はか)” の例文
第四に人々相集まりて一国一社会を成し、互いに公利をはかり共益を起こし、力の及ぶだけを尽してその社会の安全幸福を求むること。
家庭習慣の教えを論ず (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
こは大いに理由ある事にて、彼は全く変心せしなり、彼はしょうの帰国中妾の親友たりし泉富子いずみとみこと情を通じ、妾を疎隔そかくせんとはかりしなり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
「では父上の遺業を継いで、事をはかっているこの紋也の今日まで行なって来たことも、行き過ぎた行ないといわなければなるまい!」
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ロセツの申出はついにおこなわれざりしかども、彼が日本人に信ぜられたるその信用しんようを利用して利をはかるに抜目ぬけめなかりしはおよそこのたぐいなり。
その妻を親切をもってはかりし罪その他一切の悪業に報わるるの苦痛あるを知りて死にしや否の一事はなお往々にして争われたりき
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
前には八蔵驚破すわといわばと、手ぐすね引きて待懸けたり。うしろには銀平が手も無く得右衛門に一杯くわして、奪い行かむとはかりたり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この年に五百の姉壻長尾宗右衛門が商業の革新をはかって、横山町よこやまちょうの家を漆器店しっきみせのみとし、別に本町ほんちょう二丁目に居宅を置くことにした。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そうだ! そんなことは幾何でもある、わしもそう思ってやったのだ。が、向うでははじめからはかってやった仕事だ。俺が少しでも、つまずくのを
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
敵国をはかるために、自領の中に無数に入り込んでいる密偵を計るために——周囲の肉親をも家臣をも、思い込ませて来たのだった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは一身の名誉をはかるばかりではない。幼年学校時代からニコラウス帝を尊信してゐたからである。帝は度々幼年学校へ行幸せられた。
お茶を持つて店へ出て来た晴代も見てゐる前で、木山はしきりに算盤そろばんをぱちぱちやりながら、親方にはかつてゐたが、総てはオ・ケであつた。
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
向うへ行ったところが必ず死ぬときまったものでもない。運に任して出来得る限り良い方法を尽して事の成就をはかるまでである。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「イヤ、はかられたわい。偽物の奴が、出がけに、お客さまはさっきお帰りになった。なんて、嘘をつきやがったものですから、つい……」
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
最初彼女はテオデュールにマリユスを監視させようとしたのであったが、こんどはテオデュールにマリユスのあとを継がせようとはかった。
(四) 曾子そうし曰く、われ日に三たび吾が身をかえりみる、人のためにはかりて忠ならざるか、朋友と交わりて信あらざるか、習わざるを伝うるかと。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
はじめ余ノ昌平黌ニアルヤ寺門静軒てらかどせいけんマサニ駒籠こまごめヲ去ラントシ、余ニ講帷こういガンコトヲ勧ム。時ニ余一貧洗フガ如シ。コレヲ大沼竹渓翁ニはかル。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
仲間とはかって彼女の居る宏壮な別荘を調査し、魔の爪を磨いていたのを、東京から尾行して来た刑事が引っ捕えたのだという。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
もよほしける次の間なる吉兵衞は色々と思案し只此上は我膽力わがたんりよく渠等かれらに知らせ首尾しゆびよくはからば毒藥もかへつて藥になる時あらん此者共を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
こと青年輩せいねんはい身心しん/\發育はついく時代じだいにあるものには、いまよりこのはふ實行じつかうして體力たいりよく培養ばいやうし、將來しやうらい大成たいせいはかことじつ肝要かんえうならずや。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
いはく、『三ぐんしやうとして士卒しそつをしてたのしましめ、敵國てきこくをしてあへはからざらしむるは、いづれぞ』と。ぶんいはく、『かず』と。
一ノ関をはかる手段だと思われましたが、いまでは松山との縁を切るのが、本当の目的だったのだとさえ、いわれているのです
右等みぎらの事件に至りては、他国の内政に与聞せざる善政の度外どがいおくべきものなり。ゆえにこの種の事をはかるはその実はなはあやうしとす。〈同五百廿葉〉
仲麿は即ち恵美押勝えみのおしかつであるが、橘奈良麿等が仲麿の専横をにくんで事をはかった時に、仲麿の奏上によってその徒党をたいらげた。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
家へ帰った王給諌は上疏じょうそして王侍御が不軌ふきはかっているといって、元豊から剥ぎとった服と冕を証拠としてさし出した。
小翠 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
この奇蹟の後、群衆はイエスをとらえて、強いて王としようとはかった。そのことを知ったイエスは単身にて山に逃げた。
キリスト教入門 (新字新仮名) / 矢内原忠雄(著)
なことを申すの。戦場の駈けひきは、あらかじめ十分にはかるにある。北町奉行所きたとても、そのへん、ぬかりなく手を
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
あるいは因循姑息いんじゅんこそくのそしりをまぬかれないまでも、君侯のために一時の安さをぬすもうとはかるものがあり、あるいは両端をいだこうとするものがある。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
大切な密書を彼女のなすがまゝに任せて只管ひたすら恐懼きょうくしているようなのは、どう考えても不為ふためをはかる者の態度ではない。
ここにおいて兵を出して諸国を併呑へいどんせんとし、欧羅巴洲大いに乱る。文化十二年諸国相はかりてポナパルテをとりこにして流竄りゅうざんし、連年の兵乱を治平せり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
彼はマルコポロの紀行文を読んで、支那の東に黄金国が有ることを知り、西向してこれに達せんとはかったのである。
日本の文明 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
これに類するササヤキは折にふれて女神の耳に達し、女神の心をうごかすようにはかられ計算されていた筈であろう。
安吾史譚:02 道鏡童子 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
その庶兄ままあにのタギシミミの命が、皇后のイスケヨリ姫と結婚した時に、三人の弟たちをころそうとしてはかつたので、母君ははぎみのイスケヨリ姫が御心配になつて
悪心も増長いたしましたもので、春見は思いはかって居りますところへ、又作が酒屋の御用を連れて帰ってまいり。
一、吾れ、この回はじめ、もとより生をはからず、また死を必せず。ただ誠の通塞をもつて天命の自然に委したるなり。七月九日に至りてはほぼ一死を期す。
留魂録 (新字旧仮名) / 吉田松陰(著)
改造社からは当時ベルリンに滞在していた社員室伏むろぶせ氏を通じてこれをアインシュタイン教授にはかるとともに、私からも一書を親しく同教授に送ったのでした。
太子は斉から帰ると、側臣の戯陽速ぎようそくを呼んで事をはかった。翌日、太子が南子夫人に挨拶に出た時、戯陽速は既に匕首あいくちを呑んで室の一隅の幕の陰に隠れていた。
盈虚 (新字新仮名) / 中島敦(著)
あわよくば太閤の故智を襲わんとしているのに、小栗は、輪廓において、忠実なる徳川家の譜代ふだいであり、譜代であるがゆえに、徳川家のためにはかって、且つ
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
マルチノ思ひ定めかねて、僧たちとはからんとていぬる折柄、ペツポのをぢは例の木履きぐつを手に穿きていざり來ぬ。
カーライルの歿後は有志家の発起ほっきで彼の生前使用したる器物調度図書典籍をあつめてこれを各室に按排あんばい好事こうずのものにはいつでも縦覧じゅうらんせしむる便宜べんぎさえはかられた。
カーライル博物館 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
昔の哲人は「いまだきざさざる時ははかりやすし」といい、「これをいまだ乱れざるに治めよ」と言いました。
食糧騒動について (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
その理由として諸説紛起したが、ジョン・ネルソンは、この犬かく定時に教会へ来て飼い主を不思議がらせ、それより彼をして正教に化せしめんとはかったのだ。
心さえ急かねばはかられる訳はないが、他人にしてられぬ前にというのと、なまじ前に熟視じゅくししていて、テッキリ同じ物だと思った心のきょというものとの二ツから
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一大事と申すは、今日、ただ今の心なり。それをおろそかにして、翌日あることなし。すべての人に遠きことを思えば、はかることあれど、『的面の今』を失うに心つかず
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
身は一定の国籍のもとにありて、法律ほうりつの保護を受け、もって生命財産の安固あんこを保ちながら、その国の不為ふためはかるごときは、決して国民たる個人の独立行為どくりつこういといわれぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
時勢は定信を起して老中となせり。定信てり、先づ従来の弊政をめ、文武を励まし、節倹を勤め、以て回復をはかれり。当時松平越州の名児童走卒も亦皆之を知る。
頼襄を論ず (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
いずれ王の第二の夫人にも取立てられる有力な寵姫になるだろうと思われているうち、この王が歿し麗姫は重臣達のはからいで遠くの洛邑の都に遊び女として遣られた。
荘子 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ましてこんなことをはかった自分はうとましい姉だと思われ、憎くさえ思われることであろうと、思い続けるにつけても、だれも頼みになる身内の者を持たない不幸が
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「あなたに帰られると我輩は家内に顔が立たない。如何にも飲みたくてはかったように取られます」
閣下 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
蘇我臣そがのおみ入鹿ひとり、上宮かむつみやみこたちてて、古人大兄ふるひとおひねを立てて、天皇と為さむとすることをはかる。」
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
二葉亭ふたばてい歿後ぼつご坪内つぼうち、西本両氏とはかって故人の語学校時代の友人及び故人と多少の交誼こうぎある文壇諸名家の追憶または感想をい、集めて一冊として故人の遺霊に手向たむけた。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)