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詮
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せん
ふりがな文庫
“
詮
(
せん
)” の例文
幾
(
いか
)
ほどお前たちが
口惜
(
くちお
)
しく存じても
詮
(
せん
)
ない事さ。とかく人の目を引くような綺麗なものは何の
彼
(
か
)
のと
妬
(
ねた
)
まれ難癖を付けられるものさ。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
しかしそれは今更後悔致し候とて何の
詮
(
せん
)
も
無之
(
これなく
)
候えば、貴兄と同様今後いかに処すべきかを定め、それによって奮励するのほかなく候
師を失いたる吾々
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
坊ちゃん政——それは私にいつの間にか付けられた
通
(
とお
)
り
名
(
な
)
だった。もちろんかねて
顔馴染
(
かおなじみ
)
の二刑事が覚えているのも
詮
(
せん
)
ないことだろう。
疑問の金塊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「
好
(
よ
)
い。好い。そちの心底はわかっている。そちのしたことは悪いことかも知れぬ。しかしそれも
詮
(
せん
)
ないことじゃ。ただこの
後
(
のち
)
は——」
三右衛門の罪
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
今更
(
いまさら
)
ながら
長吉
(
ちようきち
)
の
亂暴
(
らんぼう
)
に
驚
(
おどろ
)
けども
濟
(
す
)
みたる
事
(
こと
)
なれば
咎
(
とが
)
めだてするも
詮
(
せん
)
なく、
我
(
わ
)
が
名
(
な
)
を
借
(
か
)
りられしばかりつく/″\
迷惑
(
めいわく
)
に
思
(
おも
)
はれて
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
▼ もっと見る
吟味
(
ぎんみ
)
せしに殘金十一兩
餘
(
よ
)
在
(
あ
)
りたり是を思へば文右衛門
盜賊
(
たうぞく
)
でなき事は
明白
(
めいはく
)
なり
斯程
(
かほど
)
に證據ある上は汝何程陳ずる共
詮
(
せん
)
なき事ぞ
痛
(
いた
)
き思ひを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
綱引の
腕車
(
くるま
)
を勢よく
奔
(
はし
)
らせ、宿処ブツクを繰り返しながら、年始の回礼に勉むる人は、
詮
(
せん
)
ずる所、鼻の下を養はん為めなるべし。
元日の釣
(新字旧仮名)
/
石井研堂
(著)
斯
(
こ
)
う
詮
(
せん
)
じ
詰
(
つめ
)
て来ますと、どこに一つ二郎君を疑う理由も見出せないのです。如何でしょう、これでも二郎君が殺人犯人でしょうか
火縄銃
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
しかし、私の
執念
(
しぶとさ
)
は、その
詮
(
せん
)
ないことすらも、なんとかして、出来ることなら、より以上の近似に移そうといきみだしましたの。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
寺は
詮
(
せん
)
ずるに彼岸の浄土が此岸に映る
相
(
すがた
)
なのである。そこにはそれぞれに美しい物が集ってくる。品物はみな仏菩薩なのである。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
この上は
詮
(
せん
)
ないことと思って兵馬は、もはや金助と一緒に泊ってみる必要もないから、なお金助を嚇しておいて、一人だけで引上げました。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
山「それは困ります、
併
(
しか
)
し何う云う訳か話の様子に依って死なずとも
宜
(
よ
)
い事なら殺して
詮
(
せん
)
がない、まア兎も角もお話しなさい」
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
時を積んで日となすとも、日を積んで月となすとも、月を積んで年となすとも、
詮
(
せん
)
ずるにすべてを積んで墓となすに過ぎぬ。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「そう知られては隠しても
詮
(
せん
)
ないこと。まこと今宵は左少弁殿と言いあわせて、法性寺詣でに忍び出たに相違ござりませぬ」
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
オイ
軽蔑
(
さげすむ
)
めえぜ、馬鹿なものを買ったのも
詮
(
せん
)
じつめりゃあ、相場をするのと
差
(
ちげえ
)
はねえのだ、当らねえには
極
(
き
)
まらねえわサ。
貧乏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「大空の雲を当てにいずことなく、海があれば渡り、山があれば越し、里には宿って、国々を
歩行
(
ある
)
きますのも、
詮
(
せん
)
ずる処、ある意味の手毬唄を……」
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「海沿い道は、
渉
(
わた
)
れまいぞ。今朝は折ふし満潮の時刻。
詮
(
せん
)
なし詮なし。山の手を駈けこえて、
丹下
(
たんげ
)
の
砦
(
とりで
)
まで急ごうず」
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「遠くからでもそう見えたが、どうも考えごとをしていられるな、考えても
詮
(
せん
)
ないことは考えなさらぬ方がいい。」
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
この言も一応聞いただけでは矛盾、アマノジャクのようなれども、深く
詮
(
せん
)
じきたらばそのしからざることが分かる。
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
もはや
詮
(
せん
)
術
(
すべ
)
なしと観念の眼を閉ぢた悪魔の奴は永遠の如き饒舌の虜となり、厭世感を深めたといふ話があります。
清太は百年語るべし
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
過を悔しく思ひ、取繕はんと心配するは、譬へば茶碗を割り、其缺けを集め合せ見るも同にて、
詮
(
せん
)
もなきこと也。
遺訓
(旧字旧仮名)
/
西郷隆盛
(著)
娘の
詮
(
せん
)
ない遠慮深さに訊ね返して手間取るのももどかしいと思ったか嘉六は、むこうからさっさと説明しました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
つまりは
本居
(
もとおり
)
氏が是をニヒナメの一つに統一せられたのは何の
詮
(
せん
)
もなく、いわば後代の研究者のために、なお発見の喜びを
遺
(
のこ
)
されたものと言ってもよい。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
という一
句
(
く
)
がある。
詮
(
せん
)
じつめれば男子の力は
思慮
(
しりょ
)
に
止
(
とど
)
まらでこれを判断し、しかしてこれを実行するにある。女子の力は判断するについてははなはだ弱い。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
おれのような縁の下の力持ち——そうだ、おれは自分のことを縁の下の力持ちだと思うが、どうだい。宿場の骨折りなぞはお前、説いても
詮
(
せん
)
のないことだ。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
云わば方針の改変として示されるそういう不誠意については、誰がどんなに反撥してみても
詮
(
せん
)
ないことである。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
詮
(
せん
)
ずるところ教育は個人の事業にも非ず、政府の事業にも非ず、国民共同の事業であるから資力のある人は率先してこれを援助せられんことを望む旨を
陳
(
の
)
べ
新島先生を憶う:二十回忌に際して
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
踊の達者で仇つぽくて、この上もなく結構な女房のお葉がだん/\厭になり、内弟子で弟分にしてゐた、佐野松が、次第に好きになつたのは
詮
(
せん
)
ないことでした。
銭形平次捕物控:314 美少年国
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
武士の娘として、
詮
(
せん
)
ない、宿命と、諦めてくれい。わしとて、恋仲の女の兄を討つに、気軽に、参れるか。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
しばらく中から、戸をおさえてはみたものの、子供の力の
詮
(
せん
)
すべくもなくもう諦めてしまってチョビ安は
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
しかしヘッケルの本の最後の数節は、いろいろな科学的な言葉は使ってあったが、
詮
(
せん
)
じつめたところは、物質と勢力との一致という夢を描いたもののようであった。
簪を挿した蛇
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
其さまは又猶萬里の長堤のごとし。遠うして更に遠しといふとも、
詮
(
せん
)
ずるに踏破しがたきにあらず。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
それも厭なりこれも厭なりで、二時間ばかりと云うものは黙坐して腕を
拱
(
く
)
んで、沈吟して嘆息して、千思万考、審念熟慮して屈托して見たが、
詮
(
せん
)
ずる所は
旧
(
もと
)
の
木阿弥
(
もくあみ
)
。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
玉が出ぬとは、なにによって
詮
(
せん
)
じつけた。玉割はどうだろうと、
持矢倉
(
もちやぐら
)
を
測
(
はか
)
って射ちあげるくらい、なにほどのことがあろうか。貴様が否なら、伜の喜三郎にやらせる。
ひどい煙
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
力の限り
悶掻
(
もが
)
けども、更にその
詮
(
せん
)
なきのみか
咽喉
(
のど
)
は次第に
縊
(
しば
)
り行きて、苦しきこといはん
方
(
かた
)
なし。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
その時代を、われわれはいくら希望どおりに、鋼鉄時代、
古典
(
クラシック
)
時代、と呼んでも
詮
(
せん
)
ないことだ。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
然云
(
さうい
)
ふ
譯
(
わけ
)
では
無
(
な
)
いのです、
其
(
そ
)
れは
貴方
(
あなた
)
が
苦痛
(
くつう
)
を
嘗
(
な
)
めて、
私
(
わたくし
)
が
嘗
(
な
)
めないといふことではないのです。
詮
(
せん
)
ずる
所
(
ところ
)
、
苦痛
(
くつう
)
も
快樂
(
くわいらく
)
も
移
(
うつ
)
り
行
(
ゆ
)
くもので、
那樣事
(
そんなこと
)
は
奈何
(
どう
)
でも
可
(
い
)
いのです。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
奔流に結び
且
(
か
)
つ消ゆる飛沫の運命、それが
詮
(
せん
)
ずる所人々の歩むべき運命なのである。
現代語訳 方丈記
(新字新仮名)
/
鴨長明
(著)
悪い事も考えれば善い事も考える、歩きたいと思えば足が動くし、手を揚げようとすれば手が揚がる、生理学者の説明はさることながら
詮
(
せん
)
ずるに人間は
一向
(
いっこう
)
に判らない
大怪物
(
だいかいぶつ
)
である。
大きな怪物
(新字新仮名)
/
平井金三
(著)
詮
(
せん
)
ずる
処
(
ところ
)
、過去の経歴は未来の保証となすに足らず、過去の善行は未来の覚悟となすに足らず、女が
良夫
(
おっと
)
を択ぶには過去を問うと同時に未来の覚悟如何に重きを置かなければなりません。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
昨夜
(
ゆうべ
)
もお話した様なわけでネ、自分ながら思案に暮れましたの、どうせ泥水商売してるからにや、
普通
(
なみ
)
の
女
(
ひと
)
の様なこと思つたからとて、
詮
(
せん
)
ないことなんだから、
寧
(
いつ
)
そ松島と云ふ
男
(
ひと
)
の所へ行つて
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
僅
(
わず
)
かの月日の内に三度まで葬儀を営める事とて、本来
貧窮
(
ひんきゅう
)
の家計は、ほとほと
詮
(
せん
)
術
(
すべ
)
もなき悲惨の
淵
(
ふち
)
に沈みたりしを、有志者諸氏の好意によりて、
辛
(
から
)
くも持ち支え再び開校の準備は成りけれども
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
そこまで
詮
(
せん
)
じつめて来ると、葉子には倉地もなかった。ただ命にかけても貞世を病気から救って、貞世が元通りにつやつやしい健康に帰った時、貞世を大事に大事に自分の胸にかき
抱
(
いだ
)
いてやって
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
そして
詮
(
せん
)
じ詰めたところ、どちらが選ばれるにしても、結局は権勢争奪の
傀儡
(
かいらい
)
であって、自分にはまったく去就の自由の与えられていないということが、
譬
(
たと
)
えようもなく彼を虚無的にしてしまった。
野分
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「文筆詩歌」等もまた「
詮
(
せん
)
なき事なれば捨つべき」ものである。法の悟りを得んとするものに美言佳句が何の役に立とう。美言佳句に興ずるごときものは「ただ
言語
(
ごんご
)
ばかりを
翫
(
もてあそ
)
んで理を得べからず」
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
叫べども呼べども遠きへだたりにおくれしわれの
詮
(
せん
)
なきつかれ
九条武子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
詮
(
せん
)
ずれば馬も
仏
(
ほとけ
)
の身なれども
灸
(
やいと
)
すゑられて
嘶
(
な
)
けばかなしも
雲母集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
かよわなるもの、
詮
(
せん
)
ずれば仏ならねどこの世は寂し。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
歌
(
うた
)
うたはずば
詮
(
せん
)
ぞなき
孔雀船
(旧字旧仮名)
/
伊良子清白
(著)
今更ながら長吉の乱暴に驚けども済みたる事なれば咎めだてするも
詮
(
せん
)
なく、我が名を仮りられしばかりつくづく迷惑に思われて
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
“詮”の意味
《名詞》
(セン/かい 「詮が(も)ない」の形で)やりがい、それをやったことによって得られる何らかの利益。
《動詞》
つきつめる。
(出典:Wiktionary)
詮
常用漢字
中学
部首:⾔
13画
“詮”を含む語句
所詮
詮方
詮索
名詮自性
御詮議
詮議立
詮事
言詮
名詮自称
詮議中
詮議
詮術
義詮
間部詮勝
御詮索
詮衡
詮穿
詮索欲
詮方無
詮益
...