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蹴落
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けおと
ふりがな文庫
“
蹴落
(
けおと
)” の例文
私は、何よりもその
活
(
い
)
き
活
(
い
)
きとした景気の好い
態度
(
ようす
)
に
蹴落
(
けおと
)
されるような心持ちになりながら、おずおずしながら、
火鉢
(
ひばち
)
の
脇
(
わき
)
に座って
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
見れば、夜鴉の
栖
(
す
)
を根から海へ
蹴落
(
けおと
)
す役目があるわ。日の永い国へ渡ったら主の顔色が善くなろうと思うての親切からじゃ。ワハハハハ
幻影の盾
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
最後に
小泉孤松
(
こいずみこしょう
)
の書いた「
農家
(
のうか
)
義人伝
(
ぎじんでん
)
」の中の一篇によれば、平四郎は伝吉の
牽
(
ひ
)
いていた馬に
泥田
(
どろた
)
へ
蹴落
(
けおと
)
されたと云うことである。(註三)
伝吉の敵打ち
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
同じ
越後
(
えちご
)
の柏崎出のあの伊豆屋伍兵衛を
蹴落
(
けおと
)
して、この筆屋が成り変ってお城の御用を仰せつかることも出来ようというものだ
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
才兵衛はひとり裏山に登って
杉
(
すぎ
)
の大木を引抜き、牛よりも大きい岩を
崖
(
がけ
)
の上から
蹴落
(
けおと
)
して、つまらなそうにして遊んでいた。
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
▼ もっと見る
この評判に
蹴落
(
けおと
)
されて春廼舎の洗練された新作を口にするものは
殆
(
ほと
)
んどなく、『国民之友』附録に対する人気を美妙が一人で
背負
(
せお
)
ってしまった。
美妙斎美妙
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
堂堂
(
どうどう
)
と
遠慮
(
えんりよ
)
なく
爭
(
あらそ
)
ひ
勝
(
か
)
つべく、
弱
(
よわ
)
き者
敗
(
やぶ
)
るる者がドシドシ
蹴落
(
けおと
)
されて行く事に
感傷的
(
かんせうてき
)
な
憐憫
(
れんびん
)
など
注
(
そゝ
)
ぐべきでもあるまい。
下手の横好き:―将棋いろいろ―
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
六十歳の老人、長い間の滿ち足りた生活が、此處に眞つ黒な溝で斷ち割られ、一瞬失望のドン底に
蹴落
(
けおと
)
されたのです。
銭形平次捕物控:301 宝掘りの夜
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
床
(
ゆか
)
ぐるみに
蹴落
(
けおと
)
さぬかいやい。(
狼狽
(
うろたえ
)
て叫ぶ。人々床几とともに、お沢を
押落
(
おしおと
)
し、取包んで蝋燭の火を一度に消す。)
多神教
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
幸
(
さいわい
)
闇夜
(
やみよ
)
にて
人通
(
ひとどおり
)
なきこそ天の
佑
(
たすけ
)
と得念が
死骸
(
しがい
)
を池の中へ
蹴落
(
けおと
)
し、そつと同所を立去り
戸田様
(
とださま
)
御屋敷前を通り過ぎ、
麻布
(
あざぶ
)
今井谷
(
いまいだに
)
湖雲寺
(
こうんじ
)
門前に
出
(
い
)
で申候処
榎物語
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
それを聞くと、怒る前に、自分が——
屍体
(
したい
)
になった自分の身体が、底の暗いカムサツカの海に、そういうように
蹴落
(
けおと
)
されでもしたように、ゾッとした。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
「つまり、誰か、このわしを
蹴落
(
けおと
)
そうという
不逞
(
ふてい
)
の部下が居て、わしに相談もしないで敵を攻めているのではなかろうか。そいつは、恐るべき
梟雄
(
きょうゆう
)
である!」
二、〇〇〇年戦争
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「庭先へ
蹴落
(
けおと
)
してくれよう。
色呆
(
いろぼ
)
けて、とりとめなくなったとみえる。その扇であやつの頭を叩いてやれ」
鈴木主水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
右
(
みぎ
)
に
左
(
ひだり
)
に
追
(
お
)
ひかけては
大溝
(
おほどぶ
)
の
中
(
なか
)
へ
蹴落
(
けおと
)
して
一人
(
ひとり
)
から/\と
高笑
(
たかわら
)
ひ、
聞
(
き
)
く
者
(
もの
)
なくて
天上
(
てんじやう
)
のお
月
(
つき
)
さま
宛
(
さ
)
も
皓々
(
こう/\
)
と
照
(
てら
)
し
給
(
たま
)
ふを
寒
(
さぶ
)
いといふ
事
(
こと
)
知
(
し
)
らぬ
身
(
み
)
なれば
唯
(
たゞ
)
こゝちよく
爽
(
さはや
)
かにて
わかれ道
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
蹴落
(
けおと
)
そうかという事ばかり寝ても醒めても忘れていない下等動物でしかあり得ないのだからね。
超人鬚野博士
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
『
然
(
しか
)
し、
昨夜
(
さくや
)
の
海嘯
(
つなみ
)
は、
吾等
(
われら
)
一同
(
いちどう
)
を
希望
(
きぼう
)
の
天上
(
てんじやう
)
より、
絶望
(
ぜつぼう
)
の
谷底
(
たにそこ
)
へ
蹴落
(
けおと
)
したと
思
(
おも
)
はれます。』
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
おそらく血は刀に附く
遑
(
いとま
)
がなかったろう——切ると一緒に高いところから足で
蹴落
(
けおと
)
して(その証拠には、かすり
疵
(
きず
)
がいくつもある)、下へ
転
(
ころ
)
がって行く屍体の音を聞きながら
大菩薩峠:05 龍神の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
久米一
(
くめいち
)
がいった。いつか
窯焚
(
かまた
)
きの
百助
(
ももすけ
)
を
蹴落
(
けおと
)
した時に、「おれのわざはこんな山の中に封じられて終るような小さなものではないと。偉大なものは世の中へ
溢
(
あふ
)
れ出ずにはいない」
増長天王
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、叔母はいきなり私を
縁
(
えん
)
から土間に突き落した。いや、
蹴落
(
けおと
)
した。それでもまだ物足らなかったのか、自分も
跣足
(
はだし
)
で飛び降りて来て、二尺ざしで私をところ構わず
撲
(
なぐ
)
りつけた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
すると、肝腎の鈴虫や、朝すずの声は
蹴落
(
けおと
)
されてしまった上、前栽は完全に空家の感じを出してしまった。でも私は、内心かなり得意なつもりで寝たものだ。ところへ父が帰って来た。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
が、詰るところ天一坊の悪事は摘発され、大岡越前としては法の威厳を示す必要上この坊主をば白洲の縁側から
蹴落
(
けおと
)
すのであるが、演劇ではここは大向うなるものが
唸
(
うな
)
りだすそうである。
長屋天一坊
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
愛
(
あい
)
ちやんは
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
つて
遙
(
はる
)
か
下
(
した
)
の
方
(
はう
)
へ
其煙突
(
そのえんとつ
)
を
蹴落
(
けおと
)
しました、
暫
(
しばら
)
くすると
小
(
ちひ
)
さな
動物
(
どうぶつ
)
(
愛
(
あい
)
ちやんには
何
(
なん
)
だか
解
(
わか
)
りませんでした)が、
直
(
す
)
ぐ
其煙突
(
そのえんとつ
)
の
中
(
なか
)
で
攀登
(
よぢのぼ
)
らうとして
引
(
ひ
)
ッ
掻
(
か
)
く
音
(
おと
)
を
聞
(
き
)
きました
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
小平のために
吾妻川
(
あがつまがわ
)
の深い所に
蹴落
(
けおと
)
され、既に私も此の子も助かりようのない所へ
北牧村
(
きたむくむら
)
の百姓
清左衞門
(
せいざえもん
)
という人が通りかゝり、助けてくれました所、縁あって其の
家
(
いえ
)
にずる/\べったり
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
突然男は両手を腰掛の布団の上に突いて身を起して、両足で、掛けてあった
鼠色
(
ねずみいろ
)
の
外套
(
がいとう
)
を下へ
蹴落
(
けおと
)
して、立ち上がろうとした。しかし汽車の動揺に妨げられて、また腰掛の隅へ倒れ掛かった。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
彼らは
他人
(
ひと
)
を彼らと同程度に引き
摺
(
ず
)
り落して
喝采
(
かっさい
)
するのみか、ひとたび引き摺り落したものを、もう
一返
(
いっぺん
)
足の下まで
蹴落
(
けおと
)
して、堕落は同程度だが
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
中学時代に、あの馬鹿の竹一から、ワザ、ワザ、と言われて
脊中
(
せなか
)
を突かれ、地獄に
蹴落
(
けおと
)
された、その時の思い以上と言っても、決して過言では無い気持です。
人間失格
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
幸運
(
こううん
)
悲運
(
ひうん
)
のけじめは
勿論
(
もちろん
)
あるとしても、
勝
(
か
)
つ者が
勝
(
か
)
つには
必
(
かなら
)
ず當
然
(
ぜん
)
の
理
(
り
)
由がある。
蹴落
(
けおと
)
されて
憐憫
(
れんびん
)
を
待
(
ま
)
つ如き心
掛
(
かけ
)
なら、
初
(
はじ
)
めから如何なる
勝負
(
せうふ
)
にも
戰
(
たゝか
)
ひにも出る
資格
(
しかく
)
はない
譯
(
わけ
)
だ。
下手の横好き:―将棋いろいろ―
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
わが子を縁から
蹴落
(
けおと
)
し出家入道を
遂
(
と
)
げた
西行法師
(
さいぎょうほうし
)
が、旧愛の妻にめぐり会ったという長谷寺の
籠堂
(
こもりどう
)
。竜之助はともかくもここで夜を明かそうとして、その南の柱の下に来ました。
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
縁の上から
蹴落
(
けおと
)
した——あの一せつなの泣き声に——いつも呼び
醒
(
さ
)
まされるためである。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あゝ、
天上
(
てんじやう
)
から
地獄
(
ぢごく
)
の
底
(
そこ
)
へ
蹴落
(
けおと
)
されたとて、
人間
(
にんげん
)
は
斯
(
か
)
く
迄
(
まで
)
失望
(
しつぼう
)
するものではあるまい。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
公子 (色やや
嶮
(
けわ
)
し)随分、勝手を云う。が、貴女の美しさに免じて許す。歌う鳥が
囀
(
さえず
)
るんだ、
雲雀
(
ひばり
)
は星を
凌
(
しの
)
ぐ。星は
蹴落
(
けおと
)
さない。声が可愛らしいからなんです。(女房に)おい、
注
(
つ
)
げ。
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「Yのフォード」を一躍「Yの監獄部屋」にまで
蹴落
(
けおと
)
してしまうものであるか、と煽動し、全従業員の一致的行動によって、没落に傾いている自分達の地位を守ろうとでもするらしかった。
工場細胞
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
そして、今、こうした孤独にまで
蹴落
(
けおと
)
された
刹那
(
せつな
)
、私ははっきりと知った。教師なんて、どんなに臆病な、不誠意な、そしてその説くところがどんなに空虚な嘘ッ八であるかということを。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
その者はただいま谷底へ
蹴落
(
けおと
)
しましたが、持って逃げたたいせつな品が見あたらず、追手の者の申すにはこの家へお預けするのを見たとのことで、失礼をも顧みずおたずねいたしたしだいでござる
峠の手毬唄
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
私を
蹴落
(
けおと
)
す前に、まず生き証人のお安を殺したのでございましょう。
銭形平次捕物控:168 詭計の豆
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
それが取りも直さず彼のまさに死の国に
蹴落
(
けおと
)
そうとしつつある友とその細君の家だったのである。彼はある日何気ない顔をして友の
住居
(
すまい
)
を
敲
(
たた
)
いた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と
吸子
(
きゆうす
)
を取って、
沓脱
(
くつぬぎ
)
を、向うむきに
片褄
(
かたづま
)
を
蹴落
(
けおと
)
しながら、美しい眉を開いて
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私を
蹴落
(
けおと
)
す前に、先づ生き證人のお安を殺したので御座いませう。
銭形平次捕物控:168 詭計の豆
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
ときは
長篠
(
ながしの
)
合戦の直後である。久しいあいだ不敗の鉄軍と誇っていた甲山の武田をして、一転、第二流国へ
蹴落
(
けおと
)
してしまった程な
大捷
(
たいしょう
)
を博して凱旋したばかりの領主をいただいている職人町であった。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼らの足もとの石ころを一つ
蹴落
(
けおと
)
してよこす。
如是我聞
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
自分をこんな所に
蹴落
(
けおと
)
したのは誰だと考える暇もない。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
蹴
常用漢字
中学
部首:⾜
19画
落
常用漢字
小3
部首:⾋
12画
“蹴”で始まる語句
蹴
蹴出
蹴飛
蹴上
蹴鞠
蹴散
蹴立
蹴込
蹴倒
蹴返