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迷
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まよい
ふりがな文庫
“
迷
(
まよい
)” の例文
少なくとも血を分けた親兄弟の情としては、これが本人ただ一人の心の
迷
(
まよい
)
から出たものと解してしまうことが昔はできなかった。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
ただ
躊躇
(
ちゅうちょ
)
する事
刹那
(
せつな
)
なるに、虚をうつ悪魔は、思うつぼに
迷
(
まよい
)
と書き、
惑
(
まどい
)
と書き、失われたる人の子、と書いて、すわと云う
間
(
ま
)
に引き上げる。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と
迷
(
まよい
)
の道は妙なもので、死ぬのが嬉しくなって、お村は友之助の膝に片手を突いて友之助の顔を見詰めて居りましては又ホロリ/\と泣きます。
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
誰もこの
迷
(
まよい
)
ばかりは免れぬわ。やっぱりそれこちとらがお
花主
(
とくい
)
の方に深いのが一人出来て、雨の
夜
(
よ
)
、雪の夜もじゃ。
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
くだらぬ歌書ばかり見て居っては容易に自己の
迷
(
まよい
)
を
醒
(
さ
)
ましがたく見るところ狭ければ自分の汽車の動くのを知らで隣の汽車が動くように
覚
(
おぼ
)
ゆるものに御座候。
歌よみに与ふる書
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
▼ もっと見る
これは
矢張
(
やはり
)
自分の
迷
(
まよい
)
であったかと思って、悠然と
其処
(
そこ
)
を出て、手を洗って
手拭
(
てぬぐい
)
で手を拭きながら、
一寸
(
ちょっと
)
庭を見ると彼は
呀
(
あっ
)
と驚いた、また立っていたのだ、同じ顔
暗夜の白髪
(新字新仮名)
/
沼田一雅
(著)
何事か面白相に語らい行くに我もお辰と
会話
(
はなし
)
仕度
(
したく
)
なって心なく
一間
(
いっけん
)
許
(
ばか
)
り
戻
(
もど
)
りしを、
愚
(
おろか
)
なりと悟って半町歩めば我しらず
迷
(
まよい
)
に三間もどり、
十足
(
とあし
)
あるけば
四足
(
よあし
)
戻りて
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
しかしあの恐ろしい死顔を見たら
迷
(
まよい
)
の夢が醒めました。何もかも白状致します……ハイ……ハイ……
衝突心理
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
(窓に立ち寄る。)
何処
(
どこ
)
の
家
(
うち
)
でも今
燈火
(
あかり
)
を
点
(
つ
)
けている。そうすると狭い壁と壁との間に
迷
(
まよい
)
や涙で包まれた陰気な世界が出来て、人の心はこの
中
(
うち
)
に
擒
(
とりこ
)
にせられてしまうのだ。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
水を泳ぐと木に登ると全く別のように考えたのは
一時
(
いちじ
)
の
迷
(
まよい
)
であったと云うことを発明しました。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
されども誰人か天国の光景を知らん。ここにヨブの苦みあり、三友の
迷
(
まよい
)
が在るのである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
多くの人々にどうか悪い
怪物
(
ばけもの
)
にならないで五官の
迷
(
まよい
)
を捨て修養の道に工夫を凝らし
三摩地
(
さまち
)
の
境
(
きょう
)
に入っていい
怪物
(
ばけもの
)
におなりなさいと勧め、これで
一向
(
いっこう
)
怖く無い
怪物談
(
ばけものだん
)
を
切上
(
きりあ
)
げる事にする。
大きな怪物
(新字新仮名)
/
平井金三
(著)
ある時はわが大学に在りしことを
聞知
(
ききし
)
りてか、
学士
(
がくし
)
博士
(
はかせ
)
などいう人々
三文
(
さんもん
)
の
価
(
あたい
)
なしということしたり
顔
(
がお
)
に
弁
(
べん
)
じぬ。さすがにことわりなきにもあらねど、これにてわれを
傷
(
きづつ
)
けんとおもうは
抑
(
そも
)
迷
(
まよい
)
ならずや。
みちの記
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「門が明くような音がしたのは、おれの耳の
迷
(
まよい
)
だったかしら。」
影
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
堕落させ、果し合い、あちこちへ
流離
(
さすら
)
わせ、
迷
(
まよい
)
の
衢
(
ちまた
)
を
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
災害を予報し、作法方式を示し、時あって
憂
(
うれい
)
や
迷
(
まよい
)
を抱く者が、この主人を介して神教を求めんとしたことも、想像にかたくないのであった。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
霧が毒だつたり、
怪我
(
けが
)
過失
(
あやまち
)
だつたり、心の
迷
(
まよい
)
ぐらゐなことは実は
此方
(
こっち
)
から言ひたかつた。其をあつちこつちに、お前さんの口から聞かうとは思はなかつた。
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
古今上下東西の文学など能く比較して御覧
可被成
(
なさるべく
)
、くだらぬ歌書ばかり見てをつては容易に自己の
迷
(
まよい
)
を
醒
(
さ
)
ましがたく、見る所狭ければ自分の汽車の動くのを知らで
歌よみに与ふる書
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
倘
(
もし
)
迷
(
まよい
)
を執りて
回
(
かえ
)
らず、小勝を
恃
(
たの
)
み、大義を忘れ、寡を以て衆に抗し、
為
(
な
)
す可からざるの
悖事
(
はいじ
)
を
僥倖
(
ぎょうこう
)
するを
敢
(
あえ
)
てしたまわば、臣大王の為に
言
(
もう
)
すべきところを知らざる
也
(
なり
)
。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
愛は
迷
(
まよい
)
である。また
悟
(
さと
)
りである。愛は天地
万有
(
ばんゆう
)
をその
中
(
うち
)
に吸収して
刻下
(
こっか
)
に異様の生命を与える。
故
(
ゆえ
)
に迷である。愛の
眼
(
まなこ
)
を放つとき、
大千世界
(
だいせんせかい
)
はことごとく
黄金
(
おうごん
)
である。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
然
(
そ
)
うしてね、お前とは
縁切
(
えんきり
)
に成って仕舞ったから、私が出這入りをする訳じゃアないが、縁は
断
(
き
)
れても血筋は断れぬと云う
譬
(
たと
)
えで
何
(
なん
)
となく、お前の
迷
(
まよい
)
から
此様
(
こん
)
な難儀をする
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
全国の人が
唯
(
ただ
)
政府の一方を目的にして
外
(
ほか
)
に立身の道なしと
思込
(
おもいこ
)
んで居るのは、
畢竟
(
ひっきょう
)
漢学教育の余弊で、
所謂
(
いわゆる
)
宿昔
(
しゅくせき
)
青雲の志と云うことが先祖以来の遺伝に存して居る一種の
迷
(
まよい
)
である。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
荒海
(
あらうみ
)
の
怒
(
いかり
)
に
逢
(
あ
)
うては、世の常の
迷
(
まよい
)
も
苦
(
くるしみ
)
も無くなってしまうであろう。
己
(
おれ
)
はいつもこんな風に遠方を見て感じているが、一転して近い処を見るというと、まあ、何たる殺風景な事だろう。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
即
(
すなわ
)
ち
種々
(
いろいろ
)
ある手段によって
三摩地
(
さまち
)
の
境涯
(
きょうがい
)
に入れば自ら五官の力を借りずに事物を正しく知ることが出来る、古来聖人君子の説かれた
教
(
おしえ
)
は皆この五官の
迷
(
まよい
)
を捨てよと云う事に他ならないのである。
大きな怪物
(新字新仮名)
/
平井金三
(著)
「余りに久しくさいなみ玉ふな。今も我が
額
(
ぬか
)
に燃ゆるは君が唇なり。はかなき戯とおもへば、しひて忘れむとせしこと、
幾度
(
いくたび
)
か知らねど、
迷
(
まよい
)
は遂に晴れず。あはれ君がまことの身の上、苦しからずは聞かせ玉へ。」
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
迷
(
まよい
)
の
衣
(
きぬ
)
の、方々の隅を攫んで引いているのだ。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
魂
(
たま
)
の
上
(
あが
)
る時、巫子は、
空
(
くう
)
を探って、何もない所から、
弦
(
ゆんづる
)
にかかった三筋ばかりの、長い黒髪を、お稲の
記念
(
かたみ
)
ぞとて授けたのを、とやせんとばかりで
迷
(
まよい
)
の
巷
(
ちまた
)
。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それだから千金の
春宵
(
しゅんしょう
)
を心も空に満天下の
雌猫雄猫
(
めねこおねこ
)
が狂い廻るのを
煩悩
(
ぼんのう
)
の
迷
(
まよい
)
のと
軽蔑
(
けいべつ
)
する念は毛頭ないのであるが、いかんせん誘われてもそんな心が出ないから仕方がない。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
熟々
(
つく/″\
)
考えれば
唯
(
たゞ
)
不思議な事で、十月からは蛇が穴に
入
(
い
)
ると云うに、十一月に成って大きな蛇が出たり、又先頃墓場で見た時、身の毛立つ程驚いたのも、是は皆心の
迷
(
まよい
)
で有ったか
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
身代
(
しんだい
)
の
釣合
(
つりあい
)
滅茶苦茶
(
めちゃくちゃ
)
にする男も世に多いわ、おまえの、イヤ、あなたの
迷
(
まよい
)
も
矢張
(
やっぱり
)
人情、そこであなたの
合点
(
がてん
)
の
行様
(
ゆくよう
)
、年の功という
眼鏡
(
めがね
)
をかけてよく/\
曲者
(
くせもの
)
の恋の正体を見届た所を話しまして
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
迷
(
まよい
)
じゃ、迷は迷じゃが、自分の可愛い男の顔を、
他
(
ほか
)
の
婦人
(
おんな
)
に見せるのが
厭
(
いや
)
さに、とてもとあきらめた処で、殺して死のうとまで思い詰めた、心はどうじゃい。
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
迷
(
まよい
)
の種であるから、自覚の一助にもなろうかと親切心からちょっと申し添えるまでである。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
また
柔
(
やさ
)
しい処のあるは真に是が本当の女で、
斯
(
か
)
かる娘は容易に無いと
疾
(
とう
)
から惚込んで、看病をする内にも
度々
(
たび/\
)
起る煩悩を断切り/\公案をしては此の念を払って居りましたが、今は
迷
(
まよい
)
の道に
踏入
(
ふみい
)
って
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
上
迷迷迷
(
めいめいめい
)
、
迷
(
まよい
)
は
唯識所変
(
ゆいしきしょへん
)
ゆえ
凡
(
ぼん
)
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
鴾の作品の扱い方をとがめたのではない、お妻の
迷
(
まよい
)
をいたわって、悟そうとしたのである。
開扉一妖帖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
昔の感激主義に対して今の教育はそれを失わする教育である、西洋では
迷
(
まよい
)
より覚めるという、日本では意味が違うが、まあディスイリュージョン、さめる、というのであります。
教育と文芸
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
独
(
ひと
)
り生存の欲を一刻たりとも
擺脱
(
はいだつ
)
したるときにこの
迷
(
まよい
)
は破る事が出来る。高柳君はこの欲を
刹那
(
せつな
)
も除去し得ざる男である。したがって主客を方寸に一致せしむる事のできがたき男である。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
恋じゃ、
迷
(
まよい
)
じゃ、という
一騒
(
ひとさわ
)
ぎござった時分は、この
浜方
(
はまがた
)
の本宅に一家族、……
唯今
(
ただいま
)
でも
其処
(
そこ
)
が本家、まだ横浜にも立派な
店
(
たな
)
があるのでありまして、主人は
大方
(
おおかた
)
その
方
(
ほう
)
へ参っておりましょうが。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
才に任せ、気を
負
(
お
)
えば百人の男子を物の数とも思わぬ
勢
(
いきおい
)
の下から
温和
(
おとな
)
しい
情
(
なさ
)
けが吾知らず
湧
(
わ
)
いて出る。どうしても表情に一致がない。
悟
(
さと
)
りと
迷
(
まよい
)
が一軒の
家
(
うち
)
に
喧嘩
(
けんか
)
をしながらも同居している
体
(
てい
)
だ。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
湯の
噴出
(
ふきだ
)
します
巌穴
(
いわあな
)
が
直
(
じ
)
き横手にござりますんで、ガタリといえば、ワッと申す、
同一
(
おなじ
)
気の
迷
(
まよい
)
なら、
真先
(
まっさき
)
がけの道理なのでござりますが、様子を承りますと、何、あすこじゃまた、北隣の大島楼が
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私は思わず
後
(
あと
)
へ
退
(
さが
)
った。葉は落ちつつも、柳の茂りで、滝に巻込まれる
心持
(
ここち
)
がした。気の
迷
(
まよい
)
と思ったが、実はお悦が八郎を
引
(
ひっ
)
ぱたいた瞬間にも、舞台の端をちょこちょこと古い福助が
駈
(
か
)
けて通った。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
迷
(
まよい
)
の多い人間を、あわれとばかり思召せ。
天守物語
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
心の
迷
(
まよい
)
か知れませんが。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
迷
常用漢字
小5
部首:⾡
9画
“迷”を含む語句
迷路
迷宮
迷子
迷惑
迷児
世迷言
迷妄
戸迷
気迷
迷迭香
迷羊
昏迷
頑迷
迷子札
世迷
迷兒
迷夢
迷付
血迷
迷彩
...