあちらこちらとけましたが、とうとうお柳は乳の下を深く突かれて、アッという声に、手負ておいながら幸兵衛は
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
色いろに頭を動かしてけていると、やがて右近、ぎゅうとまげの根を掴んで引き上げられるような気がして、眼がさめた。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
すなはち宮に入りまさずて、その御船を引ききて、堀江にさかのぼらして、河のまにまに山代やましろに上りいでましき。この時に歌よみしたまひしく
まだ柏の幹のそばに佇んでいた二人の少女は、はじめて気がついたように、しかし相変らず無言のまますんなりとけて、細いみちを譲ってくれた。
植物人間 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
この時かさをさしたる一人ひとりの男、線路のそばに立っていたのが主人あるじの窓をあけたので、ソッとけて家の壁に身を寄せた。それを主人はちらと見て
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
今年は方角が悪いので、方角けにあの五条の小さい家へ行っておいでになりましたことから、あなた様がおいでになるようなことになりまして
源氏物語:04 夕顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
よその子供等が裾にからまって来ると、彼女は優しい身振りでそれをけたり、抱きとめたりした。そしてその母親たちには莞爾にこやかな笑顔をむけた。
フェリシテ (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
蝋燭をかざして根太板ねだいたの落ちた土間どまを見下すと、竹の皮の草履が一足いつそくあるので、其れを穿いて、竹の葉をけて前に進むと、蜘蛛の巣が顔に引掛る。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
いきられるだけいきてみようじゃないか。何のこれが見付かりさえすれば助かるのだ。事に寄ると、骨はけているかも知れんから、そうすれば必ず治る。
で、問題になると面倒臭いから、これだけはけた方が好かろうという審査員たちの考えもあったことと見える。
ける隙も何もなかった。がーんと頭のしんまで響き渡った。眼がくらくらとした。それからはもう夢中だった。
神棚 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
あるいはこの静かな共和国(ヴェニス)の四人の布教師の家族であるかのごとくに尊敬され、ヴェニスの総督といえども道をけるくらいでありました。
しゆあはれめよ、しゆあはれめよ、しゆあはれめよ!』と、敬虔けいけんなるセルゲイ、セルゲヰチはひながら。ピカ/\と磨上みがきあげたくつよごすまいと、には水溜みづたまりけ/\溜息ためいきをする。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
向うが見る時は此方がけ、此方が見る時は向うが避けして、お互に眼で探りを入れていたが、彼女はこの男が先刻豊橋から乗って来たのであることを思い
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
震災ぜん、あの別院が焼けない前に、ある日の日かげを踏んで、足もとにあつまるはとけて歩きながら、武子さんに、ずっと裏の方の座敷で逢ったことがあった。
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「御免下さい。」と蓮葉はすはのような、無邪気なような声で言って、スッと入って来た。そこに腰かけて、得意先の帳面を繰っていた小僧は、周章あわてて片隅へけた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
二人は肩を並べるために、忙しく行き違ふ人をけながら、片側の家並やなみみを銀座の方へと歩き出した。
散歩 (新字旧仮名) / 水野仙子(著)
馬牛の群の中を牛糞をけ、馬糞をまたぎ、牛馬舎の前を通って、斗満川に出た。少し川辺に立って居ると、小虫が黒糠くろぬかの様にたかる。関翁が牧場記事の一節もうなずかれる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
私は一二歩思はず身をけた。そしてそこに寝衣姿ねまきすがたの伯母を見た。私は首を垂れて立ちすくんだ。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
物音がすると、一同びつくりする。人家があると、けて通る。ロシア人に逢はないやうにする。自分の歩いて来た足跡を消して置く。実に大変な気苦労をしたものです。
これはまた酷い事、屋根半分はもうとうに風に奪られて見るさへ気の毒な親子三人の有様、隅の方にかたまり合ふて天井より落ち来る点滴しづく飛沫しぶき古筵ふるござで僅にけ居る始末に
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
ばツてん、僕が何時でんあんたに向けとる心のレンズは、あんたもくるこたあでけんがな。
牛山ホテル(五場) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
彼れ例の空箱にて之をけ「して藻西の犬とはの様な犬だ」と老女に問う女「はい前額ひたいに少し白い毛が有るばかりで其外は真黒な番犬ばんいぬですよ、名前はプラトと云ましてね、 ...
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
小走りに百姓家の軒下へける。そこには土間ではたを織っている。小声で歌を謡っている。
千鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
そして彼はなるべく金魚の見えない通りを/\とけて歩くのであつたが、うつかりして、立止つて、ガラスの箱なんかにしな/\と泳いでゐるのに見入つてゐることがあつた。
哀しき父 (新字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
コスモはしばらく身動きもせずに、けるに避けられぬその眼を彼女の上にそそいだ。
それに、ここまで来てしまえば、もはやどこにもそこをけて回り道をする道は一本もなかった。そうでなくてさえ、時刻はもう迫っていた。爺はそこを突っ切ってやろうと考えた。
或る嬰児殺しの動機 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
今にも泣き出しそうにする——ちょうどそういったような子供らしい驚愕きょうがくの色を顔に現わしながら、リザヴェータは片手を前へかざして、彼をけるように壁ぎわへあとずさりした。
悠然いうぜん車上しやじようかまんで四方しはう睥睨へいげいしつゝけさせる時は往来わうらいやつ邪魔じやまでならない右へけ左へけ、ひよろひよろもので往来わうらい叱咜しつたされつゝ歩く時は車上しやじようの奴やつ癇癪かんしやくでならない。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
こんなのは道の方でければいいんだ。その方が往来をもっと往来らしくする。
台湾の民芸について (新字新仮名) / 柳宗悦(著)